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ツツジ(燃え上がる想い)
①ライラック(別れと芽生。お母さん)①
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◯◯が目を覚ました場所は、全てが冷たく澄んだ白い光に包まれていた。
その光は、時間さえも凍りつかせているのか、
周囲は完全な静寂に包まれ、
彼女は、立っているのか、浮かんでいるのか、
はたまた横たわっているのかさえわからず、身体の感覚も希薄だった。
唯一よかったのは、冷たさや熱さえも感じることが無く、
痛みや苦しみといった、いつも感じていた友達も消えている事だった。
この光りに包まれた空間で、彼女がかろうじて感じられたのは、
自分自身の存在と、心の片隅に残る微かな想いだけだった。
しかし、何処から来たのか、自分が誰だったのか、何を探していたのか、
そんな重要な想いも、ぼんやりとした輪郭しか持っていなかった。
(何処から来たの?私は誰? あの人は?ここは?)
何度考えても答えは見つからない。どうやってこの場所に来たのか、
その記憶すらもはっきりしていなかった。
彼女が最後に覚えているのは、
激しい痛みと苦しみから解放された瞬間に訪れた喜びだった。
これは死なのだろうか?それとも、何か別の現象なのか?
その問いすらも、彼女の中で次第に希薄なものになっていった。
そして、最後に残っていた探し物の記憶が消えそうになると、
他を犠牲にしてまで、それを手放さないようにしているので、
自分が自分であるという感覚すら、次第に溶け出していった。
そして、その心の中にあった探し物への想いまで、
周囲の白い光の中に溶け込んでいくと、
これまでの全てを洗い流してしまうような、
心地良い感覚が全身に広がっていった。
。
「。。。っ。。。」
彼女は薄れゆく意識の中で、ふと何かが気になっていた。
それは最初、ただの小さな点に過ぎなかった。
だが、その点はじわじわと広がり、黒いシミのような大きさになると、
どろどろとした粘り気のある黒いヘドロに変わっていた。
その光景を見ている彼女は、言いようのない不安感が駆け巡り、
とうとう見ることさえ恐ろしくなっていった。
その濃く黒いヘドロは、この静寂な真っ白な世界を徐々に汚染していき、
そして、それはまるで意志を持つかのように一部が膨らみ、
目などないはずなのに、彼女をじっと見つめている気がした。
そこから感じるのは、幼い頃に感じていた物と同じで、
どこか知らない者から向けられる粘りつく視線に似ていたので、
彼女は、すぐにでも逃げ出したかったが、
身体という感覚が無いので、何も出来なかった。
もし、その小さな点に気づいていなかったら。
もし、この冷たく澄んだ白い光にそのまま溶け込んでいたなら。
このまま、何も知らずにいられたが、
だが、彼女はそれに気づいてしまい、その視線を見つめ返してしまった。
「。。。ポタッ。」
彼女がその存在に気づいた瞬間、心が微かに揺らぎ、
鏡のように完璧だった白い空間に、ほんのわずかな歪みが生じていた。
その歪みに気づいた彼が、何故それをしたのかわからない、
遥か昔に呼ばれていた呼び名で、彼女でさえも忘れていた名前を、
小さな黒い水滴にのせて、その場所に注いでいた。
(。。?。。○。。○。。○○!)
彼女に声はなく、記憶もないはずなのに、
その水滴とともに何かが彼女の中に染み込んでくるような感覚があった。
それまで、心地良い場所を漂っていたような気持ちが揺らぎ始め、
彼女の存在が再び形を取り戻し始めた。
そして、それに伴い、重く苦しい心が再び蘇ってきた。
「ああ、ごめん、○○。アハハハハ。」(○○?○○?○○??)
声よりも先に、何かが戻ってくる感覚に彼女は焦り始めた。
しかし、黒い染みは徐々に明確な形を持ち始め、彼が口にする言葉が、
白い世界を次々と侵食していった。
彼の言葉が白い世界に触れるたびに、濁った泉が生まれ、
そこから彼女に向かって小さな流れが押し寄せた。
そして、その流れが彼女の周りを這い回るたびに、
彼女は引き裂かれるような痛みと苦しみに襲われていた。
。
なぜ彼女に声をかけたのか、なぜ興味を抱いたのか、
なぜ観察し、なぜ近づいたのか。色も存在しない、ただ真っ白な世界。
大きさも距離も意味を持たないこの場所で、
微かに蠢くその姿を楽しんでいるらしく、彼は次の言葉を投げかけた。
「ああ、そうか。ごめんねぇ。は。。な。。こ。さん、だっけ?
アハハハハ。はなこぉ。それとも、花子か?」
「うえぇええ、げぇええ。はなこ? そう、花子。げぇええ。」
(いやぁあッ。いやよ、来ないで! もういい、もう来ないでぇ!)
彼の声は、少し前に聞いた言葉の断片だった。
その音を聞くなと、誰かが叫んでいるような気がしたが、
探し物に気付いた◯◯が、その言葉の断片に手を伸ばすと、
白い世界が波立ち、彼女を拒絶し始めていた。
すると、子供時代の記憶や、旅の途中に見た風景が、次々と蘇ってきた。
その度に、身体中を這い回っていた虫がある形を取り始め、
さらなる多くのものを集め始め、彼女の身体に潜り込んでいった。
記憶という鎖。思い出という苦しみ。愛という狂気。
それらが彼女を縛りつけ、激しい苦しみと絶望の感情が、
再び彼女を追い詰め、何を探していたのかをハッキリ思い出させた。
(ジン。。)
その暖かい思いを求めるたびに、意識が少しずつはっきりして、
黒いヘドロだった存在が、ある動物の姿に見え始め、
自分の名前が「花子」だったことも、
あの穏やで心地良い記憶の意味も蘇っていた。
「うぅん。。ああ、麗華ちゃんだったっけ? いやぁ、ごめぇええん。」
「何を言っているの?レイカ?麗華。。じゃあ、あなたは?」
ついに彼女の半身までが、黒いヘドロに取り込まれていった。
そうやって、全てを取り戻した花子の周辺は、
さっきまで広がっていた冷たく澄んだ白い光は消えてしまい、
今やどす黒く淀んだヘドロの塊になっていた。
「君から見れば、「異物」って表現が、
一番しっくりくるんじゃないかナァァァァ。異物だよぉお。」
「異物?」
「まあ、気にしなくていいよ。どうせ、すぐに忘れちゃうんだからあぁ。
さあ、おやすみ。眠れぇええ、眠れぇええ。オヤスミなさいィイイ。」
「眠くない!絶対にネナイ!アンタが起こしたんでしょぉお!」
彼女の意識が鮮明になるにつれ、自分がどうなっているのか、
これからどうすればいいのか、もう一度あの世界に戻るためにはと、
そんな戸惑いや焦りの感情が膨れ上がっていた。
しかし、その感情はあの暖かい光を求める思いには到底及ばなかった。
そして、異物である存在もまた、彼女に対して混乱しているようだった。
「本当に邪魔してごめんねぇ。。○○かなぁ。それとも麗華ちゃん?
イヤぁ、ごめん、ごめぇえん。許してぇえ、はなちゃん。アハハハ。」
(どうして彼女は気づいたんだ?
本来なら、もうすぐ消える存在が、見えるはずもない俺を見てきた。
俺はただ、彼女が消える瞬間を観察していただけなのに。
この子に、何か特別な力があるのか?なぜ彼女は戻ってきた?
誰かが彼女に何かをしたのか?それとも、彼女には何かできるのか?
この世界で。まさか、この場所で、この世界に。そんなことが?)
もちろん、彼がここにいた理由は、彼女との会話とは別だった。
彼はただ、アレに殺された花子が消える瞬間に何かが起こるかもと、
自分の知らないことが起こるのかもと、興味を持っただけだった。
しかし、何故か彼女に気づかれ、自分の姿を見られてしまった。
それ自体があり得ない現象だったが、
それ以上に、今もなお続いているこの状況こそが、
彼にとってさらに有り得ない出来事であることに気づいていた。
「ちょっと待って、何か言いたいことがあるんでしょ?」
花子は、相手が混乱していることを知っているのか、
それともそれ以上に重要なことに気づいたのか、慌てて問いかけ続けた。
「特にないけどぉ。。アハハハ、そういうの、あるよネェ。」
(どこだ?どこにいる?どこから見ている?どこだ?どこからだ!)
異物は冷静を装って答えているが、
内心では、この世界に自分以上の力を持つ存在か、
自分に匹敵する存在がいるかもと興奮していた。
もしそれが本当なら、生死や運命に干渉できるはずだし、
その存在が、この女に干渉しているせいで気付かれたと考えていた。
「お前を勇者にぃいい。。。とか、
君には使命がある、ぜひこの国を救ってくれ。。。とか、
それとも。。ああ、ごめんねぇ、間違えちゃったぁぁ。。。とか、
世界を守るためのエネルギーが。。。とか、」
「。」
「ああ、なんでも希望を叶えてやるから、君も○○○にならないか。とか?
まあ、そんなのもあるかもネェ。
希望って無限だから、希望って言うんだし。
でもね、なんでもは無理だよぉ。なんでもなんて出来ないよ。アハハ。」
「。。。」
異物の独白は続き、花子は自分が何かに巻き込まれている気がしていた。
「希望なんて叶えられないんだよぉ。アハハハ。あれってすごいよねぇ。」
(ま、いいだろう。この女か。。クククッ、いいぞぉ。。アハハハハ。)
彼は、花子を相手にするたびに感じる違和感に気付いていた。
「希望?」「希望なんて、最悪のお土産だよ。」
「ち。。違う。絶対に違う。希望は。。きぼ。。希望。。」
(ジンさん。あなたは? 本当にいなかったの? あれは妄想だったの?)
生きる希望など、花子にはもうなかった。
彼が消えた後の世界は、苦しみと絶望しか残されていなかった。
自ら命を絶とうと何度も考えたが、彼との約束がそれを許さなかった。
「希望なんて、一番最初に消した方がいい感情だよね。本当に最悪だよぉ。
君もわかったでしょ?最高に人を不幸にするシステムだよねぇえ。」
(アハハハハ。いいのかなぁ、大事なんだろぉお。アハハハハ。)
「ちょっと待って!」「あらあら。まあまあ。あァーアーアー。」
「ちょっと、待ちなさいって!!聞きなさいよ!!!」
(もう少し。。あと少しよ。そう。これなのよ。これが。。。)
異物が言う通り、
彼が生きているという希望を、消した方が楽だと思ったこともあった。
しかし、彼女には、彼に会いたいという思いだけが残っていたし、
それ以外は何も欲しくなかった。
「じゃあ、人だったものよォ。これで、私との謁見の時間は終わり。
おわりぃいい。終わりにしようってねぇ。」
「だァあかぁああらああぁ。。イヤ!いやなの!いやぁあァあ。」
「痛いし、苦しいし、怖いし。。。それに、悲しいよぉ?」
「ハァア?痛み?苦しみぃい?それはさっきから味わっているじゃない。
何でもいいから、さっさと説明して。早くしなさいよ。」
「ハァアぁああ。カーンたん。君さぁ、もう死んだんだよ。
世界から旅立ったの。パチパチ、パチパチ。世界からクリアーだぁ。」
「し。。死んだの?」
「君さぁ、気づいてるのに、確認するなんて気持ち悪いよぉお。」
「。」
(私、死んでいるの?じゃあ、もう終わり?これ以上、彼を探せないの?)
ジンの死を受け入れていなかった彼女だが、
もし自分が死んでいるのなら、生きている彼を探すことはできない。
それに、自分から死んだわけでもないので、
彼との約束を破ったわけではない。
もしかしたら、このまま死んでも彼に許してもらえるのかもと、
そんな不思議な気持ちが膨らんでいた。
「君の環境だとぉお、固定する箱が消失?焼失?火葬カナァあァ。
繋がりが切れちゃったぁああ。だから、死んだよ。死んじゃったあぁ。」
(さあ、選ぶぞぉお。いいのかぁ。クククッ。さあ、選ぶんだぁ。)
「んっ。。あなたの環境だと?」
(やっと。そうよ。これが。これが次の鍵。これが彼に繋がる鍵!)
本来ならば、このまま素直に死を受け入れればよかったのかもしれない。
だが、彼が死んでいないという確信と、彼に会いたいという心が、
異物が喜んでいる「絶対に選んではいけないもの」を選んでしまった。
「アレぇええ、気づいたァ?気づくんだぁあ。アハハハハ。」
(まあ、俺が気づくように仕向けたんだけどさぁアアア。)
「サッサと教えて!」
「面白い子だねぇ。じゃあ、聞きたいことを話そうか。
僕の環境では、君を戻すことができる。戻せちゃうんだよぉおおお。」
「じゃあ、戻して。」
(神様?いや、悪魔でもいい。どんな化け物でも。何でもいい。)
これが鍵なのだろうか?これが自分への救いなのだろうか?
確かなことは一つだけ、彼女がコレに「希望」を重ねた事だった。
「うぅん、僕は異物だよ。君も異物になるってこと、わかってる?
君の環境では、起こらない事象を引き起こすことになるんだよ。
わかるぅうう?何が起こるか、わからないよォオオ。
何が出るかなぁああ。タラっタっラ。。。タララらん。。。。どん。」
「ふざけないでいいから、戻して!」「めんどくさい。」
「何かが気になったから見ていたんじゃないの?」「はぁぁ。だるい。」
「いいから戻せェエエエ!」
「うぅうん、そうだなあぁ。。そう言えば。うゥウン。。利点がない。」
「実はあるんでしょ!?絶対にあるよねぇえええ!」
(絶対に、絶対に嘘だ。これが、これがジンさんに会える鍵なのよ!)
どう言えばいいのだろうか、この異物は確かに自分に興味を持っていた。
もし彼が望む選択肢を選べば、必ず先に進めると信じていた。
花子という枷を引きちぎり、麗華という虚飾に包まれていた頃のように、
彼に会えるなら、どんな過酷で残酷な事でも受入れようとしていた。
「アハハハ。本当に戻りたいの?戻っちゃうのぉお?ほんとうにぃい?
痛いし、苦しいし、悲しいし、怖いよぉぉぉ。いいのかなぁ?」
「。」
「素直に寝たほうが楽しい?感じなくなるからぁあ。嬉しい?
これも無いから、解放されるって感じかなぁあ。アハっ、アハハ。」
「。」
「いやあぁ。うん。祝福されるかなぁ。これが一番ぴったりだね。
神に選ばれた人間よぉお!祝福を受け取れッテぇえのぉお!ウハハ。」
「そんな祝福なんていらない。そんなの、何もいらない。
痛くても、怖くても、苦しくてもいい。悲しいのも。だい。だい。」
(ジン、お願い。ジンさん、どうか答えてよ。話を聞いてぇええ。)
自分が死んでいるのなら、世界は戻った自分を拒絶するだろうし、
この異物がどのような姿で、生まれ変わらせるのかも解らなかった。
もしかしたら、見つけてもらえないかもしれないし、
戻ったときに、彼から憎まれるかもしれないという不安もあった。
それでも、憎まれても会いたいという自分勝手な心と、
彼にもう一度愛されたいという、ワガママな気持ちの中で揺れていた。
「うぅううん。彼もひどいよネェえ。最悪な人でしょぉお。
希望なんて、最初に消せば良かったのにさあぁああ。」
(ギャハハハ。来たな。アハハハハ。いいねぇ。この子の知り合いか?)
「◯◯」「んっ?」
「あっ。アハハハ。彼は、ちゃんと消したってさぁ。アレぇえ。」
「消した?誰と? 誰と話しているの?ソコニイルのはダレ?」
(ジン、いるんでしょ? そこにいるよね。私に会いに来たの?)
この異物が、誰と話しているのか、誰を見ているのか解らない、
彼女には何も見えず、感じることさえも出来なかった。
もちろん、彼女を苦しめるために演技しているようにも見えるが、
それを希望だと信じた花子の心を、変えることは出来なかった。
「そうだねぇ。君が望んでいた希望を手繰り寄せたが、
もう少しでダメだったという感じかなぁあ?アハハハハ。」
「もう少し?」
「君って、もう少しだったみたいだよ。いやぁあ、惜しかったァ。」
「うるさい。サッサと戻せ!」
「だァあからぁあ。十分、希望を楽しんだでしょ?もうやめようよぉ。」
「何でも支払う。何でも受け入れる。何でも捧げる。
何でもいい。何に生まれ変わってもいいから、あの世界に戻して!」
「◯◯◯ ◯◯ ◯◯◯」
「でもぉおお。うぅうん?」「何でも。何でもする。ダカラァアア。」
「まあぁああ。君の事も気になるしぃ、
君が求める光なら与えよう。アハハハ。世界の祝福を拒んだ人間よ。」
(悪いねぇえ。契約だよ。だって、彼女が望んだ契約だからなァ。)
「◯◯◯ ◯◯ ◯◯◯」
誰かを想い、誰かを愛し、誰かを慈しみ、
世界を愛した男の叫びが、この澄んだ白い世界を満たしていた。
必死に幸福を願い、愛を注ぎ、彼女を見守る彼の叫び声は、
異物にとってまるで娯楽のように映っているのだろう。
異物は、とても嬉しそうに笑っていた。
そう、必死に彼女を引き止めようとする彼が、
絶望に染まっていく姿を見て、異物の心は喜びに満ちていた。
(ジン。絶対に会いに行くから。もう迷わない。絶対に見つけるから。)
「アハハハハハ。。さあ、苦しみに満ちた世界に舞い戻り、
もっとも苦しく、救いなどない世界に舞い戻れ。リザレクション。」
「◯◯◯◯◯◯◯◯」
「イギィイイイ。いぎゃぁアア。ぐぎゃぁっくぁあ。ジッン。ジン。」
彼女は全身が細切れにされるような感覚と、
温かい何かから無理やり引き剥がされる痛みに襲われていた。
その後、彼女の心が消え、
世界は異物を吐き出して、元の澄んだ白い光に戻っていた。
この後、麗華が何を求め、花子が何を与えられ、◯◯が何を失い、
この世界に絶望するのか、ここを壊すのか、ここを愛せるのか。
ただ影は、嬉しそうに笑っていた。
その姿を見ても、彼女は微笑んでいた。それでもいいと、穏やかに。
①ライラック(別れと芽生。お母さん)①
その光は、時間さえも凍りつかせているのか、
周囲は完全な静寂に包まれ、
彼女は、立っているのか、浮かんでいるのか、
はたまた横たわっているのかさえわからず、身体の感覚も希薄だった。
唯一よかったのは、冷たさや熱さえも感じることが無く、
痛みや苦しみといった、いつも感じていた友達も消えている事だった。
この光りに包まれた空間で、彼女がかろうじて感じられたのは、
自分自身の存在と、心の片隅に残る微かな想いだけだった。
しかし、何処から来たのか、自分が誰だったのか、何を探していたのか、
そんな重要な想いも、ぼんやりとした輪郭しか持っていなかった。
(何処から来たの?私は誰? あの人は?ここは?)
何度考えても答えは見つからない。どうやってこの場所に来たのか、
その記憶すらもはっきりしていなかった。
彼女が最後に覚えているのは、
激しい痛みと苦しみから解放された瞬間に訪れた喜びだった。
これは死なのだろうか?それとも、何か別の現象なのか?
その問いすらも、彼女の中で次第に希薄なものになっていった。
そして、最後に残っていた探し物の記憶が消えそうになると、
他を犠牲にしてまで、それを手放さないようにしているので、
自分が自分であるという感覚すら、次第に溶け出していった。
そして、その心の中にあった探し物への想いまで、
周囲の白い光の中に溶け込んでいくと、
これまでの全てを洗い流してしまうような、
心地良い感覚が全身に広がっていった。
。
「。。。っ。。。」
彼女は薄れゆく意識の中で、ふと何かが気になっていた。
それは最初、ただの小さな点に過ぎなかった。
だが、その点はじわじわと広がり、黒いシミのような大きさになると、
どろどろとした粘り気のある黒いヘドロに変わっていた。
その光景を見ている彼女は、言いようのない不安感が駆け巡り、
とうとう見ることさえ恐ろしくなっていった。
その濃く黒いヘドロは、この静寂な真っ白な世界を徐々に汚染していき、
そして、それはまるで意志を持つかのように一部が膨らみ、
目などないはずなのに、彼女をじっと見つめている気がした。
そこから感じるのは、幼い頃に感じていた物と同じで、
どこか知らない者から向けられる粘りつく視線に似ていたので、
彼女は、すぐにでも逃げ出したかったが、
身体という感覚が無いので、何も出来なかった。
もし、その小さな点に気づいていなかったら。
もし、この冷たく澄んだ白い光にそのまま溶け込んでいたなら。
このまま、何も知らずにいられたが、
だが、彼女はそれに気づいてしまい、その視線を見つめ返してしまった。
「。。。ポタッ。」
彼女がその存在に気づいた瞬間、心が微かに揺らぎ、
鏡のように完璧だった白い空間に、ほんのわずかな歪みが生じていた。
その歪みに気づいた彼が、何故それをしたのかわからない、
遥か昔に呼ばれていた呼び名で、彼女でさえも忘れていた名前を、
小さな黒い水滴にのせて、その場所に注いでいた。
(。。?。。○。。○。。○○!)
彼女に声はなく、記憶もないはずなのに、
その水滴とともに何かが彼女の中に染み込んでくるような感覚があった。
それまで、心地良い場所を漂っていたような気持ちが揺らぎ始め、
彼女の存在が再び形を取り戻し始めた。
そして、それに伴い、重く苦しい心が再び蘇ってきた。
「ああ、ごめん、○○。アハハハハ。」(○○?○○?○○??)
声よりも先に、何かが戻ってくる感覚に彼女は焦り始めた。
しかし、黒い染みは徐々に明確な形を持ち始め、彼が口にする言葉が、
白い世界を次々と侵食していった。
彼の言葉が白い世界に触れるたびに、濁った泉が生まれ、
そこから彼女に向かって小さな流れが押し寄せた。
そして、その流れが彼女の周りを這い回るたびに、
彼女は引き裂かれるような痛みと苦しみに襲われていた。
。
なぜ彼女に声をかけたのか、なぜ興味を抱いたのか、
なぜ観察し、なぜ近づいたのか。色も存在しない、ただ真っ白な世界。
大きさも距離も意味を持たないこの場所で、
微かに蠢くその姿を楽しんでいるらしく、彼は次の言葉を投げかけた。
「ああ、そうか。ごめんねぇ。は。。な。。こ。さん、だっけ?
アハハハハ。はなこぉ。それとも、花子か?」
「うえぇええ、げぇええ。はなこ? そう、花子。げぇええ。」
(いやぁあッ。いやよ、来ないで! もういい、もう来ないでぇ!)
彼の声は、少し前に聞いた言葉の断片だった。
その音を聞くなと、誰かが叫んでいるような気がしたが、
探し物に気付いた◯◯が、その言葉の断片に手を伸ばすと、
白い世界が波立ち、彼女を拒絶し始めていた。
すると、子供時代の記憶や、旅の途中に見た風景が、次々と蘇ってきた。
その度に、身体中を這い回っていた虫がある形を取り始め、
さらなる多くのものを集め始め、彼女の身体に潜り込んでいった。
記憶という鎖。思い出という苦しみ。愛という狂気。
それらが彼女を縛りつけ、激しい苦しみと絶望の感情が、
再び彼女を追い詰め、何を探していたのかをハッキリ思い出させた。
(ジン。。)
その暖かい思いを求めるたびに、意識が少しずつはっきりして、
黒いヘドロだった存在が、ある動物の姿に見え始め、
自分の名前が「花子」だったことも、
あの穏やで心地良い記憶の意味も蘇っていた。
「うぅん。。ああ、麗華ちゃんだったっけ? いやぁ、ごめぇええん。」
「何を言っているの?レイカ?麗華。。じゃあ、あなたは?」
ついに彼女の半身までが、黒いヘドロに取り込まれていった。
そうやって、全てを取り戻した花子の周辺は、
さっきまで広がっていた冷たく澄んだ白い光は消えてしまい、
今やどす黒く淀んだヘドロの塊になっていた。
「君から見れば、「異物」って表現が、
一番しっくりくるんじゃないかナァァァァ。異物だよぉお。」
「異物?」
「まあ、気にしなくていいよ。どうせ、すぐに忘れちゃうんだからあぁ。
さあ、おやすみ。眠れぇええ、眠れぇええ。オヤスミなさいィイイ。」
「眠くない!絶対にネナイ!アンタが起こしたんでしょぉお!」
彼女の意識が鮮明になるにつれ、自分がどうなっているのか、
これからどうすればいいのか、もう一度あの世界に戻るためにはと、
そんな戸惑いや焦りの感情が膨れ上がっていた。
しかし、その感情はあの暖かい光を求める思いには到底及ばなかった。
そして、異物である存在もまた、彼女に対して混乱しているようだった。
「本当に邪魔してごめんねぇ。。○○かなぁ。それとも麗華ちゃん?
イヤぁ、ごめん、ごめぇえん。許してぇえ、はなちゃん。アハハハ。」
(どうして彼女は気づいたんだ?
本来なら、もうすぐ消える存在が、見えるはずもない俺を見てきた。
俺はただ、彼女が消える瞬間を観察していただけなのに。
この子に、何か特別な力があるのか?なぜ彼女は戻ってきた?
誰かが彼女に何かをしたのか?それとも、彼女には何かできるのか?
この世界で。まさか、この場所で、この世界に。そんなことが?)
もちろん、彼がここにいた理由は、彼女との会話とは別だった。
彼はただ、アレに殺された花子が消える瞬間に何かが起こるかもと、
自分の知らないことが起こるのかもと、興味を持っただけだった。
しかし、何故か彼女に気づかれ、自分の姿を見られてしまった。
それ自体があり得ない現象だったが、
それ以上に、今もなお続いているこの状況こそが、
彼にとってさらに有り得ない出来事であることに気づいていた。
「ちょっと待って、何か言いたいことがあるんでしょ?」
花子は、相手が混乱していることを知っているのか、
それともそれ以上に重要なことに気づいたのか、慌てて問いかけ続けた。
「特にないけどぉ。。アハハハ、そういうの、あるよネェ。」
(どこだ?どこにいる?どこから見ている?どこだ?どこからだ!)
異物は冷静を装って答えているが、
内心では、この世界に自分以上の力を持つ存在か、
自分に匹敵する存在がいるかもと興奮していた。
もしそれが本当なら、生死や運命に干渉できるはずだし、
その存在が、この女に干渉しているせいで気付かれたと考えていた。
「お前を勇者にぃいい。。。とか、
君には使命がある、ぜひこの国を救ってくれ。。。とか、
それとも。。ああ、ごめんねぇ、間違えちゃったぁぁ。。。とか、
世界を守るためのエネルギーが。。。とか、」
「。」
「ああ、なんでも希望を叶えてやるから、君も○○○にならないか。とか?
まあ、そんなのもあるかもネェ。
希望って無限だから、希望って言うんだし。
でもね、なんでもは無理だよぉ。なんでもなんて出来ないよ。アハハ。」
「。。。」
異物の独白は続き、花子は自分が何かに巻き込まれている気がしていた。
「希望なんて叶えられないんだよぉ。アハハハ。あれってすごいよねぇ。」
(ま、いいだろう。この女か。。クククッ、いいぞぉ。。アハハハハ。)
彼は、花子を相手にするたびに感じる違和感に気付いていた。
「希望?」「希望なんて、最悪のお土産だよ。」
「ち。。違う。絶対に違う。希望は。。きぼ。。希望。。」
(ジンさん。あなたは? 本当にいなかったの? あれは妄想だったの?)
生きる希望など、花子にはもうなかった。
彼が消えた後の世界は、苦しみと絶望しか残されていなかった。
自ら命を絶とうと何度も考えたが、彼との約束がそれを許さなかった。
「希望なんて、一番最初に消した方がいい感情だよね。本当に最悪だよぉ。
君もわかったでしょ?最高に人を不幸にするシステムだよねぇえ。」
(アハハハハ。いいのかなぁ、大事なんだろぉお。アハハハハ。)
「ちょっと待って!」「あらあら。まあまあ。あァーアーアー。」
「ちょっと、待ちなさいって!!聞きなさいよ!!!」
(もう少し。。あと少しよ。そう。これなのよ。これが。。。)
異物が言う通り、
彼が生きているという希望を、消した方が楽だと思ったこともあった。
しかし、彼女には、彼に会いたいという思いだけが残っていたし、
それ以外は何も欲しくなかった。
「じゃあ、人だったものよォ。これで、私との謁見の時間は終わり。
おわりぃいい。終わりにしようってねぇ。」
「だァあかぁああらああぁ。。イヤ!いやなの!いやぁあァあ。」
「痛いし、苦しいし、怖いし。。。それに、悲しいよぉ?」
「ハァア?痛み?苦しみぃい?それはさっきから味わっているじゃない。
何でもいいから、さっさと説明して。早くしなさいよ。」
「ハァアぁああ。カーンたん。君さぁ、もう死んだんだよ。
世界から旅立ったの。パチパチ、パチパチ。世界からクリアーだぁ。」
「し。。死んだの?」
「君さぁ、気づいてるのに、確認するなんて気持ち悪いよぉお。」
「。」
(私、死んでいるの?じゃあ、もう終わり?これ以上、彼を探せないの?)
ジンの死を受け入れていなかった彼女だが、
もし自分が死んでいるのなら、生きている彼を探すことはできない。
それに、自分から死んだわけでもないので、
彼との約束を破ったわけではない。
もしかしたら、このまま死んでも彼に許してもらえるのかもと、
そんな不思議な気持ちが膨らんでいた。
「君の環境だとぉお、固定する箱が消失?焼失?火葬カナァあァ。
繋がりが切れちゃったぁああ。だから、死んだよ。死んじゃったあぁ。」
(さあ、選ぶぞぉお。いいのかぁ。クククッ。さあ、選ぶんだぁ。)
「んっ。。あなたの環境だと?」
(やっと。そうよ。これが。これが次の鍵。これが彼に繋がる鍵!)
本来ならば、このまま素直に死を受け入れればよかったのかもしれない。
だが、彼が死んでいないという確信と、彼に会いたいという心が、
異物が喜んでいる「絶対に選んではいけないもの」を選んでしまった。
「アレぇええ、気づいたァ?気づくんだぁあ。アハハハハ。」
(まあ、俺が気づくように仕向けたんだけどさぁアアア。)
「サッサと教えて!」
「面白い子だねぇ。じゃあ、聞きたいことを話そうか。
僕の環境では、君を戻すことができる。戻せちゃうんだよぉおおお。」
「じゃあ、戻して。」
(神様?いや、悪魔でもいい。どんな化け物でも。何でもいい。)
これが鍵なのだろうか?これが自分への救いなのだろうか?
確かなことは一つだけ、彼女がコレに「希望」を重ねた事だった。
「うぅん、僕は異物だよ。君も異物になるってこと、わかってる?
君の環境では、起こらない事象を引き起こすことになるんだよ。
わかるぅうう?何が起こるか、わからないよォオオ。
何が出るかなぁああ。タラっタっラ。。。タララらん。。。。どん。」
「ふざけないでいいから、戻して!」「めんどくさい。」
「何かが気になったから見ていたんじゃないの?」「はぁぁ。だるい。」
「いいから戻せェエエエ!」
「うぅうん、そうだなあぁ。。そう言えば。うゥウン。。利点がない。」
「実はあるんでしょ!?絶対にあるよねぇえええ!」
(絶対に、絶対に嘘だ。これが、これがジンさんに会える鍵なのよ!)
どう言えばいいのだろうか、この異物は確かに自分に興味を持っていた。
もし彼が望む選択肢を選べば、必ず先に進めると信じていた。
花子という枷を引きちぎり、麗華という虚飾に包まれていた頃のように、
彼に会えるなら、どんな過酷で残酷な事でも受入れようとしていた。
「アハハハ。本当に戻りたいの?戻っちゃうのぉお?ほんとうにぃい?
痛いし、苦しいし、悲しいし、怖いよぉぉぉ。いいのかなぁ?」
「。」
「素直に寝たほうが楽しい?感じなくなるからぁあ。嬉しい?
これも無いから、解放されるって感じかなぁあ。アハっ、アハハ。」
「。」
「いやあぁ。うん。祝福されるかなぁ。これが一番ぴったりだね。
神に選ばれた人間よぉお!祝福を受け取れッテぇえのぉお!ウハハ。」
「そんな祝福なんていらない。そんなの、何もいらない。
痛くても、怖くても、苦しくてもいい。悲しいのも。だい。だい。」
(ジン、お願い。ジンさん、どうか答えてよ。話を聞いてぇええ。)
自分が死んでいるのなら、世界は戻った自分を拒絶するだろうし、
この異物がどのような姿で、生まれ変わらせるのかも解らなかった。
もしかしたら、見つけてもらえないかもしれないし、
戻ったときに、彼から憎まれるかもしれないという不安もあった。
それでも、憎まれても会いたいという自分勝手な心と、
彼にもう一度愛されたいという、ワガママな気持ちの中で揺れていた。
「うぅううん。彼もひどいよネェえ。最悪な人でしょぉお。
希望なんて、最初に消せば良かったのにさあぁああ。」
(ギャハハハ。来たな。アハハハハ。いいねぇ。この子の知り合いか?)
「◯◯」「んっ?」
「あっ。アハハハ。彼は、ちゃんと消したってさぁ。アレぇえ。」
「消した?誰と? 誰と話しているの?ソコニイルのはダレ?」
(ジン、いるんでしょ? そこにいるよね。私に会いに来たの?)
この異物が、誰と話しているのか、誰を見ているのか解らない、
彼女には何も見えず、感じることさえも出来なかった。
もちろん、彼女を苦しめるために演技しているようにも見えるが、
それを希望だと信じた花子の心を、変えることは出来なかった。
「そうだねぇ。君が望んでいた希望を手繰り寄せたが、
もう少しでダメだったという感じかなぁあ?アハハハハ。」
「もう少し?」
「君って、もう少しだったみたいだよ。いやぁあ、惜しかったァ。」
「うるさい。サッサと戻せ!」
「だァあからぁあ。十分、希望を楽しんだでしょ?もうやめようよぉ。」
「何でも支払う。何でも受け入れる。何でも捧げる。
何でもいい。何に生まれ変わってもいいから、あの世界に戻して!」
「◯◯◯ ◯◯ ◯◯◯」
「でもぉおお。うぅうん?」「何でも。何でもする。ダカラァアア。」
「まあぁああ。君の事も気になるしぃ、
君が求める光なら与えよう。アハハハ。世界の祝福を拒んだ人間よ。」
(悪いねぇえ。契約だよ。だって、彼女が望んだ契約だからなァ。)
「◯◯◯ ◯◯ ◯◯◯」
誰かを想い、誰かを愛し、誰かを慈しみ、
世界を愛した男の叫びが、この澄んだ白い世界を満たしていた。
必死に幸福を願い、愛を注ぎ、彼女を見守る彼の叫び声は、
異物にとってまるで娯楽のように映っているのだろう。
異物は、とても嬉しそうに笑っていた。
そう、必死に彼女を引き止めようとする彼が、
絶望に染まっていく姿を見て、異物の心は喜びに満ちていた。
(ジン。絶対に会いに行くから。もう迷わない。絶対に見つけるから。)
「アハハハハハ。。さあ、苦しみに満ちた世界に舞い戻り、
もっとも苦しく、救いなどない世界に舞い戻れ。リザレクション。」
「◯◯◯◯◯◯◯◯」
「イギィイイイ。いぎゃぁアア。ぐぎゃぁっくぁあ。ジッン。ジン。」
彼女は全身が細切れにされるような感覚と、
温かい何かから無理やり引き剥がされる痛みに襲われていた。
その後、彼女の心が消え、
世界は異物を吐き出して、元の澄んだ白い光に戻っていた。
この後、麗華が何を求め、花子が何を与えられ、◯◯が何を失い、
この世界に絶望するのか、ここを壊すのか、ここを愛せるのか。
ただ影は、嬉しそうに笑っていた。
その姿を見ても、彼女は微笑んでいた。それでもいいと、穏やかに。
①ライラック(別れと芽生。お母さん)①
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