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千年に一人の逸材
とっくに認めてる
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…最悪だ。目覚めると、俺は檻の中だった。
「俺が何したってんだ! てめぇ、この野郎、出しやがれ、くそったれー!」
さっきから何度も大声で喚き散らしているけれど、誰も様子を見に来る気配すらない。
あの時焦ったように俺の腕を掴んでくれた芙蓉の姿すら、ここには無かった。
「あ~あ」
もうため息しか出てこない。
せめて俺が悪魔らしい悪魔だったら、魔力を使ってここから出る事だって出来るのだろうけれど、悲しいかな、俺にはそんな微々たる力すらなかった。
魔界では家族からも見捨てたれるような存在だったのに、どういうわけか天界で牢屋に入れられている。
あまりにも理不尽すぎて、泣けてくるんですけど…。
いじけて膝に顔を埋め小さくなっていると、空気がわずかに揺れた。そっと顔を上げると、申し訳なさそうな顔をした芙蓉が立っていた。
「悪かったな。こんなはずでは無かったんだけど」
「あいつ、何で俺なんかを連れてきたわけ? 芙蓉は俺のせいじゃないって、ちゃんと否定してただろ」
「…そうなんだけどな。俺が今、一番興味を持っている生き物って事が引っ掛かっているみたいだ」
「興味…。そういやお前、俺の事いっつも観察してたもんな」
まったく情けない話だ。俺が出来損ない過ぎて興味を持たれて、あげくこんな所に閉じ込められて…。
それもこれも、俺が悪魔らしく無いせいなんだよな。
「絶対出してやるから」
「…え?」
「お前はこんな所に監禁される謂れなんかないんだ。それは俺が良く知っている。だから俺を信じて待っていて欲しい」
苦しげに、だけど真剣な顔をして芙蓉が俺を見つめている。
芙蓉は言いたくない事は言わないけれど、嘘は吐かない奴だ。だからきっと行き当たりばったりの嘘ではないだろう。
だけどその真剣さが逆に俺を不安にさせた。
芙蓉を心配していられる立場ではないが、もしかしたら俺のために、残りたくもない天界に留まる事すら考えているんじゃないだろうか。
「ああ、それは無いから」
「へ?」
俺、何も言ってないんですけど…。
「お前は考えてることが、顔に出るからな」
こんな時なのに楽しげにからかわれて、ムッとした。そんな俺を苦笑いで流して、芙蓉は先を続けた。
「俺はたとえ誰に何を言われようと自分の信念を曲げる気はない。ましてや友人を盾に言う事を聞かせようとするなんて、言語道断だ」
「…友人…」
もしかしてそれって、俺の…?
「なんて顔してるんだよ」
「えっ、いや、だってその…」
なんて顔って、どんな顔だ?
てか、どんどん顔が熱くなってきてるんだけど!
「…初めて会った時、変な奴だと思って興味を持った。そして一緒にいるうちに、悪魔のくせに不器用で純粋で、危なっかしくて目が離せない奴だと思った。ホント、不思議な奴だよお前は」
「芙蓉…」
「紫温の事は、とっくに認めてるよ。俺は、ずっと友達だと思っていたけどね」
俺は芙蓉の意外な言葉にますます顔が熱くなった。俺が友達になりたいと思って落ち込んだりしている時に、もう既に芙蓉の中では友達認定されていたなんて!
真っ赤な顔をしている俺の顔を見て、芙蓉が楽しそうに笑う。
「悪かったな。お前からかうと良い反応するから、つい楽しくて」
「芙蓉…」
「とにかく、絶対ここから人間界に戻るから、俺を信用してもう少し待っていてくれ」
「分かった」
芙蓉の事を信頼して頷くと、それが伝わったのか一瞬優しく微笑むと、片手を上げて俺の視界からすうっと消えて行った。
「俺が何したってんだ! てめぇ、この野郎、出しやがれ、くそったれー!」
さっきから何度も大声で喚き散らしているけれど、誰も様子を見に来る気配すらない。
あの時焦ったように俺の腕を掴んでくれた芙蓉の姿すら、ここには無かった。
「あ~あ」
もうため息しか出てこない。
せめて俺が悪魔らしい悪魔だったら、魔力を使ってここから出る事だって出来るのだろうけれど、悲しいかな、俺にはそんな微々たる力すらなかった。
魔界では家族からも見捨てたれるような存在だったのに、どういうわけか天界で牢屋に入れられている。
あまりにも理不尽すぎて、泣けてくるんですけど…。
いじけて膝に顔を埋め小さくなっていると、空気がわずかに揺れた。そっと顔を上げると、申し訳なさそうな顔をした芙蓉が立っていた。
「悪かったな。こんなはずでは無かったんだけど」
「あいつ、何で俺なんかを連れてきたわけ? 芙蓉は俺のせいじゃないって、ちゃんと否定してただろ」
「…そうなんだけどな。俺が今、一番興味を持っている生き物って事が引っ掛かっているみたいだ」
「興味…。そういやお前、俺の事いっつも観察してたもんな」
まったく情けない話だ。俺が出来損ない過ぎて興味を持たれて、あげくこんな所に閉じ込められて…。
それもこれも、俺が悪魔らしく無いせいなんだよな。
「絶対出してやるから」
「…え?」
「お前はこんな所に監禁される謂れなんかないんだ。それは俺が良く知っている。だから俺を信じて待っていて欲しい」
苦しげに、だけど真剣な顔をして芙蓉が俺を見つめている。
芙蓉は言いたくない事は言わないけれど、嘘は吐かない奴だ。だからきっと行き当たりばったりの嘘ではないだろう。
だけどその真剣さが逆に俺を不安にさせた。
芙蓉を心配していられる立場ではないが、もしかしたら俺のために、残りたくもない天界に留まる事すら考えているんじゃないだろうか。
「ああ、それは無いから」
「へ?」
俺、何も言ってないんですけど…。
「お前は考えてることが、顔に出るからな」
こんな時なのに楽しげにからかわれて、ムッとした。そんな俺を苦笑いで流して、芙蓉は先を続けた。
「俺はたとえ誰に何を言われようと自分の信念を曲げる気はない。ましてや友人を盾に言う事を聞かせようとするなんて、言語道断だ」
「…友人…」
もしかしてそれって、俺の…?
「なんて顔してるんだよ」
「えっ、いや、だってその…」
なんて顔って、どんな顔だ?
てか、どんどん顔が熱くなってきてるんだけど!
「…初めて会った時、変な奴だと思って興味を持った。そして一緒にいるうちに、悪魔のくせに不器用で純粋で、危なっかしくて目が離せない奴だと思った。ホント、不思議な奴だよお前は」
「芙蓉…」
「紫温の事は、とっくに認めてるよ。俺は、ずっと友達だと思っていたけどね」
俺は芙蓉の意外な言葉にますます顔が熱くなった。俺が友達になりたいと思って落ち込んだりしている時に、もう既に芙蓉の中では友達認定されていたなんて!
真っ赤な顔をしている俺の顔を見て、芙蓉が楽しそうに笑う。
「悪かったな。お前からかうと良い反応するから、つい楽しくて」
「芙蓉…」
「とにかく、絶対ここから人間界に戻るから、俺を信用してもう少し待っていてくれ」
「分かった」
芙蓉の事を信頼して頷くと、それが伝わったのか一瞬優しく微笑むと、片手を上げて俺の視界からすうっと消えて行った。
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