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第21話 俺に会いたい先輩!?
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ちょっと待とう、と思ったら、タイコウはその場で手招きし出した。
「いいってさ。来いよ」
タイコウとはたまたま出くわしただけなのだが、俺に会いたい人とやらは、すでに同じ場所にいたらしい。
「まったく、遅いよ坂本くん。君は交渉が下手だよね」
「悪かったな。だが、ダメだって言われてたらこんな機会はなかったんだ。アネゴに感謝するんだな」
「自分より強い相手には、なんとかっす、って話すんじゃないのかい?」
「オイラはお前にゃ負けてない」
「そうかい。まあ、君の容姿の変わりようから観察していたことは正解だった。ということでよしとしよう」
「ああ?」
やってくるなりタイコウと喧嘩している女性が、俺に会いたい人なのだろう。
これまた俺でも知っているほどの有名人。またしても探索者である。探索者用のカリキュラムを採用している珍しい高校ということもあり、探索者を目指している生徒が多いことも関係しているのだろう。
お相手は、一応同じ学校だということを耳にしていたものの、一度もその姿を見たことがなかった人物。
昨年まで女子高生最強と言われていた、多様な魔法の使い手、関唯《せきゆい》先輩。高校生ながらミステリアスな雰囲気をまとった俺の先輩に当たる人だ。
「すまない。君を待たせるつもりじゃなかったんだ。悪かった高梨正一郎くん」
「お前、アネゴの名前どうして知ってんだよ」
「ちょっと黙っててもらえるかな?」
「俺からもお願い」
「う。アネゴが言うなら、仕方ないっす」
俺としても、どうして俺の名前を知っているのか聞きたいところだが、想像することは難しくない。
事前準備、研究、そして実践。そういったことを大切にし、短い間で他の探索者よりも突出しているのだから、俺の名前を調べる程度、難しいことでもないだろう。
「さて、高梨くん。一夜にして有名人なった気分はどうだい?」
「会いたい理由って、それが聞きたいからですか?」
「一つはね」
真意はわからないが、単純に興味というだけで、嫉妬や揚げ足取りということではなさそうだ。
ブレずに知りたいという姿勢は、えりちゃんとはまた違った芯が通った人物ということなのだろう。
「それで、どうだい? 今の気分は」
「正直、まだ実感は湧かないです」
「そうか。まあ、そうだろうね。ワタシも同じように言うと思う」
俺よりよほど有名人な気がする関先輩は満足そうに頷いた。
色々と考えたが、案外、雰囲気と違ってミーハーなのかもしれない。
いや、もしかしたら、実は深遠な理由がある可能性も……?
「さて、本題に入ろうか」
ない、か。
「坂本くんを相手に物怖じせず、返り討ちというのは誰にでもできることではない。これはすごいことだ」
「あ、ありがとうございます? でも、俺の力なんてまだまだですよ」
「事実を述べただけだ。卑下する必要はない」
「そうっすよ。もっと胸を張っていいっすよ。アネゴは控えめすぎるんす」
「いやぁ。そうですかね?」
評判はどうしても俺の思っている以上のところがあるから、当てにならないと思うのだけど。
タイコウの出来事に関しても、本気の戦闘ではなかったということで、勝ちに含めていいのか、返り討ちとカウントしていいのか怪しいし。
「ひとまず、謙遜として捉えて話を次に進めようか」
「はい」
「そう、あまり緊張することはない」
関先輩は、ジリジリと俺に近づいてくる。
「え、あの」
不敵な笑みを浮かべ、何も言わずに近づいてくる。
逃げるより早く、すぐ後ろにあった壁に背中がぶつかった。
そして関先輩は、俺から逃げ場を奪うようにすぐさま壁に手をついて見下ろしてきた。
息がかかる距離。
何をされるのかわからず心臓の鼓動が速くなる。
存外、最近は他人に見下ろされる経験もなくなっていたのだが、身長が縮んだことで思いのほか人から見下ろされて焦る。
「その力、ワタシとしてはとても興味深い。ぜひワタシに研究させてほしい」
パチパチと瞬きを繰り返すと、関先輩の顔は少しだけ優しい笑みに変わった。
「研究、ですか?」
「ああ。もちろん、タダでとは言わない。君に得があるように計らうつもりだ」
「なるほど」
確かに、俺のスキルは稀かもしれないけども、研究か。
実際にどうやっているかまでは俺も知らないんだよな。どうやっているのだろう。
「方法がわからない。そんなところかな?」
「はい」
「それもそうだろう。ワタシも研究成果とは名ばかりで、実力をより高めることばかり求めていて、結果の報告はなあなあになってしまっているからね。けれど、やっていることは簡単さ。ダンジョンへ行き使う。ただそれだけのことだよ」
「なるほど?」
つまりダンジョンを探索するってことだよな。
話は悪くない。実力のある人物と探索ができるのだ。
初日、実際に今のスキルに目覚めて、探索者は無理だと思った。
俺としても、そうそう簡単に探索者であることを諦めたりはできない。
今できることをやってどうにかやって、探索者を続けていきたい。昨日、えりちゃんとダンジョンへ行ってそう思った。
「一つ、聞いてもいいですか?」
「もちろん。突然のことだからね。疑問が解消されるまで答えよう」
「スキルを試す時、人がいないところで試すなら、ダンジョンじゃなくてもいいんじゃないですか?」
「それはスキルによるかな。例えば、足が速くなるスキルならば、校庭を走ってスキルを確かめることもできる。けれど、火の玉を飛ばしたり、電撃を飛ばしたりするなら、試せるような場所は限られるだろう? なら初めからダンジョンへ行った方が我々探索者にとっては都合がいいのさ」
「その通りですね」
剣術もスキルとして使えるレベルならば、例え剣道の達人でも相手ができなくなる。
やはり、力を高めるためにもダンジョンへ行くしかない。
「他はないかな?」
「はい!」
「それじゃあ」
「ちょっと待ったあ!」
「ん!?」
「いいってさ。来いよ」
タイコウとはたまたま出くわしただけなのだが、俺に会いたい人とやらは、すでに同じ場所にいたらしい。
「まったく、遅いよ坂本くん。君は交渉が下手だよね」
「悪かったな。だが、ダメだって言われてたらこんな機会はなかったんだ。アネゴに感謝するんだな」
「自分より強い相手には、なんとかっす、って話すんじゃないのかい?」
「オイラはお前にゃ負けてない」
「そうかい。まあ、君の容姿の変わりようから観察していたことは正解だった。ということでよしとしよう」
「ああ?」
やってくるなりタイコウと喧嘩している女性が、俺に会いたい人なのだろう。
これまた俺でも知っているほどの有名人。またしても探索者である。探索者用のカリキュラムを採用している珍しい高校ということもあり、探索者を目指している生徒が多いことも関係しているのだろう。
お相手は、一応同じ学校だということを耳にしていたものの、一度もその姿を見たことがなかった人物。
昨年まで女子高生最強と言われていた、多様な魔法の使い手、関唯《せきゆい》先輩。高校生ながらミステリアスな雰囲気をまとった俺の先輩に当たる人だ。
「すまない。君を待たせるつもりじゃなかったんだ。悪かった高梨正一郎くん」
「お前、アネゴの名前どうして知ってんだよ」
「ちょっと黙っててもらえるかな?」
「俺からもお願い」
「う。アネゴが言うなら、仕方ないっす」
俺としても、どうして俺の名前を知っているのか聞きたいところだが、想像することは難しくない。
事前準備、研究、そして実践。そういったことを大切にし、短い間で他の探索者よりも突出しているのだから、俺の名前を調べる程度、難しいことでもないだろう。
「さて、高梨くん。一夜にして有名人なった気分はどうだい?」
「会いたい理由って、それが聞きたいからですか?」
「一つはね」
真意はわからないが、単純に興味というだけで、嫉妬や揚げ足取りということではなさそうだ。
ブレずに知りたいという姿勢は、えりちゃんとはまた違った芯が通った人物ということなのだろう。
「それで、どうだい? 今の気分は」
「正直、まだ実感は湧かないです」
「そうか。まあ、そうだろうね。ワタシも同じように言うと思う」
俺よりよほど有名人な気がする関先輩は満足そうに頷いた。
色々と考えたが、案外、雰囲気と違ってミーハーなのかもしれない。
いや、もしかしたら、実は深遠な理由がある可能性も……?
「さて、本題に入ろうか」
ない、か。
「坂本くんを相手に物怖じせず、返り討ちというのは誰にでもできることではない。これはすごいことだ」
「あ、ありがとうございます? でも、俺の力なんてまだまだですよ」
「事実を述べただけだ。卑下する必要はない」
「そうっすよ。もっと胸を張っていいっすよ。アネゴは控えめすぎるんす」
「いやぁ。そうですかね?」
評判はどうしても俺の思っている以上のところがあるから、当てにならないと思うのだけど。
タイコウの出来事に関しても、本気の戦闘ではなかったということで、勝ちに含めていいのか、返り討ちとカウントしていいのか怪しいし。
「ひとまず、謙遜として捉えて話を次に進めようか」
「はい」
「そう、あまり緊張することはない」
関先輩は、ジリジリと俺に近づいてくる。
「え、あの」
不敵な笑みを浮かべ、何も言わずに近づいてくる。
逃げるより早く、すぐ後ろにあった壁に背中がぶつかった。
そして関先輩は、俺から逃げ場を奪うようにすぐさま壁に手をついて見下ろしてきた。
息がかかる距離。
何をされるのかわからず心臓の鼓動が速くなる。
存外、最近は他人に見下ろされる経験もなくなっていたのだが、身長が縮んだことで思いのほか人から見下ろされて焦る。
「その力、ワタシとしてはとても興味深い。ぜひワタシに研究させてほしい」
パチパチと瞬きを繰り返すと、関先輩の顔は少しだけ優しい笑みに変わった。
「研究、ですか?」
「ああ。もちろん、タダでとは言わない。君に得があるように計らうつもりだ」
「なるほど」
確かに、俺のスキルは稀かもしれないけども、研究か。
実際にどうやっているかまでは俺も知らないんだよな。どうやっているのだろう。
「方法がわからない。そんなところかな?」
「はい」
「それもそうだろう。ワタシも研究成果とは名ばかりで、実力をより高めることばかり求めていて、結果の報告はなあなあになってしまっているからね。けれど、やっていることは簡単さ。ダンジョンへ行き使う。ただそれだけのことだよ」
「なるほど?」
つまりダンジョンを探索するってことだよな。
話は悪くない。実力のある人物と探索ができるのだ。
初日、実際に今のスキルに目覚めて、探索者は無理だと思った。
俺としても、そうそう簡単に探索者であることを諦めたりはできない。
今できることをやってどうにかやって、探索者を続けていきたい。昨日、えりちゃんとダンジョンへ行ってそう思った。
「一つ、聞いてもいいですか?」
「もちろん。突然のことだからね。疑問が解消されるまで答えよう」
「スキルを試す時、人がいないところで試すなら、ダンジョンじゃなくてもいいんじゃないですか?」
「それはスキルによるかな。例えば、足が速くなるスキルならば、校庭を走ってスキルを確かめることもできる。けれど、火の玉を飛ばしたり、電撃を飛ばしたりするなら、試せるような場所は限られるだろう? なら初めからダンジョンへ行った方が我々探索者にとっては都合がいいのさ」
「その通りですね」
剣術もスキルとして使えるレベルならば、例え剣道の達人でも相手ができなくなる。
やはり、力を高めるためにもダンジョンへ行くしかない。
「他はないかな?」
「はい!」
「それじゃあ」
「ちょっと待ったあ!」
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