13 / 135
異なる世界に行ってみよう
会議は裏で行われる
しおりを挟むそういえば、ダンジョンにはもう行かないのだろうか。
みんな忘れてるけど……洗脳に掛かったんだから、もう行くと思ったのだけれど。
成長した能力を全部見れる機会など、そうそう無いのでぜひ行ってもらいたい。
面倒だが、それによって手に入るモノが凄いので、行く時はちゃんとついて行くよ。
「ふふん、どうよイム」
嗚呼、どうしてそんなどうでも良いことを考えていたか……思いだしてしまった。
俺の隣で和弓女子が、的に綺麗に中てたことを自慢しているんだったよ。
そう、なぜか俺の練習場所までわざわざ来た和弓女子は、俺に魅せるように弓を射ているのだ。
「…………」
「ちょ、ちょっと、なんで無視するのよ」
まあ、それに俺が反応を示すかどうかは、まったく別問題なんだけどな。
すでに矢を複製できるスキルを入手したので、もう一々補充に行く必要も無くなった。
……面倒なことはさっさと終わらせたい。
再び弓を構えて──放つ。
意識を空っぽにして、スキルの補正を受けて最適な動作を取った……はずなのだが。
「イム、もう少し脇を締めて。それに、引手は顎に付けた方が良いわよ」
「…………」
言われた通りに姿勢を整え、弓を射る──今までより綺麗に中った気がする。
……ん? 正しく射ただけで新たにスキルが手に入った。
正しい使い方をすると、スキルも入手しやすくなるのか?
面倒だからとあまり考えていなかったのだが、なるほどたしかに妥当ではある。
「……名前」
「……へ?」
「名前は何なんだ? 今まで、一度も俺に言わなかったよな? たしか」
和弓女子は、俺の隠れ蓑に使えそうだ。
どれだけ弓が上手くなっても、彼女のお蔭だと言えば、勝手に周りがそう理解してくれるだろう。
そのせめてものお礼だ。
今日のメモリーを使って名前を覚えておこう……というわけだ。
「言ってたわよ言ってたわよ! 言ってたわよ!! わたしは――鶴音、『葉月鶴音』!」
ツルネ……えっと、弓の何かに関する言葉だよな。
それにたしかハヅキって……ダメだ。
当時の思い出がどうでも良いこととだったのか、それをまったく思いだせない。
まあ、それより今は──
「そうか……なら、ハヅキ様。自己紹介も終わりましたので、ご自身の練習場所へとお戻りいただけないでしょうか?」
「は? 何言ってるの──」
「ツルネ様!」
「……げげっ!」
おいおい、いちおうでも女子がそんな声を出すなよ。
さすがにどうかと思ったからか、俺でもふとそんな風に彼女を見てしまう。
和弓女子の前に、長距離武器担当の青年兵士がやって来る。
そして──俺の方を侮蔑の眼差しで見てから、顔を変えて彼女と話す。
それから彼女は嫌がりながらも、最終的には此処から去っていった……うん、良くやったな青年兵士。
ご褒美に、犬の真似をさせようとしていたのは無しにしておいてやる。
和弓女子が居なくなったので、自分のやりたいことを思いっ切りやれるようになった。
「しかし、正しい使い方か。元素魔法だったら、使い方は……合成、だったよな」
元素魔法スキルもコピーしたスキルで──基本属性と呼ばれる魔法を、一つに纏めたような便利なスキルである。
複数の属性を束ね、自分の望む現象を起こせる……そう詳細欄には書いてあった。
イメージする。
矢が魔法の効果を持つような現象を。
何色もの魔法の色が絡み合い、一つの色へと変わるその瞬間を。
ついでに付与魔法の力も借りて、それを実現させていく──
「パクれ──赤の矢!」
せっかくなのでそう叫び、矢を放つと……撃った地面が発火し、土の上でしばらく炎を揺らめかせていた。
……的を燃やしたら大変だからな。
地面に撃っておいて正解だった。
それから『七色弓◯』擬きを使い、俺の考えた七色の矢を放ってからステータスのスキル欄を確認する。
「──よし、元素魔法も習得できてるな。しかも神聖武具術スキルまで! 白のイメージもプラスでやったのは正解だったな」
なので俺の技は『七色◯箭』ではなく──“色纏魔矢”だな……適当だけど。
混ぜればどんな色の矢でも撃てるので、だいたいこんな名前でいいだろう。
白は神聖、破邪の色とした。
その効果が良かったのか? お蔭様で無事に習得できたぞ。
「さて、次は何をしようかな?」
こうして今日も、俺の面倒な日々は続いていった。
……本当、気楽に過ごせて最高だよ。
□ ◆ ??? ◆ □
とある城のどこかで、高級な服装をした官人が集まっていた。
そこへ、王冠を被った者と綺麗なドレスを着た少女がやって来て──会議は始まる。
「勇者様の調子はどうだね? 騎士長」
「ハッ! 【勇者】ユウキ様は、私の剣術を少しずつ超えつつあります。完全に超えられましたら、異なる武具を使わせるつもり御座います」
彼らにとって【勇者】とは、最も戦力となる道具であった。
千の軍勢を退け、万の兵を撃ち滅ぼす……最大の兵器である。
神の加護を与えられた者にしか使えない聖気を武器に纏わせ、それを完璧に振るうことのできる逸材。
それは、魔族を滅ぼす絶対的な理由としても使える存在なのであった。
「ふむ。では、他の者で使えそうなのは?」
「すぐに使える者となりますと……ユウキ様以外では四人となります。【護闘士】のコウヤ様、【聖女】のアユミ様、【賢者】のチヒロ様、そして……【弓聖】のツルネ様です」
兵士たちは、勇者の仲間たちをも兵器として使うことを知らない。
ただ、戦力になるかどうかを報告するように命じられていただけだ。
その結果、兵士たちに選ばれたのは四人の少年少女。
誰も彼もが強力な唯一スキルを得ており、それを使いこなすだけの技量を有していた。
「そうか、まだ四人か。逆に、戦闘力で問題になりそうな者はいるのか」
「いえ、スキルを習得できていない者は例の者以外は誰もいない……そう報告を受けております」
「ふむ。その予定であった少年はすでに迷宮で死んでいる。本来であれば、“真理誘導”への抵抗で生じる感情を、すべて彼へと押し付けようとしていたのだが……だがその代わりもいない、か」
この国が使う“真理誘導”は、この国が有する“勇者召喚”に匹敵するほど秘中の儀として封印された禁忌の魔法だ。
一度成功すれば──その者の生死は、発動者に握られると言っても過言ではない。
召喚されたばかりの勇者たちには抵抗することは不可能だ……そう考えている彼らは、少年の死で精神的に滅入っている勇者たちにその魔法を発動させた。
だが、その魔法も完璧ではない。
その者自身の考え方を塗り潰されるため、その副作用として反発する感情が爆発し、周囲へ苛立ちを感じやすくなる。
それらが自分たちに及ばないよう、彼らは身代わりを用意しようとした──もっとも無能な勇者たちの一人から。
だが、彼は迷宮で死んでしまった。
故に、彼は探していたのだ。
──新たな身代わりの代理を。
「まあ、良かろう。不具合はすべて魔族へと押し付けておけ。……それより、ダンジョンへはいつ向かう」
そう訊かれると、ローブを纏った老人がそれに答える──
「ハッ! おそらく一月後になるかと。勇者たちには未だ魔法を習わせていません。先に挙げた者たちもそれなりの実力にさせるとなりますと……それぐらいの時間が必要かと」
「そうか……仕方が無い、一月待とう。しかし、その間に脱走が起きぬように思考はしっかりと縛っておけ」
「承知しました」
老人がそう言うと、王冠を被った男はこの場から去った。
他の者もそれに倣い、部屋から退出する。
そしてその場には──最初に部屋から出た者と同時に入って来た女だけが残った。
「……ふふふっ。果たして彼らにできるのかしら? わたしたちの目を欺いて、この城から出ることなんて」
そう呟いて彼女もまた、その場から退場していく。
──このときはまだ、誰も……彼女すらも気づいていなかった。
彼らの目を欺き、スキルを偽り。
彼らの目を欺き、少年を生かし。
彼らの目を欺き、戦闘力を隠し。
彼らの目を欺き、“真理誘導”をも打ち破り利用するその少年のことを。
そしてその者が、まったく城から出る気がなく──むしろ、寄生虫として城に住まおうとしていることを……。
11
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる