夏目の日常

連鎖

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二人の日常

痴話喧嘩①

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 夏目が助手席で腕を組んで目をつぶっているのは、
 朝早くまで働いていたので、疲れて眠ってくれていれば良かったが、
 実際には怒っていて、
 その目とまぶたの動きからも、眠っていないことが分かりやすかった。

 その気持ちを、少しでも不快にさせないように、少しでもなだめようと、
 ゆっくり、ゆらさないように優しく海斗は車を走らせていた。

 それでも、ダッシュボードに両方を載せていた夏目の真っ白な生脚は、
 ゆっくり、ゆっくり、左右に、じわじわ、じわじわと、開いていった。

(あ。。。。おお、見えそう。。もう少し。。あっ。あと少し。
 なっちゃん。見えそうですって。見えちゃうますよぉ。見えるって!)

 いつもの全身を隠す洋服なので、普通に椅子に座っていれば大丈夫だが、
 慌てて服を着ていたのか、いつも着ているインナーキャミソールや、
 面倒くさい時にしか着ないTシャツさえも着ていなかったので、
 どうしても、さっき見てしまった映像が海斗の心にチラついていた。

 夏目の服装で目立つのは、肩や乳房の周りに透けている赤い紐の影と、
 遮る物が無く丸見えな乳房の一部分が、ツンと布を持ち上げている姿と、
 身体が軽く揺れる度に、胸の辺りや腕の周りに出来るシワが変わり、
 その乳房が、どういう大きさで、どういう向きで、どういう形になって、
 布の内側で、どうなってオスを誘っているかを見せていた。

 下半身のショーツは白く、服とは同系色なので透けてはいないが、
 太ももの付け根に見えている、黒い陰毛の影が、
 さっき写真で確認していた、女性器の谷間と膨らみを思い出してしまい、
 布の先でイケナイ場所が、丸出しになっていると海斗に知らせていた。

 その姿を見ながら車を走らせていると、どうしても動く足が気になり、
 最初は、スカートの裾から足首だけが出ていたが、
 そのスカートに隠された奥が気になったのか、
 海斗は少しだけ車線変更を増やして、左右に夏目を揺らしていた。

(綺麗だよなぁ。はぁぁ。なっちゃん。かわいいぃい。もうちょい。
 もうちょい、もうちょっと、もう少し。うぅうう。もう。ふ。ふふぅ。)

 横揺れが大きくなったせいなのか、夏目の足がだんだんと開き始めて、
 綺麗なふくらはぎとスネが出てきた時には、色々とドキドキしたが、
 良く考えると、周りの人に夏目の生脚を見せて走っていると気づき、
 横を走っていく、追い越していく、車の視線が気になり始めていた。

 そうして今では、握りこぶし二つ分ぐらいは足が広がり、
 綺麗な生脚が、膝丈スカートになったワンピースから飛び出していた。

(怒られた時に逃げられなかったら、どうするんですか?)
(そうだなぁ。息を殺して、出来るだけ刺激を与えるな。
 人間には生理現象がある。それまでは、ステイ。ステイだぞ。
 絶対に触るな。少しも刺激を与えるな。息さえも止める感じにしていろ。
 視線はチラチラ、心配するように見るのはいいが、
 絶対にじっと見続けるなよ。それが出来るのは、
 俺みたいな上級者だけだからな。じっと相手を見るな!)

(ししょぉお。見えちゃいます。見えちゃいますってぇ。見えますよぉお。
 中身まで見えてしまいます。ししょぉお。どうすればいいんですかぁ。)

 スカートの裾が膝を抜けると、脚の大部分がすぐに露出してしまい、
 綺麗な太ももの約半分が、ワンピースの裾から飛び出したので、
 夏目に直してもらおうと声をかけたが、

「なつ。。」
「うるさい!ダマレぇええ。わたしは寝ているんだよ!うるせぇえ!」

 やっぱり彼女は起きていたらしく、
 すぐに不機嫌そうに怒鳴って返事を返してきたので、
 脚の付け根まで見えそうになっているスカートの裾を、
 夏目に直して貰うのを諦めていた。

 。

 限界までスカートが捲れてしまった今では、
 少しでも気付かれないように、交通量の少ない車線や、大きな車の影や、
 止まることの少ない道や、混んでいない車線を選んで走っているが、

「プッ。プッ。」

 トラックなどの大きな車からは、上から覗かれているのか、
 クラクションを鳴らされたり、手を振って合図してくる人もいて、
 それを、夏目に気づかれないか心配だった。

 周囲の視線が夏目に集まる理由は、 
 木陰などの暗い場所ではフロントガラスに映って、海斗にも見えていた。

 そのガラスに映し出される夏目の姿は、
 ダッシュボードに足をかけたまま脚を広げているため、
 真っ白なオープンショーツがはっきりと見え、
 さっき写真で見た光景が、ガラスに映り込んでいた。

(見られてる。あの男にも。。あのおばさんにも。
 あの子供にだって、あっ。撮影した。夏目さんを撮っている。
 また楽しんでいる。見られている。また。アイツも。見ている。見てる。
 誰かに送っている?載せている?ばらまいている?拡散された!)

 もちろん、その姿が乗用車からは見えないと思いたかったが、
 トラックなどの車高の高い車からは覗けると思えるし、
 運悪く横断歩道の一番前に止まってしまえば、
 歩行者がスマホを向けたり、複数で騒いでいたりするので、
 最後までめくれ上がったワンピースの裾が、
 脚の付け根や、その奥さえも剥き出しにしていると分かっていた。

 そんな事が何回も起こって、SNSで拡散されたのか、
 信号待ちで待っている自分達の車に、走って近づいて撮影した人が、
 スマホで撮影した映像を、興味深そうに覗きこんでいるので、
 その行動を見て、自分もとスマホを向ける周りの人達や、
 撮影後にもわざわざ車を近づけて、動画や直接覗こうとする人を見ると、
 なぜか、その事を夏目に指摘する気持ちも薄れはじめて、
 ただ、心の隅に芽生えた何かの気持ちに反応している息子に驚いていた。

 。

 覗かれ、指摘され、驚かれ、笑われ、撮影され、投稿され、見下され、
 性別も年齢さえも関係なく見せている状況に、
 海斗の息子も、何度も膨らみ、吐き出し、縮み、楽しんでいると、
 
「パパパパァあァアア。」「あっ。。。すみません。ブロロ。」

 今度は信号待ちで停車していたことを忘れて、
 周りの反応に気を取られていたようで、
 突然背後から鳴り響くクラクション音が、海斗を現実に引き戻していた。

 そんな大きな音に夏目も反応したのか、

「ウッさいわねぇえ。カイト。何をやっているのよ!ちゃんとして!!」

 それとも山崎が言っていた生理現象なのだろうか、
 少しも相手をしてくれなかった夏目が、外を向いたまま声を掛けてきた。

「すみません。夏目さん。」
「あぁああ。もお。もぉおお。どうなのよ?どうだった!
 どう思っていた?どう思っていたかを、ちゃんと説明しなさい!」

 夏目としても、いつまで怒っていても何も変わらないし、
 海斗が困っていることも理解しているので、自分から話し始めていた。

 もちろん自分が年上で、全て我慢しなくてはいけないとも思っているし、
 旅行に行く前に我慢すると決めていたはずだが、
 今回の出来事で海斗の気持ちがわからなくなり、
 戸惑って黙ることしかできなかった。

「なんの事ですか?」
「私が、オマンコを丸出しにして、それを色々な人に覗かれて、
 どう思ったかって聞いたのよ!
 それとも全裸が良かった!なら脱ごうか?全部見せたら満足なの!!!」

(しっしょぉおおお。何を言っているか分かりませぇえん。なぜぇえ。)

(でも話すようになったら、どうすればいいですか?どうするんですか?)
(相手から声をかけてくれば大丈夫だ。もうすぐ仲直りが出来るぞ。
 次は、まずは謝れ。意味がわからなくてもいい、まずは謝ればいいんだ。
 あとはいつもと一緒だ。わかっているよな。)
(いつもっって、いつもッて、なんですかぁ。いみがわかりませぇえん。)
(おい、そろそろ覚えろよ。愛してる。可愛い。綺麗。素敵。美しい。
 もちろん、無駄に謝るのはダメだぞ。
 全部自分が悪いと言いながら、精一杯、誠心誠意謝るんだ。
 お前はそれでいいから。上級者は違うが、お前はそれでいいから謝れ!)

「まずは、夏目さん。本当にごめんなさい。
 運転中だから、そっちを向けなくて、ごめんなさい。
 それでも、謝ります。僕が悪かったです。ごめんなさい。
 僕が悪かったです。本当にごめんなさい。とっても、ごめんなさい。」

「何を謝っているの?なんの事?。な。。に。。を?何を謝っているの?」
「投げつけて来た、服の事だよね?」
「そうよ。それぇええ。その事も、あるわねぇぇぇ。そうよねぇえ。」

 ついさっきまでは、目をつぶってこちらを向いてくれなかった夏目が、
 顔を真っ赤にし、目を見開いて海斗に顔を向けてきた。

「僕はいいと思って選んだんだ。僕は似合うと思って選んだけど、
 僕は、その服が好きだったんだけど、夏目さんは嫌だったの?」

「中に入っていたのは制服よ。わ。。。た。しは、
 私は、いっ。。いくつ。。いくつだと。思ったァああァ!ハアハア。」

 自分が服を突き返した後、
 海斗が落ち込んでいることに夏目も気づいていた。
 もちろん、すぐに抱きついて、全てを許してあげるから、
 これでいいよと、言いそうになる気持ちを必死に押さえつけながら、
 うわずった声で海斗に気持ちをぶつけていた。

「すごく可愛い夏目さんには、とても似合うと思いました。」

「あんなの着て外に出ろって?
 はあはあ。あんな格好でよ、カイト!。はあはあ。あの。。アノ服を?」
「にあうと。。。。」

 似合うと思って選んだ服が、夏目が怒っている理由だと言われて、
 理由がわからず戸惑ってしまい、怒っている彼女をただ見つめていた。

「かいと?途中で客でも取らせたいと思っていたの?お金を稼げとでも?
 フゥううう。楽しい旅行中に誰か知らない人に犯して貰って、
 お金でも稼ごうと思っていたんでしょ?アルバイトも、そういう意味?」
「ち。。違います。」

 何故か海斗が服を選んだだけで、
 夏目が身体を使ってお金を稼ぐ話になっていたらしく、
 普通に生活してきた彼は、意味がわからないと戸惑っていた。

「ハアハア。写真も、どうせ宣材写真じゃなく、ふっ。。ふうぞく。
 客を取るための風俗パネルに、置いておくんでしょうがぁぁあ!!!」
「えっ。。。」

 素直な気持ちを押さえつけているためか、つい息が荒くなり、
 言葉も乱暴に投げ捨てるように声を荒げ、
 海斗に言いたくないことまで口に出してしまっていた。

 海斗も夏目が勘違いしている理由がわかったのは良かったが、

「ごめんなさい。誤解させてしまって、ごめんなさい。
 写真は、仕事に使う宣材写真です。ごめんなさい。

 制服は、いつもお尻の事を気にしている夏目さんが、
 少しでも気分を良くしてもらうために選びました。ごめんなさい。

 ほかの洋服は、夏目さんが言っていた通りに、
 パツパツとか、丸見えしか無かったんです。ごめんなさい。
 それは、夏目さんに着てもらいたく無かったんです。

 本当に、ごめんなさい。」

「えっ。。。」

 素直に説明している海斗の顔を見ているだけで、
 乾いた心が満たされて嬉しい気持ちが膨れて、
 自分の勘違いで怒っていた事がわかり、
 今まで考えてきた事が恥ずかしくなって、顔が真っ赤になっていた。

「あと、これは僕の希望なんですが、
 学生時代の夏目さんを見たかったんです。

 学生時代の夏目さんと、一緒にいられなかった事が悔しくて、
 せめて、その時の服を着た姿だけでも見たかったんです。」

 運転をして前を向いているので、一瞬だけしかこちらを見なかったが、
 海斗はとてもはずかしそうで、彼の顔も真っ赤に染まっていた。

「。。。。。」「僕って、やっぱりおかしいですか?」

「そんな。。」

 着て欲しいと渡された服は、極端にコスプレ寄りではなく、
 普通の制服によった物だったので、夏目も気になっていたが、
 その理由が、それを着て風俗で働けという、ゲスの願望ではなく、
 昔の夏目を思い出したいだけだと聞いて、全身が喜びに包まれていた。

「夏目さんが嫌がる事なのに、昔の夏目さんを、
 昔の君を、直接見てみたかったから、ボクは制服を選びました!」

 今度の声は、必死に叫んでいるように、力強く夏目を撃ち抜いていた。

「昔の、わ。。たし?」

「本当に、ごめんなさい。
 夏目さんが嫌がるような格好だとは、少しも思わなかったんだ。
 自分の希望だけを押し付けて、それを着せようとした僕を、
 許してください。本当にごめんなさい。夏目さん。。。ごめんなさい。」

 今度は、相手の揺れた気持ちを押さえつけるように、
 強く、ただ力強く、夏目の心を縛り付けていた。

「こんなオバサンなのよ?」
「夏目さんは、いつも可愛くて、綺麗で、とても素敵な女性です。」
「こんな格好は、私に似合わないわ。」
「可愛くて綺麗な夏目さんに、似合わない訳がありません。」
「恥ずかしいわ。」
「着てもらうのはダメでも。僕に見せる事。。。。さえも、ダメですか?」

 最後は、君だけが僕の宝物。
 君の全てが欲しいという、戒めの言葉を呟いていた。

 もちろん、このすがりつく目が好きで付き合ったと言ってもいい、

「いや。そんなこと。。。」

 すごくガッカリして寂しそうな顔で、
 すがりついてくるように見てくる彼の頼みを、断ることは出来なかった。

「じゃあ、着替えて貰えますか?」「えっ。。。。。」「ダメ?」

 顔を真っ赤にして、体をモジモジと動かしながら、
 相手の顔も見る事が出来ないのか、

「ふ。。。。。ふたりっきりなら。」

 俯いて唇を尖らせながら、何かを待っているように呟いていた。

「僕が夏目さんの、制服姿を見てもいいですか?」

 もちろん、ボクとい鎖を強く夏目に放っていた。

「えっ。。。。。あっ。。はっ。。。。。。はい。」

 ここまで来てしまえば、なんでも了承しそうだが、
 夏目は、制服を着て見せている自分を想像しながら、
 顔を真っ赤にして、ただ頭を上下に振って海斗の希望に答えていた。

「うれしい。。ありがとう。夏目さん。」「そ。。。。。そうなの?」

 嬉しいなどという気持ちを確認しようと、
 顔を海斗に向けて、相手の顔を確認してしまった。

「すっごく、嬉しいです。愛しています。夏目さん。ありがとう。」

 そのあと夏目が目にしたのは、
 海斗の天然の、女ったらしの笑顔をハッキリ見てしまっていた。

 その笑顔と、昔の自分までも欲しいと言われてしまえば、
 もお、大好き。大好きと、頭の中を何度も駆け巡っていた。

「もぉぉぉぉぉ。また。私の勘違い?ハァァ。またぁああ。
 もう、さっきも顔が真っ赤になるぐらい、恥ずかしかったのよ。
 もぉぉぉぉぉ、見られちゃったじゃないのぉお。恥ずかしかったぁああ。

 はァァ。多分撮影されちゃったわぁああ。
 今では、ネットに並んでいるわねぇえええ。ハァ。沢山見られているわ。

 恥ずかしぃ。もぉおお。はぁぁ。沢山見られちゃったぁ。恥ずかしい。」

 その気持ちをごまかすように、海斗に顔を向けて悪態をついて、
 必死に海斗に甘え、抱きしめて。。このまま、私を奪ってほしい。
 もちろん、強く唇を奪って欲しいと誘っていた。

 本当はここで車を路肩にでも停めて、夏目をひと押しすればいいのだが、

「でも、最初に僕が見ているんだから大丈夫ですよ。
 最初に見たのは僕だからぁああ。アハ、ははハハハ。僕でしたぁああ!」

 残念な海斗らしく、照れながら夏目が欲しい気持ちとは違う、
 砕けた笑顔を見せていた。

「えっ。。。そっ。そうよ。あなたがいけないんじゃない!あなたよォ。
 カイトぉおお。全部あんたが悪いんじゃないの。そうよ。そうよぉ。」
「違います。シャッチョうが選んだのが悪いんですよ。しゃちょうです。」
「うるっさい。うるっさいぃいィイイイ。
 もういい。もういいから黙って!もう、話は終わりィい。終わりいぃ。」

 自分の気持ちが理解されなかったことにガッカリしたが、
 ただの痴話喧嘩のような、いつもの会話を海斗とした後は、
 今度は素直に足を下ろし、お腹の上で腕を組んで、また目を閉じて、
 さっきとは違い、嬉しそうに笑いながら眠りに入っていた。


 痴話喧嘩①
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