たとえ神様に嫌われても

夏休み

別荘への誘い

夏休みもあと一週間と迫りみんなが浮かれ始めた頃、真奈美がため息を吐いた。

「あ～あ、いいよねぇ。みんなは」
　
真奈美の珍しい投げやりな言葉に、あたしと千夏ちゃんは首を傾げる。

「さっきからため息ばっか吐いて、どうしたの？」
「家庭教師……」
「へ？」
「家庭教師つけるって言われたの、全然勉強しないからって！」
「それは……」

「分かってるよ。お前が悪いって言いたいんでしょ？　うちは姉ちゃんも兄ちゃんも頭良すぎて、勉強しなくてもいい点数取ってくるから……。つられて遊んでたら、このざまだよ……」

「……真奈美……」
　
どんなスケジュールを立てられているのか、真奈美のあまりの嫌がりようにちょっと気の毒になる。どうやって宥めてあげようかと考えていたら、彼女は急に顔を上げた。

「あー、もう！　急に修学旅行とか有ったりしないかな。そしたらその間だけでも堂々と休めるのに！」
　
拳を握りしめ絶叫する真奈美に、千夏ちゃんと２人で呆れる。
３人でため息をついていると、後ろから笑い声が聞こえてきた。

「むちゃくちゃだな、お前。契約しちゃったんなら、諦めるしかないだろ」

「それは、そうだけど……。もう、慰めようって気は無いわけ？　ホント大石君って、いづみ以外には優しくしようっていう気、全然ないよね」

「……そんなことは無い。努力はしている」
　
ちらっと、大石君があたしを横目で見た。

……うん。分かってる。
　
大石君はあの日あたしの元に戻ってきてくれてから、あたしに係る色々な事を流すように努力してくれている。
あたしの事に関してはかなり狭量だと言っていた通り些細な事でムッとしてしまうようだったけど、ちゃんとその気持ちをあたしに話してくれるようになってきてるんだ。
　
２人でいる事を大石君も選んでくれたんだとそう思えて、あたしは素直に嬉しいと思っている。

「良ければ小田たちも、別荘に行く？」
「え？」
　
いつの間に来たのか、平林君が真奈美の背後に立っていた。