ここはヒロインのための世界です! 〜超ヒロイン推しのお助けキャラは、今日も周囲から溺愛されまくっている〜

雪葉

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学園編

生徒会に入ろう

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「ここだね……」
「はい……」

 私とアイラちゃんは神妙な面持ちで、目の前にあるドアを見上げた。
 このドアの向こうは────、『生徒会執行部』の使用する部屋である。


 それでは乙女ゲーム『あなたと恋のワルツを』に関する講座、始めたいと思います。全員着席!

 はい、えーっとですね、まずこの乙女ゲームは大前提として「主人公アイラが生徒会に入り、その生徒会に所属している、もしくは生徒会との関係が深い攻略対象との恋路を進めていく」話になります。
 前々から言っていた通り、攻略対象は三人。

 3年生の生徒会長、ヴィクトール・ハーカー。
 1年生の生徒会役員、ユーリ・アルトナー。
 そして最後。
 隣国タマルフォンから留学してくる王太子のサーシャ・アスマン・タマルフォン。

 以上になります。
 サーシャが来るのは6月頃だからまだ登場はしませんね。一刻も早く来てくれることを祈りますよ私は。

 つまりまぁ、簡単に言うとこの三人と生徒会の仕事を通じて仲良くなり、イベントやらスチルやらが発生していくのである。
 ちなみにサーシャは生徒会の役員ではないけど、留学中は生徒会がサポートするって話になるからね。だからここに所属していれば自ずと交流は深くなっていきます。

 で、この生徒会執行部なんだけど。
 役員に選ばれるのはどんな人なのかって言われたら、それは単純に「優秀な成績を修めている生徒」です。
 まぁだから、小さい頃から厳しく教育を受けている王族の方や身分の高い人は勿論、所謂「特待生」として入学してくる平民もそれの対象になりやすい。

 ここで最初の辺りに一旦戻るが、私達が生徒会のドアの前に居たのは、つまり今年の生徒会役員に選ばれたからなのだ。
 これはゲーム通りの設定。
 1年生は主に受験時の成績の良さを見て選ばれるので、奨学生のアイラちゃんは勿論ランクイン。さすが頑張り屋さんの推し。一生推せますね。

 そんで一方の私なんだが。
 正直言うとめちゃくちゃ勉強しました。ハイ。

 ゲーム通りに行けばウィルヘルミナも好成績を修めて役員に選ばれるんだけど、それは彼女が本好きの引きこもりだったから。そういう奴は大体頭もいいって決まってんだね。
 だが私は元来の彼女とは違う。本は好きだが病的なまでのそれではないし、家庭教師の授業を程々に受けつつ外で遊んだりもしていた。
 故に、「この私」が果たして本当に生徒会に入れるほどの成績を取ることができるのか……? という心配が己の中に走った。

 ので、死ぬ気で勉強しました。

 だってこれを逃したらそもそもゲームの設定からかなり外れるし、これから始まるハッピー推しカプライフを楽しむことも難しくなってしまう! そんなことは絶対許されねえ!!
 という強い意志のもと、かなり勉強した。むちゃくちゃ頑張った。

 余談だが、先に入学しているヴィクトールに「さりげなく私を生徒会に推薦しといてくれません?」って手紙を出そうかとも考えたけど、なんかズルしてるみたいだったからやめといた。
 自分の実力で推しカプを眺められる位置に行きたいというよく分からないオタクのプライドが働いた結果である。
 でもヴィクトールからは「生徒会で一緒に働けるのを楽しみにしてるからね」みたいな手紙は届いた。何で私が生徒会入りたがってるの知ってんだろう。まさか私の邪な思いが遠く離れた彼にバレバレなくらいダダ漏れていたのだろうか。

 まぁ、結果的には私もアイラちゃんも無事生徒会役員に選ばれ、心の中で勝利のガッツポーズをしましたとさ。
 良かったな自分。ここがある意味最大の難関門だったぞ。


 と、いうことで。
 今日は今年度の生徒会役員の顔合わせの日であり、それで私達は今こうして二人で生徒会室のドアの前に立っているのである。

「アイラちゃん、緊張してる?」
「そ、そうですね……。実は、ちょっと」

 分かる分かる。前世ではこういうのに縁もゆかりもなかったからな。なんかこういう厳かな感じの団体に入ってくの緊張するよね。

 でも私は知っています。ここがこれから一年、とんでもねえエデンに変わることを。
 だから私は躊躇いもなくドアをノックするぜ!!

「はい、どうぞ」

 あ、ヴィクトールの声だ。

「大丈夫、私がついてるからね。アイラちゃん」
「あ、ありがとうございます……っ」

 何が大丈夫なのかはさっぱり分からんけど、まぁとにかく仲良しの友達が居るってだけでまだ心は楽になると思うんや。
 そして部屋の中から返事を貰えたので、ゆっくり扉を開く。

「失礼します」
「よく来たねウィラ。さ、座って座って」
「あ、すみません、ありがとうございます」

 部屋に置いてある長ーい机の一番奥、いわゆる誕生席に座っているヴィクトールが笑顔で迎えてくれる。
 中には恐らく2年の先輩と思われる男女の二人、そして先に着いていたらしいユーリが席に座っていた。

 私達も適当に空いている席に着席する。

「さて、これで全員揃ったかな。それじゃあ、今年度最初の生徒会会議を始めます」


 生徒会会議と言っても、最初も最初なので、まずは自己紹介から始まった。
 まずは生徒会長のヴィクトール、その次に2年の先輩達、そして1年生の私達の順だ。

「生徒会長のヴィクトール・ハーカーです。1年間、どうぞ宜しくお願いいたします。
より良い学園生活を皆が送れるよう、常に邁進していきたいと思っている。学年が上だからと言って遠慮せず、自分の考えた意見などはどんどん話してほしい。いい活動をするには、やっぱりまずは私達が団結することが大事だからね」

 そう言ってにこりと微笑むヴィクトール。
 ゲーム時でも彼の生徒会長っぷりは見ていたが、やはりこうして実物を見ると「すごいなー」と感心してしまう。小並感な感想で申し訳ないが。

 次は2年の先輩達の自己紹介。

「ええっと、この度副会長に就任させていただきました、2年のハンス・コリントです。ヴィクトール会長の仰る通り、みんなが仲良く、そして学園のためになる活動をするために、副会長として頑張っていきたいと思います。宜しくお願いします」

 ふわふわとした茶髪に垂れ目の優しそうな男の先輩である。
 この2年の先輩、ゲームの時はほぼ二人とも出てこなかったし、出てきたとしても「名無し」だったから、名前が知れてなんだか感動の思い。
 続けて立ち上がったのは銀髪を軽くまとめて留めている、紫色の瞳のおっとり美人系な女の先輩だった。

「こんにちは。そして、1年生の皆様はお初にお目にかかります。2年生のギーゼラ・デルリーンですわ。
まだまだ未熟な身ではありますが、これから一年間、皆様と共に良き生徒会活動を行っていきたいと考えております。仲良くしてくださいましね」

 おおう、まさに大和撫子って感じの淑女。
 こういう人を見習わなければならんのだよ自分! 無理です!!


 続いてやってきました1年生!
 最初に自己紹介をしたのは我らがキラキラ王子様系、ユーリくんです!

「初めまして。1年生のユーリ・アルトナーと申します。
王立学園の素晴らしき生徒会執行部の役員に選ばれたこと、光栄に存じます。これから一年間、頑張って活動をしていきたいと思いますので、どうぞご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いいたします」

 ペカーーーーッ! って輝いてる。発光してる顔面が。しゅごい。
 目の前に座っている2年の先輩達もユーリのロイヤル感に圧倒されていた。初見だと「わぁ……」ってなるよね。私とかヴィクトールはもう慣れっこだからまだ大丈夫だけど。

 いやいやユーリの顔面の輝きは良いとして。
 私はアイラちゃんの自己紹介に刮目せねばならぬ!!

 って言ったけど、次私でした。
 何でアイラちゃんがユーリの隣じゃないんだよう、おうおう。

 ガタ、と椅子を後ろに動かし、その場に立ち上がる。

「初めまして。此の度王立学園に入学いたしました、ウィルヘルミナ・ハーカーと申します。
歴史ある王立学園の生徒会執行部の役員に選ばれましたこと、大変光栄で……」
「うんうん。皆、名前で大体察してると思うけど、私のかわいいかわいい妹が来たよ。仲良くしてあげてね」

 おいそこ!! ニコニコしながら人の自己紹介を遮るんじゃないよ!!

「……大変光栄です。これから一年間、頑張っていきますのでどうぞ宜し……」
「確かに生徒会長の妹御ではありますが、何より彼女は僕の、僕の婚約者であります故、どうぞお見知りおきを」

 だからぁ!! 何で皆私の自己紹介の途中で喋るの?! そんなに聞きたくないんですか?!
 あとそんな情報今要らんよ!! 何を思ってそんな話突っ込んだんだ!!

「……宜しくお願いします」

 もういいや。適当に締めとこ。
 面倒くさくなったので一言だけ言って着席する。いや本当、今のなんだったの。

「まぁ、生徒会長の妹さんでいらっしゃるのね」
「アルトナー公爵家の婚約者とは、ウィルヘルミナ嬢のことだったのか……」

 そして無理矢理捩じ込まれた情報を律儀に聞いてくれる2年生の先輩達。
 この人達絶対良い人だわ。うん。


(まぁいいか! 次は大いなる天使、アイラエルの自己紹介じゃ皆の者静聴せい!!)

 気を取り直し、緊張した表情で順番を待っていたアイラちゃんの方を見た。
 祝いのラッパとか吹かなくていいかな。あ、これだと終末が始まっちゃうか。

 そして最後。
 隣に座るアイラちゃんがおずおずと立ち上がり、口を開く。

「……は、初めまして。私はアイラ・ローズマリーと申します」

 もう声がかわいい。10点満点。

「……わ、私は……、ここに居る皆様とは違い、下町で生まれたただの平民の身です。運良くこの王立学園へ入学でき、そして、大変光栄なことに、生徒会の執行役員にまで選んでいただきました。
こんな私が、この生徒会の役員になることは、分不相応なことだとは思うのですが……」

 そんなこと無いよぉ!! アイラちゃんは一生懸命勉強して、その栄誉を勝ち取ったんだから!! 胸を張っていいんだよ!!
 でもそんな所も好き!! 100点満点!!

 しかしそこで、俯きがちだったアイラちゃんが顔を上げて、まっすぐな瞳で皆を見渡す。

「でも、選んでいただいたからには、しっかりお役目を全うしたいと思います。
未熟な私ではありますが、これからどうぞ、宜しくお願いいたします!」

 はっきりした声でそう言って、勢い良く頭を下げた。


(……いざとなったらハッキリ発言できる堂々とした純白の心ーーーーッッ!! 百億点だよアイラちゃんーーーーッッ!!)

 拍手。もう無限に拍手。
 感動で目の前が見えないぜ俺ぁ。

 そうだよ。こういう所が、彼女のこういう部分が私は好きなんだ。
 怖がっていても、緊張していても、それでも最後はきちんとやり遂げる。堂々と発言する。最高!! 推しの最高な部分を隣で見られる栄光ありがとう!!

 すると、それを聞いたヴィクトールが言った。

「アイラ・ローズマリーさん。平民だとか貴族だとかは、ここでは全然気にしなくて大丈夫だからね。そういう身分の差の垣根も越えて、これから学園のために働く仲間となれればいいなと、私は思っているよ。
だから遠慮なく、私達と仲良く接してくれると嬉しい」
「は……はい! ありがとうございます!」

(ええ話や……)

 泣けてきた。ハンカチでお上品に涙をお拭きにならなければ。



「ところで、君はウィラ……ウィルヘルミナと随分仲良くしてくれているみたいだね?」

 すると、急にヴィクトールがずずいっとアイラちゃんの方へ話しかけた。

「えっ、は、はい。恐れながら……、ウィルヘルミナ様には、大変良くしていただいております」
「そうかい、それは良かった。これからも私のかわいい妹と交流を深めていってほしいな」
「お許しをいただけるのであれば、勿論……」
「アイラ嬢、ところで僕の婚約者とは普段どのような会話をなさっているのですか? 良ければ詳しく教えてください」
「えっ、えっと……」

 そこへ割って入るかのように出てくるユーリ。

「ユーリ? 突然会話に入ってくるのは感心しないな。今は私と、妹に出来たお友達がお話しているのだから。ねえアイラ?」
「は、はい、……??」
「おや義兄上、あなたはそんなに狭量な御方ではなかったはずですよ? 僕も仲間に入れてください。
愛する婚約者とは悲しいことにクラスが離れてしまったのですから、普段の自然な様子を知りたいと思うのは当然では?」


 …………。

 ……………………。


(いや、何これ)

 待って? なんか急に攻略対象達によるアイラちゃん争奪戦が始まったんやが??

 えっ、幻覚?

(いや違う、これは……果てしなく「現実」のもの……ッッ!!)

 頬を引っ張ってみても何にも変わらなかったからこれは絶対夢ではないし幻覚でもない。だとしたら遂に妄想を具現化する能力が覚醒した……わけでもないなこれは。

 え、まだ生徒会初日なのに、何だこの好感度の上がりようは……?!

(まさか、この世界では会った瞬間に攻略対象みんながアイラちゃんに虜になるということか?!?!)

 目の前ではまだまだアイラちゃんを取り合って盛り上がっている二人の姿が見える。
 んもーーお二人とも!! そんな風にいきなり迫ったら天使……じゃないアイラちゃんが困っちゃいますよぉ?!?! 好きなのは分かりましたから落ち着いてくださいってばも~~~~うへへへへ!!

 あれ、さっき「これから一年でとんでもねえエデンに変わる」って言ったけど、もう既にエデン化してない? もう楽園に到達したんか私?? まだ何にもお助けキャラとしての役目果たしてないけどおっかしいなぁ~~??

 まぁいいか。そんなものは今こうして繰り広げられているヒロイン争奪戦の幸せに比べたら些細なことやで。


「いや~、大変そうですね~うふふふ……」

 思わず独り言を漏らすと、2年の先輩達は何やら困ったような表情で私を見つめてきていた。

 あ、この騒ぎを止めてほしいってやつですか?
 それなら無理ですすみません。何より私がこの状況を楽しんでいますので!!
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