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第七話 好青年
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ゲスな人間共の相手をするのは煩わしいが、ここは先を見据え少し体を慣らしておくか。
「ムジョウ様は下がっていて下さい」
俺が一歩出るより早くイーヌが俺の前に出る。まあ俺の眷属としては当たり前の行動なのだが、どうにも体裁は悪いな。
「ひゃはっは、坊主おねーちゃんに守って貰うなんて金玉ついてんのか」
決めた神を侮辱した罪は重い、生まれたことを後悔して貰おう。
ゴッドバイスで筋肉が破断するまで筋トレでもして貰おうかな。
「やめろっ」
俺が動き出すより早く悪漢共を制止する鋭い声が響いた。声の方を見れば精悍な顔つきの青年が此方に向かってくる。
顔付き体付き足裁き、どれをとってもイーヌより上手であることが読み取れる。
正義感に駆られた青年の偽善行為か。怒りを吐き出すタイミングを奪われたのは業腹だが、神として度量は示して大人しくお手並み拝見。見事ならば褒美も出そう。
「なんだてめえ」
「ああ」
「お前達そんな子供二人に数人掛かりで襲い掛かるなんて恥ずかしくないのか」
「うるせえっ、えぐ」
正論に強盗は握り締めたナイフで答えるが、青年の顎を正確に狙い撃ったジャブで崩れ落ちる。
「見事だ」
「むっ、あのくらいなら私にだって出来ます」
俺が零した青年を褒める言葉にイーヌが反応した。
「張り合わなくてもいいから」
昔飼っていた犬も他の犬を目の前でちょっと撫でると直ぐ嫉妬していたな~と僅かながら目を離した隙に青年の傍にいた数人の強盗は地に伏していた。
これで道を塞いでいた一方は片付いた。もう一方かと振り返れば、脱兎の如く逃げ出していた。
片付いたか。見事は手際、これは褒美を取らすしか無いか。
「大丈夫かい?」
青年は此方に近寄ると気遣うように尋ねてくる。
「うむ、助かった」
「子供二人でこんな道を歩いては行けないよ。家はどこだい送るよ」
「いえ私達来たばかりでまだ宿も取ってないんです」
「そうかそれでこんな道に迷い込んだのか。良し大通りまで送ってあげよう」
「すいません」
こんな好青年がこんな町にもいるのか?
その爽やかさに、さっきまで嫉妬していたイーヌも素直に礼を言う。
これは神として報いには報いてやらねばなるまい。
「名は何という?」
「俺か? 俺はティーガ族のドゥーラ」
思わず出てしまった偉そうな口調にもドゥーラは気にすること無く答えてくれる。
「ティーガ族が何でこんな辺境に?」
イーヌはドゥーラの名乗りに驚いたような顔をしている。後で聞いた話だが、ティーガ族の神は健在でばりばりにこの大陸の覇権を争っている一族だそうだ。神を滅ぼされて辺境に追いやられてきたドッガー族のイーヌとは違う。
「色々と事情がな。聞いてくれるな」
「すっすいません。初対面で助けてくれた人に向かって不躾なことを。
私はドッガー族のイーヌです」
礼儀正しいイーヌは頭を下げた後に自己紹介をする。時々子供っぽいが基本的には出来た女ではあるな。
「僕はドッガー族のハウンド。イーヌ姉さんと一緒にこの街に獲物を売りに来ました」
取り敢えずは神であることは伏せて、礼儀正しいませた子供感じで自己紹介する。
「そうか。お前も姉さんを守ったやれよ」
ぽんと俺の肩を叩いて力強く励ます、頼れる兄貴分って感じだ。
「はい。
それでお礼がしたいのですが・・・」
「いやいい。こんな辺境で生きるなら金は大事にしろ」
懐から金を出そうとした俺をドゥーラは制した。
「いやそれですと僕(神として)の気が済みません。何かお礼(褒美)をさせて下さい」
「そこまで言うなら。家に妹がいるんだが、妹の話し相手になってくれないか。きっと喜ぶ」
こんな身も知らずの客人がいきなり来て喜ぶ? そこにドゥーラがティガー族から離れて辺境なんかにいる理由がありそうだな。
まあいい。それを求めるのなら神としてそれを与えよう。
「分かりました。行きがけに何かおいしいお菓子でも買っていきましょう」
「そっそれは」
「手ぶらで訪問は出来ませんよ。
さあ、おいしいお菓子が売っている店を紹介して下さい」
「ふっ敵わないな。分かった行こう案内する」
こうして俺達はドゥーラの家を訪問することになったのである。
「ムジョウ様は下がっていて下さい」
俺が一歩出るより早くイーヌが俺の前に出る。まあ俺の眷属としては当たり前の行動なのだが、どうにも体裁は悪いな。
「ひゃはっは、坊主おねーちゃんに守って貰うなんて金玉ついてんのか」
決めた神を侮辱した罪は重い、生まれたことを後悔して貰おう。
ゴッドバイスで筋肉が破断するまで筋トレでもして貰おうかな。
「やめろっ」
俺が動き出すより早く悪漢共を制止する鋭い声が響いた。声の方を見れば精悍な顔つきの青年が此方に向かってくる。
顔付き体付き足裁き、どれをとってもイーヌより上手であることが読み取れる。
正義感に駆られた青年の偽善行為か。怒りを吐き出すタイミングを奪われたのは業腹だが、神として度量は示して大人しくお手並み拝見。見事ならば褒美も出そう。
「なんだてめえ」
「ああ」
「お前達そんな子供二人に数人掛かりで襲い掛かるなんて恥ずかしくないのか」
「うるせえっ、えぐ」
正論に強盗は握り締めたナイフで答えるが、青年の顎を正確に狙い撃ったジャブで崩れ落ちる。
「見事だ」
「むっ、あのくらいなら私にだって出来ます」
俺が零した青年を褒める言葉にイーヌが反応した。
「張り合わなくてもいいから」
昔飼っていた犬も他の犬を目の前でちょっと撫でると直ぐ嫉妬していたな~と僅かながら目を離した隙に青年の傍にいた数人の強盗は地に伏していた。
これで道を塞いでいた一方は片付いた。もう一方かと振り返れば、脱兎の如く逃げ出していた。
片付いたか。見事は手際、これは褒美を取らすしか無いか。
「大丈夫かい?」
青年は此方に近寄ると気遣うように尋ねてくる。
「うむ、助かった」
「子供二人でこんな道を歩いては行けないよ。家はどこだい送るよ」
「いえ私達来たばかりでまだ宿も取ってないんです」
「そうかそれでこんな道に迷い込んだのか。良し大通りまで送ってあげよう」
「すいません」
こんな好青年がこんな町にもいるのか?
その爽やかさに、さっきまで嫉妬していたイーヌも素直に礼を言う。
これは神として報いには報いてやらねばなるまい。
「名は何という?」
「俺か? 俺はティーガ族のドゥーラ」
思わず出てしまった偉そうな口調にもドゥーラは気にすること無く答えてくれる。
「ティーガ族が何でこんな辺境に?」
イーヌはドゥーラの名乗りに驚いたような顔をしている。後で聞いた話だが、ティーガ族の神は健在でばりばりにこの大陸の覇権を争っている一族だそうだ。神を滅ぼされて辺境に追いやられてきたドッガー族のイーヌとは違う。
「色々と事情がな。聞いてくれるな」
「すっすいません。初対面で助けてくれた人に向かって不躾なことを。
私はドッガー族のイーヌです」
礼儀正しいイーヌは頭を下げた後に自己紹介をする。時々子供っぽいが基本的には出来た女ではあるな。
「僕はドッガー族のハウンド。イーヌ姉さんと一緒にこの街に獲物を売りに来ました」
取り敢えずは神であることは伏せて、礼儀正しいませた子供感じで自己紹介する。
「そうか。お前も姉さんを守ったやれよ」
ぽんと俺の肩を叩いて力強く励ます、頼れる兄貴分って感じだ。
「はい。
それでお礼がしたいのですが・・・」
「いやいい。こんな辺境で生きるなら金は大事にしろ」
懐から金を出そうとした俺をドゥーラは制した。
「いやそれですと僕(神として)の気が済みません。何かお礼(褒美)をさせて下さい」
「そこまで言うなら。家に妹がいるんだが、妹の話し相手になってくれないか。きっと喜ぶ」
こんな身も知らずの客人がいきなり来て喜ぶ? そこにドゥーラがティガー族から離れて辺境なんかにいる理由がありそうだな。
まあいい。それを求めるのなら神としてそれを与えよう。
「分かりました。行きがけに何かおいしいお菓子でも買っていきましょう」
「そっそれは」
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