あなたが嫌われ者でも好きなんです

らいち

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逃げてもいい時だってあるよね

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まあ、いいや。もう帰ろう。
乗り気じゃないのに断れず、ノコノコやって来た私が悪い。

広美さんには明日にでも学校で謝ろう。そして城田君とは付き合えないってちゃんと言うんだ。
そう思ったら、やっと気持ちを切り替えることが出来た。

私は駅へと向かい、そのまま自宅に帰った。


「ただいまー」

玄関で靴を脱いでいると、お母さんが心配そうにやって来た。

「どうしたの? 早いわね。今日はお友達と水族館に行ってきたんでしょ? もしかして具合でも悪くなった?」

そう言いながら、熱を計ろうとお母さんが額に手を伸ばしてきた。
私はお母さんの心配性を察し、笑って否定する。

「ううん、大丈夫。日曜日のせいか凄い人だったから、早めに切り上げて帰って来ただけだよ」
「そうなの?」
「うん。私も人込み苦手だけど、一緒に行った子も苦手なんだって」

私の適当な言い訳に、お母さんは不思議そうな顔をしながらも、なんとか納得してくれたようだった。

「じゃあ、おやつにしましょうか。ホットケーキ焼くわ。食べるでしょう?」
「うん、じゃあ着替えてくる」


自室へと向かう階段を上りながら、涙がじわじわと溢れて来た。
普段通りのお母さんとの会話で、今まで気を張り我慢していた緊張の糸が、ぷつりと切れてしまったようだった。

部屋に入り、ベッドの上に腰かけてティッシュを手に取る。馬鹿みたいに溢れ出てくる涙を拭いながら、私はしばらく動けないでいた。


どのくらいぼんやりしていただろう。
不意にカバンの中からLINEの通知音が鳴り響く。
一瞬びっくりして飛び上がった後、苦笑して、立ち上がりカバンの中から携帯を取り出す。

誰だろうと確認すると、広美さんから怒りのメッセージが入っていた。

『健一郎から聞いた。突然帰るなんて酷くない?』

スタンプも無いシンプルすぎる文章で直球を投げられ、冷っと心臓が一瞬にして凍り付いたような気がした。
何と返事をしたらいいのか迷ったけれど、スルーする方が余計に印象を悪くしてしまいそうだ。

『やっぱり私には男の人と付き合うのは無理みたい。気にかけてもらったのにごめんね』

ふうっと一息吐いて返信する。

そのタイミングで、下からお母さんにホットケーキが焼けたと呼ばれたので、スマホをベッドの上に放り投げて私は階下に降りて行った。
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