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ビルが立ち並ぶ一角に隼大の職場はある。
ビルが立ち並ぶ一角に隼大の職場はある。
十五階までぎゅうぎゅう詰めのエレベーターで上がり、簡素な灰色のプレートが下がっている扉を開けると、広々としたオフィスが出迎えてくれる。朝日が差し込む室内は明るく、夜のひっそりとした雰囲気とは大違いだ。
スタッフたちが、挨拶を交わす声、人の動く音、コピー機などの機械音がそれほど広くない社内に満ちていた。
朝の社内は、比較的ゆっくりと過ぎる。
ミーティングも以前は行われていたけれど、業務の見直しでなくなった。
その代わりの業務は増えたけれど、ミーティングがなくなっただけでも、時間に余裕ができる。
コーヒーを、淹れデスクの上に置く。ワークチェアに座り、モニターの枠に隙間なく貼った付箋を確認する。
立ち上げた画面に必要なソフトやアプリを開いていった。
個室とまではいかないが、両隣と前に仕切りが設けてある。その仕切りにも、メモが貼られている。
昨日までなかったメモが机の上に置いてあり、順に目を通していく。
そうしていると、後ろから声がした。
「よっ、はよ。企画会議、十四時だってよ」
ワークチェアに腕をかけ、もたれるように話しかけてきたのは、同期の堂岡だ。
顔だけを彼の方へと向けた。すぐ側にあるのは彫の深い顔。眉が太く、奥二重。鼻は高く、陰影がハッキリしている。精気のある顔だと隼大は評していた。
社内でも杉山ほどではないが、人気は高い。しかし、隼大にしてみれば、人懐っこい大型犬。必要以上に馴れ馴れしいのは未だに慣れない。
「そんなに、イヤな顔すんなよ。清々しい朝だろ」
口の端を持ち上げて笑う。
「確かに清々しいな。こんなに近くなかったら、もっと清々しいよ」
「へ、せっかく伝えに来たのに、冷たいね」
「もうちょっと、距離をとってほしい、というお願いさ」
しっしと、手で払う仕草をする。いつもなら、それで離れていくのに、手を軽くはたかれ、引っ込めた。
途端に、グッと距離を詰められ、顎を引き彼から逃げるようにワークチェアの背もたれに体を押し付けた。
ギシッと軋む音がする。
「お前さ、噂で聞いたんだけど、今日、杉山と一緒に出社したんだって?」
「……!」
「お、その顔。噂は本当か」
「それがどうした」
意味ありげな顔つきをする堂岡をワークチェアから振り払いつつ言った。
ビルが立ち並ぶ一角に隼大の職場はある。
十五階までぎゅうぎゅう詰めのエレベーターで上がり、簡素な灰色のプレートが下がっている扉を開けると、広々としたオフィスが出迎えてくれる。朝日が差し込む室内は明るく、夜のひっそりとした雰囲気とは大違いだ。
スタッフたちが、挨拶を交わす声、人の動く音、コピー機などの機械音がそれほど広くない社内に満ちていた。
朝の社内は、比較的ゆっくりと過ぎる。
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コーヒーを、淹れデスクの上に置く。ワークチェアに座り、モニターの枠に隙間なく貼った付箋を確認する。
立ち上げた画面に必要なソフトやアプリを開いていった。
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昨日までなかったメモが机の上に置いてあり、順に目を通していく。
そうしていると、後ろから声がした。
「よっ、はよ。企画会議、十四時だってよ」
ワークチェアに腕をかけ、もたれるように話しかけてきたのは、同期の堂岡だ。
顔だけを彼の方へと向けた。すぐ側にあるのは彫の深い顔。眉が太く、奥二重。鼻は高く、陰影がハッキリしている。精気のある顔だと隼大は評していた。
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口の端を持ち上げて笑う。
「確かに清々しいな。こんなに近くなかったら、もっと清々しいよ」
「へ、せっかく伝えに来たのに、冷たいね」
「もうちょっと、距離をとってほしい、というお願いさ」
しっしと、手で払う仕草をする。いつもなら、それで離れていくのに、手を軽くはたかれ、引っ込めた。
途端に、グッと距離を詰められ、顎を引き彼から逃げるようにワークチェアの背もたれに体を押し付けた。
ギシッと軋む音がする。
「お前さ、噂で聞いたんだけど、今日、杉山と一緒に出社したんだって?」
「……!」
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