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天使と悪魔
優しく冷たい天使
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一通り楽しんで芙蓉がいない事に気が付いて辺りを見回すと、ソファに真奈美と一緒に座っていた。
赤い顔で芙蓉にもたれかかる真奈美。どうやら熱があるようだ。
真奈美は俺がここに初めて来た日、すでにこの医療センターに入院していた。聞けば酷い喘息持ちで、もう長い事入退院を繰り返しているのだそうだ。
芙蓉は真奈美を抱き寄せて、静かにオーラを放っている。きっと誰も気が付いてはいないだろうけど、あれは明らかに自分の「力」を使っているに違いなかった。
白くキラキラと光る柔らかなオーラ。真奈美を取り囲んだそれは、だんだんと淡くなって消えていく。
「少し、楽になったみたい」
真奈美が、芙蓉を見上げて嬉しそうに笑った。
「そうか、良かったな」
芙蓉の方も、優しい笑顔だ。
「真奈美ちゃん」
看護師の女性が、小走りにやってきた。
「朝、お熱があったでしょ?寝てなきゃだめよ」
「ごめんなさい」
真奈美は素直に謝って、看護師の手を取り立ち上がる。
そして芙蓉に手を振って病室へと向かう。芙蓉も凄く優しい顔をして、真奈美に手を振りかえしていた。
本当に芙蓉はずるいと思う。どんなに焦がれても逆立ちしても、あんな力は俺にはない。俺にもあんな力があったなら、どれだけの事が出来るだろう。
ろくに魔力もない俺が、羨む事の方がおかしいのかもしれないけれど。
そんな複雑な気持ちで芙蓉を見ていたら、ここで時々見かけて可愛いなと気になっていた女性が芙蓉に声をかけてきた。
「こっ、こんにちは。えっと、今月からここにボランティアで入っている、早野由美です」
真っ赤な顔で芙蓉に話しかけている早野さん。絶対にあれは、芙蓉を好きに違いない!
何であいつばかり良い目に合うんだよと、腹が立たないわけではないが、可愛い子とお近づきになりたいのは男の性だ。俺は怒りを押し隠し、ついでに紹介してもらおうと下心満載で芙蓉に近寄った。
「芙蓉」
呼ばれて俺に気が付いた芙蓉が立ち上がる。
「ああ、そろそろ帰るか」
「えっ?」
早野さんが、驚いて声を上げた。
「あっ、そうじゃなくて…」
俺も焦って芙蓉に言葉を続けようとしたら、「待ってください!」と、切羽詰まった早野さんの声が飛んだ。
「私っ…私、芙蓉さんの事がずっと気になってて…」
だが、言い募る早野さんを無視して、芙蓉は言葉をかぶせた。
「そう言うのは悪いけど」
「えっ!?」
間、髪を容れずに答える芙蓉に、俺も早野さんもびっくりして芙蓉の顔を見上げる。
それには芙蓉もさすがに驚いたようで、俺の顔を呆れた顔で見ながら、「なんでお前まで」と、ボソッとつぶやいた。
そして、そのまま早野さんに向き直る。
「恋愛ごとに興味ないんだ、面倒臭いし」
そして言葉を一旦区切り、「迷惑だから」と、はっきりと口にした。
あまりにもあっさりとした態度に、部外者の俺の方が動揺してしまう。
「ちょっ…。なに言ってんだよ、芙」
「帰るぞ」
また最後まで言わさずに言葉をかぶせてくる。何なんだこいつは!
早野さんは、真っ赤になって下を向き、ぽろぽろと涙をこぼしている。びっくりとした俺が固まっていると、芙蓉に手を引っ張られた。
赤い顔で芙蓉にもたれかかる真奈美。どうやら熱があるようだ。
真奈美は俺がここに初めて来た日、すでにこの医療センターに入院していた。聞けば酷い喘息持ちで、もう長い事入退院を繰り返しているのだそうだ。
芙蓉は真奈美を抱き寄せて、静かにオーラを放っている。きっと誰も気が付いてはいないだろうけど、あれは明らかに自分の「力」を使っているに違いなかった。
白くキラキラと光る柔らかなオーラ。真奈美を取り囲んだそれは、だんだんと淡くなって消えていく。
「少し、楽になったみたい」
真奈美が、芙蓉を見上げて嬉しそうに笑った。
「そうか、良かったな」
芙蓉の方も、優しい笑顔だ。
「真奈美ちゃん」
看護師の女性が、小走りにやってきた。
「朝、お熱があったでしょ?寝てなきゃだめよ」
「ごめんなさい」
真奈美は素直に謝って、看護師の手を取り立ち上がる。
そして芙蓉に手を振って病室へと向かう。芙蓉も凄く優しい顔をして、真奈美に手を振りかえしていた。
本当に芙蓉はずるいと思う。どんなに焦がれても逆立ちしても、あんな力は俺にはない。俺にもあんな力があったなら、どれだけの事が出来るだろう。
ろくに魔力もない俺が、羨む事の方がおかしいのかもしれないけれど。
そんな複雑な気持ちで芙蓉を見ていたら、ここで時々見かけて可愛いなと気になっていた女性が芙蓉に声をかけてきた。
「こっ、こんにちは。えっと、今月からここにボランティアで入っている、早野由美です」
真っ赤な顔で芙蓉に話しかけている早野さん。絶対にあれは、芙蓉を好きに違いない!
何であいつばかり良い目に合うんだよと、腹が立たないわけではないが、可愛い子とお近づきになりたいのは男の性だ。俺は怒りを押し隠し、ついでに紹介してもらおうと下心満載で芙蓉に近寄った。
「芙蓉」
呼ばれて俺に気が付いた芙蓉が立ち上がる。
「ああ、そろそろ帰るか」
「えっ?」
早野さんが、驚いて声を上げた。
「あっ、そうじゃなくて…」
俺も焦って芙蓉に言葉を続けようとしたら、「待ってください!」と、切羽詰まった早野さんの声が飛んだ。
「私っ…私、芙蓉さんの事がずっと気になってて…」
だが、言い募る早野さんを無視して、芙蓉は言葉をかぶせた。
「そう言うのは悪いけど」
「えっ!?」
間、髪を容れずに答える芙蓉に、俺も早野さんもびっくりして芙蓉の顔を見上げる。
それには芙蓉もさすがに驚いたようで、俺の顔を呆れた顔で見ながら、「なんでお前まで」と、ボソッとつぶやいた。
そして、そのまま早野さんに向き直る。
「恋愛ごとに興味ないんだ、面倒臭いし」
そして言葉を一旦区切り、「迷惑だから」と、はっきりと口にした。
あまりにもあっさりとした態度に、部外者の俺の方が動揺してしまう。
「ちょっ…。なに言ってんだよ、芙」
「帰るぞ」
また最後まで言わさずに言葉をかぶせてくる。何なんだこいつは!
早野さんは、真っ赤になって下を向き、ぽろぽろと涙をこぼしている。びっくりとした俺が固まっていると、芙蓉に手を引っ張られた。
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