催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

文字の大きさ
6 / 135
異なる世界に行ってみよう

新たな力を手に入れる

しおりを挟む


 大迷宮『ヘブリマス』 X階層


「……ふぅ、イム君の御呪いの効果は凄まじいね。お蔭でコイツを倒すことができた」

 龍(?)と共にダンジョンの奥深くへと墜ちたはずの少年――ヒデオは、既に息絶えた龍の目玉に刺さった剣を抜きながら呟く。

「体から力が湧き上がってくる……これが本当の力ってやつなんだね」

 ヒデオはそう呟くと、今度は自分のステータスを確認する。

---------------------------------------------------------
ステータス
名前:ヒデオ・ユウシ(男)
種族:【異世界人Lv36】
職業:なし→【■望■Lv1】

状態異常:催眠

HP:10/1480(JOB+1000)
MP:0/0(JOB+3500)

ATK:1(JOB+275)
DEF:0(JOB+149)
AGI:1(JOB+105)
DEX:1(JOB+82)
MIN:0(JOB+148)
LUC:0

通常スキル
(言語理解)(鑑定)

NEW
(闇魔法)(龍躯強化)

唯一スキル
【■望■】NEW
L(下剋簒奪)

祝福
(地球神の祝福)(女神カーの寵愛)NEW
---------------------------------------------------------

「(下剋簒奪)は殺すことによって発動するスキル強奪。しかも一人でやらなければいけないから面倒だね。(龍躯強化)はこの龍から奪えた身体強化系のスキルだけど……今のままじゃ、長時間は使えないね」

「あと気になるのは女神の存在だけれど……テンプレ的に言うなら、ユウキ君に寵愛を与えた女神と対立している女神なのかな? 新しく増えてる魔法が闇だし……ってもしかしてHP極振り!?」

 迷宮の底にいるとは思えないほどに、明るくツッコむヒデオ。
 ──これは催眠の影響でもあった。

 こういった極限状況に追い込まれた者は、すぐに諦めるか、何かを糧にして必死に足掻こうとする。

 これによって、迷宮の奥深くで復讐者は誕生するはず……だった。

 イムが掛けた御呪い、それは二つではなく三つ──最後の一つとは、彼の思考へと掛けたものだったのだ。



 イムは物語で復讐に囚われる主人公たちを見て、たまに思った。

『……極限の状態でも復讐という考えに絶対に辿り着けないなら……主人公は、いったいどういう行動を取るのかな?』

 物語において、復讐者になる主人公は常識的な考え方をぶち壊し、復讐という非人道的な考えを何処からか持ち込む。

 それによって、主人公は禍々しくも強大な力を手に入れるのだ。
 だからこそ、そんな展開が無かったら復讐者候補はどうするのか?

 聖人以上に聖人的な思考ならば、復讐など考えつかない人格者ならば、彼らがどのような力を手に入れるのか──それをイムは知りたかった。

 ……とは言っても、それはすぐにバレる。
 世の中にそんな清い心の持ち主など、存在しないに等しいのだから。 

 そう考えたイムは、前提条件を一段階下げて実験を行った。

『──ん? いつまでも日本の常識に囚われたまま──人殺しは忌避すべきものだと考える状態だったら──復讐に対する思いは、よくある復讐物の主人公より小さいものとなるし……面白いかな?』

 突然今までと異なる環境で生活をすると、大抵のものは過去の認識を捨てて生きようとする。

 イムはそれを阻止し、過去の常識をいつまでも定着させる催眠をヒデオに掛けた。

 ──実際、それは成功したのだ。

 ダンジョンの底という真っ暗な空間で、生と死を分けた戦いを済ませた後でも、彼は平常心をまったく失っていない。

 それこそが、彼が彼のままである、その証明となるのだ。

「だけど……この職業、えっと……なんて読むんだろう? 伏字だから分からないや」

 もともと、ヒデオは『職業』を持っていなかった。
 しかしこの戦いの末、彼の脳裏に『職業』獲得に関するアナウンスが鳴り響いたのだ。

「この世界ってゲームが基なのかな? そういう話ってよくあるし……。何より、この文字がね~」

 ヒデオはそう言って自分の近く壁に記されていた文字を見ていく。
 ──なお、これは新たに得た(龍躯強化)に付属した暗視能力によって可能としていた。

「スキル、ステータス、ログ、クエスト……メニューについての説明がギッシリと。最後にご丁寧にOnlineなんて言葉まで」

 彼が見つけたのは、イムが独自に見つけたログ機能──それを統制するメニュー機能すべての使い方である。

「前半部分が読めないから、何のゲームかは分からないけど、MMOの世界がベースだってことが分かる文章だ」

「……だけど、それならどうしてこんな所にあるんだ? 王族にはMMOの存在を知っている者……初代が日本の人? それともたまたまこのダンジョンに書かれてただけ? まだ確証が少ないから、分からないな……」

 ヒデオはそれから少し悩んだ……が、結局答えは出ることはない。

「いつまでも悩んでたら進めないし……何より(グゥー)……お腹が空いたしね。ちょうど美味しそう(?)な龍の肉もあるんだし、それを食べながらゆっくり考えてみようか」

 それから彼が調理法──焼くかどうか──について悩んだことは、当然のことだった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...