ジィジ宮・バァバァ宮

士鯨 海遊

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 それは勝頼の死の知らせから三日後の事、城の者が大慌てで行村の所へと駆けつける。
 「行村殿、大変でござりまする!」
 「どうしたのだ?」
 「当主様が……、当主様が甲斐善光寺にて斬首されたとのことでごさいます!」
 「な、何じゃと! 一体どういうことだ!」
 「甲斐善光寺で当主様が人質を差し出して織田に忠誠を誓うつもりでしたが、お館様への裏切りが不忠であると咎められ、当主様及び一家もろとも捕らえられてしまい、処刑されたとのことです!」
 「そんな……まさか……」

 織田の配下に加わろうと動いていた信茂であったが、甲斐善光寺に来た織田信長の子、織田信忠は主君武田勝頼と武田氏への離反が原因とされ、信茂は忠誠を誓うどころか不忠者とされてしまい斬首されたのである。
 行村は膝をつき頭を抱えた。
 「信茂殿……」
 城の者は続けて言う。
 「それにより織田は小山田の者を敵と見なし、こちらへ向かっているとのこと。ここは我らが食い止めるので行村殿、どうか急ぎお逃げください!」
 城の者からの知らせを聞いた行村はすぐに立ち上がって刀を持つと、「すまぬ、後は任せた」と城の者に伝え、急ぎ自分の館へと駆けつけた。

 館に着くとそこには娘である折花姫と翁と姥が同じ部屋にいたが、慌てて来た行村の行動に三人は驚くのである。
 「行村殿、どうかなされましたか?」
 「大変じゃ! 織田の追手が我々を捕らえに来るぞ!」
 「なんと⁉︎」
   三人は行村の言葉に一瞬固まる。
 「父上、どういうことですか……?」
 「信茂殿が斬首された。織田は我ら小山田を敵としたのじゃ——」
 「そんな……」
 「当主様が……」
 姫は自分達が今命の危機にさらされている事を知り、絶望感が一気に広がって悲しげな顔を浮かべた。
 「とにかくここにいては危険だ、爺や婆や、急ぎ逃げるのじゃ!」
 「ははっ!」
 翁はすぐにも刀を取りにいき、姥ひ姫の背中に手を添えてさする。
 「姫様、ここから逃げましょう。妾達がいますから大丈夫ですよ」
 「はい……」
 姫は立ち上がり草履を履く。翁と姥は少しの荷物を背負うとそこで待つ行村と姫と共に外へ出て館を離れた。
 「行村殿、どちらへお逃げなさるのですか?」
 翁が言うと行村はすぐに答えた。
 「甲斐にいてはいずれ織田の者に捕らえられるだろう。ここは相模へ入り北条の所へ行こう」
 「北条ですか⁉︎」
 「ああ、敵とはいえかつては武田と同目を結んだ事がある。今の北条なら我々を匿わせてもらえるかもしれん。それを信じて小田原へ向かおう」
 「かしこまりました」

 小山田行村と折花姫、そして翁と姥は岩殿城を去り、相模国の小田原へ向けて山の中へと入った。
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