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「うぉぉぉぉっぉおお!!!!」
(うわ!? ビックリした)
気持ちの昂りを体の中に抑えられず、心のままに咆哮を上げる。ついでに火柱も上がったがご愛嬌だ。
凄い、凄いぜこのポニテ。ボサボサだったイラグリスの神を炎の輪が綺麗にゴールデンポイントで纏めている。
背中を隠すほど大きなポニテ……だけど乱雑さは見られない。美しく、凛々しく、気高いポニテだ!
「最高……ポニテになれるなんて……」
(……手騎が言っておる“ポニテ”とはなんじゃ?)
「知らないのか? 馬の尻尾を模した髪型の事だよ、これこれ」
(ぬ……妾の尻尾が馬とな!?)
指を指して伝えると、彼女は急に声量を上げて怒り出した。
「次はこっちが驚いたぞ!?」
(馬などと同格にしてもらっては困るッ!)
「じゃあなんだって言うんだよ、ポニテはポニテだろ!?」
(違うのじゃ! ドラゴンじゃ!)
「……は?」
(馬の尻尾を模してポニーテールを呼称するのであれば、妾の尻尾ならばドラゴンテールと名付けよ!)
な……何を言っているんだ、この幼女。
言いたい事の意味がわからない。ポニテはポニテだろうが、例え大きくとも、小さくともポニテ、そこに異論は認めない。
それにさっきから自分の事を龍だのドラゴンだの……どっからどう見ても幼女だろ!?
(今はこの姿故、呼びにくいかも知れぬが馬と同格にされてはプライドが傷付く。即刻訂正せよ!)
「あぁ? ポニーテールが蔑称だと言うのか!?」
(妾にとってはそうなのじゃ! 龍ぞ? ドラゴンぞ?)
「ど・こ・が・だ・よ!! どっからどう見ても幼女じゃねーか!」
(ぐぬぬ……————ッ手騎! 14時の方向に攻撃じゃ!)
「14時!? ッ、うぉあ!?」
ポニテ論争をしていると、体制の整った化け物は俺達に向かって攻撃を仕掛けて来ていた。直撃寸前、回避する事は不可能だと思ったが変身する前とは打って変わって奴の一撃がスローモーションのように見える。
「腕、燃えた筈じゃ!?」
消し炭になった腕がしっかりと元どおりになっている事に気がつく余裕もあった。
反射神経はかなり上がっているようだ。
受け止めるよりも回避する方が無難だと考え、低く屈み全力で地面を蹴る。
「ッ————うぉ、高けぇ!!」
(そうじゃろそうじゃろ、妾が求めておったのはそのリアクションじゃ)
想像以上の跳躍力。そり立っていた壁を大きく飛び越え闇夜に浮かぶ月がはっきりと見えるくらいだ。
反射神経だけじゃない、身体能力も人間じゃ考えられないくらい向上している……これなら!
「ヤレるッ……! ポニテの未来を救う事が、できる!」
(行け、本能のままに!)
「うぉぉぉぉお!!!」
空中で身を半回転させ、神々しい月の光にポニテを揺らし、片足を下に向け叫んだ。
「スぅーパァー!」
(灼熱ぅ!)
「「キィィィぃぃック!!!!」」
結び目になっていた火の輪が変形し、ジェットエンジンのように後方へ炎を射出。一気に加速し螺旋状に渦巻く炎を纏いながら超スピードで化け物の右腕に向かってキックをかました。
「グォぉぉぉッッ!」
「————よし!」
絶叫する化け物、千切れ吹き飛ぶ右手と美女、硬い地面には足が突き刺さった。
宙を舞うポニテを抱きかかえようと即座に視線を移し、目標に向かって飛んだ。
これで救う事が出来た……そう思った時、千切れた腕から繊維のような物が数本伸びている事に気がつく。
「クッ……そ、なんだあれ!?」
繊維は胴体からも伸びており腕の物と繋がると、せっかく千切った腕をくっつけてしまった。多分、イラグリスが燃やした左腕もこの力で修復したのだろう。
「この速度で再生されるとキリがないぞ、イラグリス!」
(イラでよい。なぁに、弱点はわかっておる……)
「ならさっさと教えろよ!」
(しかしな、人質がいる以上動きを止める必要がある。これから放つは必殺の技……じゃからな)
「ちッ、必殺技でソッコー決めるって訳にはいかないってか!」
(それの方が盛り上げるじゃろ?)
「そうだ……な!」
敵の攻撃が迫る。それを掻い潜るように躱し接近。猛攻、だがこの有鱗目にはハッキリと見えている。肉薄する距離————余裕だ。
コンクリートを一撃で粉砕する拳を片腕で受け止め、反対の手についた爪を突き刺した。再び美女は宙に舞い、繊維は修復を始める。
「させるかよ!」
地面スレスレに円を描くように水平蹴りを放ち、太い脚を弾く。
姿勢が崩れた瞬間に爪を振り下ろし繋がろうとする繊維を絶った。しかし、繊維は無限と出てくるのか次よ次よと伸びていく。
人質が離れている刹那の刻————ここで勝負!
「イラ」
(胸部に火の輪ブチ当てろ!!)
「応ッ!」
自然と炎の扱いは身についている。
左手を敵、正面に突き出しグルっと小さく回した。空中に灼熱のリングを出現させ、押し込むようにして化け物の胸部にブチ当てる。
「ギャぉぉお゛お゛!!」
「っ……これだな、弱点は」
リングが体を焼き、体内にある真っ黒な毛玉のような物を露出させた。脈を打ち、人間でいう心臓といった感じだ。
(それを斬れば再生は止まる、やれ!)
「トドメだ————ッ、しまった!」
右手の甲に付いた爪をそれに向けて振り下ろそうとした時、化け物は繊維を自ら引き千切り頭を飛ばそうとしている事に気が付いた。
見える……速度、タイミング、距離……明らかに宙に浮いている美女の事を喰らおうとしている。トドメを優先すれば助けられない……だが、彼女を優先すれば炎を身に纏っていられなくなってしまう。
(構うな! トドメを刺せ!)
「————ッ……!」
イラの言葉が頭に響いた。しかし、俺は化け物を倒したいしポニテ美女も救いたい……どうする、決まっている、だったら!
「必殺ッ!!」
(な、なにぃ!?)
爪を振るう勢いを利用し右足を軸に回転、左足の裏で奴の顔を蹴り飛ばした。横からの攻撃に射線が大きくズレた。
そして……黒い毛玉は回し蹴りの遠心力で振られたポニーテールで斬り裂く!
これが俺の必殺技————
「春風に靡くポニテの香りッ!!!」
「ぐ……ぅぉぉお……ぉッ!!!」
毛玉を真っ二つに斬られた化け物は唸り声を上げ爆発四散。俺は背中を向けたまま落ちてくる美女を両手で受け止めた。
暖かな炎が背中を焼き、俺の勝利を祝福してくれているようだ。決まったぜ。
(……そんなテールの使い方、初めて見たぞ……)
「これがポニテを愛し、ポニテに恋する者の力だ」
(よく分からぬが、ドラゴンテールといっておろうに……まぁよい。手騎は才があるようじゃ、これからも頼むぞ)
「……え?」
(ベガニスクより遅いくる縫合獣を倒す龍騎士になったのじゃ。尻尾聖戦《テール・ラグナロク》の為、これからも戦い続けるのじゃぞ)
「………えぇーーーーー!!!!!」
静かになった広場には絶叫だけが響き渡った。
こうして、俺はなんだかよく分からない事に巻き込まれポニテを救う為、日夜闘い続ける戦士になったのである。
コイツらの戦う理由が分かるのは、もう少し先の事だった。
(うわ!? ビックリした)
気持ちの昂りを体の中に抑えられず、心のままに咆哮を上げる。ついでに火柱も上がったがご愛嬌だ。
凄い、凄いぜこのポニテ。ボサボサだったイラグリスの神を炎の輪が綺麗にゴールデンポイントで纏めている。
背中を隠すほど大きなポニテ……だけど乱雑さは見られない。美しく、凛々しく、気高いポニテだ!
「最高……ポニテになれるなんて……」
(……手騎が言っておる“ポニテ”とはなんじゃ?)
「知らないのか? 馬の尻尾を模した髪型の事だよ、これこれ」
(ぬ……妾の尻尾が馬とな!?)
指を指して伝えると、彼女は急に声量を上げて怒り出した。
「次はこっちが驚いたぞ!?」
(馬などと同格にしてもらっては困るッ!)
「じゃあなんだって言うんだよ、ポニテはポニテだろ!?」
(違うのじゃ! ドラゴンじゃ!)
「……は?」
(馬の尻尾を模してポニーテールを呼称するのであれば、妾の尻尾ならばドラゴンテールと名付けよ!)
な……何を言っているんだ、この幼女。
言いたい事の意味がわからない。ポニテはポニテだろうが、例え大きくとも、小さくともポニテ、そこに異論は認めない。
それにさっきから自分の事を龍だのドラゴンだの……どっからどう見ても幼女だろ!?
(今はこの姿故、呼びにくいかも知れぬが馬と同格にされてはプライドが傷付く。即刻訂正せよ!)
「あぁ? ポニーテールが蔑称だと言うのか!?」
(妾にとってはそうなのじゃ! 龍ぞ? ドラゴンぞ?)
「ど・こ・が・だ・よ!! どっからどう見ても幼女じゃねーか!」
(ぐぬぬ……————ッ手騎! 14時の方向に攻撃じゃ!)
「14時!? ッ、うぉあ!?」
ポニテ論争をしていると、体制の整った化け物は俺達に向かって攻撃を仕掛けて来ていた。直撃寸前、回避する事は不可能だと思ったが変身する前とは打って変わって奴の一撃がスローモーションのように見える。
「腕、燃えた筈じゃ!?」
消し炭になった腕がしっかりと元どおりになっている事に気がつく余裕もあった。
反射神経はかなり上がっているようだ。
受け止めるよりも回避する方が無難だと考え、低く屈み全力で地面を蹴る。
「ッ————うぉ、高けぇ!!」
(そうじゃろそうじゃろ、妾が求めておったのはそのリアクションじゃ)
想像以上の跳躍力。そり立っていた壁を大きく飛び越え闇夜に浮かぶ月がはっきりと見えるくらいだ。
反射神経だけじゃない、身体能力も人間じゃ考えられないくらい向上している……これなら!
「ヤレるッ……! ポニテの未来を救う事が、できる!」
(行け、本能のままに!)
「うぉぉぉぉお!!!」
空中で身を半回転させ、神々しい月の光にポニテを揺らし、片足を下に向け叫んだ。
「スぅーパァー!」
(灼熱ぅ!)
「「キィィィぃぃック!!!!」」
結び目になっていた火の輪が変形し、ジェットエンジンのように後方へ炎を射出。一気に加速し螺旋状に渦巻く炎を纏いながら超スピードで化け物の右腕に向かってキックをかました。
「グォぉぉぉッッ!」
「————よし!」
絶叫する化け物、千切れ吹き飛ぶ右手と美女、硬い地面には足が突き刺さった。
宙を舞うポニテを抱きかかえようと即座に視線を移し、目標に向かって飛んだ。
これで救う事が出来た……そう思った時、千切れた腕から繊維のような物が数本伸びている事に気がつく。
「クッ……そ、なんだあれ!?」
繊維は胴体からも伸びており腕の物と繋がると、せっかく千切った腕をくっつけてしまった。多分、イラグリスが燃やした左腕もこの力で修復したのだろう。
「この速度で再生されるとキリがないぞ、イラグリス!」
(イラでよい。なぁに、弱点はわかっておる……)
「ならさっさと教えろよ!」
(しかしな、人質がいる以上動きを止める必要がある。これから放つは必殺の技……じゃからな)
「ちッ、必殺技でソッコー決めるって訳にはいかないってか!」
(それの方が盛り上げるじゃろ?)
「そうだ……な!」
敵の攻撃が迫る。それを掻い潜るように躱し接近。猛攻、だがこの有鱗目にはハッキリと見えている。肉薄する距離————余裕だ。
コンクリートを一撃で粉砕する拳を片腕で受け止め、反対の手についた爪を突き刺した。再び美女は宙に舞い、繊維は修復を始める。
「させるかよ!」
地面スレスレに円を描くように水平蹴りを放ち、太い脚を弾く。
姿勢が崩れた瞬間に爪を振り下ろし繋がろうとする繊維を絶った。しかし、繊維は無限と出てくるのか次よ次よと伸びていく。
人質が離れている刹那の刻————ここで勝負!
「イラ」
(胸部に火の輪ブチ当てろ!!)
「応ッ!」
自然と炎の扱いは身についている。
左手を敵、正面に突き出しグルっと小さく回した。空中に灼熱のリングを出現させ、押し込むようにして化け物の胸部にブチ当てる。
「ギャぉぉお゛お゛!!」
「っ……これだな、弱点は」
リングが体を焼き、体内にある真っ黒な毛玉のような物を露出させた。脈を打ち、人間でいう心臓といった感じだ。
(それを斬れば再生は止まる、やれ!)
「トドメだ————ッ、しまった!」
右手の甲に付いた爪をそれに向けて振り下ろそうとした時、化け物は繊維を自ら引き千切り頭を飛ばそうとしている事に気が付いた。
見える……速度、タイミング、距離……明らかに宙に浮いている美女の事を喰らおうとしている。トドメを優先すれば助けられない……だが、彼女を優先すれば炎を身に纏っていられなくなってしまう。
(構うな! トドメを刺せ!)
「————ッ……!」
イラの言葉が頭に響いた。しかし、俺は化け物を倒したいしポニテ美女も救いたい……どうする、決まっている、だったら!
「必殺ッ!!」
(な、なにぃ!?)
爪を振るう勢いを利用し右足を軸に回転、左足の裏で奴の顔を蹴り飛ばした。横からの攻撃に射線が大きくズレた。
そして……黒い毛玉は回し蹴りの遠心力で振られたポニーテールで斬り裂く!
これが俺の必殺技————
「春風に靡くポニテの香りッ!!!」
「ぐ……ぅぉぉお……ぉッ!!!」
毛玉を真っ二つに斬られた化け物は唸り声を上げ爆発四散。俺は背中を向けたまま落ちてくる美女を両手で受け止めた。
暖かな炎が背中を焼き、俺の勝利を祝福してくれているようだ。決まったぜ。
(……そんなテールの使い方、初めて見たぞ……)
「これがポニテを愛し、ポニテに恋する者の力だ」
(よく分からぬが、ドラゴンテールといっておろうに……まぁよい。手騎は才があるようじゃ、これからも頼むぞ)
「……え?」
(ベガニスクより遅いくる縫合獣を倒す龍騎士になったのじゃ。尻尾聖戦《テール・ラグナロク》の為、これからも戦い続けるのじゃぞ)
「………えぇーーーーー!!!!!」
静かになった広場には絶叫だけが響き渡った。
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