ハラヘリヴィーナス

雅誅

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【27】2006年6月6日 19:37・庭・大雨。厄日(レン視点)。

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「・・・ということで、明日はちょっと早めに登校します」

「かしこまりました。そのように送迎の者に伝えておきます」

「お願いします」



キィ・・・バタン。

「はぁぁ~」

玄関の扉を閉めてため息をつく。

この蒸し暑い梅雨の時期にきちんと体を拭く間もなく汗だくになりながらユアルとアイナの口論に割って入り、学園からの電話に冷や汗をかいて今度は土砂降りの中、護衛に登校時間の変更を伝えてきた。



視線を落とすと先程のお風呂がまるで無意味なくらいTシャツは汗でビショビショになり肌に張りついていた。イヤ、そんなことは脱衣所を出たときから気づいていた。


「う゛~~んッ!!」

トラブル解決のための労力消費が激しいのか、それともトラブルが大きすぎるのか分からないが、もう少し上手く立ち回れないかとアイナみたいに唸ってしまう。


《何にせよ、こんな状態で冷静に物事を考えるなんて無理だ》


リビングに入るとユアルがキッチンで食器を洗っている最中だった。


「ユアルー!私もう1回お風呂入ってきても良いー?ちょっと汗で気持ち悪くって」

「えぇ!どうぞー!私はまだやることがありますからー!」

「ありがとー!」


ユアルはいつも家事を全て終えて一番最後にお風呂に入るのだが脱衣所で鉢合わせになっても恥ずかしいので許可を貰った。



《お言葉に甘えて汗を流してこよう。あ、着替え持って来なくちゃ。はぁ、面倒くさい。今日は完全に厄日だ・・・》


やはり、すこぶる調子が良くなった云々の話は一旦撤回しようと思う。私の調子が良くなった分、別のトラブルが際限なく増えているような気がするからだ。しかも結果的にマイナスに転じているという末期的な状況。とてもじゃないが体調が良くなったことと釣り合ってない。








もう一度お風呂に入りサッパリした私は溜まっている宿題を片づけて明日の起床時間を目覚ましにセットすると、今日という最悪な日から早く解放されたい一心でさっさとベッドに潜り込んだ。

「はぁ~、もうダメ・・・」

さすがに今日はネットサーフィンをする体力も気力もない。


全てアイナの件で削り取られてしまった。それよりももっと重大な問題として、もしこの生活が終わったらネットすらできなくなるかもしれない。そうなったらまた本邸に戻り他人に囲まれるあの地獄のような日々に逆戻りだ。


メイドたちからは『出戻りお嬢様』なんて不名誉なあだ名までつけられるかもしれない。ただ、それさえも些細な問題だろう。もっと深刻なのはユアルとアイナの処遇だ。


ユアルは普段の素行と頭の良さから西冥に何らかの形で関われる可能性があるかもしれないけど、アイナは今のところ絶望的だと思う。



お祖父様は身内の言葉よりも、丹加部(にかべ)さんの言葉を優先することが多々ある。丹加部さんは40年以上、お祖父様と苦楽を共にして命まで守ってくれた恩人だ。そんな2人は家族ですら崩すことができない信頼関係が構築されている。


だからこそ身内の言葉よりも丹加部さんの助言を何よりも重要視しているのだが、その肝心の丹加部さんがどうもアイナを邪険にしているような気がしてならない。


日本の年寄りというのは変に礼儀を重んじるのが多いイメージだが丹加部さんは年寄りな上に使用人たちの総大将という礼儀まみれの人生を送ってきた重鎮だ。今日のやり取りもそうだが、逆に丹加部さんがアイナを肯定的に思える部分を探すほうが難しい。



私の思い違いじゃない場合、酷だけど丹加部さんはアイナが不利になるような助言をお祖父様にするだろう。私から見てもアイナの悪態は目に余りすぎる。そうなったらアイナは学園どころかこの家から出て行かなくてはならない。


それは非常に困る。


「はぁぁ、何はともあれ、まずは明日の角刈りモアイの出方を見てから対策を立てないとダメかなー。ふぅ、シンドイ」

《瞼が重い・・・》


私はそのまま泥のように眠りについた。

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