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第8話 コラボの約束
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「あっはっは。まあ、わかるわよ。1人の時はもう少し幼い女の子を演じる時もあるから。少なくとも、どう見ても年上には見えないものね」
「いや、本当にすみませんでした。実物が知っている以上にかわいい女の子だったもので、配信でお見かけしていた方だとは脳内で一致せず」
「素直でいい子ね。いいのよ。そこそこあるから。そんなにかしこまらなくっても大丈夫だし。なんならさっきまでの年下扱いでもわたしは構わないけど?」
「か、勘弁してくださいよ。そんなことできませんって」
萌葉ちゃん、もとい重畳寺さんが気さくそうに脇腹を突いてくるような陽気な方で助かった。
私が救出していたのは探索者としても配信者としても大先輩の重畳寺萌葉さんご本人だった。
どうやら私の脳が麻痺していたらしい。
まさか名前を聞いて反応できないほどダンジョン間連絡廊下の方に意識を持っていかれるとは思っていなかった。
けれど、ここまで気づかずに幼女に対する扱いをしてしまった非礼について詫びようがない。
「今回はすみませんでした。本当に有名な方をダシに使って有名になって、本来なら多分お金払わないといけないやつですよね」
「いいのいいの。さっきも言ったでしょ? 命を助けられたって。命の方がお金より重いに決まってるんだから」
「ですけど……」
「じゃ、いくつか言うことを聞いてもらおうかしら」
「は、はい! できることならなんでもやらせてもらいます」
私の言葉にニヤッと笑う重畳寺さんの顔はどう見ても悪巧みしている小学生くらいにしか見えない。
きっと26歳女性が同じ顔をしていたら、もっと不気味な雰囲気になっているんじゃないかな。
「なんでも、ね」
「あの。できることなら、ですよ? 私の持っているスキルは万能じゃないので」
「わかってるわよ。それに、後輩に対してそんなぞんざいな扱いできないから」
ひとまず重畳寺さんの言葉にほっと胸を撫で下ろす。
あとは無理難題ではないことを祈るばかりだ。
「まず第一に、今回は前回と違ってたまたま会った訳だけど、どうしてわたしのいるところがわかったの?」
「コメントです」
「配信を見直してみた限り、連絡通路を見つけたのもコメントってことになるのかしら」
「はい。その通りです。見てくださりありがとうございます!」
「探索者やってて今のあなたを知らなかったらモグリでしょ」
「そこまでのものではないと思いますけど、嬉しいです」
「……ふーん。どんな仕組みになっているかは明かさない、と」
「なんですか?」
「いいえ。こっちの話」
なんだか少し腑に落ちたような感じでふんふんとうなずいている重畳寺さん。
今の質問はそれほど変わった内容には思えなかったけれど、さすがは一流探索者。短い間で目的のものを手に入れたらしい。
「第二に、配信に設定されているサムネイルとタイトルを見たんだけど」
「は、はい。どうでしたか」
少し期待しながら重畳寺さんの顔を見てみたが、明らかに呆れ顔だった。
「のぞみ。あれで見つけてもらえるはずないでしょ? タイトルをわかりやすくしなくちゃ。見ている人のほとんどは探索を学校程度でしか知らないんだからね? 視聴者を探索者だって考えない方がいいわ」
「職業探索者の割合を考えればおっしゃる通りで」
「でしょ? まあ、もしかしたら情報系の配信者を目指しているのかもしれないけど、それならそれで興味を引くような内容にしなくちゃ。誰が、Sランクダンジョンソロ攻略 286日目 グレートドラゴンの群れと遭遇した時の対処法、なんてタイトルの配信を見るのよ」
「役立つかなって」
「マニアックすぎでしょ! それに、あんたのこと知らないんだから嘘だと思うだろうし。さっきも言ったけど、見てる人のほとんどは探索者じゃないの。そもそも探索者でもSランクダンジョンソロ攻略とか危険度高すぎて普通ギルドの許可が降りないからね」
「だからこそ、情報が少なくてみんな困ってるかなって」
「必要な人がほとんどいないってことを言ってんでしょ。わかりやすいけど、そういうことじゃない。もっと、初めてのBランクダンジョン! 強いモンスターがいっぱいって聞いたけど、前回の配信で準備したから余裕だよね? みたいななのとか、Dランクモンスターに囲まれた時の脱出方法を実践してみる、みたいな! せめて高過ぎないランクで応援したくなるくらいのヤツにしときなさい」
「は、はい……」
少し息を切らしながら、重畳寺さんは参考になるアドバイスをくださった。
ここまでガッツリとりーちゃんでも言ってくれなかったのは、気を遣ってくれてたんだろうな。
反省しよ。
「あと、三つ目。あんた、わたしを助けたことで有名になって引け目を感じてるんでしょ?」
「え、ええ」
重畳寺さんが気にしなくていいと言ってくれてもまだ誤ってしまうくらいには気にしている。
いや、そりゃ気にするでしょって話だ。
勝手に助けて勝手に有名になっているんだから気にするなって方が無理な話だと思う。
「気にしいみたいだから、あんたのチャンネルにわたしを出しなさい。今回の件に色々とケリつけたいし」
「えっと、普通は逆じゃないですか?」
「だから、その後で今度わたしのチャンネルにも出ること、それでこの件はチャラってことにして、対等な探索友だち」
なんだか少しそっけない感じで重畳寺さんは指さながら言ってきた。
私としては多分これ以上ない提案だけど、しっかり数字を持っている重畳寺さんとしてはどうなのだろう。
「でも、いいんですか?」
「歳離れてるけど、これからもよろしくってことよ。何? 嫌なの?」
「嫌じゃないです! こちらこそよろしくお願いします。重畳寺先輩!」
「重畳寺先輩。それ、悪くないわね」
またしても横腹を突くようにしながら重畳寺さんは言った。
その顔は今までで一番自然な笑顔に見えた。
「いや、本当にすみませんでした。実物が知っている以上にかわいい女の子だったもので、配信でお見かけしていた方だとは脳内で一致せず」
「素直でいい子ね。いいのよ。そこそこあるから。そんなにかしこまらなくっても大丈夫だし。なんならさっきまでの年下扱いでもわたしは構わないけど?」
「か、勘弁してくださいよ。そんなことできませんって」
萌葉ちゃん、もとい重畳寺さんが気さくそうに脇腹を突いてくるような陽気な方で助かった。
私が救出していたのは探索者としても配信者としても大先輩の重畳寺萌葉さんご本人だった。
どうやら私の脳が麻痺していたらしい。
まさか名前を聞いて反応できないほどダンジョン間連絡廊下の方に意識を持っていかれるとは思っていなかった。
けれど、ここまで気づかずに幼女に対する扱いをしてしまった非礼について詫びようがない。
「今回はすみませんでした。本当に有名な方をダシに使って有名になって、本来なら多分お金払わないといけないやつですよね」
「いいのいいの。さっきも言ったでしょ? 命を助けられたって。命の方がお金より重いに決まってるんだから」
「ですけど……」
「じゃ、いくつか言うことを聞いてもらおうかしら」
「は、はい! できることならなんでもやらせてもらいます」
私の言葉にニヤッと笑う重畳寺さんの顔はどう見ても悪巧みしている小学生くらいにしか見えない。
きっと26歳女性が同じ顔をしていたら、もっと不気味な雰囲気になっているんじゃないかな。
「なんでも、ね」
「あの。できることなら、ですよ? 私の持っているスキルは万能じゃないので」
「わかってるわよ。それに、後輩に対してそんなぞんざいな扱いできないから」
ひとまず重畳寺さんの言葉にほっと胸を撫で下ろす。
あとは無理難題ではないことを祈るばかりだ。
「まず第一に、今回は前回と違ってたまたま会った訳だけど、どうしてわたしのいるところがわかったの?」
「コメントです」
「配信を見直してみた限り、連絡通路を見つけたのもコメントってことになるのかしら」
「はい。その通りです。見てくださりありがとうございます!」
「探索者やってて今のあなたを知らなかったらモグリでしょ」
「そこまでのものではないと思いますけど、嬉しいです」
「……ふーん。どんな仕組みになっているかは明かさない、と」
「なんですか?」
「いいえ。こっちの話」
なんだか少し腑に落ちたような感じでふんふんとうなずいている重畳寺さん。
今の質問はそれほど変わった内容には思えなかったけれど、さすがは一流探索者。短い間で目的のものを手に入れたらしい。
「第二に、配信に設定されているサムネイルとタイトルを見たんだけど」
「は、はい。どうでしたか」
少し期待しながら重畳寺さんの顔を見てみたが、明らかに呆れ顔だった。
「のぞみ。あれで見つけてもらえるはずないでしょ? タイトルをわかりやすくしなくちゃ。見ている人のほとんどは探索を学校程度でしか知らないんだからね? 視聴者を探索者だって考えない方がいいわ」
「職業探索者の割合を考えればおっしゃる通りで」
「でしょ? まあ、もしかしたら情報系の配信者を目指しているのかもしれないけど、それならそれで興味を引くような内容にしなくちゃ。誰が、Sランクダンジョンソロ攻略 286日目 グレートドラゴンの群れと遭遇した時の対処法、なんてタイトルの配信を見るのよ」
「役立つかなって」
「マニアックすぎでしょ! それに、あんたのこと知らないんだから嘘だと思うだろうし。さっきも言ったけど、見てる人のほとんどは探索者じゃないの。そもそも探索者でもSランクダンジョンソロ攻略とか危険度高すぎて普通ギルドの許可が降りないからね」
「だからこそ、情報が少なくてみんな困ってるかなって」
「必要な人がほとんどいないってことを言ってんでしょ。わかりやすいけど、そういうことじゃない。もっと、初めてのBランクダンジョン! 強いモンスターがいっぱいって聞いたけど、前回の配信で準備したから余裕だよね? みたいななのとか、Dランクモンスターに囲まれた時の脱出方法を実践してみる、みたいな! せめて高過ぎないランクで応援したくなるくらいのヤツにしときなさい」
「は、はい……」
少し息を切らしながら、重畳寺さんは参考になるアドバイスをくださった。
ここまでガッツリとりーちゃんでも言ってくれなかったのは、気を遣ってくれてたんだろうな。
反省しよ。
「あと、三つ目。あんた、わたしを助けたことで有名になって引け目を感じてるんでしょ?」
「え、ええ」
重畳寺さんが気にしなくていいと言ってくれてもまだ誤ってしまうくらいには気にしている。
いや、そりゃ気にするでしょって話だ。
勝手に助けて勝手に有名になっているんだから気にするなって方が無理な話だと思う。
「気にしいみたいだから、あんたのチャンネルにわたしを出しなさい。今回の件に色々とケリつけたいし」
「えっと、普通は逆じゃないですか?」
「だから、その後で今度わたしのチャンネルにも出ること、それでこの件はチャラってことにして、対等な探索友だち」
なんだか少しそっけない感じで重畳寺さんは指さながら言ってきた。
私としては多分これ以上ない提案だけど、しっかり数字を持っている重畳寺さんとしてはどうなのだろう。
「でも、いいんですか?」
「歳離れてるけど、これからもよろしくってことよ。何? 嫌なの?」
「嫌じゃないです! こちらこそよろしくお願いします。重畳寺先輩!」
「重畳寺先輩。それ、悪くないわね」
またしても横腹を突くようにしながら重畳寺さんは言った。
その顔は今までで一番自然な笑顔に見えた。
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