不思議な縁に導かれました

第二章

ごみ屋敷と高科さん 3

　ぐうぅ～。
　お腹空いた～。

　酷い空腹感に見舞われてハッとした。電気を点けていたので気が付かなかったけど、辺りはもう暗くなっている。慌てて時間を確認すると、もう七時前になっていた。

「高科さん、高科さんどこですか？」

　電気の点いていないリビングは、薄暗い。私は、床を未だに覆ったままになっている様々な物を踏まないように気を付けながら歩いた。

　ペタンペタンと階段を下りてくる足音がして、高科さんが姿を見せる。

「部屋は片付いたのか？」
「全部じゃないですけど、とりあえず布団が敷けるようにはなりました」
「そうか、それは良かった」
「はい。それであの、ご飯の支度をしたいのですけど、お米とか野菜とかは……、無いですよね？」
「無いな」

　わかってはいたけど、当然のように返事をされて力が抜けた。片付けに入る前に、スーパーの場所を聞いておけばよかった。

「近くに弁当屋があるから買ってくる。ついでに明日の朝食用に食パンでも買ってこよう」
「あ、それでしたら、ええっと、カップスープの素も買って来てくれませんか？　それとお米も」
「……カップスープに米か。わかった」

　本当は朝食用には卵やバター、それにレタスやキュウリも頼みたかったけれど、高科さんを混乱させてしまいそうなので止めにした。

　財布と鍵を持って出かける高科さんに手を振って、部屋の掃除の続きを始める。リビングの片隅に掃除機が埋っているのが見えたので、引っ張り出して掃除機を掛けた。

　自分の部屋だけは、しっかり片付けることが出来たな。後は……。

　リビングに広がる服やチラシや本に空き箱。どれが必要で、どれがゴミなのかも分からない。勝手に判断するわけにはいかないから、とりあえず床に落ちている服だけを拾い集め洗濯籠に入れる。

　服といえば……。ソファーの上にも不自然に積まれているんだよね。あれはもしかして、洗濯済みの物なんだろうか？
　手に取って匂いを嗅いでみた。
　あ、洗濯済みのいい匂いだ。これは後でアイロンを掛けておこう。

「あっ！」

　突然大事なことを思い出してしまった。大体こういう汚部屋の人の台所って、汚いと相場が決まっている。

　ぴょんぴょんと物を踏まないように台所へと向かいシンクを見ると、想像通りの汚れ具合に、私はげんなりと肩を落とした。
　ただ幸いと言っていいのかは分からないけれど、高科さんは自分で料理をしない人なので、汚れたまま放置された食器や鍋などは一切無かった。

　シンク下の棚を見てみると、それなりの洗剤などはちゃんとあった。おそらく従兄夫婦の使い残しなんだろう。あちこちの引き出しを探しスポンジを発見したので、高科さんが帰って来る前に奇麗にしてしまおうと、袖まくりをした。