クラス転移でハズレスキルすら出なかった俺、山に捨てられる〜実は俺を独占したい女神様の計画通り、権能を与えられたので、悠々自適に暮らします〜

マグローK

文字の大きさ
32 / 48

第32話 溺愛の権能を操ろう

しおりを挟む
「どうなんだフェイラ」
「い、いや。そりゃ元はわたしの力だし? 少しはわかることもあるよ? それに全部は話せてないしさ?」

 溺愛の権能。俺が奪ってしまったフェイラの力。
 そう、元はと言えばフェイラの力なのだし、何か知っているだろうと聞いてみるが、曖昧な返事しか返ってこない。
 何か話したくない理由でもあるのか。

「リュウヤ、それは何の話だ?」
「えーと。フェイラ、もう隠さなくてもいいってことだろ?」
「うん。そもそも初めから隠す必要なんてないんだけどね。わたしの話はどこにいても聞いてるだろうから」

 確かにそれもそうか。
 どんな力を持っている神か。神話のようなもので説明がされているか。人から魔王まで伝わっているほどだし。

 俺はエルディーにも溺愛の権能について明かした。

「それはつまり、フェイラ様の力をリュウヤが行使できるということか?」
「そうなるな」
「ということは、リュウヤは誰をも愛し、誰からも愛されるフェイラ様のような存在だと」
「俺がというより、俺に移った力が、だろうけどな」
「……」

 何かを考え込む様子のエルディー。
 まあ、思うところもあるだろう。
「……私がエディカ以外に愛を……? いや、そんなはずは……」
 何かをぶつぶつと呟きながら俺を見たりそっぽを向いたりし始めた。
 おそらくすぐには飲み込めなかったのだろう。混乱している様子だ。

「……あれ、もしかしてあたしも……? 確かになんだか溝口に変なことしちゃってたような。いや、でも、フェイラさんが来る前から……え、それはそれで、あれ?」
 河原までも効果に関しては俺も話していなかったせいで混乱させてしまったようだ。

 仕方ない。俺とフェイラだけで話を進めるか。

「それで、今回は俺が河原を慰めても不機嫌にならず、喜んでいたが、これはどういうことだ?」
「リュウヤ、気づいてたの?」
「あれだけドス黒いオーラを出して人を萎縮させてたら気づくわ。まあ、今回に関してはそれだけじゃないがな」

 特にデューチャが抱きついた時なんかは顕著だった。あの時の雰囲気は酷かったからな。

「やだー。恥ずかしいー」

 なんで照れるんだ。

「ちょっと嫉妬で気づいてもらおうとしてたけど、そんなに覚えててくれてたなんて」
「いや、どういう変化なのかって話だ」
「そうだよね。気になるよね。わたしも色々と試してたんだ。リュウヤがどんな反応するか。でも、前のリュウヤだったらそれも不機嫌と結びついてなかったよ」
「う、それはそうかもしれないが」
「大丈夫。わたしの力でリュウヤは愛を知れてるよ」

 キュッと急に距離を詰めると、フェイラは俺の手をとって歩き出した。

「なんだ? どこへ行くんだ?」
「わたしの力について詳しく知りたいんだよね? 本当は自分で全部気づいて欲しかったから黙ってたけど、今はエディカちゃんのこともあるし。行こ!」

 フェイラは、パシンッ! と俺の空いてる手と打ち合わせた。
 すると、エルディーと河原が正気を失ったように抱きついてきた。

「リュウヤ。私は一生ついていくぞ」
「み、溝口。あたしでよければ、ついて行くよ」

 二人の口からなかなか出なさそうなセリフが飛び出してきた。

「おい。何をした?」
「わたしはただリュウヤの中にある力とわたし自身を共鳴させて元のように使っただけ。溺愛の権能を使いこなせばこんなこともできるんだよ」
「洗脳みたいだな」
「違うよ。これは、あくまで相手の感情を引き出してるだけだから。二人ともリュウヤを信頼してるってこと……まあ、好かれやすくはなるはずだけど」
「俺が、信頼……」
「そうだよ。愛は気持ち。ついてきてほしいって願えばどこまでもついてきてくれるし、待っていてほしいと思えば望む限り待っていてもらえる。じゃあ、もっと見てみようか」
「どこへ? このままか?」

 俺は手を引かれるまま、エルディーと河原を引き連れてどこかへと連れて行かれた。



 少し歩いてきたが、やはり死の山の中。
 しかしそこは土としては硬い感覚。岩かと思って足で払ってみたが、地面の色に変化は見られない。どう見ても土。

「それじゃあ始めようか」

 再度フェイラが俺と手を打ち鳴らした。すると、地面が大きく揺れ始めた。

「なんだ?」
「リュウヤにわたしの力を馴染ませるための相手だよ」

 揺れる地面は大きく割れ、足元だった部分が生き物のように動き出す。
 いや、生き物のようではない、生き物だ。
 魔物の域を超えた、一代でも魔族と呼ばれそうな存在。

「……ドラゴン」
「リュウヤ……はっ! 私は何をしてしまったのだ。でも、悪くなかった。ではない!」
「え……嘘っ! ちょっと待って。何あれ、というか、溝口にくっついたりして、ドキドキが……」

 フェイラが俺から手を離したせいか、それともドラゴンが羽ばたきによって起こした風圧のせいか二人とも正気を取り戻したらしい。
 ドラゴンは山から体を出すと、空高く飛び上がり俺たちを視認しているようにじっと滞空しながら見下ろしてきていた。

「リュウヤ。ここは私がやる。醜態を見せてしまったからな」
「ううん。エルディーちゃん。ここはリュウヤがやるよ」
「しかし、フェイラ様」
「今は邪魔しないでくれる?」
「……わかりました」

 時々の邪気。
 いや、これもおそらくフェイラからすれば純粋な愛。

 フェイラに凍りついた表情で睨まれ、エルディーは大人しく引き下がった。
 冷たい表情を一気に笑顔にし俺に向き直る。

「やり方は見せた通りだよ。相手に気持ちを伝えるだけでいいの」
「ああ」

 愛はきっと支配もできる。けど、今必要なのはそれじゃない。
 相手を服従させるばかりが愛じゃないはずだ。

 俺が踏みつけてしまったのが悪い。確かめるように払ったのも悪い。
 それでもドラゴンは、怒っているだろうに問答無用に俺たちを蹴散らすようなことはしてこない。

 つまり、

「どうか許してくれ。そして、いつかまた会おう」

 手の届かない高い空へ向けて俺は手を伸ばしドラゴンをまっすぐ見つめた。
 今までなんとなく扱っていた溺愛の権能をしっかり意識してドラゴンへ伝えた。

 気持ちが伝わったかわからない。
 だが、俺たちを見下ろしていた山のようなドラゴンは一度うなずくような動作をすると、どこかへと飛んでいった。

「そう。それもまた愛だよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...