催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

文字の大きさ
68 / 135
外国へ遊びに行こう

転送されよう

しおりを挟む


「──その台詞セリフは俺のものだよ」

 面倒なことをしやがって。
 王は俺を国に縛る鎖を用意したいらしく、娘をそれに使おうとした。

 まあ、三人とも俺に好意があるわけじゃないし、嫌われてるから問題はないけどさ。

「俺は人類の味方じゃないし、誰かのために動こうとも思ってない」

 諦めて立ち止まった、だからここに居る。
 やることなすことすべてが面倒で、それでも楽をしようと仕方なく動いているだけだ。

「しかし、結婚ねー。男なら大賢者を目指す方が夢があるよな」

 もしかしたら、スライムに転生してチートライフになるかもしれないし。
 何より俺みたいな奴に惚れるって……かなりヤバくね?

「自覚はあるんだぜ、他人を洗脳して扱き使うクソ野郎だって……まあ、変わろうとする気は微塵も無いけど」

 有効に使えるものがあるなら、使った方がいいだろ。
 あらゆる手を許容して、この世界で贅沢三昧をする……それこそが俺の目的だ。

「そのためにはまず、確実な安全を確保しなければならない──地球人は召喚した国の魔法が洗脳中、これはパス」

 俺がどうこうする以前に、なってしまったものだからしょうがない。
 せめて、俺の肉壁になることを誓わせておけばよかったな。

「派遣された国は第二、第三王女が俺の安住について約束をしてくれている……第一のシスコンが何をするか分からないが、そこはゴリ押しでどうにかしよう。」

 王子も居るのだが、あちらはあちらでしっかりと俺が住むことに利益があると分かっていらっしゃるので問題ない。

 あとは力も知恵もある七面倒なシスコンのみ、どうやって解決するかだな。

「そして最後に一つ、俺の平穏を邪魔する輩が……これか」

 ポツンと置かれた迷宮。
 あまりにも小さく、小迷宮の中でもかなり階層が少ないのが入り口から見て分かる。 

「おじゃましまーっす──『検索』」

 すぐに中を確認して、進んでいく。
 小迷宮らしく魔物は弱いが、別々の種族が連携していることから迷宮だとしっかり認識されたのだろう。

 弓でパパッと屠り続け、三階層に行く頃にはそこが終点となる。
 そこにはこれまたイケメン……チッ、イケメンの額に角、そして髪色を紫に染めた男が黒い騎士のような恰好をして立っていた。

「──やっと見つけた。今回の奴は、敵意があるかないかどっちだ?」

「お待ちしておりました、イム様。魔王様より送られた使者でございます」

 うんうん、バッチリ洗脳対策をしているようで関心関心。
 それをしないぐらい兵を駒にしている王様だったら、もうどうしようかと思ってたよ。

「それで、ここから中継で会談か? それともどちらかがどちらかの領土に行くか」

「……転送陣を用意しておりますので、イム様に魔王様の下へ向かってもらおうかと」

「まあ、アポを取ったのは俺の方だしな。座標とか全部貰うけど、本当にいいのか?」

「それよりも、魔王様が外に出ることを避けたいので問題ありません。イム様とであれば友好的な関係が築ける、魔王様はそうお考えでございます」

 自身の配下を洗脳する奴を、いったいどうやったら信頼できるのだろうか。
 感性が違うのか? まあ、俺と妹も考え方が違ったぐらいだから同じようなものだな。

「分かった、それじゃあ案内してくれ」

「畏まりました。では、こちらへ」

 案内された場所には、複雑な術式が拵えられた魔法陣が置かれている。
 すぐに見て分からない高難易度のものなので、何かしら特殊な効果があるのだろう。

「へー、これが転送陣か」

「はい。魔族製のものです」

 すぐにその上に乗ると、隣でブツブツと詠唱を始める魔族。
 それを耳コピして憶えようとすると、転送陣が輝いて──俺たちはその場から消える。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 光が収まるとそこは、少しおどろおどろしい魔力が漂う森の中だった。

「……どうして、森の中なんだ?」

「ここは『迷いの森』とも呼ばれていて、特別なアイテムを持たない者がこの近くへ転移で向かおうとすると、強制的に介入してこの場へ送るようになっているのです」

「つまり、俺が居るからそうなったと」

「いえ、今回は私も持ち合わせておりませんので……手間を掛けてすみません」

 俺が洗脳対策を突破した際の時間稼ぎか。
 ここから遠くにそびえ立つ居城まで、まあずいぶんと時間をかけられそうだしな。

「俺があそこまで飛ばしてやろうか?」

「……できるのですか?」

「まあ、できるにはできるが……止めておこうか。何が相手の顰蹙ひんしゅくを買うのか、分からないもんだしな」

 少なくとも洗脳は嫌われただろう。
 使い方を変えれば、強靭な兵士を作ることもできるんだがな。

「責任を持って、ご案内しますので。イム様は、弓をお使いになられるんですよね?」

「ああ、そうだが」

「……先に申しておきますと、この森には掟がありまして」

「掟?」

 聞いてみれば、何やら神の加護を受けた特殊な獣──神獣が居るらしい。

 魔族に協力するその神獣を攻撃するのは危険らしく、決して弓を引かないことを誓わされてしまった。

 また別の機会に会いに行ってみよう。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...