天使なんかと上手くやれるわけがない

らいち

文字の大きさ
15 / 44
天使と悪魔

やっぱりヤな奴!

しおりを挟む
マンションに帰って部屋に入った俺は、意外な光景に目を点にする。リビングには、無表情でまるで人形のように正座している、早野さんの姿があった。

「え!?  何あれ」
「あいつに、操られてたんだよ」

あいつ…?って、まさかユウマ?
びっくりして芙蓉を見上げると、言外にそうだと頷いた。

「俺をこの子に靡かせて、お前を邪魔に思わせたかったんだろ」

そして、芙蓉は早野さんをじっと見た。

『出ていけ』

先ほどユウマにしたように、あの冷たい声で命令した。すると早野さんは黙って立ち上がり、玄関に向かって歩いていく。

「えっ? えっ?」

動揺する俺の目の前を通り過ぎ、早野さんは玄関を出て行ってしまった。完全に芙蓉に動かされている。しかも自分の意志がない。

「だ、大丈夫なのか、あれ」

さすがに心配になって芙蓉に聞くと、表情も無く俺を見る。

「すぐ正気に戻る」


「ええ~!? 何、ここどこ! 何で私、こんなとこいるの~!?」

玄関の外から、パニックになり大声で叫ぶ早野さんの声が聞こえてきた。

「そう言う事だ」

想像を超えるあまりの出来事に、俺はぽかんとするしかなかった。今日は芙蓉に驚かされてばかりいる。

何だかなーと、脱力していると、隣の芙蓉が俺の顔をじっと見つめていた。

芙蓉には助けてもらってばかりだ。ドジでお荷物な俺が対等になりたいだなんて、恥ずかしすぎてとても口になんて出来やしない。

「よ…、良かったのかよ? あの子…可愛かっただろ。芙蓉だって満更でも無かったんじゃないのか?」
「はあ?」

芙蓉は心底呆れたような声を出した。
そして俺の額を親指でグイッと押し、顔を上げさせ真正面から俺を見た。

「お前以外に、俺が気を向けるわけないだろう」

え!?

―――お前には渡さない

あの時、ユウマに告げた言葉を思い出してしまった。

「ふ、芙蓉…」


これって、もしかして少しは自惚れても良いのか? 芙蓉も俺のこと友達だって、思ってくれてるって…。

期待に胸を膨らませて芙蓉を見ていると、芙蓉がまた、いつもの思い出し笑いをしやがった。

「お前、ほんっとドジだからな。見張ってなきゃヤバいだろ」


前言撤回!! やっぱこいつはヤな奴だー!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...