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その出会いが発火点
第3話 トップアイドル
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「それで私にマネージャーになって欲しいとはどういう意味かな?」
タクシーでのいきなりの熱い告白に答えるため俺は目的地を急遽近くの喫茶店に変更した。ここは良く俺が利用する喫茶店で、適度な音楽が流れ区切られたテーブル席もあり聞かれたくない話をするにはうってつけである。
コーヒーと料理はまあ普通。だがこの普通こそ近年奇を狙ってインスタ映えを重視する時代において重要。見ろこの目の前に置かれた何の変哲も無いナポリタン、一切の華美が無く懐かしさが込み上げ安心感が香ってくる。
ちなみに対面に座る美希奈の目の前に置かれたサンドイッチとクリームソーダは俺の奢りだ。このダンディーではあるが無条件に女性を甘やかすようなことは無いちょっとビターが隠し味を誇る俺だが、流石に少女には甘い。
「そのままの意味よ。私のマネージャーになって」
真っ直ぐにキラキラ光る目には此方を嵌めようとする悪意は見えない。
ちょっとつまらない。笑顔の裏に秘められた悪意を逆手にとって嵌め落としたときの快感は悦楽。
「どうして私を?」
流石の俺も敏腕マネージャーと呼ばれるような仕事をしたことがない。代打でちょっとやったことは職業柄あるが、一人をじっくりと売るための計画を立てたり育てたりしたことは無い。
流行のソシャゲと違い、気に入らないととっかえひっかえガチャを引きまくるわけにも行かないし。
こう言っては何だが新しい刺激に飢えている移り気の俺に腰を据えるなんてマネが出来るだろうか?
「ビビッと来たの。これは運命の出会いって」
「ビビッと?」
何とも具体性の欠片も無い言葉。故にこの少女にはよく似合う。
「カグリさん私をトップアイドルに導いてくれるって、天のお告げみたいな。
だから美希奈と一緒にトップアイドルを目指して」
美希奈は目を輝かせて俺を口説いてくる。並みの男ならころっとこのまま高額の壺でも買ってしまいそうだ。違うか、握手券付きCDを数百枚買ってしまいそうだ。そもそも俺みたいな胡散臭い男と組まなくても普通に売り出しても売れそうだけどな。
「待て待て待て、取り敢えずトップアイドルになるというのが君の目的なんだな」
何事もゴールを見定めるのは大事、カーナビでもゴールを指定しなければ意味が無いようにゴールが無ければ人生という長い道のりで迷子になる。
ふふっ俺今人生の格言を言った。溢れる人生の重みが知性を醸し出してしまう。
「はい。美希奈、トップアイドルになるのが夢なの」
まあ、この業界にいる少女なら誰でも見る、ありきたりの夢だな。寧ろ芸能界を支配したいんですくらいの方がスケールがでかくて感動したかも知れない。
俺は何の感動も覚えなかった。伊達に年を食ってない、もう一ひねりピリッとした隠し味が欲しいところ。
「君をトップアイドルにすると私にどんないいことがあるのかな?」
こんな少女のありきたりな夢に付き合って仕事を引き受けていたら私は破産する。
俺が仕事をするなら儲かるかつ面白いだ。ここは大事だ。儲かるだけでは心が荒み人生から潤いが無くなり生きている意味が無くなるが、面白いだけでは世知辛い世の中生きていけない。
死んでしまえば楽しめないとは真理だな。
「美希奈の全部を上げる」
「全部?」
「そう、財産も心も、体も上げる」
大した覚悟と言いたいが、まだまだありがちだな。
夢見るアイドルの卵がプロデューサーに体を売るなど掃いて捨てるほどある話過ぎて、何の面白みも無い。
「もっと具体的に」
音楽のフォルテシモの指定の如く言う。
「美希奈、処女だよ」
何か俺がパパ活されている気分になってくる。
そりゃ男なので、ちょっとオジサン心が揺れたけど爛れたオッサンはその程度では動揺しない。
「そうじゃなくてだな」
「トップアイドルになるまでに稼いだお金全部あげる」
「トップアイドルになるまでに注ぎ込んだ投資でとんとんといったところだな」
夢見る少女に冷たいお金の計算を提示する。
別に意地悪じゃない本当のことだ。歌にダンスのレッスンにCM料、何も金を掛けないでトップアイドルに成れるわけが無い。
トップアイドルとは投資した額の大きさ×素質で生み出される。
「トップアイドルになった私がカグリさんを全力で愛してあげるわ」
「口だけは何とも言える。心は見えないものだよ」
そのことは俺が一番よく知っている。
「見えて触れるこの体も好きにさせてあげるって」
俺に色仕掛けか美希奈はウィンクしてアピールする。
「そこが一つ腑に落ちない。
これは推測だが。先程の件、君が枕を断ったから嫌がらせをされたのでは無いのか?」
仲島も馬鹿じゃ無い最初からあんな小芝居をするわけが無い、もっとストレートに事務所の方に打診したはず。
だが仲島からの枕の強要をこの少女は断った。
だからこその先程の顛末、だからこそ本来この娘をまもるべき事務所の人間は現れないと全てが繋がる。
「わお~よく分かったね。さっすが私の運命の人。
ハッキリ、そんなのアイドル失格。きっぱりと断ったわ」
美希奈は一片も恥じること無く言い切った。
「潔癖なのはいいが、先程の報酬と矛盾しないかい?
俺に抱かれるんだぞ。だったら仲島に抱かれた方がトップアイドルへの階段を幾らか段数抜かしで駆け上がっていけるんじゃ無いか。
納得のいく理由が欲しい」
所詮小娘のその場凌ぎのニンジンなのだろうが、その程度の小娘の悪知恵なぞ俺には通用しない。通用するのは頭がピンクに染まったオッサンだけだ。
「美希奈の夢はトップアイドルになること」
「それは先程聞いた」
「カグリさんはアイドルって何だと思います?」
小娘が俺を試す気か? だが、ここは怒らない。大人の寛容さで付きやってやろう。
「偶像。民衆の願望の投影・・・」
「何だか小難しいこと言いだした~」
美希奈は俺の折角の講釈を遮りやがった。
「カグリさんと話していると何かはぐらかされそう」
そう俺の話術は霧の如く、言葉を発するほどに濃くなり五里霧中に迷い出す。その本質に気付いたというのか、この頭が良さそうで無い小娘が? 理屈じゃなく天才肌直感で本質に迫るというのか?
「聞き方変える。
ズバリアイドルにとって大事なのは何だと思う?」
「可愛さ」
「ぶっぶーー、清らかさです。
アイドルは汚いことなんかしません。綺麗なの。清らかなの。トイレなんか行かないし~当然恋人もいない。だってアイドルはみんなを愛する天使だもん」
正しくはそういう願望を投影された偶像、虚構。現実には存在しない虚実。
「美希奈は出来るだけその理想像に近付きたいの、だからトップアイドルになるまで処女なの。
だからね。夢が叶った後ならいいの、そしたらアイドル卒業。こんどはダーリンだけを愛してあげる」
そうきたか。なかなかに面白い。
「どうトップアイドルのバージン、男なら喉から手が出るほど欲しいでしょ」
そのこちらを誘惑する顔は、小悪魔さながらで天使とはほど遠い娼婦のようだった。
「報酬はトップアイドルに成れたらか、成れなかったら私はただ働きかい?」
確かにこの俺を持ってしても処女のトップアイドルを抱いたことは無いし、これからもそんな機会が来るとは思ってないし、そんなことを夢に見たことも無かったな。
夢にすら思ったことが無い報酬は魅力的と言えば魅力的かも知れない。
「当然です。美希奈がトップアイドルに成れなかったら、それはカグリさんが本気で無かったということです」
「私の能力については疑っていないのだな」
ついでだが自分の素質についても一片も疑ってないんだな。
「美希奈が心も体も捧げて愛してあげると決めた運命の人、当たり前じゃない」
素直に評価されて喜べばいいのか?
「もしもだが、君の方が途中で挫折したらどうする?」
「そんなことありません」
きっぱりと言い切る。
「もしもだ。君は若くて可愛い、きっと素敵な王子様が攫いに来るだろう。そこでもし君が誘惑に負けたらどうする?」
「そんなことはありえない、でももし誘惑に負けたら美希奈に価値はない。AV女優にするなり性奴隷にして中国の金持ちに売るなり好きすればいいじゃん」
この娘、可愛い顔して時々えぐい事言うよな。
「さもなくば君に力が無くて成れなかった場合はどうする?」
「その時も好きにしていいよ」
あっさりと言うか、自分が成れないなんて微塵も疑ってないのか、若いって怖い。
「更に質問だ。君にとってアイドルとは幾つまでだい?」
「24」
これも予め決めていたのがノータイムで答えてきた。
そうかこの娘は自分でタイムリミット決めていたのか、その覚悟本物に近い。
それでもだ、イケメンが現れれば運命の人が表れた本当の愛を知ったと夢など放り投げて墜ちる。
夢敗れる少女の瞬間を見るのも一興か。
それに少なくても今この瞬間は本気だ。
「よし、分かった」
俺は今までのことをまとめた契約書をスラスラと書いて美希奈の前に出した。
「君がバージンでいる限り24才まで俺は君を全力で支援する。違反した場合の罰則は君が先程言った通りにしてある。
達磨にされて見世物小屋で一生を終えるかも知れないぞ。
サインできるか?」
俺は闇金業者より怖く悪魔が持ちかける取引のように囁く。
会心の出来と自画自賛出来る出来映え、並みの小娘ならここでちびって泣きを入れるほどに怖いはずだ。
「それ、カグリさんが違反した場合の罰則がないね」
やはりただの天然では無いな。
「ほう~マヌケでは無いのだな。なら、書き加えるとする・・・」
俺が契約書を戻そうとするより早く美希奈は親指を噛み千切って契約書に血判した。
「カグリさんが美希奈を裏切れるわけが無いからいい」
「いいだろう。その夢、俺が拾った」
思わずパンッと拍手をして快諾してしまった。
面白い、この娘はスターに成れる。
悪意渦巻く暗黒の芸能界で輝ける星になれる。故に蛾の如く悪意が寄ってくる日常にトラブルまみれになれることは確実。
ああ~トラブル、極上のトラブル。トラブルこそ俺に生きている実感を与えてくる甘美なる美女。
俺は股間から背筋に掛けてゾクゾクしてしまった。
「やっと美希奈を認めてくれた」
「早速明日から働いて貰うぞ。メルアドを教えろ、後で集合場所等を連絡するからな遅れるなよ」
「分かった。
よろしくね、カグリ」
「ああ、美希奈」
俺と美希奈は堅く握手をし、美希奈はタクシーを呼んで帰した。
夢見る少女は真っ直ぐでいいが、汚い大人はそうはいかない。彼女のマネージャーを引き受けるなら、彼女が所属していた芸能事務所と話を付ける必要がある。
それにも簡単に所属アイドルに枕をさせ安売りさせる事務所は碌なものじゃ無いことは確定。潔癖な事務所など無いが、その中でも裏社会寄りの事務所だな
ふふっ面白い。俺は食事を平らげ彼女の所属芸能事務所に向かうのであった。
そうどんなときでも食事は残さず優雅に頂く、ダンディだろ。
タクシーでのいきなりの熱い告白に答えるため俺は目的地を急遽近くの喫茶店に変更した。ここは良く俺が利用する喫茶店で、適度な音楽が流れ区切られたテーブル席もあり聞かれたくない話をするにはうってつけである。
コーヒーと料理はまあ普通。だがこの普通こそ近年奇を狙ってインスタ映えを重視する時代において重要。見ろこの目の前に置かれた何の変哲も無いナポリタン、一切の華美が無く懐かしさが込み上げ安心感が香ってくる。
ちなみに対面に座る美希奈の目の前に置かれたサンドイッチとクリームソーダは俺の奢りだ。このダンディーではあるが無条件に女性を甘やかすようなことは無いちょっとビターが隠し味を誇る俺だが、流石に少女には甘い。
「そのままの意味よ。私のマネージャーになって」
真っ直ぐにキラキラ光る目には此方を嵌めようとする悪意は見えない。
ちょっとつまらない。笑顔の裏に秘められた悪意を逆手にとって嵌め落としたときの快感は悦楽。
「どうして私を?」
流石の俺も敏腕マネージャーと呼ばれるような仕事をしたことがない。代打でちょっとやったことは職業柄あるが、一人をじっくりと売るための計画を立てたり育てたりしたことは無い。
流行のソシャゲと違い、気に入らないととっかえひっかえガチャを引きまくるわけにも行かないし。
こう言っては何だが新しい刺激に飢えている移り気の俺に腰を据えるなんてマネが出来るだろうか?
「ビビッと来たの。これは運命の出会いって」
「ビビッと?」
何とも具体性の欠片も無い言葉。故にこの少女にはよく似合う。
「カグリさん私をトップアイドルに導いてくれるって、天のお告げみたいな。
だから美希奈と一緒にトップアイドルを目指して」
美希奈は目を輝かせて俺を口説いてくる。並みの男ならころっとこのまま高額の壺でも買ってしまいそうだ。違うか、握手券付きCDを数百枚買ってしまいそうだ。そもそも俺みたいな胡散臭い男と組まなくても普通に売り出しても売れそうだけどな。
「待て待て待て、取り敢えずトップアイドルになるというのが君の目的なんだな」
何事もゴールを見定めるのは大事、カーナビでもゴールを指定しなければ意味が無いようにゴールが無ければ人生という長い道のりで迷子になる。
ふふっ俺今人生の格言を言った。溢れる人生の重みが知性を醸し出してしまう。
「はい。美希奈、トップアイドルになるのが夢なの」
まあ、この業界にいる少女なら誰でも見る、ありきたりの夢だな。寧ろ芸能界を支配したいんですくらいの方がスケールがでかくて感動したかも知れない。
俺は何の感動も覚えなかった。伊達に年を食ってない、もう一ひねりピリッとした隠し味が欲しいところ。
「君をトップアイドルにすると私にどんないいことがあるのかな?」
こんな少女のありきたりな夢に付き合って仕事を引き受けていたら私は破産する。
俺が仕事をするなら儲かるかつ面白いだ。ここは大事だ。儲かるだけでは心が荒み人生から潤いが無くなり生きている意味が無くなるが、面白いだけでは世知辛い世の中生きていけない。
死んでしまえば楽しめないとは真理だな。
「美希奈の全部を上げる」
「全部?」
「そう、財産も心も、体も上げる」
大した覚悟と言いたいが、まだまだありがちだな。
夢見るアイドルの卵がプロデューサーに体を売るなど掃いて捨てるほどある話過ぎて、何の面白みも無い。
「もっと具体的に」
音楽のフォルテシモの指定の如く言う。
「美希奈、処女だよ」
何か俺がパパ活されている気分になってくる。
そりゃ男なので、ちょっとオジサン心が揺れたけど爛れたオッサンはその程度では動揺しない。
「そうじゃなくてだな」
「トップアイドルになるまでに稼いだお金全部あげる」
「トップアイドルになるまでに注ぎ込んだ投資でとんとんといったところだな」
夢見る少女に冷たいお金の計算を提示する。
別に意地悪じゃない本当のことだ。歌にダンスのレッスンにCM料、何も金を掛けないでトップアイドルに成れるわけが無い。
トップアイドルとは投資した額の大きさ×素質で生み出される。
「トップアイドルになった私がカグリさんを全力で愛してあげるわ」
「口だけは何とも言える。心は見えないものだよ」
そのことは俺が一番よく知っている。
「見えて触れるこの体も好きにさせてあげるって」
俺に色仕掛けか美希奈はウィンクしてアピールする。
「そこが一つ腑に落ちない。
これは推測だが。先程の件、君が枕を断ったから嫌がらせをされたのでは無いのか?」
仲島も馬鹿じゃ無い最初からあんな小芝居をするわけが無い、もっとストレートに事務所の方に打診したはず。
だが仲島からの枕の強要をこの少女は断った。
だからこその先程の顛末、だからこそ本来この娘をまもるべき事務所の人間は現れないと全てが繋がる。
「わお~よく分かったね。さっすが私の運命の人。
ハッキリ、そんなのアイドル失格。きっぱりと断ったわ」
美希奈は一片も恥じること無く言い切った。
「潔癖なのはいいが、先程の報酬と矛盾しないかい?
俺に抱かれるんだぞ。だったら仲島に抱かれた方がトップアイドルへの階段を幾らか段数抜かしで駆け上がっていけるんじゃ無いか。
納得のいく理由が欲しい」
所詮小娘のその場凌ぎのニンジンなのだろうが、その程度の小娘の悪知恵なぞ俺には通用しない。通用するのは頭がピンクに染まったオッサンだけだ。
「美希奈の夢はトップアイドルになること」
「それは先程聞いた」
「カグリさんはアイドルって何だと思います?」
小娘が俺を試す気か? だが、ここは怒らない。大人の寛容さで付きやってやろう。
「偶像。民衆の願望の投影・・・」
「何だか小難しいこと言いだした~」
美希奈は俺の折角の講釈を遮りやがった。
「カグリさんと話していると何かはぐらかされそう」
そう俺の話術は霧の如く、言葉を発するほどに濃くなり五里霧中に迷い出す。その本質に気付いたというのか、この頭が良さそうで無い小娘が? 理屈じゃなく天才肌直感で本質に迫るというのか?
「聞き方変える。
ズバリアイドルにとって大事なのは何だと思う?」
「可愛さ」
「ぶっぶーー、清らかさです。
アイドルは汚いことなんかしません。綺麗なの。清らかなの。トイレなんか行かないし~当然恋人もいない。だってアイドルはみんなを愛する天使だもん」
正しくはそういう願望を投影された偶像、虚構。現実には存在しない虚実。
「美希奈は出来るだけその理想像に近付きたいの、だからトップアイドルになるまで処女なの。
だからね。夢が叶った後ならいいの、そしたらアイドル卒業。こんどはダーリンだけを愛してあげる」
そうきたか。なかなかに面白い。
「どうトップアイドルのバージン、男なら喉から手が出るほど欲しいでしょ」
そのこちらを誘惑する顔は、小悪魔さながらで天使とはほど遠い娼婦のようだった。
「報酬はトップアイドルに成れたらか、成れなかったら私はただ働きかい?」
確かにこの俺を持ってしても処女のトップアイドルを抱いたことは無いし、これからもそんな機会が来るとは思ってないし、そんなことを夢に見たことも無かったな。
夢にすら思ったことが無い報酬は魅力的と言えば魅力的かも知れない。
「当然です。美希奈がトップアイドルに成れなかったら、それはカグリさんが本気で無かったということです」
「私の能力については疑っていないのだな」
ついでだが自分の素質についても一片も疑ってないんだな。
「美希奈が心も体も捧げて愛してあげると決めた運命の人、当たり前じゃない」
素直に評価されて喜べばいいのか?
「もしもだが、君の方が途中で挫折したらどうする?」
「そんなことありません」
きっぱりと言い切る。
「もしもだ。君は若くて可愛い、きっと素敵な王子様が攫いに来るだろう。そこでもし君が誘惑に負けたらどうする?」
「そんなことはありえない、でももし誘惑に負けたら美希奈に価値はない。AV女優にするなり性奴隷にして中国の金持ちに売るなり好きすればいいじゃん」
この娘、可愛い顔して時々えぐい事言うよな。
「さもなくば君に力が無くて成れなかった場合はどうする?」
「その時も好きにしていいよ」
あっさりと言うか、自分が成れないなんて微塵も疑ってないのか、若いって怖い。
「更に質問だ。君にとってアイドルとは幾つまでだい?」
「24」
これも予め決めていたのがノータイムで答えてきた。
そうかこの娘は自分でタイムリミット決めていたのか、その覚悟本物に近い。
それでもだ、イケメンが現れれば運命の人が表れた本当の愛を知ったと夢など放り投げて墜ちる。
夢敗れる少女の瞬間を見るのも一興か。
それに少なくても今この瞬間は本気だ。
「よし、分かった」
俺は今までのことをまとめた契約書をスラスラと書いて美希奈の前に出した。
「君がバージンでいる限り24才まで俺は君を全力で支援する。違反した場合の罰則は君が先程言った通りにしてある。
達磨にされて見世物小屋で一生を終えるかも知れないぞ。
サインできるか?」
俺は闇金業者より怖く悪魔が持ちかける取引のように囁く。
会心の出来と自画自賛出来る出来映え、並みの小娘ならここでちびって泣きを入れるほどに怖いはずだ。
「それ、カグリさんが違反した場合の罰則がないね」
やはりただの天然では無いな。
「ほう~マヌケでは無いのだな。なら、書き加えるとする・・・」
俺が契約書を戻そうとするより早く美希奈は親指を噛み千切って契約書に血判した。
「カグリさんが美希奈を裏切れるわけが無いからいい」
「いいだろう。その夢、俺が拾った」
思わずパンッと拍手をして快諾してしまった。
面白い、この娘はスターに成れる。
悪意渦巻く暗黒の芸能界で輝ける星になれる。故に蛾の如く悪意が寄ってくる日常にトラブルまみれになれることは確実。
ああ~トラブル、極上のトラブル。トラブルこそ俺に生きている実感を与えてくる甘美なる美女。
俺は股間から背筋に掛けてゾクゾクしてしまった。
「やっと美希奈を認めてくれた」
「早速明日から働いて貰うぞ。メルアドを教えろ、後で集合場所等を連絡するからな遅れるなよ」
「分かった。
よろしくね、カグリ」
「ああ、美希奈」
俺と美希奈は堅く握手をし、美希奈はタクシーを呼んで帰した。
夢見る少女は真っ直ぐでいいが、汚い大人はそうはいかない。彼女のマネージャーを引き受けるなら、彼女が所属していた芸能事務所と話を付ける必要がある。
それにも簡単に所属アイドルに枕をさせ安売りさせる事務所は碌なものじゃ無いことは確定。潔癖な事務所など無いが、その中でも裏社会寄りの事務所だな
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