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海景
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夕方に入りそろそろ暗くなりだしそうなので、坂を下りて江之浦漁港へ向かおうとした。だけどあちらこちらに坂があるので、一体どの坂道を進めばいいものか……と立ち止まって悩んでいた。
—すると立ち止まる私の側を一人の女性が歩いて通り過ぎた。その女性は私と同い年か一つぐらい下の歳に見え、黒っぽい服とベレー帽を被り、ショルダーバッグを肩にかけている。先には民家や外灯が無く夕方で少し薄暗い上に、あちこちに坂道があるにも関わらず、その女性は躊躇うことなく平然と一人、ある坂道を下りて進んでいた。
恐らく地元民かなと思い、もしかすれば漁港へ近づくことが出来るかもしれないとそう考え、その女性が歩いた方向を同じようにして進んだ。
数百メートルは離れているもののなんだがストーカーまがいな行為に思われてしまうかもしれない、けど道がわからないし周りはみかん畑や木々などで人の気配も外灯も無く、十月後半の夕方は早く日が落ちてしまうので仕方なくそうするしかなかったのです。
柑橘畑に囲まれた坂はぐねぐねと曲がっており、進めば進むほど木々が深く、下り坂と上り坂を交互に歩くのでとても不安を感じていた。けれども前の女性はそのまま道を歩き続けている。まぁ途中で引き返しても坂をまた上るのもしんどいし、—海岸沿いに近づければいいやと思っていたので、ひとまず歩き続けることにした。
すると道の奥に小さく海が現れた。このまま行けば海岸沿いに出られるとそう思い、少し早歩きをするように前へと進む。—だが急に足を止めた。
私はその光景にとても驚いた。
私の目の前に写るのは左カーブの道とその奥に鋭い水平線の海が一面と大きく広がっていたのです。
夕方とはいえハッキリとみえている。向こうの三浦半島は水平線と化け、水色と橙色の空がまるで両手を差し出す女神のように、その左カーブの道を突き抜けた先であの海が落ちる身体を包むのだろうか。
そう想像した私は解放的な恐怖と同時に美しさを感じた。自然の力と残された人工物が偶然この景色を生み出していたことと、沖縄やパラオ、ハワイといった綺麗な海とは違い、地味ではあるものの、その中にある鋭利な水平線と光、何も聞こえない静寂な空間であるこの景色がとても美しく見えたのです。
杉本氏が言っていたことは本当だった。この江之浦の海は素晴らしい場所であることを。たとえ私の考えと杉本氏の考えが違っているかもしれないけども、江之浦から見る海の景色が美しいことはきっと同じ考えなのであろう……。
—すると立ち止まる私の側を一人の女性が歩いて通り過ぎた。その女性は私と同い年か一つぐらい下の歳に見え、黒っぽい服とベレー帽を被り、ショルダーバッグを肩にかけている。先には民家や外灯が無く夕方で少し薄暗い上に、あちこちに坂道があるにも関わらず、その女性は躊躇うことなく平然と一人、ある坂道を下りて進んでいた。
恐らく地元民かなと思い、もしかすれば漁港へ近づくことが出来るかもしれないとそう考え、その女性が歩いた方向を同じようにして進んだ。
数百メートルは離れているもののなんだがストーカーまがいな行為に思われてしまうかもしれない、けど道がわからないし周りはみかん畑や木々などで人の気配も外灯も無く、十月後半の夕方は早く日が落ちてしまうので仕方なくそうするしかなかったのです。
柑橘畑に囲まれた坂はぐねぐねと曲がっており、進めば進むほど木々が深く、下り坂と上り坂を交互に歩くのでとても不安を感じていた。けれども前の女性はそのまま道を歩き続けている。まぁ途中で引き返しても坂をまた上るのもしんどいし、—海岸沿いに近づければいいやと思っていたので、ひとまず歩き続けることにした。
すると道の奥に小さく海が現れた。このまま行けば海岸沿いに出られるとそう思い、少し早歩きをするように前へと進む。—だが急に足を止めた。
私はその光景にとても驚いた。
私の目の前に写るのは左カーブの道とその奥に鋭い水平線の海が一面と大きく広がっていたのです。
夕方とはいえハッキリとみえている。向こうの三浦半島は水平線と化け、水色と橙色の空がまるで両手を差し出す女神のように、その左カーブの道を突き抜けた先であの海が落ちる身体を包むのだろうか。
そう想像した私は解放的な恐怖と同時に美しさを感じた。自然の力と残された人工物が偶然この景色を生み出していたことと、沖縄やパラオ、ハワイといった綺麗な海とは違い、地味ではあるものの、その中にある鋭利な水平線と光、何も聞こえない静寂な空間であるこの景色がとても美しく見えたのです。
杉本氏が言っていたことは本当だった。この江之浦の海は素晴らしい場所であることを。たとえ私の考えと杉本氏の考えが違っているかもしれないけども、江之浦から見る海の景色が美しいことはきっと同じ考えなのであろう……。
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