ある新緑の日に。

立樹

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 昼食を軽く済ませ、あきらが、ボーリングかバッティングセンターどっちがいいかと聞くので、バッティングセンターにした。
 ボーリングよりも、打ってスカッとしたい気分だった。
 やっぱり、会う前は楽しみになるけれど、実際に会うと、見え隠れする彼女の存在が、大きかった。空腹だったおなかに、重たい石が次々に入ってくるように、苦しくなってしまった。
 
 気にしない。

 そう決めていても、気持ちは思い通りにいかないものだ。


 バッティングセンターに着くと、瑛とは別々の場所で、ただバットを握り続け、ただくるボールを打った。その単調な行動に没頭した。

 出かける前は汗をかくほど暑くはなかったが、今はしっかりと汗をかいた。背中といい、胸のあたりが汗でぬれて冷たい。

 どうせ、このあと焼肉にいくのだから着替えなくていいかと、バッティングセンターを出て、次の店に向かった。

 瑛に顔を向けると、ひたいが汗でぬれていた。
 手の甲でぬぐっても、また、汗がでてくるようだった。

「どっか、休んでいくか?」
 疲れているように見えて、そう訊ねた。

「いいよ」
「そうか。じゃあ、コンビニは?」

 通りにちょうど見つけて、親指でしめす。
「寄っていい?」

 うなずき、さっと走って店内に入っていった。

 通りも、学生やショッピング客が行きかっていたが、コンビニの店内もそれなりに混んでいた。入ると、冷房が効いているのか、ひんやりとして心地よかった。

 腕がだるく、手を人に当たらないように軽くふった。
「大丈夫?」
 声がして振り向くと、瑛が、ペットボトルを二本持って立っていた。
「それ、買うの?」
「買った後。はるこそ、なにか買う?」
「飲み物」
「じゃあ、いいや。出よう」
「いや、まだ買ってないんだけど」

 引っ張られて、慌てて言うと、ほら、とペットボトルが差し出された。

「これ、オレがよく飲んでたやつ」

 覚えてたのかと、瑛を見ると、はにかんでいた。
 無性にかわいく思えて、だれもいなければ、抱きしめてしまっていたかもしれない。

 その気持ちを奥底におしこんで、それを受け取った。

 コンビニを出て、歩きながらフタをあけた。
 プシュッと音がして、しゅわしゅわっと気泡がペットボトルの中にいくつもできては、上へ上へとあがってきた。
 瑛もフタをあけると、一気に飲んでいた。

 のどぼとけが、上下する。

 そこへ唇をはわせば、どんな顔をするだろう。

 そんなことを考えている自分に、ため息をつき、炭酸飲料を口の中に流し込んだ。


 
 しばらく人通りの多い商店街を歩き目当てのお店の前に着いた。
 店内に入ると、肉の焼けた香ばしいにおいがした。

 それと同時に、おなかがなった。

 学生の時は、お金がなくて、量が食べれたら、質なんて二の次だった。社会人になっていいところは、それなりに収入もできるから、量と質を両立できるところだ。

 焼き肉屋は混んでいた。

 予約を入れておかなければ、かなり待つことになったはずだ。ネットでも評価が高く、並び具合からみても、人気店だとわかる。

 期待しつつ、案内された席に瑛と向かい合って座った。
 個室ではないが、しきられた空間に、落ち着く。

 最初にビールを頼み、渡されたメニュー表を瑛と眺めながら、注文を決めていく。

「はる、何人前食べる?」
「セットで注文すんの?」
「バラ?」
「オレのおごりだし。遠慮すんなって」
「なんで? こっちから誘ったのに。せめて割り勘だろ」
「オレ、めっちゃ食べるし」
「おれだって食べるけど」
「あき、たまにはおごられろよ」
「おごりたい理由は?」
「優越感」
「……ふっ、ははっ」
「なんで、笑って……」
「子どもみたいでさ」
 まだ、笑い足りないのか、声をころしてうつむき加減に笑っている。
 肩が小さくゆれていた。

「いいだろ」
「ま、それなら、おごってもらおっかな」
「そうしろ」
「セットでいい?」
「じゃあ、五人前で」
「はる一人で?」
 と言って、食いすぎと笑っている。
「二人でだ」と突っ込みを入れるよりも、楽しそうに笑っている瑛を見ていたかったから、その言葉は言わずに、笑わせておいた。

 呼び鈴を鳴らして来た定員に、肉を注文していく。
 セットと、ついでにバラでもいくつか頼んだ。
 しばらく待つと、店員によってビールが置かれ、網焼きの下に火がつけられた。顔が熱風で熱くなる。
 炭酸も飲んだが、冷えたビールは別。

「おつかれ」
 ジョッキを片手に、瑛が持つジョッキにカツンと軽くあて、ぐっと一気に飲む。苦みと、しゅわっとするのどごしに、いくらでも飲めそうだ。

 肉が来てないからと、三分の一で我慢した。

 待っている間、自分の日常を話した。
 瑛のことを聞けば、ちょっとつつくはずが、つついた先が悪くて、蛇がでてくるかもしれないくて、怖いのだ。子どもじみた気持ちだけど、傷つかなくていいならそれがいい。

 寂しくて、辛くても、このまま、この関係でいい。
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