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偽善者と切り拓かれる世界 二十月目

偽善者と赤色の解放戦 その08

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 残滓にはマーキングをしていたので、試練の間で何が行われているのかを途中から把握していた。

 やはりオウシュは主人公だな……選ばれずとも得た力で、美味しい部分を持っていく。


「……終わったみたいだな。どうやら、俺の出番はないようだ」

「そうなのか? ではその、すぐにでも向かえる体勢はどういうことだ?」

「眷属も居るからな。いついかなる状況だろうと、俺はそのピンチに駆けつけねばならない……けどまあ、必要ないならそれはそれで構わないさ」

「寂しそうだな」


 うん、めっちゃ寂しい。
 なんだかこう、親離れした子供を見たときみたいな気分だ。

 みんなそれぞれ成長し、強くなっていくことに異論はないんだが……やっぱりこう、頼られる存在であり続けたいんだよな。


「ブリッド、試練が終わったら誰でも通れるようになるんだったな?」

「初代の記憶がたしかなら、そのはずだ。試練を行う必要もなく、再度封印を行わなければ異世界の者であろうと誰でも通行可能だ」

「俺みたいなヤツでも問題なし、か……どうやって行く?」

「門に触れればそれで充分だ」


 とりあえず鑑定眼でじっくりと視ておいてから、門に触れる。
 だが俺は転移されず、ブリッドがその姿をジッと見つめているだけ。


「中の者たちが解放後の儀式を行わなければ開かれないぞ。貢献者たちよりも先に向かうことなど、できるわけがないだろう」

「それもそっか。なら、待つしかないわけだな……ハァ、寂しい。ブリッド、お前はこれからどうする?」

「さすがに数が多かった。一度あの空間で休ませてもらおう」

「あいよ──“召者帰還リターンサモンド”」


 召喚魔法と同じ術式の魔法で、ブリッドを魔本の中から従魔用空間へ送り飛ばす。
 そしてこの場に残ったのは、俺だけ……いちおう偽邪神の信者の残骸もあるけど。


「有効利用できないからなぁ……とりあえず偽邪神との接続線は生まれたけど、これはとりあえず放置だし」


 本来のこの世界の神であるカカこそが、この問題をどうするか決めるべきだ。

 なので逃げられないように隠蔽状態で繋いでおき、何かあればすぐに察知できるように処理をしておく。


「……って、話す相手にはならないな。けどこの短時間じゃ眷属を召喚して話すのも少しになっちゃうだろうし。早く開いてくれればいいのに……」


 暇潰しに魔法を多重起動して浮かせ、制御して遊ぶことに。
 思考はモブスペックの状態で、なので万も億もやるなんてことはまだできない。

 ただ同じことを行わせるだけでいいなら、それでも百ぐらいできるんだけど……それ以上は少しずつ頭痛がひどくなるんだよな。


「……んー、だいぶ掛かるなー」


 儀式というのは、守護者を倒した状態で選ばれし者たちが揃って扉に触れるだけでOKというもの。

 だからすぐに終わると思ったんだが……いつになったら終わるんだか。
 最悪突撃すれば何が起こっているか分かるだろうが、ここは我慢して待ち続ける。


「寂しいから行くのもどうかと思うし、構いすぎると嫌われるよな。うん、魔法の研究でもしていればいいか」


 もしかしたら、戦闘で疲れた体を癒してから開けるのかもしれない。

 儀式を行ったらすぐに次の世界に行ってしまうらしいし、その先で戦闘になる可能性を考慮しているのだろう。

 そういった知識を持つ奴が、選ばれし者たちの中にはいる。
 絶対に行われていない、とは断言できない考えだろう。


「まずはーっと──」


 そうして時間を潰していくと……扉はいつの間にか、橙色の輝きを放っていた。


  ◆   □   ◆   □   ◆

 界廊(赤色──橙色)


「次は橙色の世界なわけね。虹色の世界、万色の世界なわけで……七色の世界じゃない」


 今さらながら、そんなことを考える。
 七色でないのなら、いったい何色あるのかまだ分からない。

 国によっては八色とも九色とも言われる虹だが、それぞれの世界に異なる性質があるのならば……数も特定できるのかもな。


「にしても、界廊を通っていたのか。だから時間が掛かっていたわけね」


 界廊の長さは妖界行きよりも短く、そこまで時間は掛からない。
 だが彼らは初体験、最大限の警戒をしため相応の時間を要してしまったのだろう。

 対して俺は余裕満々、念のため偽善者モードで来ていたのでいっさい心配など抱かずに移動することが可能だ。

 扉が解放された時点で、もう彼らは橙色の世界(仮)へ辿り着いているだろう。
 この界廊には何もいないみたいなので、俺はすぐにゴールできる。


「けど、界廊も世界ごとに違うのか……赤と橙色ばっかり、これはこれで精神的に病む奴が出るかもしれないな」


 選ばれし者たちはそれなりにレベルを上げているので問題ないだろうが、いずれここを渡ろうとする者の中には、そうでは無い者もいるかもしれない。

 そうじゃない、何かしらのセーフ機能があるかもしれないが……鑑定眼で視ても俺にはさっぱり分からないので、そこは眷属たちにお任せな部分だな。


「おっ、あれが出口か……」


 また赤色の世界みたいに橙色一色の世界なのか、それとも全然違う感じなのか……さてさて、いったいどうなっているのやら。


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