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【5】2006年6月6日 12:22・教室・大雨。セッション(レン視点)。
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バンバンバンバンバンバンバンッ!!!
時間にするとどれくらいだろう?
数分は経ったと思うがセッションは収まる気配がなくまだまだ続いていた。
合間合間にアイナのふざけた謝罪が入り一時的に角刈りモアイの汚い怒号を止めてくれるのは素直に有り難かった。
《これでさらに10分、イヤ、この感じだと20分は説教が続きそう。むしろ続いてくれ・・・》
心の中でそう懇願する私はセッションを子守唄にウツラウツラ居眠り手前の瞑想をするか他の授業の宿題をするか悩ましい選択をしていた。
そんな中、それは突如として訪れた。
「いい加減にしッ!!ハゥッッッ!!??」
《はぅ・・・?》
角刈りモアイが小動物のような鳴き声をもらした。
どうやら声がかすれてしまったらしい。
風邪を引いて声が出なくなるというのは私も経験したことはあるが、絶叫に次ぐ絶叫で声が飛んだ人を生で見るのはこれが初めてだった。
これにはさすがに角刈りモアイを嫌悪しているクラスメイト全員が注目せざるを得ない。
「「「・・・・・・・・・・・」」」
数秒間、教室はおかしな静寂に包まれる。
他のクラスメイトがどう思っていたのか知らないが、私は呆気にとられるというよりどちらかというと叫び続けたら人はホントに声が飛んでしまうという証明をしてくれたことに少し感動していた。
「ハレッ?ハレッ?ハァ~~~・・・???ハレッ?ハッ!ハッ!」
本人は『ア』と言いたいのかもしれないが声がかすれているため『ハ』にしか聞こえない。
「サーセン?サーー・・・センッ?」
アイナが謝罪するたびに頭を左右に振りながら『どうしたんですか?大丈夫ですか?』みたいに心配する素振りでココぞとばかりに角刈りモアイを煽りまくっている。
その姿はさながら死体蹴り・・・。
「モドレッ・・・!席ニモドレッ!!」
「サセン?サーーセン?」
《サーセンがPardonに聞こえてきた》
突然声が飛んだことにさすがの角刈りモアイも焦っているのか、セッションはそこで終わりアイナの独壇場になってしまった。
「チョット、水ヲ飲ンデクルッッ!!」
そう言い残して一目散に廊下へ飛び出していった角刈りモアイ。
アイナは角刈りモアイを見届けると鬼の首でも取ってやったかのような悪い顔で自分の席へと歩きはじめた。その途中、クラスメイトの何人かがアイナが通る寸前に手を差し出してタッチを求めた。
角刈りモアイがいつ戻ってくるか分からないのでさすがにハイタッチはできないが、まるでハリウッドスターばりにアイナは悠然とタッチをしていく。
《まさかとは思うけど、アイナがほぼ毎回宿題を忘れて怒られてたのってこのためだったんじゃ・・・?》
根拠はないが、そう思わせるほどアイナの笑顔は極悪だった。
《イヤ、しかし、いくら何でも考えすぎか・・・》
昔のクセで少しでもネガティブな思考が浮かぶとそちらの方向についつい暴走気味になる。調子が良くなってからはあまりそういうこともなかったんだけど、少し冷静になった方が良さそうだ。
《アレは偶然。角刈りモアイが勝手に叫びすぎて声が飛んだに過ぎない。ただの偶然・・・》
そうやってポジティブな方向に考えることにした。
「やってやったぜ・・・」
「!!??」
しかし、アイナが私の席を通り過ぎる直前、私に聞こえる程度の小声ではっきりとそう語りかけてきた。通り過ぎるアイナの顔を見ると何ともしてやったりな表情で眉毛を上下させながら勝利を伝えてくる。
《ということはやっぱり、角刈りモアイの声を飛ばすためだけに計画としてわざと宿題を忘れ続けてたってこと?》
もし、そんな時間がかかり過ぎて成功する保証がない方法を4月からずっと実行していたのなら正気の沙汰じゃない。
明らかにやり過ぎだ。
《でも、まだアイナが計画を立ててやったとは言いきれないし。・・・あぁ、違う違う。そうじゃない、そうじゃないって》
ネガティブ思考は一旦隅へ追いやってちょっとポジティブに考えてみることにする。
《そうだ!ただの偶然をさも自分の手柄のように振る舞っている可能性もある。うん、コレだッ》
そう自分に言い聞かせてはみるが実際のところはアイナのみぞ知るというヤツなので何とも歯がゆい。
アイナに真偽を確かめたいところだけど一応授業中だし角刈りモアイは水を飲みに行っただけなので、すぐに戻ってくる可能性もありうかつに席を立つことはできない。
《昼休みにでも聞いてみよう》
そしてさらにポジティブに考えてみる。
仮にアイナが計画的に角刈りモアイの声を飛ばしたのが事実だったとして、私たちクラスメイトはアイナを責めることはできない。
何故なら、私を含め他のクラスメイトもあの時代錯誤甚だしい角刈りモアイから聞きたくもない怒号を理不尽に聞かされ続け、精神的にダメージを負った被害者だからだ。
高等部にあがったばかりの頃はとにかくあの怒号を聞くと気分が悪くなった。嫌で嫌でたまらなかった。生徒を怒鳴ることを教育だと勘違いしているのか、それとも個人的なストレス発散ためにやっているのか。
角刈りモアイも問題だが、それ以前に生徒数十人に対して教師が1人というシステム自体もう限界がきている気がする。MoooTubeのように予め撮った動画を流してプリントを渡してくれるだけで、しっかり勉強する子供は意外に多いと思う。
むしろそっちの方がどれだけ効率的だろう。
せっかく好きな教科なのに担当教師のせいで嫌いになったなんて話も結構ありそうだ・・・。現に私は倫理が持つ元々の意味不明さと角刈りモアイのせいで完全に苦手科目になってしまった。
10年後には動画が主流の授業が流行っているかもしれないと思うと自分が生まれた時代が残念に思えてならなかった。知識を得る喜びを角刈りモアイみたいな粗悪な教師がどれほど奪っているのか計り知れない。
《このまま自習になれば良いのに・・・》
『ざまぁみろ』とまでは言わないが角刈りモアイの声が飛んだことに対する私の感情はその程度だった。
時間にするとどれくらいだろう?
数分は経ったと思うがセッションは収まる気配がなくまだまだ続いていた。
合間合間にアイナのふざけた謝罪が入り一時的に角刈りモアイの汚い怒号を止めてくれるのは素直に有り難かった。
《これでさらに10分、イヤ、この感じだと20分は説教が続きそう。むしろ続いてくれ・・・》
心の中でそう懇願する私はセッションを子守唄にウツラウツラ居眠り手前の瞑想をするか他の授業の宿題をするか悩ましい選択をしていた。
そんな中、それは突如として訪れた。
「いい加減にしッ!!ハゥッッッ!!??」
《はぅ・・・?》
角刈りモアイが小動物のような鳴き声をもらした。
どうやら声がかすれてしまったらしい。
風邪を引いて声が出なくなるというのは私も経験したことはあるが、絶叫に次ぐ絶叫で声が飛んだ人を生で見るのはこれが初めてだった。
これにはさすがに角刈りモアイを嫌悪しているクラスメイト全員が注目せざるを得ない。
「「「・・・・・・・・・・・」」」
数秒間、教室はおかしな静寂に包まれる。
他のクラスメイトがどう思っていたのか知らないが、私は呆気にとられるというよりどちらかというと叫び続けたら人はホントに声が飛んでしまうという証明をしてくれたことに少し感動していた。
「ハレッ?ハレッ?ハァ~~~・・・???ハレッ?ハッ!ハッ!」
本人は『ア』と言いたいのかもしれないが声がかすれているため『ハ』にしか聞こえない。
「サーセン?サーー・・・センッ?」
アイナが謝罪するたびに頭を左右に振りながら『どうしたんですか?大丈夫ですか?』みたいに心配する素振りでココぞとばかりに角刈りモアイを煽りまくっている。
その姿はさながら死体蹴り・・・。
「モドレッ・・・!席ニモドレッ!!」
「サセン?サーーセン?」
《サーセンがPardonに聞こえてきた》
突然声が飛んだことにさすがの角刈りモアイも焦っているのか、セッションはそこで終わりアイナの独壇場になってしまった。
「チョット、水ヲ飲ンデクルッッ!!」
そう言い残して一目散に廊下へ飛び出していった角刈りモアイ。
アイナは角刈りモアイを見届けると鬼の首でも取ってやったかのような悪い顔で自分の席へと歩きはじめた。その途中、クラスメイトの何人かがアイナが通る寸前に手を差し出してタッチを求めた。
角刈りモアイがいつ戻ってくるか分からないのでさすがにハイタッチはできないが、まるでハリウッドスターばりにアイナは悠然とタッチをしていく。
《まさかとは思うけど、アイナがほぼ毎回宿題を忘れて怒られてたのってこのためだったんじゃ・・・?》
根拠はないが、そう思わせるほどアイナの笑顔は極悪だった。
《イヤ、しかし、いくら何でも考えすぎか・・・》
昔のクセで少しでもネガティブな思考が浮かぶとそちらの方向についつい暴走気味になる。調子が良くなってからはあまりそういうこともなかったんだけど、少し冷静になった方が良さそうだ。
《アレは偶然。角刈りモアイが勝手に叫びすぎて声が飛んだに過ぎない。ただの偶然・・・》
そうやってポジティブな方向に考えることにした。
「やってやったぜ・・・」
「!!??」
しかし、アイナが私の席を通り過ぎる直前、私に聞こえる程度の小声ではっきりとそう語りかけてきた。通り過ぎるアイナの顔を見ると何ともしてやったりな表情で眉毛を上下させながら勝利を伝えてくる。
《ということはやっぱり、角刈りモアイの声を飛ばすためだけに計画としてわざと宿題を忘れ続けてたってこと?》
もし、そんな時間がかかり過ぎて成功する保証がない方法を4月からずっと実行していたのなら正気の沙汰じゃない。
明らかにやり過ぎだ。
《でも、まだアイナが計画を立ててやったとは言いきれないし。・・・あぁ、違う違う。そうじゃない、そうじゃないって》
ネガティブ思考は一旦隅へ追いやってちょっとポジティブに考えてみることにする。
《そうだ!ただの偶然をさも自分の手柄のように振る舞っている可能性もある。うん、コレだッ》
そう自分に言い聞かせてはみるが実際のところはアイナのみぞ知るというヤツなので何とも歯がゆい。
アイナに真偽を確かめたいところだけど一応授業中だし角刈りモアイは水を飲みに行っただけなので、すぐに戻ってくる可能性もありうかつに席を立つことはできない。
《昼休みにでも聞いてみよう》
そしてさらにポジティブに考えてみる。
仮にアイナが計画的に角刈りモアイの声を飛ばしたのが事実だったとして、私たちクラスメイトはアイナを責めることはできない。
何故なら、私を含め他のクラスメイトもあの時代錯誤甚だしい角刈りモアイから聞きたくもない怒号を理不尽に聞かされ続け、精神的にダメージを負った被害者だからだ。
高等部にあがったばかりの頃はとにかくあの怒号を聞くと気分が悪くなった。嫌で嫌でたまらなかった。生徒を怒鳴ることを教育だと勘違いしているのか、それとも個人的なストレス発散ためにやっているのか。
角刈りモアイも問題だが、それ以前に生徒数十人に対して教師が1人というシステム自体もう限界がきている気がする。MoooTubeのように予め撮った動画を流してプリントを渡してくれるだけで、しっかり勉強する子供は意外に多いと思う。
むしろそっちの方がどれだけ効率的だろう。
せっかく好きな教科なのに担当教師のせいで嫌いになったなんて話も結構ありそうだ・・・。現に私は倫理が持つ元々の意味不明さと角刈りモアイのせいで完全に苦手科目になってしまった。
10年後には動画が主流の授業が流行っているかもしれないと思うと自分が生まれた時代が残念に思えてならなかった。知識を得る喜びを角刈りモアイみたいな粗悪な教師がどれほど奪っているのか計り知れない。
《このまま自習になれば良いのに・・・》
『ざまぁみろ』とまでは言わないが角刈りモアイの声が飛んだことに対する私の感情はその程度だった。
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