130 / 135
大きな戦いに挑もう
裏側は大忙し
しおりを挟む???
ここではないどこか。
また、真っ白な地平線が広がる場所。
『──何なんだ、あの【怠惰】は』
『異常、その一言に尽きますね』
『詩戦システム、いや世界すらも欺いたあの魔法。それに、自身が語っていた【導士】』
『何度目でしたっけ? その二つが、同時に発現した奴って?』
木霊する声が二つ。
彼らは自分たちの前に映しだされた光景を観て、ただただ唖然としていた。
『ブレイクスルーがひどすぎる! なんだあれは、どれだけエラーが起きたと思っていやがるんだアイツは!』
『破壊して無視、ですけどね。けど、たしかに今回は異常です……【英雄】の過程を無視した強制覚醒、破壊不能オブジェクトへの介入、『英傑』たちの能力複製、極めつけはこれですか──』
『戦績改変だと!? アイツが最低評価を自分から選んだからよかったものの、もし全員が最高評価なんてことになっていたら──その時点で世界が滅んでいたぞ!!』
『まあ、出される物が物ですしね。その点、彼と上手く交渉したコイツはずいぶんと運がいい。最悪、死んでたかもしれないのに』
彼らは世界詩篇によって実行された、今回の詩戦システムの総評を語っていた。
とはいえ、今回は異常事態が発生した結果強制的に見せられている、とも言えるが。
切っ掛けは【怠惰】の因子を与えられた召喚者が、複合詩篇に選ばれたときだ。
本来ではありえない速度で運命に干渉する召喚者を、彼らは監視対象に決定した。
そしてログ機能にアクセスし、情報を洗い直そうとし──驚愕した。
なぜならば、記されているはずの召喚者に関する記録がいっさい無かったのだ。
定点の情報網からかろうじて映る例の召喚者の活動を調べ、知った異常な行動の数々。
何より、召喚者と関わった者たちの大数が同様に特異行動を取り始める始末。
彼らはそのような現象を引き起こす存在のことを──『導士』と呼び、恐れていた。
彼らの支配下に存在する七つの因子。
その一つ、【怠惰】を宿しながら【導士】でもある召喚者──イム。
彼の行動を観察し、知った今回の活動。
監視者たちは世界を滅ぼしかねないその行動の数々に、冷や汗を掻いていた。
『で、どうしますか? もういっそのこと、【救世主】でも使っちゃいますか?』
『それはダメだ! ……いいか、お前は知らないだろうが、さっき言っていた二つを同時に使うヤツ。こっちのではなくアイツら側の因子でだが、それが発生したことがある』
『……どうなったんですか?』
『【魔王】が根こそぎ滅ぼされ、因子持ちも殲滅だ。あっちもこっちも関係なく、そのときの被害は尋常じゃなかったよ。最後にはお前の言った【救世主】も出てきて、世界はズタボロ……直すのに数十世紀掛かったぞ』
それは、イムたちが召喚されるはるか昔に起きた出来事。
システムも不完全だった当時、異常個体として誕生したのが例の二つ持ち。
イムと異なり好戦的だったその者は、最終的に世界を半壊させるほどの戦闘を行い──封印された。
今の時代、その者は恐怖の象徴として恐れられている……誰もその地を訪れず、何者も触れさせないようにするため。
『とりあえずは様子見だ。どうやらコイツは何もされない限りは、ただニートみたいな生活で満足しているみたいだし』
『おそらくは放置ですね……何かあったらアラームが鳴るようにしておきましょう。条件はどうしますか?』
そして、苦肉の策が実行される。
イムが本格的にとある行動を始めるまで、世界は平和であり続けるのだった。
『──ヤツは、厄災だ!』
◆ □ ◆ □ ◆
???
「──戻ってこれました」
少女の視界には、懐かしき光景が浮かぶ。
彼女は先ほどまで意識を手放しており、目覚めるまでに三時間ほどを要していた。
しかし、夢のような場所では長い時間が経過しており、そこで過ごしていた少女もまた濃密な経験を得ていたのだ。
辺りを見渡し、情報を集める。
火の消えた焚火台、森の中、遠くに見える連なる山脈……そういった物から己が何を成そうとしていたのかを思いだしていく。
「そうでした、たしか私は【英雄】として誰かの役に立ちたいと旅をしていましたね」
自分でも、口に出して再認識しなければならないほど、夢のような場所で過ごした時間は過去のすべてを圧倒する物だった。
実際には三時間ほどしか変わっていない。
しかしそれでも、夢のような場所へ行く前と後とでは決定的に違うものを少女はいくつも知っていた。
「たしかこういうときは……『探索人形』」
その手に嵌められた指輪が輝くと、一体の人形がどこからともなく現れる。
それをごく自然とし、魔力を指先から糸状に伸ばして人形に接続していく。
「それじゃあ、よろしくお願いします」
『…………』
コクリと頷いた人形は、そのまま辺りの警戒を行うために移動を開始する。
視界に映った情報は少女に還元され、その場に居ながら情報が手に入る仕組みだ。
欠点は、それを行うためには超絶的な技巧が必要だということ。
だが今の少女であれば、それを十指で同時に行うことができるだけの才覚を持つ。
「イムさんにお会いするまで、どれだけ時間が掛かるのでしょうか? いっそのこと、自分から会いに行く、というのも驚いてくれるかもしれませんね」
少女──サリスはそう言って苦笑する。
彼は絶対に驚かないだろうなぁ、と考えて人形に意識を注ぐ。
──すべては、この迷宮『不帰の迷樹』から脱出するために。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる