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杉山は自分の頭に乗った隼大の手を降ろした後、誰もいない隼大の隣を指さした。
誰もいない隣。あると言えば、空間だけ。
隼大は、自分の隣を杉山と同じように指をさした。
「ここか?」
「はい」
ニッコリと微笑む杉山は満足そうだ。
こんな、何もない隣がいいのだろうか。
「誰もいないからな。いいぞ。けど、本当に寝なくていいのか。徹夜明けのオールに行って、そのまま仕事するようなもんだぞ」
心配になって言うと、自信たっぷりに「大丈夫です」と返ってきた。
「若いからな」
「だから、川浪さんも十分若いですって。それに、疲れとか感じませんし。こうやって話をしているだけでも十分なんです」
ふんわりと笑む顔は、お世辞を言っている感じはなく、本当に満足そうだ。
睡眠よりもこうして話している方がいいということだろうか。
「杉山がいいなら、いいが。とにかく入れ」
隼大は杉山を部屋に招き入れた。
寝るだけに使っている寝室は、ソファーもなければ、TVさえない。無機質のシンプルな部屋だ。
徹夜しても大丈夫と言ってはいるが、疲れは少しでも取っておいたほうがいいだろう。
「寝ろ」
「え?」
隼大は、ベットに横になると、スペースの空いている隣をポンポンと叩いた。
今度は、杉山が目を見開いた。
シングルでは窮屈だったために、ベットはセミダブルだ。
それでも男二人で寝るには狭い。が、この際、気にしてはいられない。
「ほら、寝ころぶだけでも違うだろ。俺はデスク仕事だけれど、杉山は外回り。体力温存も仕事のうちだ」
「今は、仕事じゃないです」
拗ねた顔をする杉山に、見た目よりも子どもっぽく、口元が緩む。
犬ならば、抱きしめて体をさすってしまいそうだ。
「わかってるよ。ほら」
もう一度、杉山を呼ぶと、恐る恐るといった様子で、ベットに横になった。
さっきまで威勢が良かったのに、ベットの上ではヘビに睨まれたカエルのように固まっている。それならば、「隣にいる」なんて言わなければいいのに。
そう思うと、クスリと笑いが漏れた。
「何笑っているんですか。だって、緊張しますよ。隣は隣でもベットの上。俺はまな板の恋……いえ、鯉状態です」
おたおたと言う杉山に、隼大は思わず、声を出して笑った。
お腹を抱えて笑う隼大につられてか、杉山も笑っていた。
「杉山だろ、隣にいたいといったのは」
笑いも治まった頃、隼大は杉山をからかうように言った。
「そうですけど、まさか、一緒に寝るなんて思ってませんし。心臓バクバクで、余計疲れます」
「じゃあ、ソファにもどるか?」
「一人で?」
「そうだけど」
口の端だけ持ち上げて笑う隼大に対して、不満げな顔をした。
「イヤですよ。イヤなんですけど、心づもりってってあるじゃないですか」
「心積もりって、なんのだよ」
「そ、それは……」
言い淀み杉山は隼大から目を逸らした。その頬が少し赤く見えた。
「あれです。憧れている人にベットは緊張するんですよ!」
投げ捨てるように言うと、隼大に背を向けて、布団に丸まってしまった。
「はいはい」
こんもりとお饅頭のようになった布団の上から、軽く叩きながら、どこに憧れる要素があったか。隼大は、ぼんやりする頭で考えた。
「憧れを持つ」という事はどういう事だろう。
憧れを持つとき、自分にないモノをその人に投影する。
もしくは、今の自分を多少なりとも不満を持っている時か。
もしかしたら、杉山は――。
隼大は、ヘッドボードに手を伸ばし、リモコンを手に取ると、電気を消した。
誰もいない隣。あると言えば、空間だけ。
隼大は、自分の隣を杉山と同じように指をさした。
「ここか?」
「はい」
ニッコリと微笑む杉山は満足そうだ。
こんな、何もない隣がいいのだろうか。
「誰もいないからな。いいぞ。けど、本当に寝なくていいのか。徹夜明けのオールに行って、そのまま仕事するようなもんだぞ」
心配になって言うと、自信たっぷりに「大丈夫です」と返ってきた。
「若いからな」
「だから、川浪さんも十分若いですって。それに、疲れとか感じませんし。こうやって話をしているだけでも十分なんです」
ふんわりと笑む顔は、お世辞を言っている感じはなく、本当に満足そうだ。
睡眠よりもこうして話している方がいいということだろうか。
「杉山がいいなら、いいが。とにかく入れ」
隼大は杉山を部屋に招き入れた。
寝るだけに使っている寝室は、ソファーもなければ、TVさえない。無機質のシンプルな部屋だ。
徹夜しても大丈夫と言ってはいるが、疲れは少しでも取っておいたほうがいいだろう。
「寝ろ」
「え?」
隼大は、ベットに横になると、スペースの空いている隣をポンポンと叩いた。
今度は、杉山が目を見開いた。
シングルでは窮屈だったために、ベットはセミダブルだ。
それでも男二人で寝るには狭い。が、この際、気にしてはいられない。
「ほら、寝ころぶだけでも違うだろ。俺はデスク仕事だけれど、杉山は外回り。体力温存も仕事のうちだ」
「今は、仕事じゃないです」
拗ねた顔をする杉山に、見た目よりも子どもっぽく、口元が緩む。
犬ならば、抱きしめて体をさすってしまいそうだ。
「わかってるよ。ほら」
もう一度、杉山を呼ぶと、恐る恐るといった様子で、ベットに横になった。
さっきまで威勢が良かったのに、ベットの上ではヘビに睨まれたカエルのように固まっている。それならば、「隣にいる」なんて言わなければいいのに。
そう思うと、クスリと笑いが漏れた。
「何笑っているんですか。だって、緊張しますよ。隣は隣でもベットの上。俺はまな板の恋……いえ、鯉状態です」
おたおたと言う杉山に、隼大は思わず、声を出して笑った。
お腹を抱えて笑う隼大につられてか、杉山も笑っていた。
「杉山だろ、隣にいたいといったのは」
笑いも治まった頃、隼大は杉山をからかうように言った。
「そうですけど、まさか、一緒に寝るなんて思ってませんし。心臓バクバクで、余計疲れます」
「じゃあ、ソファにもどるか?」
「一人で?」
「そうだけど」
口の端だけ持ち上げて笑う隼大に対して、不満げな顔をした。
「イヤですよ。イヤなんですけど、心づもりってってあるじゃないですか」
「心積もりって、なんのだよ」
「そ、それは……」
言い淀み杉山は隼大から目を逸らした。その頬が少し赤く見えた。
「あれです。憧れている人にベットは緊張するんですよ!」
投げ捨てるように言うと、隼大に背を向けて、布団に丸まってしまった。
「はいはい」
こんもりとお饅頭のようになった布団の上から、軽く叩きながら、どこに憧れる要素があったか。隼大は、ぼんやりする頭で考えた。
「憧れを持つ」という事はどういう事だろう。
憧れを持つとき、自分にないモノをその人に投影する。
もしくは、今の自分を多少なりとも不満を持っている時か。
もしかしたら、杉山は――。
隼大は、ヘッドボードに手を伸ばし、リモコンを手に取ると、電気を消した。
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