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第32話 溺愛の権能を操ろう
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「どうなんだフェイラ」
「い、いや。そりゃ元はわたしの力だし? 少しはわかることもあるよ? それに全部は話せてないしさ?」
溺愛の権能。俺が奪ってしまったフェイラの力。
そう、元はと言えばフェイラの力なのだし、何か知っているだろうと聞いてみるが、曖昧な返事しか返ってこない。
何か話したくない理由でもあるのか。
「リュウヤ、それは何の話だ?」
「えーと。フェイラ、もう隠さなくてもいいってことだろ?」
「うん。そもそも初めから隠す必要なんてないんだけどね。わたしの話はどこにいても聞いてるだろうから」
確かにそれもそうか。
どんな力を持っている神か。神話のようなもので説明がされているか。人から魔王まで伝わっているほどだし。
俺はエルディーにも溺愛の権能について明かした。
「それはつまり、フェイラ様の力をリュウヤが行使できるということか?」
「そうなるな」
「ということは、リュウヤは誰をも愛し、誰からも愛されるフェイラ様のような存在だと」
「俺がというより、俺に移った力が、だろうけどな」
「……」
何かを考え込む様子のエルディー。
まあ、思うところもあるだろう。
「……私がエディカ以外に愛を……? いや、そんなはずは……」
何かをぶつぶつと呟きながら俺を見たりそっぽを向いたりし始めた。
おそらくすぐには飲み込めなかったのだろう。混乱している様子だ。
「……あれ、もしかしてあたしも……? 確かになんだか溝口に変なことしちゃってたような。いや、でも、フェイラさんが来る前から……え、それはそれで、あれ?」
河原までも効果に関しては俺も話していなかったせいで混乱させてしまったようだ。
仕方ない。俺とフェイラだけで話を進めるか。
「それで、今回は俺が河原を慰めても不機嫌にならず、喜んでいたが、これはどういうことだ?」
「リュウヤ、気づいてたの?」
「あれだけドス黒いオーラを出して人を萎縮させてたら気づくわ。まあ、今回に関してはそれだけじゃないがな」
特にデューチャが抱きついた時なんかは顕著だった。あの時の雰囲気は酷かったからな。
「やだー。恥ずかしいー」
なんで照れるんだ。
「ちょっと嫉妬で気づいてもらおうとしてたけど、そんなに覚えててくれてたなんて」
「いや、どういう変化なのかって話だ」
「そうだよね。気になるよね。わたしも色々と試してたんだ。リュウヤがどんな反応するか。でも、前のリュウヤだったらそれも不機嫌と結びついてなかったよ」
「う、それはそうかもしれないが」
「大丈夫。わたしの力でリュウヤは愛を知れてるよ」
キュッと急に距離を詰めると、フェイラは俺の手をとって歩き出した。
「なんだ? どこへ行くんだ?」
「わたしの力について詳しく知りたいんだよね? 本当は自分で全部気づいて欲しかったから黙ってたけど、今はエディカちゃんのこともあるし。行こ!」
フェイラは、パシンッ! と俺の空いてる手と打ち合わせた。
すると、エルディーと河原が正気を失ったように抱きついてきた。
「リュウヤ。私は一生ついていくぞ」
「み、溝口。あたしでよければ、ついて行くよ」
二人の口からなかなか出なさそうなセリフが飛び出してきた。
「おい。何をした?」
「わたしはただリュウヤの中にある力とわたし自身を共鳴させて元のように使っただけ。溺愛の権能を使いこなせばこんなこともできるんだよ」
「洗脳みたいだな」
「違うよ。これは、あくまで相手の感情を引き出してるだけだから。二人ともリュウヤを信頼してるってこと……まあ、好かれやすくはなるはずだけど」
「俺が、信頼……」
「そうだよ。愛は気持ち。ついてきてほしいって願えばどこまでもついてきてくれるし、待っていてほしいと思えば望む限り待っていてもらえる。じゃあ、もっと見てみようか」
「どこへ? このままか?」
俺は手を引かれるまま、エルディーと河原を引き連れてどこかへと連れて行かれた。
少し歩いてきたが、やはり死の山の中。
しかしそこは土としては硬い感覚。岩かと思って足で払ってみたが、地面の色に変化は見られない。どう見ても土。
「それじゃあ始めようか」
再度フェイラが俺と手を打ち鳴らした。すると、地面が大きく揺れ始めた。
「なんだ?」
「リュウヤにわたしの力を馴染ませるための相手だよ」
揺れる地面は大きく割れ、足元だった部分が生き物のように動き出す。
いや、生き物のようではない、生き物だ。
魔物の域を超えた、一代でも魔族と呼ばれそうな存在。
「……ドラゴン」
「リュウヤ……はっ! 私は何をしてしまったのだ。でも、悪くなかった。ではない!」
「え……嘘っ! ちょっと待って。何あれ、というか、溝口にくっついたりして、ドキドキが……」
フェイラが俺から手を離したせいか、それともドラゴンが羽ばたきによって起こした風圧のせいか二人とも正気を取り戻したらしい。
ドラゴンは山から体を出すと、空高く飛び上がり俺たちを視認しているようにじっと滞空しながら見下ろしてきていた。
「リュウヤ。ここは私がやる。醜態を見せてしまったからな」
「ううん。エルディーちゃん。ここはリュウヤがやるよ」
「しかし、フェイラ様」
「今は邪魔しないでくれる?」
「……わかりました」
時々の邪気。
いや、これもおそらくフェイラからすれば純粋な愛。
フェイラに凍りついた表情で睨まれ、エルディーは大人しく引き下がった。
冷たい表情を一気に笑顔にし俺に向き直る。
「やり方は見せた通りだよ。相手に気持ちを伝えるだけでいいの」
「ああ」
愛はきっと支配もできる。けど、今必要なのはそれじゃない。
相手を服従させるばかりが愛じゃないはずだ。
俺が踏みつけてしまったのが悪い。確かめるように払ったのも悪い。
それでもドラゴンは、怒っているだろうに問答無用に俺たちを蹴散らすようなことはしてこない。
つまり、
「どうか許してくれ。そして、いつかまた会おう」
手の届かない高い空へ向けて俺は手を伸ばしドラゴンをまっすぐ見つめた。
今までなんとなく扱っていた溺愛の権能をしっかり意識してドラゴンへ伝えた。
気持ちが伝わったかわからない。
だが、俺たちを見下ろしていた山のようなドラゴンは一度うなずくような動作をすると、どこかへと飛んでいった。
「そう。それもまた愛だよ」
「い、いや。そりゃ元はわたしの力だし? 少しはわかることもあるよ? それに全部は話せてないしさ?」
溺愛の権能。俺が奪ってしまったフェイラの力。
そう、元はと言えばフェイラの力なのだし、何か知っているだろうと聞いてみるが、曖昧な返事しか返ってこない。
何か話したくない理由でもあるのか。
「リュウヤ、それは何の話だ?」
「えーと。フェイラ、もう隠さなくてもいいってことだろ?」
「うん。そもそも初めから隠す必要なんてないんだけどね。わたしの話はどこにいても聞いてるだろうから」
確かにそれもそうか。
どんな力を持っている神か。神話のようなもので説明がされているか。人から魔王まで伝わっているほどだし。
俺はエルディーにも溺愛の権能について明かした。
「それはつまり、フェイラ様の力をリュウヤが行使できるということか?」
「そうなるな」
「ということは、リュウヤは誰をも愛し、誰からも愛されるフェイラ様のような存在だと」
「俺がというより、俺に移った力が、だろうけどな」
「……」
何かを考え込む様子のエルディー。
まあ、思うところもあるだろう。
「……私がエディカ以外に愛を……? いや、そんなはずは……」
何かをぶつぶつと呟きながら俺を見たりそっぽを向いたりし始めた。
おそらくすぐには飲み込めなかったのだろう。混乱している様子だ。
「……あれ、もしかしてあたしも……? 確かになんだか溝口に変なことしちゃってたような。いや、でも、フェイラさんが来る前から……え、それはそれで、あれ?」
河原までも効果に関しては俺も話していなかったせいで混乱させてしまったようだ。
仕方ない。俺とフェイラだけで話を進めるか。
「それで、今回は俺が河原を慰めても不機嫌にならず、喜んでいたが、これはどういうことだ?」
「リュウヤ、気づいてたの?」
「あれだけドス黒いオーラを出して人を萎縮させてたら気づくわ。まあ、今回に関してはそれだけじゃないがな」
特にデューチャが抱きついた時なんかは顕著だった。あの時の雰囲気は酷かったからな。
「やだー。恥ずかしいー」
なんで照れるんだ。
「ちょっと嫉妬で気づいてもらおうとしてたけど、そんなに覚えててくれてたなんて」
「いや、どういう変化なのかって話だ」
「そうだよね。気になるよね。わたしも色々と試してたんだ。リュウヤがどんな反応するか。でも、前のリュウヤだったらそれも不機嫌と結びついてなかったよ」
「う、それはそうかもしれないが」
「大丈夫。わたしの力でリュウヤは愛を知れてるよ」
キュッと急に距離を詰めると、フェイラは俺の手をとって歩き出した。
「なんだ? どこへ行くんだ?」
「わたしの力について詳しく知りたいんだよね? 本当は自分で全部気づいて欲しかったから黙ってたけど、今はエディカちゃんのこともあるし。行こ!」
フェイラは、パシンッ! と俺の空いてる手と打ち合わせた。
すると、エルディーと河原が正気を失ったように抱きついてきた。
「リュウヤ。私は一生ついていくぞ」
「み、溝口。あたしでよければ、ついて行くよ」
二人の口からなかなか出なさそうなセリフが飛び出してきた。
「おい。何をした?」
「わたしはただリュウヤの中にある力とわたし自身を共鳴させて元のように使っただけ。溺愛の権能を使いこなせばこんなこともできるんだよ」
「洗脳みたいだな」
「違うよ。これは、あくまで相手の感情を引き出してるだけだから。二人ともリュウヤを信頼してるってこと……まあ、好かれやすくはなるはずだけど」
「俺が、信頼……」
「そうだよ。愛は気持ち。ついてきてほしいって願えばどこまでもついてきてくれるし、待っていてほしいと思えば望む限り待っていてもらえる。じゃあ、もっと見てみようか」
「どこへ? このままか?」
俺は手を引かれるまま、エルディーと河原を引き連れてどこかへと連れて行かれた。
少し歩いてきたが、やはり死の山の中。
しかしそこは土としては硬い感覚。岩かと思って足で払ってみたが、地面の色に変化は見られない。どう見ても土。
「それじゃあ始めようか」
再度フェイラが俺と手を打ち鳴らした。すると、地面が大きく揺れ始めた。
「なんだ?」
「リュウヤにわたしの力を馴染ませるための相手だよ」
揺れる地面は大きく割れ、足元だった部分が生き物のように動き出す。
いや、生き物のようではない、生き物だ。
魔物の域を超えた、一代でも魔族と呼ばれそうな存在。
「……ドラゴン」
「リュウヤ……はっ! 私は何をしてしまったのだ。でも、悪くなかった。ではない!」
「え……嘘っ! ちょっと待って。何あれ、というか、溝口にくっついたりして、ドキドキが……」
フェイラが俺から手を離したせいか、それともドラゴンが羽ばたきによって起こした風圧のせいか二人とも正気を取り戻したらしい。
ドラゴンは山から体を出すと、空高く飛び上がり俺たちを視認しているようにじっと滞空しながら見下ろしてきていた。
「リュウヤ。ここは私がやる。醜態を見せてしまったからな」
「ううん。エルディーちゃん。ここはリュウヤがやるよ」
「しかし、フェイラ様」
「今は邪魔しないでくれる?」
「……わかりました」
時々の邪気。
いや、これもおそらくフェイラからすれば純粋な愛。
フェイラに凍りついた表情で睨まれ、エルディーは大人しく引き下がった。
冷たい表情を一気に笑顔にし俺に向き直る。
「やり方は見せた通りだよ。相手に気持ちを伝えるだけでいいの」
「ああ」
愛はきっと支配もできる。けど、今必要なのはそれじゃない。
相手を服従させるばかりが愛じゃないはずだ。
俺が踏みつけてしまったのが悪い。確かめるように払ったのも悪い。
それでもドラゴンは、怒っているだろうに問答無用に俺たちを蹴散らすようなことはしてこない。
つまり、
「どうか許してくれ。そして、いつかまた会おう」
手の届かない高い空へ向けて俺は手を伸ばしドラゴンをまっすぐ見つめた。
今までなんとなく扱っていた溺愛の権能をしっかり意識してドラゴンへ伝えた。
気持ちが伝わったかわからない。
だが、俺たちを見下ろしていた山のようなドラゴンは一度うなずくような動作をすると、どこかへと飛んでいった。
「そう。それもまた愛だよ」
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