クラス転移でハズレスキルすら出なかった俺、山に捨てられる〜実は俺を独占したい女神様の計画通り、権能を与えられたので、悠々自適に暮らします〜

マグローK

文字の大きさ
47 / 48

第47話 王の終焉

しおりを挟む
「選手交代か? ちょこまかと動き回りおって。大人しくやられればいいものを。こうなれば一人ずつなぶり殺しにしてくれる。ラクに死ねると思うなよ?」

 モグラ叩きでもするように剣を撫でながら、歪んだ笑い顔で俺たちに狙いを定めている王。
 こいつはドラゴンよりはよほど凶暴で荒々しい。頼めば怒りを収めてくれるはずもない。
 そして、生半可な想いじゃ今の俺では届かない。今だって王は、止まるよう言っていたはずが、いつの間にか効果がないレベルまで動きが速くなっている。

 王の情報を聞き出すか。癪だが、王について俺は知らなさすぎる。

「こんな広い城に住んでさぞやいい暮らしをしてるんだろうな」
「ほう? もしやここにきて命乞いか? 嫉妬心からこのようなことをしていたのか? ならば初めからこのワシについておけばよかったものを」

 かかった。こういうジジイは武勇伝を聞きたがると気分をよくするって聞いたことがあった。

「どうせ子どもの頃からいい暮らししてたんだろ? 死ぬ前に教えてくれよ。どんないい暮らしをしてきたのか」
「はっ! いいだろう。時間が経つほど有利なのはこのワシだ。冥土の土産にくれてやる」

 そう言いつつも、いつでも剣を振れる姿勢でじっと俺を見据えたまま、王はさぞ楽しそうに口の端を歪めた。

「暮らしはよかったな。だが、このワシは幼少期から結果を出さないと愛されないような家庭環境で育ってきた。当たり前だ。王なのだからな。だからこそ、ただでは認められなかった。評価を得るしかなかった」
「大変だな」
「お前にこのワシの苦労がわかるものか! ふっ」

 話しながらでも殴ってくるようで、真正面から受けそうになった。
 すんでのところでかわしたが、これは、意外と骨が折れるかもな。

「それで?」
「だからこのワシは結果のために人を使い、誰も認めなかった穴埋めをしたのだ。今まで人として扱われなかったのだから当然だろう。誰も彼もが王の子だからとこのワシをワシとして見なかった。だからワシは人を人として見ないことにしたのだ。誰も認めなかったのだ、このわしが人を道具として利用して何が悪い? これまでの憂さ晴らしだ! おかげで最近は気分がよかった。エルディーという最高のおもちゃがあったからな。なんでもできた」
「楽しかったか?」
「楽しかったさ! 楽しくないわけがないだろう。他の人間は誰も彼もがワシの結果のためにいるのだ」

 つまり、人を死ぬまで使うのも、これまで自分が結果を出さないと認められなかった腹いせに、ただの道具として扱っているからだと。
 たとえ死んでも新しいものにすればいいだけだということか。

「別に愛されずとも認められずとも生きていけると思うけどな」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ! 死にゆく人間が喋るな! 王であるこのワシに反論するな!」

 一際大きく床を叩き、地団駄を踏む王。
 城全体が大きく揺れている。いつの間にかこの隠し部屋も、王が暴れたせいでボロボロになっていたらしい。

 これ以上話を聞くのは無理そうだ。こんな王に同情するというのは難しいな。
 まあ、話の大筋はわかった。十分だ。

「そんなに愛がほしいのなら、俺がくれてやるよ。重い思いってな。愛に沈め」

 ちょうどいいだろう。
 ほしかったものを与えるのだ。きっと効果は絶大だ。
 物理的に重い思い。
 この城も王の栄光の証。自分を飾るために愛がほしかったみたいだからな。ともに沈めばいいさ。

「つまらんシャレを……なんだ? 体が、重い……?」

 俺の手から放たれた光すら飲み込む黒いハートはゆっくりと王へ向かうと一気に王の体を包みこんだ。
 その瞬間、王は体を自然と床にめり込ませ始めた。重い思いのハートが王の体を沈めているようだ。
 俺としては他人を殺してまで他人を利用する奴の言っていることは理解できない。
 思った以上の効果だが、もしかしたら俺だけの思いじゃないのかもしれないな。

「何を、した。お前、何をしたんだ。この、魔王との契約で得た力を持ってしても、このワシが動けないはずが……」
「それが、お前がほしがっていた愛だ」
「ふざけるなっ!」
「ふざけてなんてないさ。俺はあんたに思いを愛として届けただけだ。だが、俺の思いをきっかけに、きっとこの国で死んでいった人たちのあんたへのたっぷりの愛がのしかかってるんだろうさ」
「ふざ、け、るな。ふざけ、おって。これが、このワシの望んだ、愛なわけがあるものか。魔王、力を、このワシに、さらなる力を……」
「呼んだか?」

 いなくなっていたはずの魔王が音もなく俺の背後に現れた。
 ひどくくぐもった声が右耳に直接響いてくる。
 振り返るが、そこに魔王の姿はない。

「さらに、契約だ。魔王、力をよこせ」
「嫌だな」
「何?」
「嫌だ。出来損ないの人間め。この役立たずが」

 突如、デューチャが倒れた時のように、いきなり部屋の四方八方が崩れ落ち、王が地団駄を踏んだ時以上に城全体が大きく揺れ出した。
 どこを見ても魔王の姿はない。

「この、ワシは……」
「リュウヤ。動きを封じたのだろう? 今なら逃げられる。予定通りに逃げるぞ!」
「ああ!」

 魔王、どこへ行ったんだ?
 いや、今は逃げることが先決だ!
 俺たちはエルディーの切り開く道をとにかく走った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

処理中です...