たとえ神様に嫌われても

らいち

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引き裂かれる心

大石君のいない帰り道 3

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「木原、嬉しそうだったな」
 
自分や大石君のことでは無く、千夏ちゃんの話題を振ってくれたのでちょっぴりホッとした。

「うん。千夏ちゃんだけあたしたちの家と逆方向だから、校門ですぐバイバイしちゃうのが寂しかったんじゃないかな」
「あー、なるほどな。女子ってお喋りだもんなあ。俺の姉貴もスゲーお喋りでさ、お袋と2人で気が付くとずっとくっちゃべってて、スッゲうるせぇの」

「あはは。なんか耳が痛いなー。まあ、女の子にとってのお喋りは、ストレス解消も担ってるからね」
 
先ほどの店の中での会話と変わらず、終始当たり障りのない他愛のない会話が続いた。おかげであたしもリラックスして津山君との話を楽しめた。
 
気が付いたらもう家の前まで来ている。そのことを伝えようと津山君に向き直った時、空を走る光が視界に入った。

「……?」
 
その光方が気になって目を凝らして宙を見る。
だけど見間違いだったのか、どんなに探してもどこにも光る物は見つけられなかった。

「どうした?」
 
あたしの行動を不思議に思ったのか、津山君も空を見上げた。

「あ、なんでもないの。あそこ、あたしの家」
「そうか……」
「じゃあ……」
 
また明日と続けようと右手を上げた途端、その手をガッとつかまれた。びっくりして顔を上げようとしたらいきなり引っ張られ、隣の家との間の狭い路地に連れ込まれてしまった。

「つや……」
 
突然強い力で抱きしめられて頭の中が真っ白になった。

「好きだ……! 好きなんだ……っ。大石なんかに先を越されたくなんかなかった……」
 
突然豹変し、切羽詰まったような真剣な告白に嫌な緊張が全身を走る。

「嫌っ。ヤダ、止めて。離してっ!!」
 
必死で津山君の体を離そうと彼の腕を掴んで押しのけようとする。だけどどんなに引っ張っても揺すってもびくともしない。
少しでも体を離そうと体を捩じると、顎を捕まえられ上向かされた。

「や……っ。止め……」
 
怖いくらいの必死な形相に慄いた。
その時、身じろぐように津山君が足を少し動かし、それがあたしの足にコツンとぶつかりハッとする。
 
我に返ったあたしはぶつかった足をサッと上げ、思いっきり勢いよく下にある津山君の足を踏んづけた。躊躇する余裕なんかなかったので、体重以上の力が加わったはずだ。

「……つ~っ」
 
一瞬、顔を痛みに歪ませて、津山君が蹲る。
あたしはようやく自由になった体をギクシャクと動かし、慌てて身を翻し家へと逃げ込んだ。
 
靴も脱がずに玄関でしゃがみこみ、体を震わせる。
 

……怖かった。
まさか、津山君があんな事をするなんて……。


体を震わせて深呼吸をする。

気持ちを落ち着かせようと、何度も何度も腕をさすった。
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