配信初心者の私、プロ指示厨の言いなりで気づけば百合ハーレム完成!?

マグローK

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第15話 クール系美少女の連絡先聞いてみた

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「見た?」

「うん。見ちゃった」

 隠せるような状況でないので、私は素直にうなずいた。
 申し訳程度にぺろっと舌を出しておく。

「……」

 胸に抱くように学生証を持ちながら静奈ちゃんはしゃがみ込んだ。
 これまでよりも一段と静奈ちゃんのまとう空気が重くなった気がする。

 すべってしまったかもしれない。

「ランクを取得してソロ探索ができるようになるのは高校生からだったと思うんだけど、何か事情があるのかな?」

「……」

 思い詰めたように静奈ちゃんはしばらく視線を泳がせていた。
 その間、私も重畳寺先輩も黙って静奈ちゃんの言葉を待った。

 少しして、静奈ちゃんはぽつぽつと語り出した。

「うち、きょうだいが多いんです。親の稼ぎだけじゃ家計が苦しくって。ワタシも働かないといけなくって。でも、今働けることなんて限られてて。それに、ワタシ不器用だから他の仕事じゃお金をやれないって言われて。だから探索者をしてるです。特別許可証はもらってます。夜間の探索許可も得てるんです」

 やたらと色々なことを遠慮していたのはこのためだろうか。
 責任感が強くって自分でなんとかしようとする。
 ポイズネルキメラの件もダンジョンアラートを出してなかったし、あそこからなんとかするつもりだったんだろうな。

「しっかりしてるね。どうりで年下なのに大人びてる訳だ」

「同情したりしないんですか?」

「欲しいならいくらでもしてあげるけど、私には静奈ちゃんがそんなものを欲しているようには見えなかったな」

「それは、はい」

 そりゃ、私も静奈ちゃんの状況は苦しいと思うし、かわいそうだと思いそうになる。
 だけど、目の前の女の子はそんな「かわいそう」という括りでレッテルを貼り、思考を放棄するのは失礼な相手だ。
 私は知っているつもりだ。ソロの探索者として、周囲の人間よりダンジョンへ向かわないといけない心情を。明日生きていないかもしれないと、本気で思う不安定な自分の心と向き合う辛さを。

「でも、実益は必要だろうし……重畳寺先輩、静奈ちゃんにお金出してあげてくださいよ」

「よくないでしょ。それ」

「登録者が20万人もいれば探索してる配信者として世間一般以上の生活はできるって聞きました。3倍もいるならもっとすごいんじゃないですか?」

「何言ってんのよ。今はもうあんたの方が多いでしょ」

「バレたか」

 私はまたぺろっと舌を出した。
 重畳寺先輩ににらまれてしまった。
 私は大人しくベロを口の中にしまった。

 でも、私の登録者はつい最近増えただけで、その実感はまだないし、実生活に影響が出たのは知名度くらい。金銭的な部分は実のところまだだったりする。

「あの。何もしてないのにお金はもらえません」

「冗談冗談。それに、そんなに固くならなくっていいよ。ですよね重畳寺先輩」

「今さらだしね。わたし、あんたのぶっきらぼうなキャラは嫌いじゃないわよ」

「ぶっきらぼう?」

 どうやら自覚はないらしい。
 素でおすましさんなのかもしれない。
 かわいい子だ。

「今言った方法以外でなんとかしてあげたいけど、こういうのってなかなか思いつかなくって」

「すぐ思いつくようなことなら、静奈も困ってないでしょ」

「ですねぇ」

 重畳寺先輩の家でやることは片づいたし、ここはいったん解散かな。 

「ひとまず、家を貸してくださりありがとうございました」

「ん。でも、これはたしかにギルドじゃできなかったわね。あそこじゃ男もいるし」

「でしょう?」

 重畳寺先輩の家を出るため、私は静奈ちゃんに装備を着せてあげた。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

 おや。遠慮されなかったな。



 外に出るとすっかり日は沈んでいて辺りは暗くなっていた。
 それでも、時間はいつもと同じくらい。20時を少し過ぎた頃。平日探索で考えれば少し遅いけど、日によっては配信時間の影響で帰ってご飯食べてお風呂に入って寝るくらいの時間ではある。

「ご迷惑おかけしました」

 急に頭を下げてくる静奈ちゃんに私はぶんぶんと両手を振った。

「いいっていいって。迷惑だなんて全然思ってないよ」

「でも……」

「大丈夫だって。むしろ何かしてあげたいくらいだから」

 この気持ちは本当だ。
 指示厨さんのおかげで知り合えたこの縁を大切にしたいところでもある。

「そうそう。敬語もなしで大丈夫だよ」

「それは、悪いと言いますか」

「気にしないで、重畳寺先輩もきっと喜ぶと思うから」

「それなら……わかった」

「うん。そっちの方が静奈ちゃんらしいよ」

「かな」

 街灯の光で見えた静奈ちゃんの顔は照れたようにはにかんでいた。
 ちょっとばかり表情が豊かになった気がするのは気を許してくれたからかな。そうだったら嬉しい。

「ところで静奈ちゃんは何年生なの?」

「中二」

「そっか。ちょうど三つ違いなんだ」

「高二ってこと?」

「そ。配信を初めて1年、くらい……」

「どうしたの?」

「いや」

 自分で言葉にして、何かいい案が思いついた感じがした。
 なんだろう。なんか今ものすごくワクワクしてる感じだ。だけど、うまく言語化できない。

 ああっ! もどかしい。

 配信、かな? そう、配信だと思う!

「あ、あのね。静奈ちゃん」

「うん」

「もし、もしだよ? 嫌じゃなかったらなんだけど、静奈ちゃんも配信とかやってみない?」

「配信? その、のぞみ、ちゃんとか、重畳寺、ちゃんがしてるような?」

「そうそう。生活費の足しになるかは運次第みたいなところだけど、簡単な機材があればできるはずだし、静奈ちゃんの実力なら配信で探索に支障が出るってこともないだろうしさ」

「ワタシ、2人みたいに話得意じゃない」

「大丈夫だよ。私も得意じゃないし」

「ワタシはのぞみちゃんの話好き」

「え、嘘。嬉しい」

 今度は私が照れる番?
 って、違う違う。

「一緒にいれば配信の手伝いもできるし、今回みたいに1人だとまた困ったことになるかもだから、協力してやってこうよ」

「協力? いいの?」

「1人でやるより取り分が減ることもあるだろうけど、死んじゃったら何も手に入らないんだしさ」

「お世話になっちゃうな」

「いいんだよ。まだまだ若いんだからさ」

「ふふっ」

 そこで初めて、静奈ちゃんがしっかり笑った。その顔を見て、私は思わず足が止まった。
 あっ、という顔で静奈ちゃんは固まっている。

「い、今のはのぞみちゃんを笑ったんじゃなくって」

「ううん。笑ってくれたって思って。私もまだ高校生なのにねぇ、ってことでしょ?」

「……うん」

 笑顔が見られたことが恥ずかしかったのか、背中を見せるようにしながら小さくうなずく静奈ちゃん。
 それからもう一度、うなずいた。

「うん?」

「ワタシ、2人と一緒に探索する。それを配信する」

「決まりだね。それじゃよろしく」

「よろしく」

 無理を言っているような気はするけど、私から今提供できるのはここら辺だ。
 受け取ってくれると言っているのなら、全力で推敲するまで。

「え、ねー。それはそれとしてかわいいお顔見せて」

「は、恥ずかしいよ。そんなに笑わないから」

「もったいない。すっごいかわいかったよ。スマホの壁紙にしたい」

「や、やめて」

「あ、そうだ。連絡先交換しようよ。また明日から一緒に探索するってことで」

「それは、うん……やった」

「また笑ってくれた」

「い、今のは油断してた」

「油断してくれたんだー」

「……いじわる」

「ご、ごめんごめん。そんなつもりじゃ」

「怒ってない。こんなこと初めてでなんか自分でもよくわからない。でも、のぞみちゃんと一緒にいると楽しい」

「よかった」

 それでも、赤くなって小さくなっちゃったから今日はこの辺にしておこうかな。
 キモがられて嫌われたくはないしね。

「ワタシの家ここ」

「了解。気をつけてね。また明日」

「また、明日」
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