890 / 3,179
DIY、紡がれる関係性
白氷 中篇
しおりを挟む「うー……」
「そろそろ落ち着かれましたか?」
「うー……引っ掛かったな!」
「おや?」
しばらく放置していたのだが、『白氷』は雲の縄を固めて拘束から抜け出した。
そして俺を水や氷、蒸気ごとに封じた密閉空間へ閉じ込める。
「はぁ、はぁ……これでどう?」
「──いやー、驚きましたよ。幾重にも異なる性質の結界を形成することで、脱出を困難にするのですか……いやはや興味深い」
「だから、どうしてそこを出てるのよ!?」
「先ほども申した通り、私は『生者』でございます。そして……それは『超越者』としての力も意味しているのです」
そりゃあ『騎士王』とか『闘仙』とかいかにもな名前ならともかく、『生者』だしな。
ただ『私は生きている者です』と言われても、反応に困ってしまうわけか。
「『生者』? うーん、聞き覚えがあるよなないようなー。まあ、いっか。あんた、いったいどうやって抜け出しているのよ?」
「企業秘密です。その方法を伝えてしまったら、『白氷』様に完全に凍らされてしまうかもしれませんので」
「……チッ」
舌打ちされても、答えはしない。
種族と職業と称号、彼女は三つが完全に噛み合った能力の持ち主。
相応の力を持っている相手に、ペラペラと自分から情報を流すのは不味い。
すべての強者が『騎士王』のように、甘くは接してくれないからな。
「ところで『白氷』様、どうして眠っていたのか……覚えておいででしょうか?」
「えっ? うーん……なんでだっけ?」
「私の仮説では、この地へ降り立ち『侵雪』の排除を行ったがゆえに、死徒様に目を付けられたと……そう考えております」
「そう、だったかな……? まあ、なんとなく状況も理解できてきた。要するにあんたはあの死徒を倒したってこと?」
とりあえずコクリと頷いておく。
だが『白氷』はジト目で、何かを疑っているようだ。
「全然そうは視えないな……」
「……妖精眼、ですか?」
「そう。あんたは魔力だけ突出している、けどそれ以外はこれといったものがあるわけでもなし。なのに、死徒は倒せるみたいだし、こっちの攻撃も全部無効化する……何かの能力特化?」
「そうですね。生き残ることに関しては、あの『騎士王』様よりも優れていると言っておきましょうか」
あっちは純粋な戦闘力で生き残るが、こちらは死んでも蘇ってやり直せる。
しかも、渡れる世界は一つではない……そういう意味では、俺の方が生存能力が上だ。
「できるなれば、詳細を教えていただきたいのです……お願いできないでしょうか?」
「うーん、どうしよっかなー?」
「報酬はこちらの甘い蜜を──」
「しょうがないなー!」
俺が取りだしたビンをふんだくり、中身を掬って頬張る『白氷』。
うん、前に訊いた情報通り甘い物に目がないようだな。
10
あなたにおすすめの小説
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる