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ヴォラルの姫
37 復讐
しおりを挟む三十七話 復讐
「ここが盗賊の国であり、私の国ー…ヴォラルですわ。」
ウルゼッタは少し冷めた視線をヴォラルの街に向ける。
ヴォラルは背の高い木々に周囲を囲まれていて、地面は土。
黒めの木造建築が目立ついかにも盗賊や忍。影に生きる者の国って感じだ。
「さぁ、行きますわよナタリー。」
ウルゼッタは先陣を切ってスタスタと歩いていく。
「ちょっとウルゼッタ…っ! 行くってどこに!」
「決まってます。復讐ですわ。」
そういえば何があったのか聞いてなかったな。
私は一体何があったのかをウルゼッタに尋ねようとした…その時だった。
「ーー…え!? なんでウルゼッタ姫がここにいるんだ!?」
街を歩いていた人が驚きながらウルゼッタを指差す。
その声に反応するかのように次々と人が集まってきた。
「ほんとだウルゼッタ姫だ…!」
「なんでここに!?」
「早くどうにかしないと…っ!!」
ーー…なんか散々な言われようだけど。
「まったく…笑っちゃうでしょう。あれが姫である私への態度でしてよ。」
ウルゼッタの背中が細かく震えている。
拳も強く握りしめているのか、手のひらから血が滴っていた。
「く、くそ! よしみんな、姫を捕えるんだ!!」
一人の男が叫ぶ。
「「おおおおおおおおお!!!」」
街の男たちが一斉に私たちに襲いかかってくる。
みんなかなり必死…ものすごい形相だ。
「ね、ねぇ…ウルゼッタ?!」
「ーー…目にもの見せてやりますわ。」
ウルゼッタは深呼吸をしてゆっくり前を見据えて呟く。
「スキル…【魅惑】!!」
ウルゼッタを中心に桃色の風が巻き起こる。
それは花びらのように一気に飛び散って周囲に降り注いだ。
「ーー…!?」
桃色の風を浴びた男たちが一斉に俯き、ウルゼッタに向かって跪く。
皆の目は虚ろで薄く桃色に染まっている。
そしてー…。
「皆さん、私が愛せるのは一人だけ。さぁ、戦いなさい!」
「「うおおおおおおお!!!」」
ウルゼッタの声を皮切りにいきなり乱闘が始まる。
「これが【魅惑】の力ー…。すごいですわ。」
ウルゼッタが小さく呟く。
しかし彼らの中にはウルゼッタの魅惑が効いていない者も。
そういう人たちは乱闘を上手くすり抜けて直接ウルゼッタのもとへ向かってくる。
「何してますの! ほら、行きますわよ!」
ウルゼッタは私の手を引っ張りどこかへ走り出す。
「ちょっと…どこ行くのウルゼッタ!!」
「このままここに居座っていたら捕まってしましますわ! それでは私の復讐が果たせません!」
「復讐ってー…一体なんの!?」
するとウルゼッタは涙を浮かべた目でこちらを振り向く。
「あいつら…自分たちの安寧のためだけに私を生贄として選び、敵に突き出したんですのよ!!」
「ーー…え。」
「詳しくは後! とりあえず【魅惑】が効いているうちにここから離れましょう!」
私はウルゼッタの案内のもと、ヴォラル北の方角にある…廃墟が多く立ち並ぶ地域へと逃げ込んだ。
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