隣にいて

立樹

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 コンビニを出て歩く隼大を杉山が呼び止めた。
「川浪さん、飲んでも寝られないんですか?」
 その言葉に体が反応するのを、必死に堪えた。
 何気なさを装い、笑顔を向ける。

「そんなことないよ」
 じっと見てくる杉山の目が痛い。

 本当なのか、どうなのかを探るような目。
 普通なら嫌になってしまう。自分の内面を探られることに耐えられない。
 けれど、何故だろう、杉山の目からは必死さが伝わってくる。探りながら、何かを訴えるような目。

 杉山も何かを抱えているのだろうか。

「話して間もない僕が言う事ではないのですが、心配なんです」
「ん?」

――心配。

 確かに、ほとんど認識している関係だけの杉山から言われるようなことではない。
 それとも、他に理由があるのか。

「歩きながら話そうか」

 駅までもうすぐだ。歩道を右手に曲がればすぐに駅の明かりが見えてくる。あと十分ほどの距離。その間に何を話してくれるのだろう。
「心配とは?」
 隣を歩く杉山に声をかけた。

「今年の初めごろから、急に帰りが遅くなってますよね」

 ぎくりと体が硬直した。

 歩みが一歩遅くなる。
 それに気づいた杉山が、確信したようにこちらを見上げた。
 言い訳を考える前に、頭の中が真っ白になる。
 遅くなっていることなど、警備員か経理部や幹部の人間ぐらいしか知らないと思っていた。それに、以前からちょくちょく終電間際まで仕事をしていたから、違和感を持つ人がいるとは思っていなかった。

「それが、どうした?」

 冷たくなっている手を強く握り込んだ。冷たいはずが手のひらは汗ばんでいた。

「堂岡さんも心配しておられました」

 今度こそぎょっとして、杉山の顔を見た。
「な、なんでそこで堂岡の名前が出てくるんだ」
 堂岡は、同じ部署の同期だ。
 陽気でこちらを平気で振り回すくせに、数字にはめっぽう強く、仕事に関しては舌を巻くほどだ。
 その堂岡と、あまり関わりのない営業部の杉山といつ知り合っていたのか。

「堂岡さんは、神出鬼没の人ですよ。金尾さん目当てによく顔を出されます」
「ああ、あのミスコンの」
 隼大は、手抜きのないストレートの髪の毛しか覚えていないが、スラッとした可愛い系の美人だと有名な金尾を思い浮かべた。それでも、どうしてだろう、という疑問が胸の内を渦巻いた。
 首をひねっていると、クスッと笑われた。
「堂岡さん、苦手なんですね」
 ひくっと顔が引きつる。
「あれは、人懐っこいゴールデンレトリーバーだよ」
「確かに」
 そう言うと、杉山はお腹を抱えて笑った。
「で、なんでそんな話になったんだ?」

 笑って話が進まない杉山を急かす。目の前は駅が迫っていた。
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