上 下
104 / 2,526
DIY、冒険を求める

貢献イベント その03

しおりを挟む


 瘴気、靄をそうたとえても過言ではない。
 俺の死ぬその瞬間まで、体に纏わりついてこようとするのだ。
 普通の者がここに来た場合、しっかりと防御対策をしなければ即座に死ぬだろう。

「……結界、オン」

 溜め込んだ魔力をケチって使っていなかったが、これから先何が起こるか分からないのでそれを使う。

 俺の周囲に半球を描くような結界が生成され、瘴気はその中へ入って来れなくなる。
 ……風兎から、回収しておいて良かった。

「まあ、これで相手にも俺が居ることがバレたんだろうなー」

 さっきから、何かに呼応するように瘴気が形を変えて動いていた。
 それはつまり、この瘴気の持ち主と瘴気がリンクしていることの証明であろう。

 そんな瘴気が、堅固な何かによって移動を拒まれたのだ。
 当然、持ち主も気づくだろう。

「何はともあれ、この瘴気は危険だな。近づけるわけにはいかない、楽しく興奮する遊戯としてならともかく、恐怖と絶望しか寄越さないこれは……認めない」

 救える手立てがあるなら救うが、救えないなら……葬るしかないだろう。

 ここはゲームだが、無意味に命を弄ぶ必要はない。
 それじゃあ快楽殺人者と同じだしな。

「駄目なら対価を払えば良い、とりあえずは視に行くちょうさすることが大切か」

 頭の中で鳴り響く警鐘を無視し、瘴気の濃い場所へと突き進んでいく。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 意外にも、洞窟の最奥は瘴気で視界が奪われるなんてことも無く、目はバッチリ真実を映しだしている。
 ……まあ、上を見上げれば今まで最も濃い瘴気が漂っているのだが。

「アイツが……この気配の正体、か」

 奥を見ると、瘴気と力を放つ存在が居る。
 その体貌は巨大な黒いヤモリ。
 鋭い爪と風を切る尻尾が、なんとも恐ろしい気がするな。

 ヤモリは俺を見ると、鋭い牙を見せるように口を開く。

『──ようこそ、『超越者』よ』

「……えっと、貴方は?」

『すまないな、挨拶を忘れていた。我はとある者たちに崇められた精霊、その成れの果てが形を成したもの。故に、固有の名は無い』

「すいません、そんなこととも露知らず。私はツクル。『超越者』が末端、『生者』を冠することを許された者でございます」

 ……たぶん。
 にしてもこのヤモリ、結構渋い声が来ると思ってたんだが……違うみたいだな。

「もし宜しければ……貴方様のかつての名、教えて頂けないでしょうか?」

『おお、『聖者』とは。聖性が高い故、我にも見切れぬ何かがあったのか。うむ、我の元の名……たしか、イピリアだったか?』

「い、イピリア……ですか」

 イピリアって──雷雲の化身じゃねぇか!
 嗚呼……もう交渉だけで、どうにかならないかな?

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

女學生のお嬢さまはヤクザに溺愛され、困惑しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:686

Ωの僕がお偉いさん

BL / 連載中 24h.ポイント:475pt お気に入り:2,618

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:584

クラス転移で神様に?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:2,380

レンタルサービス

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:19

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,810pt お気に入り:4,186

異世界のんびり散歩旅

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,251pt お気に入り:745

処理中です...