たとえ神様に嫌われても

ただ一人の為に

これからの始まり

気が付いたらベッドの上だった。

視線を動かした先に、心配そうな大石君の顔が映る。


どうしたの？　
何をそんなに心配そうな顔をしているの？　
大石君……。


ぼんやりとしていた頭がだんだんクリアになってくると同時に、自分が今置かれている状況を思い出した。

人間界に決別して、皆の記憶から消えたこと。
そして魔界に入る為にサモンと儀式を受けたこと……。


あ、儀式……。
大石君……。


「大石君……。覚えてる。あたしちゃんと覚えているよ……！」

サモンはあたしの言葉に目を見開き、思いっきり強く抱きしめた。
そして額に瞼に頬へと、口づけの雨を降らす。


「良かった……。良かった、いづみ」
　
安堵の息が耳にかかる。
それに、「ん……」と、甘い声を漏らしてしまって恥ずかしさに顔が熱くなった。
　
彼はそんなあたしを愛おしそうに眺めて、そのままあたしに覆いかぶさってくる。
　

甘く疼くような重みに、心も体も解けていった。




窓からは、まるで２人の前途を祝福するかのように優しい陽射しが差し込んでいる。



そう。
あたしたちは変わらない。変わってはいけないんだ。




だって、人間だったあたしが大石君と出会って恋に落ち、そこから２人は始まったのだから……。


―完―