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高校時代の蒼と、今日会った蒼。
顔が引き締まり、前よりも彫が深くなった。目元はもともと二重でぱっちりしていたが、彫りが深くなって少し目が細くなっていた。
幼さが抜け、精悍さが増して仕事をバリバリこなしている姿が安易に想像できる。
「あー、やっぱり好きだ」
六年も会っていないのに、会えばその六年なんてなかったように、高校のときの距離感に一気に戻ってしまっている。
返事が返ってこなかったのは、本音をいえばショックだし少し腹立たしい。でも、それは蒼にとって返事しにくかったことだとわかるから、納得はできる。
それよりも、本当のところ蒼がどう思っているのか、気になって仕方がない。嫌われたと思っていた。けど、今日の感じだとそうじゃなかったみたいだ。
別れ際、『近いうちに会いにくる』と言った。
これで終わりじゃない。また会いにくるってことだ。
六年も待ったんだ。
次に会うのは一年後か、はたまた十年後か。
僕は、気長に待つつもりだった。
なのに、二日後の週末。僕の前に蒼がいる。
土曜日の夕方五時。
その日は、朝から曇っていた。
いつも観ているテレビの天気予報は夕方から雨。じめっとした空気は、太陽が出ていなくても動いているだけで汗がでてくる。午後四時を過ぎたあたりからぽつぽつと雨が降ってきた。
ハウスでトマトの芽かきをする作業をしていると、雨音が次第に大きくなっていく。
一休みしようと手を止めて、車まで戻った。
と、着信音がしてポケットからスマホを出して画面に表示された相手は、蒼だった。
「今、実は千昌の家の前なんだけど、忙しいよな」
「えっ、どうしたの? なにかあった?」
「あったといえば、あった、かな。忙しかったらまた今度にする」
「大丈夫。少し待ってて。すぐ帰るよ」
「おう。待ってる」
電話を切り、道具を片付けてから、家に向かう。まだ作業の途中だけど、明日にまわせばいい。
ハウスから家までは五分ほど。
舗装されていない砂利道をガタガタと軽トラックで走っている間に、だんだん緊張してきた。
会える嬉しさと、どうしたのかという疑問が膨らんでくる。
雨で白く霞むような景色の中に、蒼が傘をさして道のわきに立っていた。
軽トラを蒼の立っている手前で停めた。
窓を開け声をかける。
「すぐそこだけど、乗って」
蒼は傘をたたみ、助手席に乗ってきた。
「悪かったな。作業の途中だったんじゃないのか?」
「いいって。話があって来たんだよね」
「ああ」
うなずいた蒼の表情は硬い。
どうしたのかと聞く間もなく、家の車庫前に着いた。軽トラからおり、僕は裏戸から入って玄関を開け、蒼を招き入れた。
汗と土の匂いで異臭を放っている作業着から、さっさと私服に着替えて、蒼のいる居間へと戻る。
蒼は居間におらず、立ったまま縁側から庭を眺めていた。今日も、濃紺のスーツ姿だ。休日も仕事がある職場なのだろう。傘をさしていても肩口やズボンの裾はぬれて色が変わっていた。
「着替える?」
「あ、貸してくれるなら」
僕は、蒼が前に来たときに貸した服を蒼に渡した。
「洗濯したから、使って」
「千昌んとこの服っていい匂いがするのな。変わってなくて懐かしい」
「きっと、柔軟剤だよ。一人で暮らすようになっても、ばあちゃんが使ってたメーカーのを使ってるから」
「そっか」
と言って、顔をうずめたままでいる。
服だけど、僕の服の匂いをかがれているようで気恥ずかしくなった。
「いつまで匂いかいでるのさ。着替えなよ」
蒼のひじをつついて、着替えを促した。
顔が引き締まり、前よりも彫が深くなった。目元はもともと二重でぱっちりしていたが、彫りが深くなって少し目が細くなっていた。
幼さが抜け、精悍さが増して仕事をバリバリこなしている姿が安易に想像できる。
「あー、やっぱり好きだ」
六年も会っていないのに、会えばその六年なんてなかったように、高校のときの距離感に一気に戻ってしまっている。
返事が返ってこなかったのは、本音をいえばショックだし少し腹立たしい。でも、それは蒼にとって返事しにくかったことだとわかるから、納得はできる。
それよりも、本当のところ蒼がどう思っているのか、気になって仕方がない。嫌われたと思っていた。けど、今日の感じだとそうじゃなかったみたいだ。
別れ際、『近いうちに会いにくる』と言った。
これで終わりじゃない。また会いにくるってことだ。
六年も待ったんだ。
次に会うのは一年後か、はたまた十年後か。
僕は、気長に待つつもりだった。
なのに、二日後の週末。僕の前に蒼がいる。
土曜日の夕方五時。
その日は、朝から曇っていた。
いつも観ているテレビの天気予報は夕方から雨。じめっとした空気は、太陽が出ていなくても動いているだけで汗がでてくる。午後四時を過ぎたあたりからぽつぽつと雨が降ってきた。
ハウスでトマトの芽かきをする作業をしていると、雨音が次第に大きくなっていく。
一休みしようと手を止めて、車まで戻った。
と、着信音がしてポケットからスマホを出して画面に表示された相手は、蒼だった。
「今、実は千昌の家の前なんだけど、忙しいよな」
「えっ、どうしたの? なにかあった?」
「あったといえば、あった、かな。忙しかったらまた今度にする」
「大丈夫。少し待ってて。すぐ帰るよ」
「おう。待ってる」
電話を切り、道具を片付けてから、家に向かう。まだ作業の途中だけど、明日にまわせばいい。
ハウスから家までは五分ほど。
舗装されていない砂利道をガタガタと軽トラックで走っている間に、だんだん緊張してきた。
会える嬉しさと、どうしたのかという疑問が膨らんでくる。
雨で白く霞むような景色の中に、蒼が傘をさして道のわきに立っていた。
軽トラを蒼の立っている手前で停めた。
窓を開け声をかける。
「すぐそこだけど、乗って」
蒼は傘をたたみ、助手席に乗ってきた。
「悪かったな。作業の途中だったんじゃないのか?」
「いいって。話があって来たんだよね」
「ああ」
うなずいた蒼の表情は硬い。
どうしたのかと聞く間もなく、家の車庫前に着いた。軽トラからおり、僕は裏戸から入って玄関を開け、蒼を招き入れた。
汗と土の匂いで異臭を放っている作業着から、さっさと私服に着替えて、蒼のいる居間へと戻る。
蒼は居間におらず、立ったまま縁側から庭を眺めていた。今日も、濃紺のスーツ姿だ。休日も仕事がある職場なのだろう。傘をさしていても肩口やズボンの裾はぬれて色が変わっていた。
「着替える?」
「あ、貸してくれるなら」
僕は、蒼が前に来たときに貸した服を蒼に渡した。
「洗濯したから、使って」
「千昌んとこの服っていい匂いがするのな。変わってなくて懐かしい」
「きっと、柔軟剤だよ。一人で暮らすようになっても、ばあちゃんが使ってたメーカーのを使ってるから」
「そっか」
と言って、顔をうずめたままでいる。
服だけど、僕の服の匂いをかがれているようで気恥ずかしくなった。
「いつまで匂いかいでるのさ。着替えなよ」
蒼のひじをつついて、着替えを促した。
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