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メイデスの森へ!

161 久しぶりのー…!

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 百六十一話 久しぶりのー…!


 モニカの出した輪っかに勢いよく飛び込んで秘境・エルフの里へ来た私たち。
 すると目の前にはー…


 「ーー…!!?? うわぁ!!!」


 牙を剥き出しにしてグルルと威嚇しているガルフの姿。
 その周りには弓を構えるエルフたちの姿も見える。


 「やめろガルフ! それに皆も! こいつらはアンネの知り合いだ、手を出すことは許さん!」


 アンネが両手を広げ、私たちの前に立つ。





 「しかしアンネ様、そこの人間はわかりますー…が、ハイエルフが何故ここに!!」


 エルフ精鋭部隊の1人がモニカをギロリと睨みながら矢先を向ける。


 「やめろ! お前たちが言いたいことも分かるがモニカはアンネを助けてくれた…かつての友であり命の恩人だ! 手を出すことはアンネが許さん!」

 「ーー…アンネ」


 モニカが背後からモニカの服の裾を掴む。


 「ーー…! 貴様!! ハイエルフの分際でアンネ様に触れるなど…!!!」


 エルフの1人がモニカに向けて矢を放つ。

 ーー…が。


 「クリスタルロック!!」

 「ーー…!!??」


 エルフの1人が弓を引き、手から矢を話すと同時にアンネがクリスタルロックを発動。
 そのエルフは放とうとしていた矢ごと、クリスタルに閉じ込められる。


 「なっ…! アンネ様! これはどういう…!!」

 「姫のアンネに逆らったのだ当然だろう。お前たちもこうなりたくなければその構えている弓をおろせ」


 先ほどの見せしめが効いたのか、エルフたちは不満の表情を浮かべながらも弓を下ろし、地面に置いていく。


 『アンネ姫、よろしいのですか』


 ガルフは未だ牙を剥き出しにしてモニカを睨みつけている。


 「ガルフ、お前には分かるだろう。アンネが小さな頃よくモニカと遊んでいたではないか。」

 『しかしそれはハイエルフとして覚醒する以前の話。ハイエルフとなった今、何をしでかすかわかりませんぞ!』

 「はぁ、もう一度言う。下がれガルフ」


 アンネがガルフの目の前にたち手をかざす。
 

 『ーー…お、仰せのままに』


 皆を静まらせ、アンネはゆっくりとその中心へ。


 「この中で気づいている者がいるかはわからないが、今、メイデスの森が危機にさらされている」


 「それは…あれですか、巨大な男性器を振り回していたー…」

 「違う。あいつはすでにこの人間たちが倒してくれた。その仲間もな。ただ機械人形なる者が今は暴れまわっている」


 『ーー…!? 機械人形…ですか!?」


 大人しくしていたガルフの体がピクリと動く。


 「そうだ。一番長く生きているお前なら分かるか?」

 『はい、機械人形は数千年前、イルーナという国周辺で戦争の道具として使われていた機械式の戦闘人形です。中には家事手伝い専用のそれもいたようですが…』

 「なるほど。ではそれが何故メイデスの森にあった」

 『おそらくは故障したり使えなくなった個体の処分でしょう。私もちゃんと見たわけではありませんが当時、大量の機械人形が土に埋められている光景を見たことがあります』

 
 『ナタリー様、この魔物の言っていることは信用に値します』


 イルレシオンがゆっくりと前へ。ガルフの前に立つ。

 
 『貴殿はー…あの時にいた機械人形か? ー…いやしかしその姿…一体何故』

 『私はイルーナ式機械人形・イルレシオンと申します。あなたが仰っていた攻撃型・防御型とは似て非なる存在』

 『イルーナ式…』

 『はい、私たちイルーナ式はイルーナで極秘に使われていた当時最新鋭の機械人形。その情報は他国に漏れることがなかったのであなたが知らないのも無理はありません』


 
 イルレシオンとガルフが対話をしているとエルフが1人、森の奥から血相をかいて走ってくる。


 「ア…アンネ様! 大変です!!」


 「どうした落ち着け、何があった」

 「よくわからない小さな生物がエルフの森に向かってまっすぐ進行中! このままだと月が昇る頃にはこちらまで…!!」

 「なに!?」


 アンネは報告したエルフのもとへ歩み寄ると機械人形たちが向かってきている方角を尋ねると、エルフたちやガルフをゆっくりと見渡し大きく息を吸う。
 そしてー…


 「聞いたか! この者が言っていた通り、今エルフの里までもが危機に晒されている。今はエルフ・ハイエルフと言ってる場合ではない! 総員、全力で月が昇るまでに万全の準備を整えよ!」


 アンネの言葉に緊張が走る。


 「すみませんアンネ様、その小さな生き物ー…機械人形というのはそれほどに強敵なのでしょうか」


 精鋭部隊の1人が小さく手を上げながらアンネに尋ねる。


 「あぁ、アンネですら命を奪われかけたくらいだからな。気を抜くなよ」

 「か、かしこまりました!」


 アンネの命令を受けたエルフたちが忙しなく動き始める。


 「ねぇ、みんな何やってるの?」

 「今夜始まるであろう戦いの準備だ。弱き者の避難やバリケード、罠の設置ー…やらなければならないことはたくさんある」

 「じゃあ私たちもなんか手伝おっか?」

 
 なんか忙しそうだし、私にできることがあるなら手伝いたいんだけどー…


 しかしアンネは優しい表情のまま首を横に振る。


 「いや、気持ちだけでいい。この周辺のことを一番理解してるのはあいつらだからな。指示するよりも自らで動いた方がよっぽど効率がいいだろう。お前たちは室内でゆっくりしておくといい」


◆◇◆◇


 私たちは近くにあった比較的大きな木の幹に扉の付いた建物の中へ。ちなみにモニカはアンネと一緒だ。


 「うわー! 高ーい!!」


 ヒミコが名いっぱい上を向いて天井を見上げる。
 建物自体広いのだが、二階ー…というようなものはなく、ただただ遥か上の方に天井が見える。


 「とりあえず言われた通りゆっくりしましょ。私結構疲れたわ」


 ツクヨミが大きなベッドの上に座り込む。


 「にゃー! じゃあミーナがマッサージしてあげるにゃ!」

 「いや、それよりもナタリー、私に回復魔法かけて頂戴。その方が手っ取り早いわ」

 
 「あ、うん。わかった」

 「そんにゃーーー!!!!」


 私は回復魔法【天使の口づけ】を発動。天使が降りてきてツクヨミにキス。ツクヨミの体に付いた傷がすごい勢いで消えていく。


 「へぇ、すごいわねその魔法。ちょっと心にざわつきを覚えるのが謎だけど回復したわ。ありがとう」

 「うにゃああーー!! ミーナの仕事奪うにゃあーー!!」


 ミーナが私に軽い猫パンチを浴びせてくる中、イルレシオンがユニゾニアを解除。ウルゼッタが力なく倒れこむ。

 
 「あーごめんミーナ、また今度ね。ウルゼッタ、大丈夫?」

 「こ、今回は意識、ギリギリありますわ」


 ウルゼッタが力なく私に微笑みかける。

 
 『まぁ今回は強さというよりは数の暴力でしたからね。その分主人様への負担も少なかったのでしょう』


 私はウルゼッタにも【天使の口づけ】を使用。
 しかしやはり精神的ダメージもあるのか万全には戻らず。その場でスヤスヤと寝息を立て始めた。


 「ありゃー、ウルゼッタ寝ちゃったよ。みんなこれからどうする?」

 
 私は後ろを振り返る。


 『ナタリー様、私はあのガルフという魔物と昔話をしてまいりますので、主人様をよろしくお願いします』

 「え、あ、うん」

 
 イルレシオンが窓の隙間から外へ飛んでいく。


 「ツクヨミたちはー……え?」


 ツクヨミたちのいるベッドの方に視線を移すとツクヨミは疲れたのか熟睡中。そしてツクヨミに寄り添いながら寝息を立てているミーナ。
 また、ヒミコまでもがミーナの胸を枕がわりにして眠りに落ちていた。


 「ーー……」


 私は無言のままウルゼッタに視線を戻す。


 ーー…うん、眠ってる。たまに寝息の漏れている口元がやけに可愛い。
 これはもうー…、、。



 音の鳴らないよう静かに歩み寄り、ウルゼッタの顔に唇を近づけ数回キス。
 

 「あぁ…幸せ」


 ウルゼッタとのキスにより身体中の緊張が和らいだのか、一気に眠気が襲ってくる。
 

 ーー…時間になればイルレシオンかアンネちゃん・モニカちゃんが教えにくるでしょ。

 
 私はウルゼッタの隣でくっつくように横になり眠りに落ちた。
 

 
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