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数日後、信茂は行村に話した通り、岩殿城へ向かう武田勝頼の受け入れを拒んだ。長年仕えていた武田氏とお館様を離反したのである。信茂に裏切られた武田勝頼とその一味らは織田の家臣、滝川一益らの隊に追い込まれてしまい、天目山にて武田勝頼一行は自害した。これにより甲斐武田氏は滅亡したのであった。
翌日、岩殿城にいる行村にも勝頼の自害と武田の滅亡の知らせが届いた。
「お館様……、お許しください……」
行村は城の外から郡内の景色を眺め、悔やむようにして小さく呟いた。
すると、後ろから1人の女が行村の所へ来る。この者は折花姫と言う行村の娘であり、それは美しい顔をしていたのである。
「父上、どうかなさいましたか?」
折花姫は父である行村を心配していたのだった。
「いや、少し考え事をしていただけじゃ」
「そうですか」
「心配しなくてよいぞ」
「聞きました——。甲斐のお館様の事を……。これから私達はどうなってしまうのですか?」
姫はそう言うと、行村は優しい顔をして姫の肩に手を掛ける。
「娘よ心配するでない。今信茂殿が織田に加わるように甲斐善光寺へ向かわれておる。大丈夫じゃ安心せい——」
その言葉に姫は笑顔になり、「はい」と大きく返事をした。
「姫さま、姫さまー!」
大声で姫を呼んでいるのは折花姫の世話をしている翁と姥であった。この者達は姫が小さい頃から側にいて、姫もこの二人にとても懐くほど親しかったのであります。
二人は姫を探しているのだが、姿を見つけるとすぐに姫の元へ駆けつけた。
「姫様! 何処へ行ってたのですか⁉︎ 心配しましたぞ」
「婆やごめんなさい、父上の所に参りたかったの」
「行村様、大変申し訳ございません」
「いえいえ、爺やも大変ですな」
行村は笑いながら言うと翁は照れるように小さく一礼した。
「さぁ、爺やと婆やの所へ行きなさい。ワシは大丈夫だから」
「はい、父上」
「さぁ姫様、戻りましょう」
「うん」
翁と姥に連れられて自分の館へと戻る。行村は姫の後ろ姿が娘ながら美しく見え、それは亡き妻の背中と似ていたのでした。
小山田家はこれで家の危機から逃れるかと思われた。しかし、行村と折花姫に思いもよらぬ悲劇が起きてしまうのである。
翌日、岩殿城にいる行村にも勝頼の自害と武田の滅亡の知らせが届いた。
「お館様……、お許しください……」
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すると、後ろから1人の女が行村の所へ来る。この者は折花姫と言う行村の娘であり、それは美しい顔をしていたのである。
「父上、どうかなさいましたか?」
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「いや、少し考え事をしていただけじゃ」
「そうですか」
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「聞きました——。甲斐のお館様の事を……。これから私達はどうなってしまうのですか?」
姫はそう言うと、行村は優しい顔をして姫の肩に手を掛ける。
「娘よ心配するでない。今信茂殿が織田に加わるように甲斐善光寺へ向かわれておる。大丈夫じゃ安心せい——」
その言葉に姫は笑顔になり、「はい」と大きく返事をした。
「姫さま、姫さまー!」
大声で姫を呼んでいるのは折花姫の世話をしている翁と姥であった。この者達は姫が小さい頃から側にいて、姫もこの二人にとても懐くほど親しかったのであります。
二人は姫を探しているのだが、姿を見つけるとすぐに姫の元へ駆けつけた。
「姫様! 何処へ行ってたのですか⁉︎ 心配しましたぞ」
「婆やごめんなさい、父上の所に参りたかったの」
「行村様、大変申し訳ございません」
「いえいえ、爺やも大変ですな」
行村は笑いながら言うと翁は照れるように小さく一礼した。
「さぁ、爺やと婆やの所へ行きなさい。ワシは大丈夫だから」
「はい、父上」
「さぁ姫様、戻りましょう」
「うん」
翁と姥に連れられて自分の館へと戻る。行村は姫の後ろ姿が娘ながら美しく見え、それは亡き妻の背中と似ていたのでした。
小山田家はこれで家の危機から逃れるかと思われた。しかし、行村と折花姫に思いもよらぬ悲劇が起きてしまうのである。
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