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第1章
第2話 セットアップ
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第2話
震える両手で段ボールの中から『seven of war』専用ヘッドギア《ドッペルゲンガー》を取り出します。なにせ普通に買おうとすれば百万円するゲーム機です震えるのも当然といえば当然です
今の僕の気持ちを言葉で表すなら感動と興奮です!ようやく念願の『seven of war』が出来るからなのか喜びで天に召されそうな気分です
「さ、早速セットアップしなきゃ!」
そう言いヘッドギアを慎重に机の上に置きます。勿論ヘッドギアの下にクッションを置くのを忘れません。どこかが壊れた場合その修理だけでもかなりの金額になりそうなので慎重にかつ丁寧に扱わなければいけません
「まずはセットアップ用の説明書を取り出してっと」
段ボールの中をあさり、説明書を取り出します
「えーと、なになにまずは・・・」
『 ・セットアップ説明書
step1 まずは段ボールに同梱されている黒い球形の機械を取り出してください 』
「黒い球?えーと、あった!」
説明書の影に隠れていた為か先程までは気づきませんでしたが確かに黒い球が専用の台座に乗せられて段ボールの隅にありました。取り出してみると見た目に反して意外と重たいんですこの球。表面にはヘッドギアとお揃いの金のラインが描かれています
『step2 取り出した球形の機械のコンセントを挿します』
「コンセント、なんだ・・・まぁいいか。はい、挿しました。で、次に」
『step3 衛星からの専用回線電波並びに位置情報などの情報を読み取る為3時間程待ちます。上部にあるランプが赤から緑に変わっていればセットアップ完了です』
「はい、待ちます」
・・・・・・・・・・・えっ?
「こんだけ?」
予想外の簡単さに少し拍子抜けな気分です
「最近のゲーム機械って簡単なんだなぁ」
この機械が他の機械とは一線を画すような機械とも知らずについ、そんな感想が呟きとして出てきていました
「まぁ簡単なのに越したことはないよね。じゃあとりあえずその間に着替えちゃうか」
どうやらしばらく情報の読み取りに時間が掛かるようなので学校の制服を脱ぎ普段着へと着替えておきます。ちょうど着替え終わった時階下からばあちゃんの声が聞こえてきました。
「滉ちゃん、ご飯よー」
「はーい」
時計を見ると帰って来てから1時間程か経っていました。意外と時間が過ぎていたようで夕飯が出来上がっていたみたいです。
服も着替え終わったので夕飯食べに行ってきます。
・・・・・3時間後
「ふぅ、やっぱり道後温泉はいいなぁ」
お風呂で温泉の素が入った湯船に浸かり体はぽかぽかです。ちなみに我が家は毎日日替わりで入浴剤を入れます。僕的には温泉の素も好きですがバス○マンも嫌いじゃありません
まぁそんな事はさておき、頭をタオルで拭きながら球を確認するとランプが赤から緑へと変わっていました
「ランプが変わってるって事はもう出来るのかな?」
説明書を確認しましたが予想通りプレイ出来るようです。
「じゃあ、早速・・・あっ、その前に」
プレイ出来るならすぐにでもやりたい衝動に駆られますが我慢して明日の学校の準備をします
バカ真面目?好きに言ってください。『何事も準備はぬかりなく行う』何事も失敗しない為には準備が必要なんです
「課題よし、教科書よし、あとも・・・うん大丈夫だな。それじゃあ・・・」
明日の準備も完了です
さて、いよいよこの時がやってきました!
机に置いてあるドッペルゲンガーを手に取りベッドに向かいます。そしてドッペルゲンガーをかぶり寝転がりました
いよいよです。夢にまで見た瞬間が今から始まります
ワクワク、ドキドキ、そして少しの不安。様々な感情を抱えながら小声で初期起動キーワードを呟きます
《アナザーリアリティ》
キーワードに反応し音声が流れました
『初期起動キーワードを確認。seven of war起動と共に先程の声紋を登録します。以降、音声認識により先程の声紋以外ではスタート致しません。まずはアバターの設定を行います。以降は仮想空間で行います。キーワードを仰ってください』
《ダイブ》
『確認しました。アナザーリアリティーを心ゆくまでお楽しみください』
機械アナウンスを聞き僕の意識は深く眠りにつくように途切れた・・・
□■□
僕の住む島はいわゆる離島と呼ばれています。本州から船で二時間かけて僕の住んでいる島の近くの大きな島へ、更にそこから船で一時間かけてようやくたどり着けるような島です
正直言えばかなり不便だと思います。何か大きな買い物をしようと思えばわざわざ三時間かけて本州まで行かなければ行けません。島にあるお店も漁師のおじさん達が毎日通うような小料理屋さんが一軒と小さな商店しかありませんし。
僕にとって更に大変なのは通学です。さっきも言った通り本州からかなり離れた島ですから、子供の数も2人しかいません。だから、当然と言えば当然の如く、僕の島には学校なんてありません。ですから僕ともう1人の子は毎日船で一時間かけて隣の大きな島の高校まで通っています。
そんな島だからこそ僕ら子供が満足出来るような娯楽なんて全くと言っていいほどありません。まぁ僕には趣味があるので別段気にしてませんけど。でも、時々思ってしまうのです。高校の同級生がいつも話してくれるようなテレビゲームなんかがあればなぁと。お恥ずかしい話ですが僕は16年間生きてきてまったくゲームという物をしたことがありません。
興味がないか?そりゃあるに決まってます。同級生が学校で見せてくれるプレイ動画というやつを見るたびにやってみたいと思うぐらいには興味あります。でも一つ問題があります。僕が興味を持ったのはインターネットを通じて大人数でプレイするゲームいわゆる『MMORPG』というやつなのです。ですがさっき言った問題点がこれを阻みます。何故なら僕の住む島には・・・ネット環境がないのです。それを知った時はかなり落ち込みました。同級生にも今この時代にネット環境がないのはおそらくお前んところの島だけだと言われました。
だからこそ初めて雑誌で『seven of war』を見た時はほんとに衝撃を感じ、同時に喜びが爆発する思いでした・・・
僕が『seven of war』を初めて知ったのは梅雨も明け、そろそろ本格的に暑くなろかといったある日の事です
「ただいまー」
・・・・・返事なし
「あれ?ばあちゃんいないのかな?」
その日もいつも通りの時間に学校から帰ってきた僕は、いつも優しく迎えてくれる祖母の返事がないことに疑問を覚えました。玄関で靴を脱ぎリビングへと続くドアを開け暖簾をくぐった先にあるリビングへと足を向けます
「ばあちゃん?」
声を掛けながらリビングに入りましたが、やはり祖母の姿はありません。そこで僕は、最悪の事態を想定していまいました。ばあちゃんも今年で65歳、最近は体の調子が悪いと呟くことも多くなってきていました。だから・・・
『滉ちゃんへ ちょっとトメさんと素潜ってきます』
「・・・・」
と書かれた書き置きを自分の部屋の机の上で見つけた時は安心した気持ち半分、まだまだ元気だなと呆れの気持ち半分でした(笑)
ばあちゃんの事も杞憂だったとわかり、書き置きを見つけたのも自分の部屋だったこともあり、そのままカバンを置いて普段着へと着替え、少し台所によってビニール袋と小さめのアイスボックスを持って僕は再び玄関に戻って来ました
「ナァ~」
「ん?あぁ、ハナ今日も元気してたか?」
玄関に座り靴を履いているとうちの飼い猫である三毛猫のハナがすり寄って来ました。ハナはばあちゃんが知り合いからもらってきた猫です。今年で3歳になります
「今日も一緒に行くか?」
「ナァ~」
「そっか、じゃあ一緒に行こ」
僕の問いかけに『ついて行く~』と思われる鳴き声を上げながら僕の膝に飛び乗ってくるハナさんを抱き上げて玄関を出ます
「ちょっと待っててな」
「ナ?」
ハナを自転車の籠に乗せ、庭にある倉庫の方へと向かい、お目当の物を取り出します
「お待たせ、じゃあ行こっか」
お目当の物、釣竿を肩に担ぎハナを乗せた自転車で家の前の坂を下っていきます。余談ですが僕の家はこの島の中でも他の家々に比べて少し高い場所に立っています。ですので・・・
「・・・相変わらずこの坂からの眺めは綺麗だなぁ」
この島には当然の事ながら高い建物なんてないので高台にある僕の家の前の坂からは雄大な日本海が見えます。その海を夕焼けのオレンジが染め上げる光景は子供の頃から何度も見ている僕でも毎回綺麗だなぁと思います。僕的にはこの光景はこの島の数少ない良さだと思っています
そんなことを思いながら一気に坂を下り、家々の間を通り抜けて行きます
「滉!今日も釣りに行くのか!?」
「うん!」
「はは、そうか気をつけろよ!」
小さい島なので島民の人達とは全員知り合いです。こうやって自転車を漕いで海に向かっている間にも何人もの大人の人達に声を掛けられます
キィッ!
話しかけて来る人達に返事を返しながら自転車を走らせる事10分、いつものポイントに到着です。僕は毎日この防波堤の先端で大体釣りをしています。何よりあまり人も来ないし静かに釣りが出来る上、先程お話しした夕陽を見ながら釣りが出来るのでここは僕のお気に入りのポイントです。
「ハナ、着いたよ」
「ナァ~」
ハナに声を掛けながら籠から降ろします。ハナとはよく釣りに来るのでハナも心得たもの。僕の邪魔にならない位置で座り毛繕いを始めます
「さて、と」
毛繕いをするハナの可愛さに少し癒された後、家から持ってきたビニール袋から餌、(今朝採ってきたゴカイ)を取り出し釣竿の先端につけ海に投げ込みます
チャポンッ
そしてウキが反応するまではひたすら待ちます。
「う~ん、今日は風がきもちいい日だなぁ」
人によっては魚がかかるまでのこの時間が苦痛だと言う人もいますが僕はこの時間は特に苦痛ではないです。なんたって相手も生き物、お腹が空いていればすぐにかかりますが満腹の時は餌に見向きもしないのは当たり前です。
まぁ僕の性格もあるのかもしれませんが気長に待ち、一瞬の魚との戦いを楽しむ為にもこの時間は必要だとおもっています。
・・・・10分後
「ナァ~」
毛繕いを終えたハナが擦り寄ってきます
「釣れないねぇ」
そう言いながらハナの喉を撫でてあげます。ハナは嬉しそうにより一層すり寄ってきます。正直超癒されます
グッ
その時です。海面に浮かぶウキが軽く沈みました。
「ハナちょっとごめんな」
ハナを撫でる手を止めウキに集中します。
「・・・・・」
まだ・・・・・まだ・・・・・・今だ!
海面に浮かんだウキが海中に消えた瞬間を見計らって合わせます
グーーッ!
「来た・・・キタキタキター!」
えっ?テンションが高い?
そうなんですよね島の人にも言われるんです。「滉は魚がかかるまでは穏やかなのに魚が掛かった瞬間人が変わる」って。まぁ自分でも少しは自覚してます
そんな事を思っている間にも魚は針から逃れようと暴れ回ります。ですが・・・
「甘い甘い!そんなんじゃ逃げれないよ!」
竿を魚の動きに合わせ動きを抑制し、リールを巻きます。
そして・・・
バシャッ!
タモを持って来ていないので竿を振り上げ勢いよく海中から引きずり出します。そこにはなかなかの大きさのメバルが
「28cmってとこかな」
尺メバルには届きませんがなかなかの大物です。毎日釣りに来るとはいえ、釣りが出来る時間は限られています。その中でのこのサイズなら満足です
「ナァ」
「ありがとハナ」
魚との戦いが終わったのを理解したのかハナが近づいて来ました。ですが今度は僕に擦り寄りながらも視線はメバルに釘付けです(笑)
「ハナも食べたいの?」
「ナァ!」
心なしか強く感じるハナの返答を受けて食いしん坊だなぁと思いながらももう少し頑張ろうと気合を入れ直します
・・・・1時間後
あれから1時間が経ちました。自分で言うのもなんですが今日の釣果は上々です。あの後同サイズのメバルをもう一匹、あと20cmぐらいのアジが3匹釣れました。潮の満ち引きの関係もあったのでしょうが今日は出来過ぎな気もします
「やったねハナ」
「ナァ!」
ハナも嬉しそうです。上機嫌なハナを撫で回していたその時でした
キィーーー!
「ああ!やっぱりここにいた!」
ブレーキ音と共に元気ハツラツといった感じの声が聞こえてきました・・・
震える両手で段ボールの中から『seven of war』専用ヘッドギア《ドッペルゲンガー》を取り出します。なにせ普通に買おうとすれば百万円するゲーム機です震えるのも当然といえば当然です
今の僕の気持ちを言葉で表すなら感動と興奮です!ようやく念願の『seven of war』が出来るからなのか喜びで天に召されそうな気分です
「さ、早速セットアップしなきゃ!」
そう言いヘッドギアを慎重に机の上に置きます。勿論ヘッドギアの下にクッションを置くのを忘れません。どこかが壊れた場合その修理だけでもかなりの金額になりそうなので慎重にかつ丁寧に扱わなければいけません
「まずはセットアップ用の説明書を取り出してっと」
段ボールの中をあさり、説明書を取り出します
「えーと、なになにまずは・・・」
『 ・セットアップ説明書
step1 まずは段ボールに同梱されている黒い球形の機械を取り出してください 』
「黒い球?えーと、あった!」
説明書の影に隠れていた為か先程までは気づきませんでしたが確かに黒い球が専用の台座に乗せられて段ボールの隅にありました。取り出してみると見た目に反して意外と重たいんですこの球。表面にはヘッドギアとお揃いの金のラインが描かれています
『step2 取り出した球形の機械のコンセントを挿します』
「コンセント、なんだ・・・まぁいいか。はい、挿しました。で、次に」
『step3 衛星からの専用回線電波並びに位置情報などの情報を読み取る為3時間程待ちます。上部にあるランプが赤から緑に変わっていればセットアップ完了です』
「はい、待ちます」
・・・・・・・・・・・えっ?
「こんだけ?」
予想外の簡単さに少し拍子抜けな気分です
「最近のゲーム機械って簡単なんだなぁ」
この機械が他の機械とは一線を画すような機械とも知らずについ、そんな感想が呟きとして出てきていました
「まぁ簡単なのに越したことはないよね。じゃあとりあえずその間に着替えちゃうか」
どうやらしばらく情報の読み取りに時間が掛かるようなので学校の制服を脱ぎ普段着へと着替えておきます。ちょうど着替え終わった時階下からばあちゃんの声が聞こえてきました。
「滉ちゃん、ご飯よー」
「はーい」
時計を見ると帰って来てから1時間程か経っていました。意外と時間が過ぎていたようで夕飯が出来上がっていたみたいです。
服も着替え終わったので夕飯食べに行ってきます。
・・・・・3時間後
「ふぅ、やっぱり道後温泉はいいなぁ」
お風呂で温泉の素が入った湯船に浸かり体はぽかぽかです。ちなみに我が家は毎日日替わりで入浴剤を入れます。僕的には温泉の素も好きですがバス○マンも嫌いじゃありません
まぁそんな事はさておき、頭をタオルで拭きながら球を確認するとランプが赤から緑へと変わっていました
「ランプが変わってるって事はもう出来るのかな?」
説明書を確認しましたが予想通りプレイ出来るようです。
「じゃあ、早速・・・あっ、その前に」
プレイ出来るならすぐにでもやりたい衝動に駆られますが我慢して明日の学校の準備をします
バカ真面目?好きに言ってください。『何事も準備はぬかりなく行う』何事も失敗しない為には準備が必要なんです
「課題よし、教科書よし、あとも・・・うん大丈夫だな。それじゃあ・・・」
明日の準備も完了です
さて、いよいよこの時がやってきました!
机に置いてあるドッペルゲンガーを手に取りベッドに向かいます。そしてドッペルゲンガーをかぶり寝転がりました
いよいよです。夢にまで見た瞬間が今から始まります
ワクワク、ドキドキ、そして少しの不安。様々な感情を抱えながら小声で初期起動キーワードを呟きます
《アナザーリアリティ》
キーワードに反応し音声が流れました
『初期起動キーワードを確認。seven of war起動と共に先程の声紋を登録します。以降、音声認識により先程の声紋以外ではスタート致しません。まずはアバターの設定を行います。以降は仮想空間で行います。キーワードを仰ってください』
《ダイブ》
『確認しました。アナザーリアリティーを心ゆくまでお楽しみください』
機械アナウンスを聞き僕の意識は深く眠りにつくように途切れた・・・
□■□
僕の住む島はいわゆる離島と呼ばれています。本州から船で二時間かけて僕の住んでいる島の近くの大きな島へ、更にそこから船で一時間かけてようやくたどり着けるような島です
正直言えばかなり不便だと思います。何か大きな買い物をしようと思えばわざわざ三時間かけて本州まで行かなければ行けません。島にあるお店も漁師のおじさん達が毎日通うような小料理屋さんが一軒と小さな商店しかありませんし。
僕にとって更に大変なのは通学です。さっきも言った通り本州からかなり離れた島ですから、子供の数も2人しかいません。だから、当然と言えば当然の如く、僕の島には学校なんてありません。ですから僕ともう1人の子は毎日船で一時間かけて隣の大きな島の高校まで通っています。
そんな島だからこそ僕ら子供が満足出来るような娯楽なんて全くと言っていいほどありません。まぁ僕には趣味があるので別段気にしてませんけど。でも、時々思ってしまうのです。高校の同級生がいつも話してくれるようなテレビゲームなんかがあればなぁと。お恥ずかしい話ですが僕は16年間生きてきてまったくゲームという物をしたことがありません。
興味がないか?そりゃあるに決まってます。同級生が学校で見せてくれるプレイ動画というやつを見るたびにやってみたいと思うぐらいには興味あります。でも一つ問題があります。僕が興味を持ったのはインターネットを通じて大人数でプレイするゲームいわゆる『MMORPG』というやつなのです。ですがさっき言った問題点がこれを阻みます。何故なら僕の住む島には・・・ネット環境がないのです。それを知った時はかなり落ち込みました。同級生にも今この時代にネット環境がないのはおそらくお前んところの島だけだと言われました。
だからこそ初めて雑誌で『seven of war』を見た時はほんとに衝撃を感じ、同時に喜びが爆発する思いでした・・・
僕が『seven of war』を初めて知ったのは梅雨も明け、そろそろ本格的に暑くなろかといったある日の事です
「ただいまー」
・・・・・返事なし
「あれ?ばあちゃんいないのかな?」
その日もいつも通りの時間に学校から帰ってきた僕は、いつも優しく迎えてくれる祖母の返事がないことに疑問を覚えました。玄関で靴を脱ぎリビングへと続くドアを開け暖簾をくぐった先にあるリビングへと足を向けます
「ばあちゃん?」
声を掛けながらリビングに入りましたが、やはり祖母の姿はありません。そこで僕は、最悪の事態を想定していまいました。ばあちゃんも今年で65歳、最近は体の調子が悪いと呟くことも多くなってきていました。だから・・・
『滉ちゃんへ ちょっとトメさんと素潜ってきます』
「・・・・」
と書かれた書き置きを自分の部屋の机の上で見つけた時は安心した気持ち半分、まだまだ元気だなと呆れの気持ち半分でした(笑)
ばあちゃんの事も杞憂だったとわかり、書き置きを見つけたのも自分の部屋だったこともあり、そのままカバンを置いて普段着へと着替え、少し台所によってビニール袋と小さめのアイスボックスを持って僕は再び玄関に戻って来ました
「ナァ~」
「ん?あぁ、ハナ今日も元気してたか?」
玄関に座り靴を履いているとうちの飼い猫である三毛猫のハナがすり寄って来ました。ハナはばあちゃんが知り合いからもらってきた猫です。今年で3歳になります
「今日も一緒に行くか?」
「ナァ~」
「そっか、じゃあ一緒に行こ」
僕の問いかけに『ついて行く~』と思われる鳴き声を上げながら僕の膝に飛び乗ってくるハナさんを抱き上げて玄関を出ます
「ちょっと待っててな」
「ナ?」
ハナを自転車の籠に乗せ、庭にある倉庫の方へと向かい、お目当の物を取り出します
「お待たせ、じゃあ行こっか」
お目当の物、釣竿を肩に担ぎハナを乗せた自転車で家の前の坂を下っていきます。余談ですが僕の家はこの島の中でも他の家々に比べて少し高い場所に立っています。ですので・・・
「・・・相変わらずこの坂からの眺めは綺麗だなぁ」
この島には当然の事ながら高い建物なんてないので高台にある僕の家の前の坂からは雄大な日本海が見えます。その海を夕焼けのオレンジが染め上げる光景は子供の頃から何度も見ている僕でも毎回綺麗だなぁと思います。僕的にはこの光景はこの島の数少ない良さだと思っています
そんなことを思いながら一気に坂を下り、家々の間を通り抜けて行きます
「滉!今日も釣りに行くのか!?」
「うん!」
「はは、そうか気をつけろよ!」
小さい島なので島民の人達とは全員知り合いです。こうやって自転車を漕いで海に向かっている間にも何人もの大人の人達に声を掛けられます
キィッ!
話しかけて来る人達に返事を返しながら自転車を走らせる事10分、いつものポイントに到着です。僕は毎日この防波堤の先端で大体釣りをしています。何よりあまり人も来ないし静かに釣りが出来る上、先程お話しした夕陽を見ながら釣りが出来るのでここは僕のお気に入りのポイントです。
「ハナ、着いたよ」
「ナァ~」
ハナに声を掛けながら籠から降ろします。ハナとはよく釣りに来るのでハナも心得たもの。僕の邪魔にならない位置で座り毛繕いを始めます
「さて、と」
毛繕いをするハナの可愛さに少し癒された後、家から持ってきたビニール袋から餌、(今朝採ってきたゴカイ)を取り出し釣竿の先端につけ海に投げ込みます
チャポンッ
そしてウキが反応するまではひたすら待ちます。
「う~ん、今日は風がきもちいい日だなぁ」
人によっては魚がかかるまでのこの時間が苦痛だと言う人もいますが僕はこの時間は特に苦痛ではないです。なんたって相手も生き物、お腹が空いていればすぐにかかりますが満腹の時は餌に見向きもしないのは当たり前です。
まぁ僕の性格もあるのかもしれませんが気長に待ち、一瞬の魚との戦いを楽しむ為にもこの時間は必要だとおもっています。
・・・・10分後
「ナァ~」
毛繕いを終えたハナが擦り寄ってきます
「釣れないねぇ」
そう言いながらハナの喉を撫でてあげます。ハナは嬉しそうにより一層すり寄ってきます。正直超癒されます
グッ
その時です。海面に浮かぶウキが軽く沈みました。
「ハナちょっとごめんな」
ハナを撫でる手を止めウキに集中します。
「・・・・・」
まだ・・・・・まだ・・・・・・今だ!
海面に浮かんだウキが海中に消えた瞬間を見計らって合わせます
グーーッ!
「来た・・・キタキタキター!」
えっ?テンションが高い?
そうなんですよね島の人にも言われるんです。「滉は魚がかかるまでは穏やかなのに魚が掛かった瞬間人が変わる」って。まぁ自分でも少しは自覚してます
そんな事を思っている間にも魚は針から逃れようと暴れ回ります。ですが・・・
「甘い甘い!そんなんじゃ逃げれないよ!」
竿を魚の動きに合わせ動きを抑制し、リールを巻きます。
そして・・・
バシャッ!
タモを持って来ていないので竿を振り上げ勢いよく海中から引きずり出します。そこにはなかなかの大きさのメバルが
「28cmってとこかな」
尺メバルには届きませんがなかなかの大物です。毎日釣りに来るとはいえ、釣りが出来る時間は限られています。その中でのこのサイズなら満足です
「ナァ」
「ありがとハナ」
魚との戦いが終わったのを理解したのかハナが近づいて来ました。ですが今度は僕に擦り寄りながらも視線はメバルに釘付けです(笑)
「ハナも食べたいの?」
「ナァ!」
心なしか強く感じるハナの返答を受けて食いしん坊だなぁと思いながらももう少し頑張ろうと気合を入れ直します
・・・・1時間後
あれから1時間が経ちました。自分で言うのもなんですが今日の釣果は上々です。あの後同サイズのメバルをもう一匹、あと20cmぐらいのアジが3匹釣れました。潮の満ち引きの関係もあったのでしょうが今日は出来過ぎな気もします
「やったねハナ」
「ナァ!」
ハナも嬉しそうです。上機嫌なハナを撫で回していたその時でした
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すごく斬新で、主人公が釣り大好きってのも可愛いと思います。
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執筆お疲れ様です。とても面白かったです。更新お待ちしております。