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DIY、三つの街
プログレス配布中篇 その08
しおりを挟む暗躍街 コロシアム
血で血を洗う、そんな激しい死闘が日々繰り広げられているのがこの場所だ。
金の力に屈した敗北者が集う賭場とは異なり、彼らは望んでこの地に集まっている。
「あれが『死闘の舞陣』……うちに置いてあるアレの原物か」
家族用に作った『秘石』。
使用者の戦闘履歴を読み取り、再現体を現界させるという代物なのだが……その完成に一役買っているのが──この神代魔道具だ。
俺はここに初めて来たが、『SEBAS』が解析をしておいてくれたらしい。
……ここの管理者が雑な扱いをしているらしく、簡単に忍び込めたそうだ。
《舞台に載った相手にとって、必ず死闘になる魔物が用意されます。なお、神代技術で生みだされた存在のため、ドロップアイテムは存在しません》
「ドロップアイテムは? なら、経験値の方は貰えるのか?」
《それがこの神代魔道具の興味深い点です。この場所において観客は、お金ではなく経験値を賭けます。闘士たちは、その何割かを得ることができるのです》
「つまり……ここに居るだけで楽々レベリングができるってことか? マジか、どんだけ便利なんだよ」
すると、『SEBAS』から補足説明が伝えられる。
なんでも、賭ける方も戦う方もさすがに最大量に制限が掛かっているそうで。
闘士のレベル、そして相手の格や格差。
そういったものからオッズや制限が設けられ、最終的に得られる経験値の量に影響を及ぼすそうだ。
「まあ、その機能は魔物を出して戦っているときだけなんだな。つまり、ああして戦っているときは何も起きないわけだと」
舞台の上では現在、人と魔物ではなく人と人が闘いを繰り広げていた。
片方は籠手や甲冑など、重厚な武装に身を包んだ成人男性。
そして、相対するのは──
『どうしたどうした! そんな柔な鎧や剣で倒せると思ってたのか!』
拳一つでそんな装備を打ち砕き、そのまま中に隠れていた生身をぶん殴る青年。
西洋系の顔立ちをした、締まった筋肉を有するイケメン……チッ、『拳王』である。
「コロシアムは死なない、だからあれだけやろうと止める気がないのか。まあ、アイツは自分の権能が掛かっているわけだし……仕方ないと言えば、仕方ないのか?」
《『拳王』の条件は──『死闘の舞陣』においてランキングトップであり続けること、そして拳でさまざまなモノを砕くことです。前者を維持するためにも、一定数の勝利が必要となります》
「なんでここの神代魔道具と、『超越者』の獲得条件が結びついているのか不明だが……まあ、それは俺が気にすることじゃないか」
勝利し、観客に向けてガッツポーズを向ける『拳王』は、俺の存在に気づきニヤリと笑みを浮かべる。
うん、これでアポが取れたってことで。
さっそく会いに行こうじゃないか。
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