天使なんかと上手くやれるわけがない

らいち

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天使と悪魔

積極的な早野さん

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「お願いがあるんですけど」

そう言って、早野さんがにっこり笑った。
そのお願いを断れなかったのは、お人良しすぎる俺のせいだ。…だから悪魔失格なんだよ…。


というわけで今、俺と芙蓉が同居するマンションのリビングに、早野さんが嬉しそうにちょこんと座っている。
案の定早野さんを見つけた芙蓉が俺をリビングの隅に引っ張って、困惑気味に俺を睨んだ。

「どういうつもりだ、家にまで連れてきて」
「諦められないって頼まれたんだよ」

俺は早野さんに聞かれないように、ボソボソと芙蓉に訴えた。
だけど俺の気遣いを芙蓉は一掃し、くるっと向きを変えて早野さんの下に歩き出した。

「帰ってもらう」
「ええ!?」

俺の困惑などさらっと無視して、芙蓉は早野さんに話しかけた。

「早野さん」
「芙蓉!」

何とか芙蓉の冷たい言葉を止めなければと焦る俺。だけどそんな状況を把握していない早野さんが芙蓉を見て、「あ」って顔をする。

「ボタン」

へ? と、思って早野さんを思わず見つめる。
早野さんの視線は、芙蓉のシャツの袖口を見ていた。

「ボタン、取れかかってますよ」

その言葉に、芙蓉と俺はシャツの袖を見つめた。

あ、ほんとだ。取れかけてる。几帳面な芙蓉にしては珍しい事だ。

「貸して下さい。付け直します」
「いい」

これも、即答だった。だけど、今度は早野さんも臆することなく言葉を続ける。

「遠慮しないでください。得意なんです。こういう事」

ニコッと笑って、芙蓉に手を差し出した。
だけど笑いかけられた芙蓉はますます表情を無くして、まるで能面のようだ。

「このまま付けるのか? それとも脱げって?」

冷たい言葉に早野さんの表情が強張った。俺もびっくりして固まる。

「ご…ごめんなさい」

早野さんは真っ赤になって俯いてしまった。今にも泣きそうな表情だ。

「おい、芙蓉」

女の子泣かせて良いのかよ。
何とかしろよとおろおろしていると、芙蓉は片手で顔を覆いため息を吐いてリビングを出て行ってしまった。

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