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喫煙室に入ってきたのは堂岡一人だ。
センターで分けた髪の毛をかき上げた後、肩を回している。
「杉山は?」
「外回り。何飲んでんの?」
隼大に背を向け、自販機を見ながら聞いてきた。
「カフェオレ」
「カフェオレね。じゃあ、同じにしよっかな」
「……」
堂岡の独り言には、言葉を返さずに、カフェオレを飲んだ。
苦いようで甘い。
口の中に残る甘さに顔をしかめていると、隣に堂岡が移動してきた。
両手でカップを持ち、テーブルに肘をかけて体重を乗せた。
しばらく沈黙が続いたあと、堂岡がボソッと言った。
「落ち込んでいないか?」
「え?」
堂岡は、体を起こし、カップに口をつけている。
落ち込んでいるかと問われると、落ち込んでいるのだろう。
何気ない一言で注目を浴びてしまう。杉山の人気、それに伴う気苦労も少しだけ察した。ため息をつく代わりに、カフェオレでそれを胃の方へと流した。
「そう見えるか?」
「まあな」
「なんで呼び出した」
「そうピリピリすんなって。さっきの事で何か言おうっていうんじゃない。頼もうと思って呼び出したのさ」
何を言うのかと眉が寄る。
「川浪、あれは大きな見かけによらず、大きな闇を抱えているようにみえるんだ。聞き出そうと思って、半ば強引に飲みに連れていったけど、俺じゃなんともできなかったよ。聞き出してやることもできなかった」
一度区切ると、一口飲んでから言った。
「お前ならできるかもしれない」と。
「どうしてそんなことが言える。さっき空気読もうと思って滑ったし――」
見てただろ、と目線をくれるとフッと笑った。
「隠そうとしないお前がいいのかも知れない。俺だと、うまくごまかしてしまうけど、お前は誤魔化さない。頼れるというか、信頼があるんだろうな」
堂岡は顎に手を添え、考えるような仕草をした。
「杉山とはそれほど、会話してない。信頼なんてあるのか?」
「分からないけど、俺が信頼してる」
二ッと笑って言う。
「お前に信頼されても仕方ない」
「ひどっ」
「ウソだよ」
ハハハと乾いた声で笑う堂岡。川浪は、カフェオレを口に含んだ。
信頼してくれていたのか。
同期として一緒に働いている期間は、数か月ではない。数年だ。
けれど、堂岡の口から信頼という言葉を聞いたのは初めてだった。
口元が和らぐのが自分でもわかった。
逆に、自分自身は堂岡を信頼しているのだろうか。自問してみる。その答えは、イエスだ。本人に言わないのは、喜ぶ顔がなんとなく悔しいのだ。ひねくれていると思う。素直なのは堂岡の方だろう。そんなことを考えながら、カフェオレを飲み下した。
「俺さ」と、堂岡がつぶやくように言う。
「あいつを見てると、息苦しいんだ。なんとかしてやってくれ」
「よく見てるんだな」
「お前のことも見てるんだぞ」
心配していると言うように、眉間にしわが寄っている。
こんなに、分かりやすいのに、どうして分からなかったのだろうと苦笑した。
「そうみたいだな。イメージ変わったよ」と言うと、パッと顔が明るくなった。耳があるならピンっと立っているはずだ。
「だろ、もっとイメージアップしてもいいぞ」
「今のでダウンした」
「いや、上げて」
堂岡の情けなさそうな顔が笑いを誘った。
センターで分けた髪の毛をかき上げた後、肩を回している。
「杉山は?」
「外回り。何飲んでんの?」
隼大に背を向け、自販機を見ながら聞いてきた。
「カフェオレ」
「カフェオレね。じゃあ、同じにしよっかな」
「……」
堂岡の独り言には、言葉を返さずに、カフェオレを飲んだ。
苦いようで甘い。
口の中に残る甘さに顔をしかめていると、隣に堂岡が移動してきた。
両手でカップを持ち、テーブルに肘をかけて体重を乗せた。
しばらく沈黙が続いたあと、堂岡がボソッと言った。
「落ち込んでいないか?」
「え?」
堂岡は、体を起こし、カップに口をつけている。
落ち込んでいるかと問われると、落ち込んでいるのだろう。
何気ない一言で注目を浴びてしまう。杉山の人気、それに伴う気苦労も少しだけ察した。ため息をつく代わりに、カフェオレでそれを胃の方へと流した。
「そう見えるか?」
「まあな」
「なんで呼び出した」
「そうピリピリすんなって。さっきの事で何か言おうっていうんじゃない。頼もうと思って呼び出したのさ」
何を言うのかと眉が寄る。
「川浪、あれは大きな見かけによらず、大きな闇を抱えているようにみえるんだ。聞き出そうと思って、半ば強引に飲みに連れていったけど、俺じゃなんともできなかったよ。聞き出してやることもできなかった」
一度区切ると、一口飲んでから言った。
「お前ならできるかもしれない」と。
「どうしてそんなことが言える。さっき空気読もうと思って滑ったし――」
見てただろ、と目線をくれるとフッと笑った。
「隠そうとしないお前がいいのかも知れない。俺だと、うまくごまかしてしまうけど、お前は誤魔化さない。頼れるというか、信頼があるんだろうな」
堂岡は顎に手を添え、考えるような仕草をした。
「杉山とはそれほど、会話してない。信頼なんてあるのか?」
「分からないけど、俺が信頼してる」
二ッと笑って言う。
「お前に信頼されても仕方ない」
「ひどっ」
「ウソだよ」
ハハハと乾いた声で笑う堂岡。川浪は、カフェオレを口に含んだ。
信頼してくれていたのか。
同期として一緒に働いている期間は、数か月ではない。数年だ。
けれど、堂岡の口から信頼という言葉を聞いたのは初めてだった。
口元が和らぐのが自分でもわかった。
逆に、自分自身は堂岡を信頼しているのだろうか。自問してみる。その答えは、イエスだ。本人に言わないのは、喜ぶ顔がなんとなく悔しいのだ。ひねくれていると思う。素直なのは堂岡の方だろう。そんなことを考えながら、カフェオレを飲み下した。
「俺さ」と、堂岡がつぶやくように言う。
「あいつを見てると、息苦しいんだ。なんとかしてやってくれ」
「よく見てるんだな」
「お前のことも見てるんだぞ」
心配していると言うように、眉間にしわが寄っている。
こんなに、分かりやすいのに、どうして分からなかったのだろうと苦笑した。
「そうみたいだな。イメージ変わったよ」と言うと、パッと顔が明るくなった。耳があるならピンっと立っているはずだ。
「だろ、もっとイメージアップしてもいいぞ」
「今のでダウンした」
「いや、上げて」
堂岡の情けなさそうな顔が笑いを誘った。
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