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直仁は仕事終わりに居酒屋で、植木と飲んでいた。
植木とは大学一年の時に知り合った。
飲み会で息があい、卒業して二年経った今も、半年に一度の頻度で会う仲だ。
店内は、相手の声がかろうじて聞こえるぐらい騒がしい。
飲み物を片手に、ぐるっと見渡すば、直仁や植木と同じようなスーツを着た人たちや、学生のような服装の男女が、談話してるのが見えた。
向かい合う植木は、ビールを一気飲みして、すでに二杯目だ。
直仁の方は、ウーロン茶を片手に、好物のからあげをちまちま食べている。と、植木がビールジョッキから手を離して、こちらへ目を向けてきた。
「おい、川畑。今日は、お酒飲まないのか?」
少し顔が赤くなった植木が首を傾げながら言った。
「前も飲んでなかったろ? 胃が痛くなるんだ」
直仁は、肩をすくめた。
「ああ、そんなこと言ってたな。大丈夫か?」
「さあな。前から胃は痛かったんだけど、ひどくなってきてさ」
「仕事が大変とか?」
心配そうに眉を寄せた。
「んー、どうだろ。いやわからん。そんなに残業が多いわけでもないんだけどさ。なんでだろうな」
「なんでだろうなって、俺に聞かれてもわかんねーよ」
「そりゃそーだ」
ははっと二人で笑って、頭の片隅で自分の仕事を思い出していた。
直仁は人を気にする性格だ。
だから、就職の時も技術職を希望していた。
大学も情報学を専攻していたし、人を気にしないで、パソコンに向かっていたかった。
ただ、人を気にするということは、湾曲に言うと、人を気遣えるということ。つまり、直仁の人当たりの良さと、営業職の人材不足から、技術職ではなく、営業にまわされた。
しかし、自分では営業職には向かないとつくづく思っている。
相手先に気を使い、社内でも営業部と人事部や会計など意見の相違などで板挟みにあっている。
言い合っているのを放っとけばいいと思うものの、つい首を突っ込んでしまうのは悪い癖だった。
そのため、常用している胃薬も最近ではあまり効かなくなってきていた。
植木に説明すると、顔をしかめた。
「異動届は、出さないのか?」
「出してもムリだった。もう二年目だ。このまま営業じゃないかな」
「転職は?」
「IT企業を?」
「職は一つじゃねーって。合うところもあるさ」
「そうだな。探してみるよ」
言っている先から、胃がキリキリと痛みだした。
心配するだろうから、顔には出さないように笑顔を貼り付ける。
でも、胃痛が増し、今日はもう帰った方がよさそうだ。
そう思った時だった。
「プログラマーっていやさ、大学の時、すっげーやついたよな。たしか、名前が藤森だったっけ?」
ふと、植木が思い出すように言った。
直仁は、その名前を聞いて、置こうとした箸が止まった。
「藤森章……」
「そうそう。よく名前まで覚えてんな」
植木が感心するように言った。
「仲良かったんだ」
止まっていた箸を置き、ウーロン茶が入ったグラスを手に取った。
「なんで過去形? 今は会ってねーの?」
「まあな。どうしてだか、音信不通さ」
グラスを揺らすと、カランと音がした。まるで、今の直仁が感じている哀情を表すような音だった。
(章……)
彼のことを思い出すと、胸の奥が痛くなってきた。
「藤森ってレアキャラみたいなとこがあったじゃん。そのレアキャラの友だちだったってだけでなんか、すげーけどな」
直仁の落ち込みを感じたのか、それを振り払うかのように、植木が明るい声で言った。
「そんなもんか?」
すげーと言われて、グラスから植木に視線を移した。
植木はにかっと笑った。
音信不通なことは、ショックだけど、章を知っているやつから、「すげー」と言われて、気分が少し軽くなった気がした。
「植木っていいやつだな」
直仁が笑い返しながら言う。
「今さらかよ」
「前からってことにしとく」
「あっそ」と、ちょっとあきれぎみに笑ったあと、言葉を続けた。
「まあ、言いたいことあったら言えよ。川畑って自分の気持ち隠すだろ。仕事も愚痴って、気持ち軽くしとけ」
「やっぱ、植木ってめっちゃいいやつ」
「だろ」
二人で笑い合って、仕事の愚痴を聞いてもらった。
そでれも胃はたまにズキッと刺すように痛くなる。
この痛みは、小さいころからずっとつき合っている痛みだ。
でも、章といた時は、不思議と胃が痛くならなかった。
それは、なぜだろう。
会わなくなってから、考え、答えは出た。でも、その本人とは一年前から連絡が途絶えている。
植木と愚痴を言い合い、会計を済ませ、外に出た。
外は肌寒い風が吹いていた。
十月になり、朝晩、急に冷え込むようになった。
上着を持ってきて来なかったのを後悔した。
腕をさすっていると、人が行き交う中で、一人の男性が目の端に映った。
「章?」
「ん、なんか言ったか?」
隣を歩く植木が聞いてきた?
「いや、なんでもない」
名前を聞いて、彼と見間違うほど会いたくなってしまったのだろうか。
でも、こんなところにいるはずもない。目の錯覚だと、自分を納得させた。
「じゃあ、またな」
「ああ、また」
植木と別れ、一人、電車に乗り家に帰った。
その晩夢を見た。
植木とは大学一年の時に知り合った。
飲み会で息があい、卒業して二年経った今も、半年に一度の頻度で会う仲だ。
店内は、相手の声がかろうじて聞こえるぐらい騒がしい。
飲み物を片手に、ぐるっと見渡すば、直仁や植木と同じようなスーツを着た人たちや、学生のような服装の男女が、談話してるのが見えた。
向かい合う植木は、ビールを一気飲みして、すでに二杯目だ。
直仁の方は、ウーロン茶を片手に、好物のからあげをちまちま食べている。と、植木がビールジョッキから手を離して、こちらへ目を向けてきた。
「おい、川畑。今日は、お酒飲まないのか?」
少し顔が赤くなった植木が首を傾げながら言った。
「前も飲んでなかったろ? 胃が痛くなるんだ」
直仁は、肩をすくめた。
「ああ、そんなこと言ってたな。大丈夫か?」
「さあな。前から胃は痛かったんだけど、ひどくなってきてさ」
「仕事が大変とか?」
心配そうに眉を寄せた。
「んー、どうだろ。いやわからん。そんなに残業が多いわけでもないんだけどさ。なんでだろうな」
「なんでだろうなって、俺に聞かれてもわかんねーよ」
「そりゃそーだ」
ははっと二人で笑って、頭の片隅で自分の仕事を思い出していた。
直仁は人を気にする性格だ。
だから、就職の時も技術職を希望していた。
大学も情報学を専攻していたし、人を気にしないで、パソコンに向かっていたかった。
ただ、人を気にするということは、湾曲に言うと、人を気遣えるということ。つまり、直仁の人当たりの良さと、営業職の人材不足から、技術職ではなく、営業にまわされた。
しかし、自分では営業職には向かないとつくづく思っている。
相手先に気を使い、社内でも営業部と人事部や会計など意見の相違などで板挟みにあっている。
言い合っているのを放っとけばいいと思うものの、つい首を突っ込んでしまうのは悪い癖だった。
そのため、常用している胃薬も最近ではあまり効かなくなってきていた。
植木に説明すると、顔をしかめた。
「異動届は、出さないのか?」
「出してもムリだった。もう二年目だ。このまま営業じゃないかな」
「転職は?」
「IT企業を?」
「職は一つじゃねーって。合うところもあるさ」
「そうだな。探してみるよ」
言っている先から、胃がキリキリと痛みだした。
心配するだろうから、顔には出さないように笑顔を貼り付ける。
でも、胃痛が増し、今日はもう帰った方がよさそうだ。
そう思った時だった。
「プログラマーっていやさ、大学の時、すっげーやついたよな。たしか、名前が藤森だったっけ?」
ふと、植木が思い出すように言った。
直仁は、その名前を聞いて、置こうとした箸が止まった。
「藤森章……」
「そうそう。よく名前まで覚えてんな」
植木が感心するように言った。
「仲良かったんだ」
止まっていた箸を置き、ウーロン茶が入ったグラスを手に取った。
「なんで過去形? 今は会ってねーの?」
「まあな。どうしてだか、音信不通さ」
グラスを揺らすと、カランと音がした。まるで、今の直仁が感じている哀情を表すような音だった。
(章……)
彼のことを思い出すと、胸の奥が痛くなってきた。
「藤森ってレアキャラみたいなとこがあったじゃん。そのレアキャラの友だちだったってだけでなんか、すげーけどな」
直仁の落ち込みを感じたのか、それを振り払うかのように、植木が明るい声で言った。
「そんなもんか?」
すげーと言われて、グラスから植木に視線を移した。
植木はにかっと笑った。
音信不通なことは、ショックだけど、章を知っているやつから、「すげー」と言われて、気分が少し軽くなった気がした。
「植木っていいやつだな」
直仁が笑い返しながら言う。
「今さらかよ」
「前からってことにしとく」
「あっそ」と、ちょっとあきれぎみに笑ったあと、言葉を続けた。
「まあ、言いたいことあったら言えよ。川畑って自分の気持ち隠すだろ。仕事も愚痴って、気持ち軽くしとけ」
「やっぱ、植木ってめっちゃいいやつ」
「だろ」
二人で笑い合って、仕事の愚痴を聞いてもらった。
そでれも胃はたまにズキッと刺すように痛くなる。
この痛みは、小さいころからずっとつき合っている痛みだ。
でも、章といた時は、不思議と胃が痛くならなかった。
それは、なぜだろう。
会わなくなってから、考え、答えは出た。でも、その本人とは一年前から連絡が途絶えている。
植木と愚痴を言い合い、会計を済ませ、外に出た。
外は肌寒い風が吹いていた。
十月になり、朝晩、急に冷え込むようになった。
上着を持ってきて来なかったのを後悔した。
腕をさすっていると、人が行き交う中で、一人の男性が目の端に映った。
「章?」
「ん、なんか言ったか?」
隣を歩く植木が聞いてきた?
「いや、なんでもない」
名前を聞いて、彼と見間違うほど会いたくなってしまったのだろうか。
でも、こんなところにいるはずもない。目の錯覚だと、自分を納得させた。
「じゃあ、またな」
「ああ、また」
植木と別れ、一人、電車に乗り家に帰った。
その晩夢を見た。
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