ここはヒロインのための世界です! 〜超ヒロイン推しのお助けキャラは、今日も周囲から溺愛されまくっている〜

雪葉

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学園編

推しの故郷に向かおう

 今日はとっても晴れ晴れとした青空が広がっている日。
 絶好のお泊まり日和である!

「ふふふ、晴れてよかったなぁ~。えへへへ……」
「ご機嫌だねぇ」
「そりゃそうですよ! だって今日は私の“愛”の実家に初訪問なのですもの!!」
「愛……」

 共に馬車に乗っている二人が私を見ながら苦笑した。

 そうです。今日はアイラちゃんと約束をしていた、お泊まり週間の初日!
 アイラちゃんは「ウィルヘルミナ様と、屋敷にいらっしゃる皆様に悪いです」と言い、一泊ほどで帰るつもりだったようだが、そこは私が全力で止めた。
 そんな一泊程度で満足できるほど私の欲求は薄くなどないんだ。

 だからめっちゃ頼み込んで、1週間くらい期間を伸ばしてもらった。ホントは夏季休暇全部居てもらったってよかったんだけど、折角アイラちゃんもお家で家族の顔を見ながら毎日過ごせる時だし。さすがにそこまではワガママ言えない。

「そういえば……」
「ん?」
「何故ユーリ様までうちの馬車に……?」

 馬車の中に座っている彼を今一度見つめる。

 確かに、ルートの関係で道中、彼の屋敷に一時滞在させてもらった。
 でもその後にまた出発をした際、何故かユーリも笑顔でついてきたのである。元々私と保護者的立場の兄様は一緒に我が家から出てきたんだけども。

 私の問いに、ユーリはまたまた笑顔で返した。

「乗せていただいてありがとうございます」
「いえ、それは良いのですが。どうせアイラちゃんが泊まってる時もうちに来る予定だったんですし、何もわざわざこの時間までついてこなくても」
「だってこの長い馬車の旅を、ウィラと義兄上の二人だけで過ごすなんてずるいじゃないですか。僕も仲間に入れてください」
「ええ……? ユーリ様、そんなに馬車で旅がしたかったので……?」

 何だその理由。よくわからん。
 公爵家なんだし、自分の家の馬車でいくらでも旅行が出来るのではないのか?

 まぁ、ついてこられても特に困ることは無いし良いんだけどね。
 それにもしかしたら、アイラちゃんのお家に出向いてご家族に挨拶したいという思惑があったのかもしれないし! 「初めまして、お宅の娘さんをこよなく愛する男ユーリと申します」みたいな!

 そう考えると、一緒に来ることを提案してくれたヴィクトールも彼と同じ気持ちだったのだなと気が付けた。
 わざわざヒロインの実家まで押しかけて恋の大戦争を繰り広げるとは、これからの二人に超期待が止まらないぜ。

「途中までこの子と二人っきりだったのになぁー」
「残念ですね、義兄上。僕の家を通ってきたのが運の尽きです。仲良く三人で馬車に揺られましょう」

 何やかんやでこうして二人で会話する所をよく見かけるので、やっぱりこの人達って仲良しなんだなと改めて感じた。
 今三人しかいないんだから私も混ぜてくれや……とかは、べ、別に思ってないんだからね!

 でも三人の内二人だけがめっちゃ仲良くて残された一人が孤独になる現象はあるあるだから、少しは仲間に入れてほしいっス。


 *


 王都の中心から少し離れた、小さな町の辺りで馬車が止まった。
 周りの景色を見渡すと、こぢんまりとした木造の民家が色んな所に並んでおり、畑らしきものも見える。

 事前に教えてもらった住所はここら辺で合ってるはず。
 さすがに町中で馬車を停めるのは目立ち過ぎる気もしたので、私達は中から降りて町の中へと歩いていった。

「あの、申し訳ありません。今よろしいですか?」
「えっ?! な、何だぃ……何でしょう?」

 道行く人々の中から一人声をかけてみると、なんだかすごく驚いた反応をされる。何でだろうと思ったけど、そのおばちゃんの視線が私と私の背後を交互見やっているのを見て、「あ」と気が付いた。

 ……出来るだけ地味な格好をしてきたんだけど。
 そもそもこういう小さな町で後ろの二人みたいに綺麗な外見した男性が来るのも珍しいだろう。私は全然んなことないけど、この二人のオーラは見るからに「高貴」だもの。ビビるのも致し方ない。

「ごめんなさい、怪しい者ではないんです。
実は、私達の学校の友人を迎えに来ておりまして」
「友人……?」
「アイラ・ローズマリーという名前の女の子です。その子の住んでいるお家をご存知ないでしょうか?」

 私がアイラちゃんの名前を出すと、そのおばさんの目が大きく見開かれ、口元に手を当てる仕草まで見せた。
 どうやら大層驚いていらっしゃるらしい。

「ローズマリーさん所の娘さん……え、って、ていうことは、もしかして……、王立学園の……?!」
「あ、えっと……はい」
「まぁまぁ、まぁ! そうなんですね!」

 おばさんは急にテンションが上がったように顔を火照らせ始め、私達三人は尚のこと首を傾げるしかない。
 でもその次には「アイラちゃんの家はこちらです! 案内しますね」と笑顔で誘導してくれた。

 その言葉にほっとしつつ、おばさんの後ろをついていく。

「カミラさん、そちらの方はどなただい? 何やらけったいな雰囲気で……」
「こらじいさん、けったいだなんて言ったら失礼だよ!
この方々はローズマリーさん家のアイラちゃんが通う王立学園のご友人だとさ!」
「おお? 王立学園……、ほぉ~。それはそれは……」
「今日は何かの用事であの子を迎えに来たらしいんだ。とりあえず、家に案内しようと思ってね。
じゃあ、あんまり無理して仕事すんじゃないよ! またね!」
「あらカミラさん、お客様? 珍しいわねぇ、そんな綺麗な格好をした方々がうちにいらっしゃるなんて」
「ああデリアさん。いやね、実はあのアイラちゃんのご友人で────」
「まぁ! それは────」

 道行く人、みんなに話しかけられている。それに笑顔で答えつつも、しっかりとした足取りで歩いていくおばさん……、もといカミラさん。

 やっぱり田舎の人達って町を通してみんな知り合いなんだなー。前世の時、私は割と普通の住宅街に住んでたけど、超田舎に住んでた友達は「周りみんな知り合いだよ」って言ってたし。

「アイラ嬢はこの町で有名なのですか?」

 一方、生まれてこの方そんな感覚は全くわかりません! 何故ならロイヤル育ちだから! と言わんばかりに、不思議そうな顔をしてカミラさんに尋ねるユーリ。
 カミラさんは笑って「ええ、もちろん!」と答えた。

「まぁ、こんな小さな町なので、みんな顔見知りっちゃ顔見知りなんですけど。あの子は私達の中でも昔から特別で」
「特別?」
「あなた達もアイラちゃんとご友人になったのなら、知っていらっしゃるとは思いますが……、あの子、とってもかわいくて優しい子でしょう?」
「分かります」
「力強い返答だな……」

 即答した私にヴィクトールからのツッコミが入る。
 もちのろんですよ。私は前前前世から彼女の魅力の虜になった人間ですもの。返事しないわけがない。

「しかも、王立学園に入れるほど勉強も頑張ってたなんて、聞いた時は本当驚きました。とても頑張り屋さんなよい子だって、町のみんなは昔から思ってたんです。
アイラちゃんとそのご家族の皆さんは、この町の自慢ですよ」

 カミラさんの表情はとてもやさしい。これは強くて豪快で面倒見のいい、肝っ玉お母ちゃんの予感がする。

(とてもよい話を聞けたな……)

 心の中で涙をつぅ……と流した。オタクは涙腺がよわいいきもの。

 故郷の町から愛される推しを見せてもらえるなんて、あまりに喜びが過ぎる。世界からの供給が激しい。ありがとうございました。


 そうしている内にとある民家に着き、「ここがアイラちゃんの住んでいる家です」とカミラさんが笑顔で紹介してくれた。
 推しが生まれた家を見れたことにあまりの感動を覚え、暫し感嘆に耽る。

「ノックをしたら誰かしらが返事をしてくれると思います。それじゃ、あたしはこれで」
「ご親切にどうも、ありがとうございました」
「いえいえ! やめてください、お貴族の方が頭を下げるなんて!」

 あっ、やっぱバレてたんすね。
 そりゃ王立学園の友達って言った上男性二人がこの雰囲気だから、さすがに気付くものもあるか。

「アイラちゃんのこと、これからも宜しくお願いします」

 深々と頭を下げ、去っていくカミラさん。

 それに手を振った後、さてと民家のドアに向き直り。
 おそるおそる、ドアをノックしてみた。

「ウィラ、手がとても震えていますけれども……」
「だ、だだ大丈夫です!! でもちょっと、私の愛するアイラちゃんの実家だと思うと、緊張がすごくて……!!」
「相変わらずだなぁ」

 気分は「彼女の親御さんに結婚のご挨拶をしに行く彼氏」のそれである。いや、やったことないから分からんけど!!

 ぶるぶると緊張と興奮する気持ちに震えていると、キィィ……、とドアがゆっくり開いた。

 そして中から出てきたのは。


「はーいっ! ……あれ? だれ?」

 ちっちゃい男の子である。
 私達の存在を確認し、首を横に傾げていた。

 だれ? って、それはこちらも同じ気持ちなんですよね~。
 てっきりお母さんとかアイラちゃん本人が出てくるものだと思っていたのだが。

 みんなして「?」状態になっている所に、家の中からぞろぞろと見知らぬ小さな子供たちが次々出てきた。

「だれ? だれー?」
「おとこだ! おとこがいる!! ねえちゃんのカレシか?!」
「見たことないー。へんなの」
「はじめまして!! こんにちは!!」

 色んな子供と接する時恒例。
 とりあえずなんかよく分からん台詞でも話しかけてみてるせいで、何にどう返答してったらいいのか分からなくなるやつ。


「こらーっ!! お客さんが来た時は勝手にドア開けないようにっていっつも言ってるでしょーーっ?!」

 家の奥から聞こえてきたのは、我が天使のお姉ちゃん節炸裂な叫び声だった。
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