虚構の旋律を奏でしもの

コトナガレ ガク

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その出会いが発火点

第4話 脇が甘い

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「それでカグリさんでしたか、何の用でしょうか?」
 俺は食事が終わるとそのまま美希奈が所属する芸能事務所に赴き、テレビ局の方から仲島の用で来たと言ったらアポ無しで社長と面談できた。
 嘘は一言も言ってない。
 それでもすんなり通れたのはこの俺の溢れ出る誠実なオーラの所為だな。抑えても抑えきれない魅力が怖い。
 以外と趣味がいい応接間のソファーに座る俺の前にいるのは、白ジャケットに真っ赤なシャツと黄色のネクタイを着た妙な色気のある男。
 業界人を気取っているようだが、若い三十代か?
 三十代でこの規模の芸能事務所の社長とはいい金蔓を捕まえたか?
 美希奈が俺をマネージャーにしますと言ったところで、ハイそうですかと成るわけが無い。個人活動のアイドルじゃ無いんだ、最低でも所属する事務所の了承がいる。
 だがまあ、普通ただでやると提案しても何処の誰だか分からない男をマネージャーにするような芸能事務所があるわけが無い。良くて門前払いかバックにいる怖いおにーさん達に袋叩きにされて終わりだ。
 だがこのカグリ、不可能を可能にする男、現実を虚構にすり替えて俺に頼った美少女の想いに答えてみせる。
 ふむ、なっかなかいい謳い文句、気分が乗った。
 交渉は最初が肝心ハッタリ肝要。
「単刀直入に言いましょう。この芸能事務所を俺に譲って貰いたい」
 ドーンと行きました。マネージャーなんてセコイ事は言わない、この芸能事務所ごとまるっと頂く。
「はあ、頭湧いてんのか」
 社長は俺の提案に怒り出すどころか呆れ顔になる。俺の提案を現実的と受け止められなかったようだが、ふっ俺の器の大きさを感じ取れないとは小人は度し難し。
「貴方には芸能事務所の社長の資格が無い」
「ああ、資格だな~何言ってんだお前」
 ガラッと口調がガラ悪くなる。元はヤンキーかヤクザのフロント起業のお飾り社長か知らないが、根が透けて見える。
「所属するアイドルに枕を強要しましたね」
「はっそのことか。そんなの普通だろうが」
 おおっと危ない発言頂きました。幾ら業界の常識でも部外者に聞かせて言い台詞じゃ無いぞ。ここは正義を燃やして断罪の刃を振り下ろし、なんてね。別に俺は週刊誌の記者じゃ無い、そこを追求してもしょうがない。
「そうかもしれませんが、断られた後の対応がよろしくない」
「その後の対応だと」
 ここで初めて社長に困惑が現れる。
「仲島に言われるがままに、所属するアイドルを一人悪意の壺の中に放り投げましたね。
 それがいけない、いやいやいけない。軽率すぎでしたね。
 やるならしっかり監視を付けておくべきでしたね。脇が甘いとしか言いようがない、脇が甘くていい香りがしてもいいのは女性だけですよ。
 なんで悪意が自分に向かないと思ったんです?」
 悪い顔をしながら俺はここで仲島に書かせた念書をスッと社長の前に出すのであった。

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