不思議な縁に導かれました

らいち

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第二章

ざわめく周囲

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 家に戻ってからも高科さんは、少し様子が違っていた。時々思い出したようにふと立ち止まり、そして辺りを見回す。いつもと違う視界の広さに、時々戸惑い感心しているようにも見える。

 だけど高科さん以上に戸惑っているのは私の方だった。
 だって……、だって同じ家の中に、あんな並外れたイケメンがいるんだよ? 意識するなって言う方が無理だよ。

「白山さん」

 ドキッ。
 ちょっと、ドキッて何よ。ドキッて。

「白山さん?」
「あっ、はあい!」

 もう、呼ばれただけでドキドキするなんて!

「何ですか、高科さん」

 近い場所から真っ直ぐ目と目が合うと、それだけで心臓が煩くなる。

「葉書きを見かけなかったか?」
「葉書きですか? それはどういう?」

「恩師からだいぶ前に届いた、暑中見舞いだ。大学時代の友人から連絡があって、連絡先を知りたいと言って来てな。それで以前暑中見舞いをもらったことを思い出して、あちこち探して見つけたはいいんだが……、いつもの癖でその辺にぽいっとやったら何処にいったのか分からなくなって」

 いつもの癖って……。そう言えば高科さん、持ってる物あちこちに放り投げるものね。

「私は見てませんけど。失くしたのはいつですか?」
「今朝だ。一緒に探してくれるか?」

 露わになった綺麗な顔が、ちょっぴり情けない顔で懇願している。

「…… っ、わかりました」

 まったく、本当にもう質が悪い。今までの高科さんなら、ぼさぼさ頭だったから可愛いというか手が掛かる困った人だと思うだけで済んだのに。別の要素が入り込んでくるから、どう思っていいのか混乱する。

 とにかくさっさと暑中見舞いを探してしまおうと、適当に散らかり始めたリビング内を片付けながら探し始めた。散らかっている新聞やチラシをまとめ所定の場所に置き、放りっぱなしになっているジャケットをハンガーに掛け靴下を洗濯かごに放り投げた。

 あれ? 葉書きなんてどこにも無いけど。
 きょろきょろとあたりを見回すと、高科さんと目が合った。

「無いだろ?」
「……無いですね。この部屋ですか? 勘違いじゃなくて?」
「それは無い。ここに持って来たのは確かだ」

 そう言って真正面から高科さんは、私の目をしっかりと見つめた。おかげで心拍数がまた上がる。

 だから、私は綺麗な男の人の顔に慣れてないんですってば!

「白山さん?」
「……っ、わかりました! しっかり探します!」

 もう、本当に! 不公平じゃないの? 私ばっかりこんなにドキドキしちゃって!

 自棄になって、こんな所になんか落ちていないだろうと思う所まで隅々調べた。テレビの裏側とか、窓際や部屋の隅まで。

 やっぱり無いなあと思いながら、ひょいとソファの下を覗いたら白い四角い紙が見えた。

「ありました!」

 意気揚々と暑中見舞いを手に持ち叫ぶと、高科さんが満面の笑みでこちらに近寄って来る。

「さすが白山さんだ、ありがとう!」 

 高科さんは私から葉書きを受け取って、ポンポンと、よくやったと言いたげに私の両腕を叩き、嬉々として自室に戻って行った。

 背が高くモデル張りのスタイルで、おまけに綺麗な顔の高科さんにそんなことをされて、イケメン慣れしていない私はポケッと固まった。そして高科さんの姿が消えてから、見事にへなへなと崩れ落ちてしまった。

 なんと言うイケメンの破壊力!

「どうしよう。こんなんで私、大丈夫かな……」

 髪を切るよう勧めたのは私だけど……。ドッと疲れたよ。
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