160 / 3,179
DIY、穴に潜る
体当たり
しおりを挟むいつものように、持ち込んだ魔物の肉を焼いてもらっていた時のことだ。
どこからか子供が現れ、俺に向かって勢いよく走ってきていた。
進路方向は──俺にピッタリ。
「ん? お、おい、止まれ! ぶつかっちまうぞ!」
「…………」
男の子だろうか。
そのまま正面からぶつかり、俺も少年も尻餅を着く……なんてこともなく、一瞬だけ死に戻りして、回避する。
「う、うわっ」
少年からしてみれば、ぶつかろうとしていた壁が急に無くなったのだ。
そのまま近くに置かれた椅子に衝突し、椅子を破壊して気絶する。
「おっちゃん。これって、何がしたかったんだと思う?」
「ああ、ぶつかったときに串を奪うか、落とさせた物を回収する気だったんだろう。お前さんは気の弱そうな奴に見えるからな。貴族みたいな見た目でもしていないと、思いっ切り舐めてかかられんぞ」
店主は俺が『騎士王』のような偉い奴と話しているのを知っているので、そういう風に思っていないのだろう。
まあ、実際俺はカッスカスのステータスだからな……舐められて当然と言えば当然だ。
「……余計なお世話だよ。あっ、でも俺のせいでこの椅子が壊れたことになるよな」
「気にすんな。それは全部、そこで伸びてる奴にやらせるからよ」
「んー。そうだおっちゃん、椅子は俺が用意してやるからさ、コイツのことは許してやってくれないか? 肉はどうせ俺が用意したヤツだし、タレも俺のアイデアだし……椅子以外おっちゃんが損したことって、正直何も無いだろう?」
店主は良い奴なので、こうした軽い感じで言ってやった方が気も楽になるだろう。
……最近、串本体の方も俺が用意しようかと画策している。
エルフの里の木を使った串、ご加護が強くありそうじゃないか?
裏でそんなことを考えているとも知らず、店主はしっかりとそれを考えてくれており、俺に問うてくる。
「そりゃそうだけんども……というか、お前さんはそれで良いのか?」
「構わないさ。俺は何も傷ついてない、少年は少し大げさに転んだだけ。これで済むなら何も問題ないだろう」
「…………分かった。前に言っていた新しいソース、それで手を打とうか」
「おいおい、それはまだギルドと揉めてるから難しいって言っただろ」
店主が要求したソースとは、使い方によっては毒にもなる危険な物なので細かい検査などが行われている。
生産ギルドの料理関係の部署がいろいろとやっているらしいので、それを待っているのが現状であった。
「どうせお前さんの用意したもんだ。今さら疑おうとしたって意味ないだろ。だってこの店の物はほとんど、お前さんの持ってくる物に依存してるんだからよ」
「……へいへい、申請が通ったらな」
少年が目覚めるまで、俺たちはこうした話で時間を潰した。
ソースは結局、申請を受託されたぞ。
11
あなたにおすすめの小説
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる