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第47話 王の終焉
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「選手交代か? ちょこまかと動き回りおって。大人しくやられればいいものを。こうなれば一人ずつなぶり殺しにしてくれる。ラクに死ねると思うなよ?」
モグラ叩きでもするように剣を撫でながら、歪んだ笑い顔で俺たちに狙いを定めている王。
こいつはドラゴンよりはよほど凶暴で荒々しい。頼めば怒りを収めてくれるはずもない。
そして、生半可な想いじゃ今の俺では届かない。今だって王は、止まるよう言っていたはずが、いつの間にか効果がないレベルまで動きが速くなっている。
王の情報を聞き出すか。癪だが、王について俺は知らなさすぎる。
「こんな広い城に住んでさぞやいい暮らしをしてるんだろうな」
「ほう? もしやここにきて命乞いか? 嫉妬心からこのようなことをしていたのか? ならば初めからこのワシについておけばよかったものを」
かかった。こういうジジイは武勇伝を聞きたがると気分をよくするって聞いたことがあった。
「どうせ子どもの頃からいい暮らししてたんだろ? 死ぬ前に教えてくれよ。どんないい暮らしをしてきたのか」
「はっ! いいだろう。時間が経つほど有利なのはこのワシだ。冥土の土産にくれてやる」
そう言いつつも、いつでも剣を振れる姿勢でじっと俺を見据えたまま、王はさぞ楽しそうに口の端を歪めた。
「暮らしはよかったな。だが、このワシは幼少期から結果を出さないと愛されないような家庭環境で育ってきた。当たり前だ。王なのだからな。だからこそ、ただでは認められなかった。評価を得るしかなかった」
「大変だな」
「お前にこのワシの苦労がわかるものか! ふっ」
話しながらでも殴ってくるようで、真正面から受けそうになった。
すんでのところでかわしたが、これは、意外と骨が折れるかもな。
「それで?」
「だからこのワシは結果のために人を使い、誰も認めなかった穴埋めをしたのだ。今まで人として扱われなかったのだから当然だろう。誰も彼もが王の子だからとこのワシをワシとして見なかった。だからワシは人を人として見ないことにしたのだ。誰も認めなかったのだ、このわしが人を道具として利用して何が悪い? これまでの憂さ晴らしだ! おかげで最近は気分がよかった。エルディーという最高のおもちゃがあったからな。なんでもできた」
「楽しかったか?」
「楽しかったさ! 楽しくないわけがないだろう。他の人間は誰も彼もがワシの結果のためにいるのだ」
つまり、人を死ぬまで使うのも、これまで自分が結果を出さないと認められなかった腹いせに、ただの道具として扱っているからだと。
たとえ死んでも新しいものにすればいいだけだということか。
「別に愛されずとも認められずとも生きていけると思うけどな」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ! 死にゆく人間が喋るな! 王であるこのワシに反論するな!」
一際大きく床を叩き、地団駄を踏む王。
城全体が大きく揺れている。いつの間にかこの隠し部屋も、王が暴れたせいでボロボロになっていたらしい。
これ以上話を聞くのは無理そうだ。こんな王に同情するというのは難しいな。
まあ、話の大筋はわかった。十分だ。
「そんなに愛がほしいのなら、俺がくれてやるよ。重い思いってな。愛に沈め」
ちょうどいいだろう。
ほしかったものを与えるのだ。きっと効果は絶大だ。
物理的に重い思い。
この城も王の栄光の証。自分を飾るために愛がほしかったみたいだからな。ともに沈めばいいさ。
「つまらんシャレを……なんだ? 体が、重い……?」
俺の手から放たれた光すら飲み込む黒いハートはゆっくりと王へ向かうと一気に王の体を包みこんだ。
その瞬間、王は体を自然と床にめり込ませ始めた。重い思いのハートが王の体を沈めているようだ。
俺としては他人を殺してまで他人を利用する奴の言っていることは理解できない。
思った以上の効果だが、もしかしたら俺だけの思いじゃないのかもしれないな。
「何を、した。お前、何をしたんだ。この、魔王との契約で得た力を持ってしても、このワシが動けないはずが……」
「それが、お前がほしがっていた愛だ」
「ふざけるなっ!」
「ふざけてなんてないさ。俺はあんたに思いを愛として届けただけだ。だが、俺の思いをきっかけに、きっとこの国で死んでいった人たちのあんたへのたっぷりの愛がのしかかってるんだろうさ」
「ふざ、け、るな。ふざけ、おって。これが、このワシの望んだ、愛なわけがあるものか。魔王、力を、このワシに、さらなる力を……」
「呼んだか?」
いなくなっていたはずの魔王が音もなく俺の背後に現れた。
ひどくくぐもった声が右耳に直接響いてくる。
振り返るが、そこに魔王の姿はない。
「さらに、契約だ。魔王、力をよこせ」
「嫌だな」
「何?」
「嫌だ。出来損ないの人間め。この役立たずが」
突如、デューチャが倒れた時のように、いきなり部屋の四方八方が崩れ落ち、王が地団駄を踏んだ時以上に城全体が大きく揺れ出した。
どこを見ても魔王の姿はない。
「この、ワシは……」
「リュウヤ。動きを封じたのだろう? 今なら逃げられる。予定通りに逃げるぞ!」
「ああ!」
魔王、どこへ行ったんだ?
いや、今は逃げることが先決だ!
俺たちはエルディーの切り開く道をとにかく走った。
モグラ叩きでもするように剣を撫でながら、歪んだ笑い顔で俺たちに狙いを定めている王。
こいつはドラゴンよりはよほど凶暴で荒々しい。頼めば怒りを収めてくれるはずもない。
そして、生半可な想いじゃ今の俺では届かない。今だって王は、止まるよう言っていたはずが、いつの間にか効果がないレベルまで動きが速くなっている。
王の情報を聞き出すか。癪だが、王について俺は知らなさすぎる。
「こんな広い城に住んでさぞやいい暮らしをしてるんだろうな」
「ほう? もしやここにきて命乞いか? 嫉妬心からこのようなことをしていたのか? ならば初めからこのワシについておけばよかったものを」
かかった。こういうジジイは武勇伝を聞きたがると気分をよくするって聞いたことがあった。
「どうせ子どもの頃からいい暮らししてたんだろ? 死ぬ前に教えてくれよ。どんないい暮らしをしてきたのか」
「はっ! いいだろう。時間が経つほど有利なのはこのワシだ。冥土の土産にくれてやる」
そう言いつつも、いつでも剣を振れる姿勢でじっと俺を見据えたまま、王はさぞ楽しそうに口の端を歪めた。
「暮らしはよかったな。だが、このワシは幼少期から結果を出さないと愛されないような家庭環境で育ってきた。当たり前だ。王なのだからな。だからこそ、ただでは認められなかった。評価を得るしかなかった」
「大変だな」
「お前にこのワシの苦労がわかるものか! ふっ」
話しながらでも殴ってくるようで、真正面から受けそうになった。
すんでのところでかわしたが、これは、意外と骨が折れるかもな。
「それで?」
「だからこのワシは結果のために人を使い、誰も認めなかった穴埋めをしたのだ。今まで人として扱われなかったのだから当然だろう。誰も彼もが王の子だからとこのワシをワシとして見なかった。だからワシは人を人として見ないことにしたのだ。誰も認めなかったのだ、このわしが人を道具として利用して何が悪い? これまでの憂さ晴らしだ! おかげで最近は気分がよかった。エルディーという最高のおもちゃがあったからな。なんでもできた」
「楽しかったか?」
「楽しかったさ! 楽しくないわけがないだろう。他の人間は誰も彼もがワシの結果のためにいるのだ」
つまり、人を死ぬまで使うのも、これまで自分が結果を出さないと認められなかった腹いせに、ただの道具として扱っているからだと。
たとえ死んでも新しいものにすればいいだけだということか。
「別に愛されずとも認められずとも生きていけると思うけどな」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ! 死にゆく人間が喋るな! 王であるこのワシに反論するな!」
一際大きく床を叩き、地団駄を踏む王。
城全体が大きく揺れている。いつの間にかこの隠し部屋も、王が暴れたせいでボロボロになっていたらしい。
これ以上話を聞くのは無理そうだ。こんな王に同情するというのは難しいな。
まあ、話の大筋はわかった。十分だ。
「そんなに愛がほしいのなら、俺がくれてやるよ。重い思いってな。愛に沈め」
ちょうどいいだろう。
ほしかったものを与えるのだ。きっと効果は絶大だ。
物理的に重い思い。
この城も王の栄光の証。自分を飾るために愛がほしかったみたいだからな。ともに沈めばいいさ。
「つまらんシャレを……なんだ? 体が、重い……?」
俺の手から放たれた光すら飲み込む黒いハートはゆっくりと王へ向かうと一気に王の体を包みこんだ。
その瞬間、王は体を自然と床にめり込ませ始めた。重い思いのハートが王の体を沈めているようだ。
俺としては他人を殺してまで他人を利用する奴の言っていることは理解できない。
思った以上の効果だが、もしかしたら俺だけの思いじゃないのかもしれないな。
「何を、した。お前、何をしたんだ。この、魔王との契約で得た力を持ってしても、このワシが動けないはずが……」
「それが、お前がほしがっていた愛だ」
「ふざけるなっ!」
「ふざけてなんてないさ。俺はあんたに思いを愛として届けただけだ。だが、俺の思いをきっかけに、きっとこの国で死んでいった人たちのあんたへのたっぷりの愛がのしかかってるんだろうさ」
「ふざ、け、るな。ふざけ、おって。これが、このワシの望んだ、愛なわけがあるものか。魔王、力を、このワシに、さらなる力を……」
「呼んだか?」
いなくなっていたはずの魔王が音もなく俺の背後に現れた。
ひどくくぐもった声が右耳に直接響いてくる。
振り返るが、そこに魔王の姿はない。
「さらに、契約だ。魔王、力をよこせ」
「嫌だな」
「何?」
「嫌だ。出来損ないの人間め。この役立たずが」
突如、デューチャが倒れた時のように、いきなり部屋の四方八方が崩れ落ち、王が地団駄を踏んだ時以上に城全体が大きく揺れ出した。
どこを見ても魔王の姿はない。
「この、ワシは……」
「リュウヤ。動きを封じたのだろう? 今なら逃げられる。予定通りに逃げるぞ!」
「ああ!」
魔王、どこへ行ったんだ?
いや、今は逃げることが先決だ!
俺たちはエルディーの切り開く道をとにかく走った。
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