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第136話 制服を着たのでやっぱり外へ出したい
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颯爽と楓は玄関のドアを開けた。
「はっはっは! やはり私は万能なのだ!」
そのまま慌てて家を出ると、母の見送りに返事もせず、後ろ手で勢いよくドアを閉めた。
静かな住宅街に似つかわしくない程の音量に、目の前を通りかかったサラリーマンの男性も、大きく目を見開いていた。
楓は驚かせたことに頭を下げ、立ち去るまで何度となくペコペコと頭を下げ続けた。目の前にいる悪魔が全ての元凶であった。
見た目だけなら、誰に見せてもきっと女子高生に見えるようになった悪魔。金花真里。昨日、向日葵に制服を着せられてすぐは驚くほどにおとなしかった。それが、今となっては恥じらいのかけらも見当たらなくなっていた。
「ふふふ。そんなに見惚れて。やはり似合ってるな?」
「楓はそんなんじゃないよ。変だから面白がって見てるんだよ」
「おや、神よ。忘れたのか? 楓は昨日、私に似合っているといったのだ。にも関わらず似合っていないと思っているわけがないだろう」
「それだってからかって言ったんだよ」
「さては嫉妬だな? 神にも関わらず悪魔に妬くなんてな!」
真里は減らず口を叩きながら、ガハハと高笑いしている。
やれやれと思いながらも、楓はいさかいを収めるため二人の方を叩いて歩き出した。
だが、楓の背後ではガミガミとした言い争いはやまなかった。やがて、地面をこするような音がしたかと思うと、向日葵が真里を引きずっていた。
最初はこんなんじゃなかったのに、楓はそう思いながら真里を外に連れ出した時のことを思い出した。
外へ出ても真里の態度は変わらなかった。
服を着ていることが枷となり、行動が控えめだった。突然走り出すようなこともなく、常に周囲を警戒して身を縮めていた。まるで、親ガモに子ガモがついてくるようにピッタリと行動し、果ては楓と向日葵の手を握り絶対に離そうとしなかった。
「いいか。私は怯えてるのではない。今は私の素晴らしさを知らしめないように、あえて隠れているだけなのだ。決して今の姿が恥ずかしいからではないぞ」
「はいはい」
「わかっていないようだな。前にも言ったが、人間は神より悪魔の方が好きなのだ。本物が現れてみろ、すぐに混乱になるぞ。今の私はそんな混乱を起こす気分じゃないのだ」
「そうだね」
「むむむ」
真里は色々と口実をつけ、何かにつけて言い訳を並べ立てていた。楓には強がりだとすぐにわかったが、態度がかわいらしく、妹とは別に妹分ができた気分で、どんな文句にも穏やかな笑みを浮かべていた。
向日葵は向日葵で、真里の弱った態度に愉悦を感じているらしく、とやかく揚げ足を取ろうとはしなかった。
「ふ。私はやはりこうして挟まれていても絵になってしまうな。チラチラと通り過ぎる人が私を見ている」
「それは、真里を見てるのかな?」
「私だろう。次に楓、最後に神だな」
「僕が最後じゃない?」
「神が最後だ。悪魔、人間、神だ。やはり同族に対する気持ちの方が大きいのだろうな」
真里もまた、向日葵の気分のよさを見逃すことはなかった。
少しずつ使う言葉を強めながら、向日葵に対し攻撃的な発言を続けた。それだけでなく、自意識過剰なのか、人に見られているという感覚を特に強調していた。
それが、次第に真里を刺激していった。徐々にだが、小さくなっていた姿勢をやめ、背筋を伸ばし、胸を張り、前を向いて歩くようになった。
人見知りする子供が成長するように、真里は楓と向日葵から離れて歩き出した。
そして、
「お姉ちゃんたちかわいいね」
という見知らぬ女児の発言がダメ押しとなった。
他人に直接かわいいと言われ、すっかり気をよくした真里の態度は増長に増長を重ねた。
家に戻る頃にはすっかり服を着ていることをなんとも思わなくなった様子で、何も着ていない時と態度に差がなくなってしまった。
「はあ」
楓はため息をついた。真里のことを思い出していたらば学校についてしまった。
「楓さん。今日は何も文句をつけられるようなものは持ってきてませんよね」
「か、葛……持ってきてないよ。そもそも出てこなかったじゃん」
「そうですけど、火のないところに煙は立ちません。気をつけてくださいね。困るのは楓さんですよ」
「はい」
初っ端から葛に叱られ、楓はしょんぼりとまゆ尻を下げた。実際、猫の姿の真里を持ってきていたのだから、言い訳の一つもできず肩を落とした。
葛は楓のそんな姿を見やってから、後ろを歩く二人へと視線を移した。
「おはようございます」
「おはよう葛ちゃん」
「葛と言うのか。おはようなのだ」
「おはようございます。初めましてですね」
「そうだな。なんだったか?」
「転校でしょ」
「そうそれ。今日からてんこうしてきた金花真里なのだ。よろしくなのだ」
「よろしくお願いします」
丁寧な挨拶から続けてキラリと光るような葛の視線。真里は全身をくまなく見つめられたものの、違反は一つもなかったらしく、葛は頷くだけだった。
「初日から大丈夫そうですね」
それだけ言うと葛は早足で別の生徒の元へと駆けていった。
とうとう教室へと舞台は移った。
無論、転校生という扱いのため、職員室に真里を預け、今のところ楓がとやかく言われることはない。
おどおどとしたおとなしいままなら、まだなんとかなったかもしれないが、今の真里なら簡単に墓穴を掘ってしまいそうで楓は心配だった。
「どしたの楓たん。心ここにあらずって感じだけど」
「ううん。なんでもない」
「昨日は向日葵たんがそんな感じだったけど、うまくいってないの?」
「いや、向日葵とのことじゃなくて、まあ無関係でもないけど」
「そうなの?」
「うーん」
頬をつつかれながらも、楓は唸るだけでその場を済ませた。
桜に話さないせいで奇異の目を向けられていたが、言葉を返す余裕もなく、時計を見たり、周りを見たりして、無駄話に花を咲かせることもなく時間は過ぎていった。
そんな風に何もしないまま、対処法を思いつく間も無く、教室の扉が開かれた。すぐに、スキンヘッドの教師が姿を現し、ともに真っ黒の髪をした少女が入ってくる。
「静かにー今日は転校生を紹介する! 入ってってうお! 待っててって言ったよね?」
「おう。そうだったのだ。すっかり忘れてたのだ」
「まあいいや、自己紹介を」
「金花真里なのだ。よろしくなのだ!」
悪魔だなんだは釘を刺していただけあり、その場では口にすることはなかった。
「じゃあ、席は……あ、もう行っちゃってるし」
真里は教師の指示に従うことなく、足取り軽く楓の目の前まで移動した。それから机の上に足を組んで座った。
「何してるの?」
「特等席だろう?」
「いや、何の?」
「あっちだよあっちの席。そこじゃない。少なくとも楓の前じゃない」
向日葵にどぎつく睨まれ、ドスの効いた声に真里は縮み上がった。
おとなしく机を降りると、とぼとぼと肩を落として、向日葵が指をさしていた楓の右斜め後方へと移動して、おとなしく椅子に座った。
見なくとも桜がソワソワとしていることは楓も肌で感じ取った。ここから何を言うのか、それを想像しただけでHRの中身は耳に入ってこなかった。
「ねえねえ、知り合いなんでしょ? 悩んでたのはそう言うことなんでしょ?」
休憩になるなり、桜は席を立ち手をついて楓の顔を見据えた。
純粋な好奇心だけで聞いてきている。そうわかる輝く瞳。楓は面倒だと思うより早く、ひとまず安心していた。まだ人間の美少女だと思われていそうだったからだ。
「まあね」
と楓は軽く答えるにとどめた。わざわざ自分から深堀りすることはないと思ったからだ。
「またまたぁ。そんな軽く言っちゃって。どことなく昨日楓たんが連れてきてた猫ちゃんに似てる気がするけど……」
「え!」
今度は楓が桜を見つめる番だった。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら楓の視線を迎え撃つ。
「なんで知ってるの?」
簡単に答えが返ってこないことはわかりきっていたが、聞かずにはいられなかった。
「楓たんのことで私が知らないことがあるわけないでしょ? ましてや目の前のことだよ?」
全てをあらかじめ見透かしていたようなセリフ。一つ前進した人間はそうでない人間よりも大人びて見える。楓は今まさに男性を克服した桜がそう見えていた。
「大丈夫だよ。葛たんに告げ口とかしないから」
「ありがと」
「でも、その感じだと、そっかー見間違えじゃないんだね。飼い主とか?」
「そんなとこかな」
「どこに住んでるの?」
「向日葵の家。あ」
安心からぽろっと漏らしてしまい。気づいて楓は口を手で塞いだがもう遅かった。
「へーライバルじゃん。どうするの? そういうこと? 向日葵たんとのことじゃないけど悩んでるってのは」
「大丈夫だよ。私とあいつが楓の心配するような関係になることはないから」
「だって、よかったね」
そうじゃないのに、そう思っていると、今の今まで距離を取って見ているだけだった真里は動き出した。
席を立ち楓の前まで歩みを進める。
「真里たん。よろしく。私は春野桜」
「桜か。よろしくなのだ」
出された手に握手を返そうとする真里。だが、すぐに身を引いて距離を取った。
「さすがの身のこなし。やっぱり猫ちゃんみたいだね」
「猫? 私はなんのことか知らないのだ」
明らかな動揺。桜は口角を上げる。基本笑みを絶やさない桜だったが、楽しい時はより楽しそうにする。
「飼い主なんじゃないの?」
「あ、あれなんだ。目を見てもわかると思うけど、真里は名前こそ日本人だけどハーフなんだ。それで、向日葵の家に泊まってる感じなんだ。知り合いの子でさ。だから、日本語にも精通してなくてね。ね」
真里、向日葵二人にアイコンタクトを送り、楓はその場を取り繕った。
向日葵はため息をついたが、何かをやりとりしたらしい。桜の追及も、
「ワタシヨクワカラナイ」
というカタコトで煙に巻き、その場はことなきを得た。
「はっはっは! やはり私は万能なのだ!」
そのまま慌てて家を出ると、母の見送りに返事もせず、後ろ手で勢いよくドアを閉めた。
静かな住宅街に似つかわしくない程の音量に、目の前を通りかかったサラリーマンの男性も、大きく目を見開いていた。
楓は驚かせたことに頭を下げ、立ち去るまで何度となくペコペコと頭を下げ続けた。目の前にいる悪魔が全ての元凶であった。
見た目だけなら、誰に見せてもきっと女子高生に見えるようになった悪魔。金花真里。昨日、向日葵に制服を着せられてすぐは驚くほどにおとなしかった。それが、今となっては恥じらいのかけらも見当たらなくなっていた。
「ふふふ。そんなに見惚れて。やはり似合ってるな?」
「楓はそんなんじゃないよ。変だから面白がって見てるんだよ」
「おや、神よ。忘れたのか? 楓は昨日、私に似合っているといったのだ。にも関わらず似合っていないと思っているわけがないだろう」
「それだってからかって言ったんだよ」
「さては嫉妬だな? 神にも関わらず悪魔に妬くなんてな!」
真里は減らず口を叩きながら、ガハハと高笑いしている。
やれやれと思いながらも、楓はいさかいを収めるため二人の方を叩いて歩き出した。
だが、楓の背後ではガミガミとした言い争いはやまなかった。やがて、地面をこするような音がしたかと思うと、向日葵が真里を引きずっていた。
最初はこんなんじゃなかったのに、楓はそう思いながら真里を外に連れ出した時のことを思い出した。
外へ出ても真里の態度は変わらなかった。
服を着ていることが枷となり、行動が控えめだった。突然走り出すようなこともなく、常に周囲を警戒して身を縮めていた。まるで、親ガモに子ガモがついてくるようにピッタリと行動し、果ては楓と向日葵の手を握り絶対に離そうとしなかった。
「いいか。私は怯えてるのではない。今は私の素晴らしさを知らしめないように、あえて隠れているだけなのだ。決して今の姿が恥ずかしいからではないぞ」
「はいはい」
「わかっていないようだな。前にも言ったが、人間は神より悪魔の方が好きなのだ。本物が現れてみろ、すぐに混乱になるぞ。今の私はそんな混乱を起こす気分じゃないのだ」
「そうだね」
「むむむ」
真里は色々と口実をつけ、何かにつけて言い訳を並べ立てていた。楓には強がりだとすぐにわかったが、態度がかわいらしく、妹とは別に妹分ができた気分で、どんな文句にも穏やかな笑みを浮かべていた。
向日葵は向日葵で、真里の弱った態度に愉悦を感じているらしく、とやかく揚げ足を取ろうとはしなかった。
「ふ。私はやはりこうして挟まれていても絵になってしまうな。チラチラと通り過ぎる人が私を見ている」
「それは、真里を見てるのかな?」
「私だろう。次に楓、最後に神だな」
「僕が最後じゃない?」
「神が最後だ。悪魔、人間、神だ。やはり同族に対する気持ちの方が大きいのだろうな」
真里もまた、向日葵の気分のよさを見逃すことはなかった。
少しずつ使う言葉を強めながら、向日葵に対し攻撃的な発言を続けた。それだけでなく、自意識過剰なのか、人に見られているという感覚を特に強調していた。
それが、次第に真里を刺激していった。徐々にだが、小さくなっていた姿勢をやめ、背筋を伸ばし、胸を張り、前を向いて歩くようになった。
人見知りする子供が成長するように、真里は楓と向日葵から離れて歩き出した。
そして、
「お姉ちゃんたちかわいいね」
という見知らぬ女児の発言がダメ押しとなった。
他人に直接かわいいと言われ、すっかり気をよくした真里の態度は増長に増長を重ねた。
家に戻る頃にはすっかり服を着ていることをなんとも思わなくなった様子で、何も着ていない時と態度に差がなくなってしまった。
「はあ」
楓はため息をついた。真里のことを思い出していたらば学校についてしまった。
「楓さん。今日は何も文句をつけられるようなものは持ってきてませんよね」
「か、葛……持ってきてないよ。そもそも出てこなかったじゃん」
「そうですけど、火のないところに煙は立ちません。気をつけてくださいね。困るのは楓さんですよ」
「はい」
初っ端から葛に叱られ、楓はしょんぼりとまゆ尻を下げた。実際、猫の姿の真里を持ってきていたのだから、言い訳の一つもできず肩を落とした。
葛は楓のそんな姿を見やってから、後ろを歩く二人へと視線を移した。
「おはようございます」
「おはよう葛ちゃん」
「葛と言うのか。おはようなのだ」
「おはようございます。初めましてですね」
「そうだな。なんだったか?」
「転校でしょ」
「そうそれ。今日からてんこうしてきた金花真里なのだ。よろしくなのだ」
「よろしくお願いします」
丁寧な挨拶から続けてキラリと光るような葛の視線。真里は全身をくまなく見つめられたものの、違反は一つもなかったらしく、葛は頷くだけだった。
「初日から大丈夫そうですね」
それだけ言うと葛は早足で別の生徒の元へと駆けていった。
とうとう教室へと舞台は移った。
無論、転校生という扱いのため、職員室に真里を預け、今のところ楓がとやかく言われることはない。
おどおどとしたおとなしいままなら、まだなんとかなったかもしれないが、今の真里なら簡単に墓穴を掘ってしまいそうで楓は心配だった。
「どしたの楓たん。心ここにあらずって感じだけど」
「ううん。なんでもない」
「昨日は向日葵たんがそんな感じだったけど、うまくいってないの?」
「いや、向日葵とのことじゃなくて、まあ無関係でもないけど」
「そうなの?」
「うーん」
頬をつつかれながらも、楓は唸るだけでその場を済ませた。
桜に話さないせいで奇異の目を向けられていたが、言葉を返す余裕もなく、時計を見たり、周りを見たりして、無駄話に花を咲かせることもなく時間は過ぎていった。
そんな風に何もしないまま、対処法を思いつく間も無く、教室の扉が開かれた。すぐに、スキンヘッドの教師が姿を現し、ともに真っ黒の髪をした少女が入ってくる。
「静かにー今日は転校生を紹介する! 入ってってうお! 待っててって言ったよね?」
「おう。そうだったのだ。すっかり忘れてたのだ」
「まあいいや、自己紹介を」
「金花真里なのだ。よろしくなのだ!」
悪魔だなんだは釘を刺していただけあり、その場では口にすることはなかった。
「じゃあ、席は……あ、もう行っちゃってるし」
真里は教師の指示に従うことなく、足取り軽く楓の目の前まで移動した。それから机の上に足を組んで座った。
「何してるの?」
「特等席だろう?」
「いや、何の?」
「あっちだよあっちの席。そこじゃない。少なくとも楓の前じゃない」
向日葵にどぎつく睨まれ、ドスの効いた声に真里は縮み上がった。
おとなしく机を降りると、とぼとぼと肩を落として、向日葵が指をさしていた楓の右斜め後方へと移動して、おとなしく椅子に座った。
見なくとも桜がソワソワとしていることは楓も肌で感じ取った。ここから何を言うのか、それを想像しただけでHRの中身は耳に入ってこなかった。
「ねえねえ、知り合いなんでしょ? 悩んでたのはそう言うことなんでしょ?」
休憩になるなり、桜は席を立ち手をついて楓の顔を見据えた。
純粋な好奇心だけで聞いてきている。そうわかる輝く瞳。楓は面倒だと思うより早く、ひとまず安心していた。まだ人間の美少女だと思われていそうだったからだ。
「まあね」
と楓は軽く答えるにとどめた。わざわざ自分から深堀りすることはないと思ったからだ。
「またまたぁ。そんな軽く言っちゃって。どことなく昨日楓たんが連れてきてた猫ちゃんに似てる気がするけど……」
「え!」
今度は楓が桜を見つめる番だった。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら楓の視線を迎え撃つ。
「なんで知ってるの?」
簡単に答えが返ってこないことはわかりきっていたが、聞かずにはいられなかった。
「楓たんのことで私が知らないことがあるわけないでしょ? ましてや目の前のことだよ?」
全てをあらかじめ見透かしていたようなセリフ。一つ前進した人間はそうでない人間よりも大人びて見える。楓は今まさに男性を克服した桜がそう見えていた。
「大丈夫だよ。葛たんに告げ口とかしないから」
「ありがと」
「でも、その感じだと、そっかー見間違えじゃないんだね。飼い主とか?」
「そんなとこかな」
「どこに住んでるの?」
「向日葵の家。あ」
安心からぽろっと漏らしてしまい。気づいて楓は口を手で塞いだがもう遅かった。
「へーライバルじゃん。どうするの? そういうこと? 向日葵たんとのことじゃないけど悩んでるってのは」
「大丈夫だよ。私とあいつが楓の心配するような関係になることはないから」
「だって、よかったね」
そうじゃないのに、そう思っていると、今の今まで距離を取って見ているだけだった真里は動き出した。
席を立ち楓の前まで歩みを進める。
「真里たん。よろしく。私は春野桜」
「桜か。よろしくなのだ」
出された手に握手を返そうとする真里。だが、すぐに身を引いて距離を取った。
「さすがの身のこなし。やっぱり猫ちゃんみたいだね」
「猫? 私はなんのことか知らないのだ」
明らかな動揺。桜は口角を上げる。基本笑みを絶やさない桜だったが、楽しい時はより楽しそうにする。
「飼い主なんじゃないの?」
「あ、あれなんだ。目を見てもわかると思うけど、真里は名前こそ日本人だけどハーフなんだ。それで、向日葵の家に泊まってる感じなんだ。知り合いの子でさ。だから、日本語にも精通してなくてね。ね」
真里、向日葵二人にアイコンタクトを送り、楓はその場を取り繕った。
向日葵はため息をついたが、何かをやりとりしたらしい。桜の追及も、
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