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第7話 溺愛の権能
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「よしよし」
オオカミたちに敵意がなくなったことを確認するため、腹やら頭やらを撫で回したりくすぐったりしているのだが、全く噛みついてくる気配がない。
むしろ、ゴロンと転がり腹を見せてきた。
どうやら本当に襲ってくることはなさそうだ。
「こうしてみるとかわいい?」
「河原も撫でてみるか?」
「でも、溝口の力で大人しくなってるんでしょ?」
「大丈夫だと思うぞ」
「本当? ……よしよし。よーしよしよしよし!」
河原が撫でてもオオカミたちは歯向かってこない。
河原も最初は恐る恐るだったが、案外もふもふが好きなのかめっちゃ撫で回してる。
なんだか俺と二人でいる時よりよっぽど笑顔になってモフっているように見えるのだが、まあいいか。
「さて」
「ん?」
こんな力を俺に与えてくれたのは、目の前にいるピンク髪のキテレツな少女。
だが、
「一体何者だ?」
「だからさっき言ったじゃん。わたしはこの世界の一番偉い神様だよ」
「うーん……」
フェイラと名乗る少女は、わたしは神様だ、の一点ばり。
もしかしたらクラスの誰かが追いかけてきている可能性を考えたが、どう見ても知らない顔だしな。
でも、気になる点がある。
「神様がどうして俺たちと同じ制服着てるんだよ」
「だって、リュウヤとおんなじカッコがよかったんだもん。それに、この見た目もリュウヤの理想を再現したはずなんだけど? もしかして、わたしのこと、嫌い?」
「いや、嫌いって訳じゃ」
「なに? 溝口ってこういうのがタイプなの?」
「タイプっていうか。少なくとも、俺は一度もこんなピンク髪の人間をいいと思った記憶はない。他は、まあ……」
そりゃ、俺と比べて高すぎず低すぎない身長。胸もあって、顔も整っている。真っピンクな顔を除けば、正直ものすごく魅力的だ。
アイドルをやればすぐに天下を取れるんじゃないだろうか。詳しくないからわからないが。
「この髪色はわたしの神様としての成分が出ちゃってるからどうしても無理だったの。ごめんね」
「いや、謝られても」
「ふーん。溝口はこういうのがいいんだ」
「だから、目は引くが、フェイラが勝手に言ってるだけで」
「珍しく取り乱してるところとかホントっぽいなー」
これはなにを言ってもダメだな。
実際、テンパってしまっているし、これも力とやらの影響なのか?
「なんにせよ。助かったのはフェイラのおかげだ。ありがとう」
「えへへ。どういたしまして。と言っても、なんとかしたのはリュウヤが力を使ったからだけどね」
「神様なんだろ? フェイラが解決したんじゃないのか?」
「いやー。この場くらいはわたしが解決するつもりで来たんだけど、リュウヤがすごくて、わたしの全部奪われちゃった……初めてだったのに……」
「え……」
「いやいや、待ってくれ。河原は見てただろ? 俺がキスされた方だからな。俺がなにを奪ったってんだよ?」
「わたしの初めてのキス。は冗談として、神として力を与えることかな?」
「力、初めてだったのか?」
「うん。リュウヤみたいに異世界から来る人には気まぐれで神たちが力を与えてたの。でも、リュウヤにはわたしが直接与えたくて止めてたんだけど、その前に誰も勝手に与えてなかったんだ。不思議だったんだけど、やってみてわかったよ。どおりでみんなあげない訳だよね。一部だけあげようと思ったら、全部取られちゃんだもん。リュウヤのせいでわたしはもうただの女の子だよ。だから、しっかり守ってね」
フェイラは自然と近づいてくると、なめらからに俺に抱きついてきた。
いやいや、待て。なんだその謎の才能。
神が山垣や大槻たちに力を与えていて、俺は全て奪ってしまうから与えられなかった?
それでフェイラが与えたら、スキルという余りものではなく、全部を奪ってしまったってのか?
俺がこの場を収めたって?
「クゥーン。クゥーン」
「やっぱり、溝口に撫でられる方がいいみたい。突っ立ってないで撫でてあげなよ」
「俺に? 本当にそうなのか?」
じっと見つめてくるオオカミ。なぜだか撫でてくれと言っているように見える。
確かに、俺ばかりに擦り寄ってくる。
「ウーワウッ!」
「バシィ?」
「え?」
「こいつ、多分、バシィって名前だ」
「わかったの?」
「いや、なんとなく」
実際、バシィと呼ばれて嬉しそうに尻尾をブンブン振っている。
まるで飼い犬のように甘えてくる。
「フェイラ。俺に与えたその力、溺愛の権能ってのは、どうして俺だったんだ?」
「それは、あなたは人を愛したことがないから」
「え……」
「わたしが溺愛の女神で、一番の神様だから、この世界の人たちはみんな他の人、他の誰かのことを愛してるの。でも、あなたは違う。少なくともあなたはそう思っている。愛せないと思っている。思ったことを言う。相手をすごいと思う。感謝する。そんなことはあっても、大切に思ったり、仲良くしたいと思ったり、一緒にいたいと思ったことはない。そんなあなたをわたしはとても愛おしく思ったの。そして、あなたも人を愛せる。そう知ってほしかったの。少なくともあなたにとってわたしは悪くない。違う?」
「あ、いや」
「ふふ。赤くなっちゃって。そんなあなただから、わたしは力を取られても怒ってないよ。大丈夫。あなただから選んだんだから」
「俺、だから……」
オオカミたちに敵意がなくなったことを確認するため、腹やら頭やらを撫で回したりくすぐったりしているのだが、全く噛みついてくる気配がない。
むしろ、ゴロンと転がり腹を見せてきた。
どうやら本当に襲ってくることはなさそうだ。
「こうしてみるとかわいい?」
「河原も撫でてみるか?」
「でも、溝口の力で大人しくなってるんでしょ?」
「大丈夫だと思うぞ」
「本当? ……よしよし。よーしよしよしよし!」
河原が撫でてもオオカミたちは歯向かってこない。
河原も最初は恐る恐るだったが、案外もふもふが好きなのかめっちゃ撫で回してる。
なんだか俺と二人でいる時よりよっぽど笑顔になってモフっているように見えるのだが、まあいいか。
「さて」
「ん?」
こんな力を俺に与えてくれたのは、目の前にいるピンク髪のキテレツな少女。
だが、
「一体何者だ?」
「だからさっき言ったじゃん。わたしはこの世界の一番偉い神様だよ」
「うーん……」
フェイラと名乗る少女は、わたしは神様だ、の一点ばり。
もしかしたらクラスの誰かが追いかけてきている可能性を考えたが、どう見ても知らない顔だしな。
でも、気になる点がある。
「神様がどうして俺たちと同じ制服着てるんだよ」
「だって、リュウヤとおんなじカッコがよかったんだもん。それに、この見た目もリュウヤの理想を再現したはずなんだけど? もしかして、わたしのこと、嫌い?」
「いや、嫌いって訳じゃ」
「なに? 溝口ってこういうのがタイプなの?」
「タイプっていうか。少なくとも、俺は一度もこんなピンク髪の人間をいいと思った記憶はない。他は、まあ……」
そりゃ、俺と比べて高すぎず低すぎない身長。胸もあって、顔も整っている。真っピンクな顔を除けば、正直ものすごく魅力的だ。
アイドルをやればすぐに天下を取れるんじゃないだろうか。詳しくないからわからないが。
「この髪色はわたしの神様としての成分が出ちゃってるからどうしても無理だったの。ごめんね」
「いや、謝られても」
「ふーん。溝口はこういうのがいいんだ」
「だから、目は引くが、フェイラが勝手に言ってるだけで」
「珍しく取り乱してるところとかホントっぽいなー」
これはなにを言ってもダメだな。
実際、テンパってしまっているし、これも力とやらの影響なのか?
「なんにせよ。助かったのはフェイラのおかげだ。ありがとう」
「えへへ。どういたしまして。と言っても、なんとかしたのはリュウヤが力を使ったからだけどね」
「神様なんだろ? フェイラが解決したんじゃないのか?」
「いやー。この場くらいはわたしが解決するつもりで来たんだけど、リュウヤがすごくて、わたしの全部奪われちゃった……初めてだったのに……」
「え……」
「いやいや、待ってくれ。河原は見てただろ? 俺がキスされた方だからな。俺がなにを奪ったってんだよ?」
「わたしの初めてのキス。は冗談として、神として力を与えることかな?」
「力、初めてだったのか?」
「うん。リュウヤみたいに異世界から来る人には気まぐれで神たちが力を与えてたの。でも、リュウヤにはわたしが直接与えたくて止めてたんだけど、その前に誰も勝手に与えてなかったんだ。不思議だったんだけど、やってみてわかったよ。どおりでみんなあげない訳だよね。一部だけあげようと思ったら、全部取られちゃんだもん。リュウヤのせいでわたしはもうただの女の子だよ。だから、しっかり守ってね」
フェイラは自然と近づいてくると、なめらからに俺に抱きついてきた。
いやいや、待て。なんだその謎の才能。
神が山垣や大槻たちに力を与えていて、俺は全て奪ってしまうから与えられなかった?
それでフェイラが与えたら、スキルという余りものではなく、全部を奪ってしまったってのか?
俺がこの場を収めたって?
「クゥーン。クゥーン」
「やっぱり、溝口に撫でられる方がいいみたい。突っ立ってないで撫でてあげなよ」
「俺に? 本当にそうなのか?」
じっと見つめてくるオオカミ。なぜだか撫でてくれと言っているように見える。
確かに、俺ばかりに擦り寄ってくる。
「ウーワウッ!」
「バシィ?」
「え?」
「こいつ、多分、バシィって名前だ」
「わかったの?」
「いや、なんとなく」
実際、バシィと呼ばれて嬉しそうに尻尾をブンブン振っている。
まるで飼い犬のように甘えてくる。
「フェイラ。俺に与えたその力、溺愛の権能ってのは、どうして俺だったんだ?」
「それは、あなたは人を愛したことがないから」
「え……」
「わたしが溺愛の女神で、一番の神様だから、この世界の人たちはみんな他の人、他の誰かのことを愛してるの。でも、あなたは違う。少なくともあなたはそう思っている。愛せないと思っている。思ったことを言う。相手をすごいと思う。感謝する。そんなことはあっても、大切に思ったり、仲良くしたいと思ったり、一緒にいたいと思ったことはない。そんなあなたをわたしはとても愛おしく思ったの。そして、あなたも人を愛せる。そう知ってほしかったの。少なくともあなたにとってわたしは悪くない。違う?」
「あ、いや」
「ふふ。赤くなっちゃって。そんなあなただから、わたしは力を取られても怒ってないよ。大丈夫。あなただから選んだんだから」
「俺、だから……」
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