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第四章
通勤ラッシュ
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「ところで、君はここから大学に通うのか?」
「……はい。でもその前に、高遠さんと一緒に会社に行きます」
「……一緒に? なんでだ?」
「あ……、の。それは……」
どうしよう、なんて言い訳すれば良いんだろう。まさかお父様が高遠さんを殺そうとしているだなんて、そんなことが言えるわけはないし。
「とにかく! そうさせてください。それから帰りは迎えに参りますから、何時ころに会社を出るのか連絡してください」
「……桐子?」
……ああ、やっぱり、変な子だと思われている。もしかしたら振られて変になって、ストーカーに変貌したと思われちゃったかもしれない。
でも、……それでも構わない。高遠さんを助けられるのなら……。
「嫌だと言ったらどうするんだ?」
……教えてくれなかったら? その時は会社に五時までには着くようにして待ち伏せるだけだ。それくらいのことなら、出来るような気がする。
私がそんなことを考え込んでいると、高遠さんがため息を吐いた。
「……分かった、連絡する。だから会社の前で五時から粘ろうだなんて考えないでくれ」
「え!?」
どうしてわかったの? 私って、そんなに考えていることが顔に出るタイプなのかしら。
「君は本当に、どうしようも無い子だな」
呆れかえっているような口調に、本当に私のことを子供扱いしているのだと気づかされてしまった。もしかしたら、それで私なんかとは付き合いきれないって、そう思われたんだろうか。
そう考えると悲しくなってしまうけれど、だからと言って今は悲しんでばかりではいられない。この先どうすれば本当の意味で高遠さんを助けることが出来るのか、もっとちゃんと考えないといけないのだ。
朝食を食べ終わり支度を済ませて、高遠さんと二人で駅へと向かう。当然の事なのだろうけれど、駅には学校へ登校する人や会社に通勤する人たちが押し寄せていて、ごった返していた。
「凄い人……」
思わず零れた私の本音に、高遠さんが笑いながら尋ねた。
「桐子は、通学に電車を使ったことは無いのか?」
「あ……、はい」
「そうか、だよな」
「…………」
私は小学校の時から高校まで、ずっと家の運転手を務めてくれている萩野さんに車で送り迎えをしてもらっていた。だけど私の通っていた学校では、車での送迎をしてもらっていた人はほんのわずかで、だんだんそれが目立った行動に思えてきて恥ずかしくなっていた。
だから大学に合格した時に、大学には徒歩で通学する旨を両親に伝えたのだ。
最初は萩野さんを始めみんなに心配されたのだが、幸いにも大学への通学路は明るく、整備され人通りの多い場所だけだったので、何とか了承をしてもらえたのだ。
「ほら、乗るぞ」
電車がやってきて、みんながぞろぞろと動き出す。ホームで待つ人の多さもそうだけど、電車の中の凄い混みように私は唖然とした。
通勤時間帯は地獄だとか聞いたことがあるけれど、本当だったのね……。
人の波にぎゅうぎゅうと押されるしかない私の腕を、高遠さんがなんとか引き寄せてくれて隅の方に誘導してくれた。そして私をかばうように壁に両手をついて、小さな空間を作ってくれる。
「……すみません、高遠さん」
「……そうだな。明日から、俺についてくるのは止めにするか」
「それは、出来ません!」
キッパリと、間、髪を容れずに叫ぶように返事をすると、高遠さんは苦笑した。
「仕方がない人だな。……じゃあ、明日は十五分くらい早めに家を出よう。そうすれば、もう少し楽に行ける。出来るか? 今日より早く起きて支度をしないといけないぞ?」
「頑張ります」
キリッと顔を上げて返事をしたら、高遠さんに楽しそうに笑われた。
す。
「……はい。でもその前に、高遠さんと一緒に会社に行きます」
「……一緒に? なんでだ?」
「あ……、の。それは……」
どうしよう、なんて言い訳すれば良いんだろう。まさかお父様が高遠さんを殺そうとしているだなんて、そんなことが言えるわけはないし。
「とにかく! そうさせてください。それから帰りは迎えに参りますから、何時ころに会社を出るのか連絡してください」
「……桐子?」
……ああ、やっぱり、変な子だと思われている。もしかしたら振られて変になって、ストーカーに変貌したと思われちゃったかもしれない。
でも、……それでも構わない。高遠さんを助けられるのなら……。
「嫌だと言ったらどうするんだ?」
……教えてくれなかったら? その時は会社に五時までには着くようにして待ち伏せるだけだ。それくらいのことなら、出来るような気がする。
私がそんなことを考え込んでいると、高遠さんがため息を吐いた。
「……分かった、連絡する。だから会社の前で五時から粘ろうだなんて考えないでくれ」
「え!?」
どうしてわかったの? 私って、そんなに考えていることが顔に出るタイプなのかしら。
「君は本当に、どうしようも無い子だな」
呆れかえっているような口調に、本当に私のことを子供扱いしているのだと気づかされてしまった。もしかしたら、それで私なんかとは付き合いきれないって、そう思われたんだろうか。
そう考えると悲しくなってしまうけれど、だからと言って今は悲しんでばかりではいられない。この先どうすれば本当の意味で高遠さんを助けることが出来るのか、もっとちゃんと考えないといけないのだ。
朝食を食べ終わり支度を済ませて、高遠さんと二人で駅へと向かう。当然の事なのだろうけれど、駅には学校へ登校する人や会社に通勤する人たちが押し寄せていて、ごった返していた。
「凄い人……」
思わず零れた私の本音に、高遠さんが笑いながら尋ねた。
「桐子は、通学に電車を使ったことは無いのか?」
「あ……、はい」
「そうか、だよな」
「…………」
私は小学校の時から高校まで、ずっと家の運転手を務めてくれている萩野さんに車で送り迎えをしてもらっていた。だけど私の通っていた学校では、車での送迎をしてもらっていた人はほんのわずかで、だんだんそれが目立った行動に思えてきて恥ずかしくなっていた。
だから大学に合格した時に、大学には徒歩で通学する旨を両親に伝えたのだ。
最初は萩野さんを始めみんなに心配されたのだが、幸いにも大学への通学路は明るく、整備され人通りの多い場所だけだったので、何とか了承をしてもらえたのだ。
「ほら、乗るぞ」
電車がやってきて、みんながぞろぞろと動き出す。ホームで待つ人の多さもそうだけど、電車の中の凄い混みように私は唖然とした。
通勤時間帯は地獄だとか聞いたことがあるけれど、本当だったのね……。
人の波にぎゅうぎゅうと押されるしかない私の腕を、高遠さんがなんとか引き寄せてくれて隅の方に誘導してくれた。そして私をかばうように壁に両手をついて、小さな空間を作ってくれる。
「……すみません、高遠さん」
「……そうだな。明日から、俺についてくるのは止めにするか」
「それは、出来ません!」
キッパリと、間、髪を容れずに叫ぶように返事をすると、高遠さんは苦笑した。
「仕方がない人だな。……じゃあ、明日は十五分くらい早めに家を出よう。そうすれば、もう少し楽に行ける。出来るか? 今日より早く起きて支度をしないといけないぞ?」
「頑張ります」
キリッと顔を上げて返事をしたら、高遠さんに楽しそうに笑われた。
す。
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